荒ぶる神な戦艦水鬼さん   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。


GE3をプレイして作者が思った簡単な感想(ネタバレ配慮)

・ミナトが灰域から出た灰嵐に襲われてAGEを残して放棄された!( GE2特有の超展開かつ超圧縮+GE3で追加された説明されない怒濤の設定の嵐によるファルシのルシがコクーンでパージ要素)

・ユウゴ「灰域についてはターミナルで調べてくれ」(ちょ……)

・牢屋パートstory7で終わった!?(唖然) 主人公達のいた場所は特に劣悪な環境だった……?(は……?)

・そもそもここまでAGEが冷遇されている理由が、データベースで一言、普通のゴッドイーターよりアラガミに近いからしか言及されていないんですが……。

・ルル「そんな……」(そう言いてぇのは発売日当日にコレを買って、FGOのボックスガチャイベを一旦止めて真面目にストーリーを見てる私なんだよなぁ……)

・ユウゴ「止まるんじゃねぇぞ……」(作者の印象)

・なんだよこのユウゴっていうの完全に主人公じゃねぇか。というか今作の主人公は過去作に比べても圧倒的なユウゴくんの付属品感がスゴ……ん?

あれ、これユウゴが主人公でプレイヤー(女性)がユウゴくんの嫁なんじゃないか?

なんだよユウゴくん、こんなパツキン巨乳赤目で眼鏡属性の美人と幼馴染みで嫁とか勝ち組過ぎるだろ……(露呈する作者の性癖)

・おかあさん!(なん……だと……)

・\アンプルかけご飯/(集中線)

・主人公の後ろをついて来て、追い掛けて来て、座り込む幼女

・モーションを真似る幼女

・おでんぱんと幼女

・幼女の可愛さに思わずゴッドイーターシリーズで最も長く話すムービーのあるおかあさん(主人公)

・おかあさんだいすき!(ウッ……心停止)


\お母さん(プレイヤー)とお父さん(ユウゴ)ですよ! フィムちゃん!/←イマココ

 まあ、他にもストーリー上の悪役が揃いも揃ってアホだったり、相変わらず全体的に展開についていけなかったり、ストーリーをやりながら当たり前のようにデータベースの情報を見ていないと最低限もわからなかったり、主人公の乳揺れがゴッドイーター史上最高だったりと色々と言いたいことはありましたが、フィムちゃんが可愛いので買って後悔はしませんでした。というか買え(ダイレクトマーケティング)

 純粋なところだとそもそもストーリーに期待していなかったですが、ラスト付近のストーリーはご都合主義的でしたが、それなり見れるものだったと思います。何より歌わなかったし、誰も生き返らなかっただけいいと思います。歌わなかっ(強制終了)









赤いカリギュラ

 

 

 

 

 

 いたい "たべれない" いたい "たべれない"

 

 

 "たべれなかった" いたい "たべれなかった" どうして? たべれなかった

 

 

 けられた "たべなきゃ" なにかはいってきた "たべなきゃ"

 

 

 あたまいたい "たべたい" でもすっきりした "たべたい"

 

 

 どうする? "たべる" でもたべれない "たべる" たべれっこない

 

 

 いまならかんがえられる "たべたい" ほんとうにたべたい? "たべたい"

 

 

 ちがう "たべたい" ちがうよ "たべたい" ちがうの "たべたい"

 

 

 たたかうの "たべたい" もっとたたかいたい "たべたい"

 

 

 

 

 

 うるさい だまれ

 

 

 

 

 

 あれ? こえは? きえた? やった

 

 

 あれつよかった だから もっとつよくなる 

 

 

 わたしは ぼくは じぶんは おのれは

 

 

 もっと もっと もっと もっと もっと たくさん たくさん

 

 

 

 殺したい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ソロソロネ……』

 

 俺は朝ご飯としてご飯にアンプルをかけただけの"アンプルかけご飯"を頬張りながらそう呟いた。

 

