①毎回ハルオミさんと一緒に女性にセクハラする淑女なケイトさん
②毎日最後に笑顔で無言のケイトさんがハルオミさんの背後に現れ、画面が暗転後、ハルオミさんが引きずられて回収される
この作品ではそっちの方が面白そうという理由で、前者のケイトさんになると思いますので、後者のケイトさんが見たければ小説を書いて、ケイトさんを生存させるんだ!(集中線)
それと、ケイトさんは気絶していたので、ギルとニライカナイの下りは見ておりません。
ちなみに作者の投稿頻度、投稿初日からストック0で毎日毎日書き上げて投稿しているのでだいぶ無理してるよ! たーのしー!(ナチュラルハイ)
『ネエ、アヤメ?』
「…………」
『アヤメチャン……?』
「…………」
『アノー、アヤメサン……?』
「…………」
『ムムム……』
現在、ケイトさんを連れて帰って来たその日なんだか、アヤメちゃんがご機嫌斜めである。
まあ、理由は最近アヤメちゃんが見せてくれた"お父さんの手帳"の内容からなんとなく察したが、正直俺だけでどうにか出来る事とも思えないしなぁ……。
今いる場所はグラスゴーから離れ、かつては霧の都と呼ばれていたロンドン。その中のウェストミンスター寺院を根城にしていた。
ウェストミンスター寺院と言われれば印象は薄いかも知れないが、ビッグ・ベンの後ろにある寺院といえば――いや、これでも薄いか。
ならば日本の小中学校で必ず流れていたチャイムの音は、ウェストミンスターの鐘という曲だといえば少しは興味も出るだろうか。実際のところはどちらかといえば、同じものを使用しているビッグ・ベンの鐘の音を取り入れたので、そこまで考えると話が拗れるがそういうものだ。
まあ、アラガミの襲撃により、ビッグ・ベンは倒壊しているので見る影もなく、ビッグ・ベンに比べれば少々地味に映るこの寺院は、何故かとてもよい状態で残っていたので間借りしているのである。
とは言え、ほぼ線対称の造りで白壁の寺院は中々見ていて厳かな感情に浸れ、俺としては中々気に入っているのだがな。
そんなことを考えているとアヤメちゃんが口を開いた。
「フォウ姉ちゃん、宗教好きなの……?」
『精神ト曲ハ好キヨ』
「……?」
神無き時代に生まれたアヤメちゃんにはよくわからなかったようだ。まあ、仕方ないだろう。この世界の住人に聖書の内容を説くような無意味なことなど俺もしたくはない。
ちなみに話は少し変わるが、別にロンドンにフェンリルロンドン支部があったりはしない。
理由としては単純にアラガミは特に人工物を捕食することを好んでいるため、都市部を中心に重点的に襲われるからであろう。つまりこのロンドンはグレートブリテン島で最もアラガミが沸く地獄のような場所なのである。
とは言え、極東支部からすれば新人の育成に丁度いい難易度の場所であろう。現にウェストミンスター寺院を囲うようにテスカトリポカを3体配置していれば、アラガミどころかゴッドイーターすら襲ってくることはない。上位種どころか堕天種もほとんど見掛けないしな。
まあ、たまに通り掛かったザイゴートやサリエルを、テスカトリポカがトマホークミサイルで撃墜しているのを見掛けるが、特にそんな指示出していないので、案外テスカトリポカもオラクル細胞補給のついでに暇を潰しているのかもしれないな。
「じゃあ、フォウ姉ちゃんあれ弾ける?」
何がじゃあなのかわからないが、アヤメちゃんは目の前のパイプオルガンを指差した。
今いる区画ではパイプオルガンが向かい合うように配置されており、かつてはふたつを同時に演奏してよい音を奏でていたのだろうな。
だが、まあ、パイプオルガンはピアノともオルガンとも違う。20年放置されるとか以前に構造的にこのままではまず動くことはないだろう。
『アラ、動ク……』
諦め半分どころかアヤメちゃんに動かない主旨を伝えるため、鍵盤を指で叩くとなんとパイプオルガンから心地好い音が鳴った。
どういうことだ? パイプオルガンは送風でパイプの音を出すため、送風装置が動かなければ鳴らず、パイプ自体も20年も放置されればマトモに鳴るハズなんてないのだが……。
そこまで考えたところでそういえばゴッドイーターの世界でアラガミが発生した時期は、2050年代だったことを思い出した。更に言えばフェンリルでも時々たまにオーパーツ染みたモノをゲームでは見掛けていたな。となるとこのパイプオルガンに何か画期的な技術でも捩じ込まれているのかもしれないなあ。未知の合金とか、勝手に送風し続ける構造とか、そもそも送風式じゃないとか。
「ぁ――!!」
そんなことを考えながら振り向くと、キラキラと目を輝かせて演奏を待つアヤメちゃんがいた。
…………………………。
……………………。
………………。
…………。
……むう。
仕方ない、ここまで期待されてはやらない方が酷だろう。なに、パイプオルガンなら昔少しだけ演奏したことがあるので問題ない。ちょっと思い出す時間さえ貰えればなんとかなるだろう。いや、この笑顔の為にして見せよう。
俺は椅子に座り、パイプオルガンに向き合った。
◇◆◇◆◇◆
ケイトが目を醒ました理由は、耳を撫でる心地好い音楽に気がついたからであった。
「ここは……」
身体を起こすとそう呟いて辺りを見回す。フェンリルとは違い、年期の入った石造りの部屋だということがわかる。自身はベッドに寝かされていたということも理解した。
そして、自身の状況を思い出し、腕輪を見つめた。
「私は――」