 しかし、米が食えるというのはフェンリルの地下部分がどうなっているのか非常に気になるところではある。この子を出産したら見に行きたいところだ。 

 

 ちなみにアンプルはゴッドイーターだって口からではないにしろ接触するのだから、妊婦な俺が安全に食べれる数少ないアラガミっぽいモノである。もちろん、容器は食べずに捨てる。

 

「何が?」

 

 俺と食卓を囲んでいるアヤメちゃんがそう呟く。この研究室に畳と卓袱台を置いたのでちょっとだけ床生活を楽しめるようになったのである。

 

『ケイト達ニ頼ンデオイタ人ガ来ルノヨ』

 

 話をつけなきゃいけないからな。ケイトさんやハルオミさんよりも俺がまず話すべき……いや、話したいと思うのだ。数日内には極東支部に来るだろ。

 

「……フォウ姉ちゃんそれどんな味するの?」

 

『チキンスープノ雑炊』

 

 卵がときたくなるお味。

 

 そんなことを考えていると畳の隣の床から液体が溢れ、ゲル状の湧き水のようになった次の瞬間には人の形に纏まり、更に造形を刻んだ。

 

「あ、ハナちゃん」

 

 そこにいたのはハナちゃんこと、深海海月姫――オトタチバナであった。ご飯を食べる手を止めずに普通に反応出来るようになっている辺り、かなりアヤメちゃんの常識が磨り減っているのかもしれないな。

 

『オ母サン、言ワレタ通リ、"アソコ"ニ追イ立テテオイタヨ』

 

『コンナニ早ク、ヨク見ツケタワネ……』

 

 ハルオミさんが既に極東に来ているということから、"アレ"も既に極東近辺にいるということはわかっていたのだが、ハナちゃんが1日で見つけた上に指示の通りの場所まで追い立ててくれるとは思わなかった。

 

『私ニハコレガアルモノ』

 

 そう言うとハナちゃんは黄金のオーラに包まれた白いタコ焼きこと、"深海熊猫艦戦"をオラクル細胞を収束させ、掌に造り出して浮かしていた。

 

 空母は万能だなぁ……その上、ハナちゃんは擬態能力で人に紛れるだけでなく、地面や建物に細胞を浸透させてどこでも移動可能だし。性格いいし。

 

 ……あれ? ひょっとしてこの娘、俺より遥かに優秀なんじゃ……。

 

 嘆いていいのか喜んでいいのかわからない事実に愕然としながらも顔に出さずに対応する。

 

『デモオ母サン……大丈夫?』

 

『何ガ?』

 

『アレ、多分、"声ニ従ッテナイ"ヨ』

 

『ン……? ソレドウイウ意味――』

 

「カナ君完成したよ! おや? お揃いのようだね」

 

 すると会話の途中でサカキ博士がカグラちゃんを同伴しながら部屋に入って来た。博士の手には"ピストル"が握られている。

 

『博士……徹夜シテマデ頼ンデハナイワヨ……?』

 

 博士に仕事を頼んだのは既に今日の日付になった深夜時間帯である。

 

「いやー、悪いねカナ君! 君のコアのオラクル細胞を培養してどうにか神機を作れないかと最近模索し続けていた矢先に! カナ君のコアで"ピストル型神機"を作って欲しいだなんて完全に盲点でね!」

 

 まあ、ゴッドイーターの神機(主流)からは完全に外れてるからなぁ、今ではデータベースに記述が残るぐらいだそうだし。

 

 そこでふと今さら過ぎる疑問が生まれる。

 

『流石ニ私ベーストハ言エ神機ヲ素手デ触ルノハ危ナインジャナイカシラ……?』

 

「ははは、カナ君のオラクル細胞が人間を害するわけないじゃないか」

 

『ソウ……』

 

 信頼と言うべきとは思うのだが少々俺が信じられ過ぎて逆に不安を覚える……まあ、出会った当日に俺の制御下のアラガミにあれだけべたべた触っていたので本当に今さらだな。

 

 とりあえずピストル型神機を受け取り、銃の形状に目を向けて息を吐いた。

 

『……"モーゼルピストル"トハ洒落テルワネ』

 

「お、やっぱり知ってるかい? やっぱり博学だねカナくんは」

 

 そりゃあ、こっちの世界では軽く150年以上前の骨董品の上、アラガミに通じるわけもない鉄屑でも、俺のいた世界では歴史に燦々と輝く不朽の名銃のひとつだ。

 

 モーゼルピストルとは最も世界に普及したオートマチックピストルであり、トリガーガード前方に弾倉が位置したサブマシンガンのようなデザインと、固定式の10発収容でクリップで装填する弾倉。そして、後のあらゆる銃たちに引き継がれた閉鎖機構が特徴である。 

 

「その銃には培養したカナ君の極小コアを。銃弾にはカグラ君の砲弾のオラクル細胞を使用した特別製だ。まあ、そのせいで10発と1発しか銃弾は入らず、装填も必要だから気を付けてくれ」

 

『フウン……アリガトウ』

 

 サカキ博士から弾倉を3つ受け取りながらそう呟く。まあ、十分だろう。

 

「何をする気なの……?」

 

 アヤメちゃんにそう聞かれた俺は笑みを強めて口を開く。

 

『"落トシ前"ヨ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "話がある。極東支部に来て欲しい"

 

 過去に追われるように支部を転々としていた男――ギルバート・マクレインは、その切っ掛けのひとりとなった男――真壁ハルオミからのメールにより極東支部に来ていた。

 

 未だに彼の心を蝕み続ける自責の念により、いつかまた会わなければならない日が来るとは考えていた彼だったが、こうも早く訪れるとは考えていなかったため、心の準備もロクに出来ていない状態だった。

 

 

「よう。久し振りだな」

 

 

 そんなギルバートにハルオミは昔と全く変わらない口調と様子で接し、彼が思わず面食らってしまう。とっさに出た言葉は妙に尻すぼみな敬語ぐらいのものであった。

 

 それから暫く、ハルオミがギルバートと最近の他愛もない話題を振り、それにギルバートが一言二言で返事を返す時間が続く。

 

(変わらないな……ハルさんは)

 

 アレだけの事を経たにも関わらず、自分の知る頃のままのハルオミに懐かしさを覚えると共に、あの時何もしなかった己を思い、自責の念は強まっていた。

 

 やがて会話が途切れ、切り出すかのようにハルオミが口を開いた。

 

 

「お前に……"会って欲しい女"がいるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"エイジス島"か……」

 

 ギルバートはかつて人類の希望があった場所に来ていた。

 

 自責の念の象徴たるハルオミの婚約者――ケイト・ロウリーが生前に話していた場所に自身が立っていることに何とも言えない気分になる。

 

 彼はチャージスピアを肩に担ぎながら、今はアラガミの処理場になっているというエイジス島の区画に向かっていた。

 

 ハルオミの言う"会って欲しい女"とはそこにいるらしい。

 

 ハルオミの気紛れか、何かの比喩か、はたまたそれ以外か。何れに彼に負い目を感じているギルバートに行かないという選択肢はなかった。

 

「ここか……」

 

 そして、エイジス島の中心。アラガミのトラップタワーとなっている区画に出た。そこは非常に広く平面の空間があるだけの場所であり、まさにうってつけの場所といえるだろう。

 

「あれは――」

 

 ギルバートはその場所の縁に足を外に放り出して座っている女性のシルエットがあることに気が付く。彼からは丁度背中だけ見えるような離れた位置におり、どのような者なのかは全くわからない。

 

 いや、ギルバートでなければ気づくことは無かっただろう。

 

「――――――」

 

 それを見つけたギルバートは言葉を失い、それまで考えていたことは全て吹き飛んだ。

 

 濡れたように色が濃く黒い長髪、うなじから覗く人間にしては白過ぎる肌、やや刺々しい装飾のなされた黒いドレス。

 

 そして、何よりその背中が彼にとって忘れたくても忘れられない光景そのものであった。

 

 

「"ニライカナイ"……!」

 

 

 現在、最悪のアラガミの一角であり、アラガミ化しかけていたケイト・ロウリーを連れ去り、ギルバートに見えない傷を刻み込んだアラガミがそこにいたのだ。

 

 見ればあの服装で寒いのか、"腹から足に掛けて毛布"を掛けており、それが嫌に人間らしい。

 

 逆怨み。そんなことは彼自身が一番よくわかっている。

 

 客観的に言えば、ケイト・ロウリーを助ける方法は何処にもなく、同僚に肉片すら残らない程に滅多刺しにされて殺されるよりは、一思いにアラガミに殺された方がマシな結末だったのだろう。

 

 しかし、そこには人間としての想いが、プライドが、誇りがあった。

 

 そういったものを選べなかった自身を責める一方、何かを誰かを怨まずには自分を保てなかった。あの時、ニライカナイは己を怨めとばかりの発言をしていたため、尚更と言えよう。

 

 

『久シ振リネ』

 

 

 まるで待っていたとばかりにニライカナイは背中をギルバートに向け、首だけで少し後ろを向いたまま口を開いた。その声はかつて聞いたものと全く同じように機械音声と人の肉声の丁度中間のような奇妙な声であった。

 

「………………」

 

 ギルバートは喋らずにチャージスピアを構えたままゆっくりとニライカナイに近づく。その時の彼の形相は鬼のような怒りを浮かべていながら、同時に泣き出してしまいそうな程に脆くも見えた。

 

 そんな様子をニライカナイの赤い瞳はじっと見つめ、目を伏せると小さく首を振る。その姿は呆れた、あるいは憐れんだように見え、ギルバートの感情を逆撫でした。

 

 

『………………』

 

 

 そして、ニライカナイの5m程手前でギルバートはチャージスピアの矛先を首筋に向ける。

 

 そんな状態でもニライカナイは決して動かず、視線で注ぐ風を追いながら風に靡く髪をひと撫でしていた。

 

 そして、ポツリと呟いた。

 

 

『"来ル"ワヨ』

 

「何を――」

 

 それ以上の言葉を吐こうとしたギルバートは背後から来る強風と、地面の揺れにより姿勢が崩れる。そして、その方向を見たギルバートは驚きに目を見開く。

 

 そこにはケイト・ロウリーを殺した本当の怨敵。"赤いカリギュラ"が刺すような眼差しを向けながらこちらを見据えていた。

 

 赤い身体、片腕に刺さったケイト・ロウリーの神機、ニライカナイに蹴られて結合崩壊したままの頭部が確かにあのカリギュラである証を示している。

 

「デカい……!?」

 

 しかし、何故か赤いカリギュラは以前の時よりも遥かに巨大になっており、"二回り"は巨大化していた。

 

 更に赤いカリギュラは"神機の刺さった腕側のブレード"を感覚を確かめるように動かしている。それはまるで喜びを表しているようにさえ見えた。

 

『復讐シタカッタノハ向コウモ同ジノヨウネ』

 

「くっ……!?」

 

 ギルバートは軽口を叩くニライカナイを一端後に回し、赤いカリギュラにチャージスピアを向ける。

 

 すると赤いカリギュラは短く鼻息を荒げながらギルバートに対して唸り声を上げる。まるで邪魔だと言わんばかりの様子だ。

 

「テメェ……!」

 

 ギルバートは赤いカリギュラが自分ではなく、始めからニライカナイを見据えていたことに気が付く。

 

 ギルバートはチャージスピアを構え、引き絞りながら赤いカリギュラに走り寄ると突撃した。

 

 その動きはかつて赤いカリギュラに放ったものよりも遥かに速い、強靭なものであり、彼の執念を思わせた。

 

「な――」

 

 しかし、赤いカリギュラはその巨体にも関わらず、想像も出来ないような速度で空へと飛び上がった。

 

(コイツ! 前より速く――)

 

 そこまでギルバートが考えたところで赤いカリギュラは、空中で身体を捻り神機の刺さった腕側のブレードの先端が当たるようにギルバートへと振るう。

 

 それはまるでゴッドイーターを相手にするための攻撃と言わんばかりに、とてつもなく正確であった。

 

「しま――」

 

 あの時はケイトがギルバートを守った。しかし、もう彼女はどこにもいない。

 

 ギルバートは酷く遅く感じる赤いカリギュラのブレードを眺めながら様々な事が頭を過り――。

 

 一発の重い銃声を聞き、赤いカリギュラの大きな掌に突き刺さり、腕ごと大きく撥ね飛ばす銃弾を見た。

 

『無用心ネ』

 

 赤いカリギュラの攻撃は風を切り、地面に落ちたところで四発の重い銃声が響く。それらは的確に赤いカリギュラの膝と肘を撃ち抜き、赤いカリギュラを転倒させる。更に五発の銃弾が赤いカリギュラの胸部に着弾し、決して浅くはない傷を与えた。

 

 その間にギルバートが振り向くと、ニライカナイは片腕と顔をこちらに向けており、その手に持つピストルから煙が上がっていた。

 

 ニライカナイに助けられたということは火を見るより明らかだろう。

 

「お前……いったい?」

 

『モウ、関節ヲ再生サセテルワ。前ヲ見ナサイ』

 

 ピストルの弾倉を交換しているニライカナイの言葉でギルバートが前を向くと、既に立ち上がり掛けている赤いカリギュラがいた。胸部に当たった銃弾も致命傷とは及ばなかったようだ。

 

『誤算ネ……コレデ仕留メラレル予定ダッタノニ……』

 

 そう、ニライカナイが呟いた直後、ギルバートの隣に何処かから跳んできたニライカナイの男性体が着地する。今の赤いカリギュラに比べれば男性体は多少小さく感じたが、その威圧感は赤いカリギュラと比べるべくもない程強くあった。

 

『アレガ生キテイテハ話モ出来ナイ、殺スワヨ』

 

 その言葉の直後、赤いカリギュラは一直線に男性体へと駆け出し、ブレードを振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニライカナイとギルバートが計らずも肩を並べ、赤いカリギュラと交戦し始めてから数分後、状況は千日手の様相を呈していた。

 

 赤いカリギュラはブレードによる攻撃を男性体へと当てるが、あまりにも重厚過ぎる装甲によりカッターナイフで小さく傷つけたような傷を刻むことしか出来ない。更に男性体はその大きさに合わず、赤いカリギュラよりも遥かに怪力であるため、過度な接近も出来ずにいた。

 

 しかし、赤いカリギュラは男性体に無いものを持っていた。それは圧倒的なスピードと瞬発力である。

 

 それにより、男性体の腕のリーチからつかず離れずの距離を取り続け、レンジ外からブレードによる攻撃を浴びせて完全に男性体を封殺していた。

 

 更に時より女性体から放たれる銃弾すら巨体を翻して躱し、最初以来一度も当たってはいなかった。

 

(何故だ……?)

 

 そんな中、不本意ながらニライカナイと共闘しているギルバートはある疑問を覚える。

 

(どうして一度もニライカナイは砲撃をしない……?)

 

 ニライカナイの男性体に付いている砲塔の威力は記録でよく知っていた。

 

 エイジス島のアラガミ装甲を一撃で破壊するほどの――。

 

(!? まさかお前――)

 

 ギルバートはある答えに辿りつき、ニライカナイの女性体を見つめながら声を荒げた。

 

「"俺"がいるから砲撃しないのか!?」

 

『………………』

 

 その言葉にニライカナイは答えない。しかし、その無言が答えそのものであった。

 

 砲撃をしてしまえばきっと簡単に赤いカリギュラを倒せてしまうであろうが、威力故にその周囲にいた人間は空間ごと木っ端微塵になるであろう。

 

 つまり、何故かニライカナイはギルバートに危害を加えないことに徹しており、皮肉にもこのエイジス島という逃げ場のない空間はニライカナイに対するトラップタワーと化してしまったのだ。

 

 それが面白いのか、赤いカリギュラはケタケタと歯を打ち鳴らし、笑うように音を出している。

 

『アア……ッ!?』

 

 男性体が赤いカリギュラをブレードを腕で受け、激しい衝撃が地面を揺らすと同時に女性体から悲鳴が上がる。

 

 見れば女性体は息を荒げており、顔色は青く、明らかに消耗した様子であった。

 

 その様。その動き。そして、それでも尚、意思を失わないその瞳にギルバートはとあるものを幻視する。

 

「くそっ……クソッ!?」

 

 きっと赤いカリギュラがいるせいであろう。ギルバートを守りながら戦い続けるニライカナイの姿が、ケイト・ロウリーに重なってしまったのだ。

 

 ニライカナイは赤いカリギュラ程でないにしろ怨敵のハズだ。しかし、ギルバートの前で最初からニライカナイは――誰一人として"人間"を殺してはいなかった。その意識がギルバートの怨讐を弱まらせる。

 

 そんな時だった。

 

 赤いカリギュラの顔に横殴りのバレットの掃射が行われ、堪らず赤いカリギュラは巨体なりに距離を取った。

 

 

 

「随分、時間掛かってるなと思ったら……そんなに逞しくなってたのか。同窓会会場かここは?」

 

 

 

 そして、そんな言葉が虚空に響き、ギルバートはそちらを見る。

 

「"ハルさん"……!」

 

 それは真壁ハルオミであった。困ったような顔をしながら肩を竦めている。

 

「久し振りだな赤いの。ま、俺がお前さんの前に立つのは初めてなんだが……」

 

 赤いカリギュラは歯を鳴らすのを止め、鬱陶しそうに咆哮を上げて邪魔者を威嚇し、射殺さんばかりの視線を向けた。

 

「おいおい、そう早まるな。ダンスの前にひとつだけ教えておいてやろう」

 

 ハルオミはそう告げた直後、赤いカリギュラの背に何者かが飛び乗り、腕の付け根に突き刺さる神機に手を掛けた姿がギルバートには見えた。

 

「え……?」

 

 その者の姿形にギルバートは絶句し、それまで考えていたことは全て吹き飛び放心する。

 

 居るはずがなかった。生きているはずがなかった。きっとこれは夢なのではないか? 現実味の無い感覚がギルバートを包む。

 

 

 

「強いぞ。俺の"嫁"は」

 

 

 

 そのハルオミの呟きと共に赤いカリギュラの上に居る人物――ケイト・ロウリーは己の神機の柄を両手で持ち、力を掛ける。

 

「律儀に私の神機持っててくれてありがとねッ!」

 

『――――!!!?』

 

 神機を更に深く突き刺され、赤いカリギュラは悲鳴のような雄叫びを上げた。

 

「カナちゃん!」

 

『モウ外サナイワ……』

 

 ケイトの呼び掛けにより、ニライカナイはピストルを放つ。

 

 それによって轟音と共に赤いカリギュラの四肢関節を的確に撃ち抜き、赤いカリギュラは体勢を崩して地に伏せる。

 

 しかし、その状態でも赤いカリギュラは尻尾を振るい、背中のケイトを狙った。

 

「おいおい、ケイトのアプローチを断るだなんて勿体ないぜ?」

 

 それを跳び上がったハルオミが神機で打ち払う。更にニライカナイの銃弾が尻尾を捉えつつハルオミが神機で押さえ込んだ。

 

 しかし、ここで関節を再生させ始めた赤いカリギュラが立ち上がろうとする。

 

『ヨクモヤッテクレタワネ……』

 

 その頃にはニライカナイの男性体が赤いカリギュラに迫っており、太い両腕で赤いカリギュラを力ずくで押さえ込んだ。赤いカリギュラは逃げようともがくが男性体は微動だにしない。それどころか異常極まりない握力により、赤いカリギュラを掴んでいる部分が徐々に陥没していっている。

 

「ギル!」

 

「――――あ……はいッ!」

 

 きっとこれは夢なのだろう。ギルバートはそう考えながらケイトに返事を返した。まるであの時に戻れたような。そんなあり得ない夢だ。

 

 ニライカナイによって地面に捩じ伏せられている赤いカリギュラの胸部にチャージスピアの切っ先を引き絞る。今度こそは外すことはないだろう。

 

「うおおぉぉぉ!!!!」

 

 ギルバートの一撃は赤いカリギュラの胸を刺し貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前には胸部にポッカリと風穴を空け、殺意に満ちていた瞳は閉じられ、ピクリとも動かなくなった赤いカリギュラが地に伏していた。

 

 それを暫く見つめてから冷静さを取り戻したギルバートはポツリと呟く。

 

「夢じゃ……ないんですね」

 

「うん、死に損なったわ」

 

 そう言って笑顔で語り掛けるケイトはギルバートが知るあの頃の姿のままであった。

 

「いったい何が――」

 

 そこまで言ったところでニライカナイの男性体が地面に倒れ、重い音を響かせた。

 

「そうだ! アイツは……」

 

 先にもう一体アラガミがいたことを思い出し、ギルバートは女性体の方を向いた。

 

『ウ……アウ……ァ……』

 

 するとそこには腹を庇うように踞りながら小さく声を上げているニライカナイがいた。明らかに普通の様子ではない。

 

「カナちゃん……?」

 

 すると何故か隣にいたケイトが神妙な顔つきになりにギルバートが止める間も無くケイトと共にハルオミもニライカナイの元へと向かう。

 

 そして、ハルオミが助け起こすように支え、ケイトは掛けられている厚手の毛布を取り払った。

 

 それによりギルバートは驚きに目を見開く。

 

「な……に……」

 

 ニライカナイは妊娠していたのである。それも既に臨月と言っていい程の大きさであった。

 

『ア……アイツ……アンナニ地面ヲ揺ラシヤガッテ……』

 

「は、破水してるじゃない!?」

 

『モウ一度ブチ殺サナイト気ガ済マ……ナイ……死体蹴リ(砲撃)シテヤル……』

 

「わかった! わかったから楽にしてろ!」

 

 ギルバートはいったい何が起きているのかわからなかった。そのため、一度起こった事を整理してみる。

 

 ハルオミがギルバートに会わせたい女とはニライカナイだった。すると赤いカリギュラが乱入してきた。ニライカナイに守られた。ケイト・ロウリーは生きていた。四人掛かりで赤いカリギュラは倒した。ニライカナイとハルオミとケイトはとても親しげである。ニライカナイは妊婦だった。

 

 何がなんだかわからない。ギルバートは目眩を起こしそうになり、頭を抱えた。

 

「ちょっとギル!」

 

「………………え? あ、はいッ!」

 

 そんな中、ケイトに呼ばれ、ギルバートは身を固くして現実に引き戻される。もっともその現実のせいでギルバートは当惑しているのだが。

 

 "ぼさっと立ってないで今は手伝って!"とケイトは続け、更に口を開く。

 

 

 

 

 

「カナちゃんのお腹には私とハルの子がいるのよ!」

 

 

 

 

 

 ギルバートは混乱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニライカナイとゴッドイーターらが去ったエイジス島。

 

 そこでは未だ赤いカリギュラの骸がオラクル細胞単位まで分解され、地表に吸い込まれることなく転がっていた。転がっていたのである。

 

 そして、そっと――――赤いカリギュラの目蓋が開いた。

 

 赤いカリギュラは気だるげに身体を起こす。そのせいで損傷した身体のパーツが少し崩れ落ちるが気にした様子もない。

 

 赤いカリギュラがしていた事は単純。"死んだフリ"であった。

 

 およそただのアラガミならばまず行うようなことではない事を何故か赤いカリギュラは行っていたのである。

 

 赤いカリギュラは身体の具合を確かめ、まだ移動は可能なことを確認するとゆっくりと移動を始めようとした。

 

 

 

 

 

「まあ、なんて素敵なのでしょうか?」

 

 

 

 

 

 そして、人間の言葉が自身の背後から聞こえたことに気が付き、そちらに振り返る。

 

 するとそこには"車椅子に乗り、喪服のような服装をした金髪の女性"がそこにいた。始めからそうしていたのか、今この場に出現したのか。どちらともわからないほど自然にその人間はそこにいたのである。

 

 一目で危険性を認識した赤いカリギュラは唸り声を上げて威嚇する。しかし、車椅子の女性はどこ吹く風な様子でクスクスと笑うばかりだ。

 

「自力で"アラガミの意思"を破壊したのですか? それとも何か理由がありまして?」

 

 そう言いながら車椅子の女性はゆっくりと赤いカリギュラに近付く。とっくに攻撃の射程に入ってはいたが、何故か赤いカリギュラは攻撃をせずに小さく鳴き声を上げるばかりだった。

 

「そうですか……"あの方"に蹴られてから考えられるようになったのですね。蹴られた拍子にあの方のオラクル細胞がほんの少しだけコアについて、その結果としてアラガミの意思だけが壊れてしまったのでしょうか?」

 

 車椅子の女性は赤いカリギュラの目の前まで来て興味深そうに視線を合わせる。

 

 彼女の言葉はほとんど独白のようであり、全く要領を得ていない。

 

「ふふふ、"殺せなかった"だなんて……物騒ですわ。けれど私ならあなたの望みを叶えられるかも知れませんよ?」

 

 その言葉に赤いカリギュラは鳴き声を止め、車椅子の女性に顔を近づけた。

 

「"アラガミの意思を持った人間()と、人間の意思を持ったアラガミ(あの方)"……とっても素敵な関係だと思いませんか?」

 

 車椅子の女性は赤いカリギュラの鼻先を撫でながら嬉しそうに微笑み浮かべ、赤いカリギュラは少しだけ大きくひと鳴きした。

 

 それを聞いた車椅子の女性は玩具を買って貰った子供のように身を震わせて笑いながら言葉を吐く。

 

 

 

「うふふ、決まりですね。私の"新しいお人形さん"」

 

 

 

 そのやりとりの後、直ぐにエイジス島から車椅子の女性も、赤いカリギュラの姿も影も形も無くなり、がらんどうのエイジス島を海風だけが通り過ぎた。

 

 

 

 

 







~この小説の大きな変更点~

赤いカリギュラ(ルフス・カリギュラ)
今作の赤いカリギュラ。DLCで戦えるルフス・カリギュラと全く同じような性能をしていたが、カナちゃんに蹴られた時に偶々、コアに少量のカナちゃんのアラガミ細胞が付着したせいで、アラガミの意思のみが壊れ、"殺したい"という己の意思に忠実になった。それにより、喰らうという目的から殺すという目的にすり代わっており、ゴッドイーターもアラガミも問わず、他者を殺すためならば自身の身体を強化し続け、如何なる手段でも用いる超生物へと化している。現時点でタイマンならばオトタチバナと正面から殺し合える程の戦闘能力を持つ。


~特に変わらないところ~

ラケル・クラウディウス
晩餐の支度のついでにお人形遊びに精を出している平常運転のてんてー。赤いお人形さんを拾ってご満悦。



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