そこには気を失う前と同じように破損した状態の腕輪があった。しかし、何故か偏食因子もオラクル細胞も活動を完全に休止しており、身体を見回すが自身がアラガミになったような様子も箇所もない。
「まだ、人間みたいね?」
逆にケイトはそのことを疑問に思いながらベッドから出た。そして、部屋のドアノブに手を掛けて開けると――。
『………………』
ドアの前に立ち、無機質な瞳でケイトを見つめたオボツカグラと目があった。
「………………」
『………………』
流石に面を食らって黙るケイト。しかし、そんなケイトにもオボツカグラは感情を示すことなく、見つめるばかりである。
しかし、そんな時間を終わらせた存在もまたオボツカグラであった。オボツカグラは片手の人差し指を立てると水平に手を上げて指し示した。
その意図を読み取ったケイトは言葉を吐く。
「行けってこと……?」
そういうとオボツカグラは小さく頷く。そして、それだけをすると再び直立不動に戻った。
「そう……」
ケイトは神機すらない状態で逆らっても仕方がないと考え、指で示した方向に歩き出した。すると背後から足音が聞こえる。
ケイトが振り向くと、そこにはケイトの斜め後ろに付くように移動しているオボツカグラがいた。
「ああ、監視役ってわけね……」
無論、オボツカグラはそれに答えない。ヤレヤレと首を振ったケイトは目的の方向に身体を戻し、足を進めた。
◆◇◆◇◆◇
示された方向に進んで行くと徐々に音楽が強まり、途中からそれがパイプオルガンによる演奏だとケイトは気づく。それとここはどうやらアラガミの出現以前に造られた宗教施設だということも景色から理解した。
「随分、優しい音色ね……」
ケイトは音楽についてそう評価し、言葉を漏らした。また、恐らくはと演奏者に当たりをつけ、なんとも言えぬ表情をする。
そして、ケイトが聖堂で見た光景は――。
ニライカナイがパイプオルガンをゆったりとした動作で弾き鳴らしている姿であった。
ニライカナイはケイトには気づいていないのか、そのまま演奏を続けており、それは曲が終わるまで続き、ケイトは声を掛けることもなくただ見聞きしていた。
『"
演奏を終えるとニライカナイはぽつりと呟いた。その声は女性のようだが、機械混じりであり、彼女が明らかに人ではないことを示している。
『私ノ一番オ気ニ入リノ宗教音楽ネ』
ニライカナイはパイプオルガンの前に置かれた椅子から立ち、ケイトに身体を向けた。アラガミでありながら、全くその様子の見えないニライカナイにケイトは内心冷や汗を流していた。
『演奏ガ終ワルマデ待ッテテクレタノハ嬉シイケレド、別ニ声ヲカケテモヨカッタノヨ?』
「そう、随分高尚な趣味みたいだし、止めちゃ悪いと思ってたわ。今度はそうするわね」
ケイトがそう軽口を叩くと、ニライカナイは口元に手を当ててクスクスと笑い、更に口を開いた。
『ソンナニ高尚デモナイワ、宗教ッテイウモノハ元々人間ガ心ノ支エニスル為ノモノダカラネ。人間全テニ向ケタヨウナ優シイモノヨ』
そして、ニライカナイは楽しげに顔を歪めながら更に呟く。
『尤モ、ソノ優シサハ"アラガミ"ノ前ニハ何ノ価値モナカッタヨウダケドネ。神様ハミンナ、アラガミバレットヲ眉間ニブチコマレテクタバッタノヨ』
(これは……データ以上に知性的で凶悪ね……)
皮肉なのか、実際にそう考えているのか。言葉は発すれど理解は出来ない。災厄のアラガミや言葉を用いるアラガミとは聞いていたが、ニライカナイは既存のアラガミと比べ遥かに恐ろしいアラガミだとケイトは判断した。
『ソレデ、沢山聞キタイ事ガアルンジャナイカシラ?』
ニライカナイは近くの長椅子に腰掛け、ケイトに近くに座るように促した。
『アア、私ノ半身ハ外デ警備シテイルカラ安心シテイイワヨ』
赤いカリギュラを蹴りの一撃で結合崩壊させた奴が何を言っているとケイトは思った。まあ、半分は武装を解除していると好意的に考え、ケイトは促されたままニライカナイとほとんど間を開けず、真横に座った。
『………………近クナイ?』
「あっ、そうだったかしら」
ニライカナイは一瞬真顔になって肌が触れそうな距離に座ったケイトを見ながらそう呟いていた。そういえば最近は見知った存在としか接していなかったため、自然とそのように接してしまったことに気付き、ケイトはひとり分程間を開けようとし――。
『アア、イヤ別ニ離レロッテ言ッテイルンジャナイノヨ。タダ、少シ驚イタダケデ――』
(あら…………んん?)
ケイトは何故か少し引いたニライカナイの対応により、ある疑問が浮かんだ。そして、もしそうならと考え、やってみるかどうかと考える。
そして、元々死んだような状態のため、ケイトは思い切って実行に移してみることにし――。
「えいっ」
『チョッ――!?』
ケイトはニライカナイに抱き着いてみた。
案の定、ニライカナイは顔を赤くして口をパクパクしている。どちらかと言えばギルみたいな反応だったなと思いながら、ケイトはにっこりと笑いながら言った。
「あなた、"キャラ作ってる"でしょ?」
グラスゴー支部の女傑、ケイト・ロウリー。他者の気持ちを理解でき、理解しようとするからこそ彼女は慕われているのである。
◇◆◇◆◇◆
ケイトさんにバレちゃったアルダノーヴァな戦艦水鬼ちゃんこと俺である。
ちなみにアヤメちゃんはケイトさんから見えないところの長椅子で寝ている。音楽が心地好かったようだ。
「なんでキャラなんか作ってたのさ?」
『イヤ……ソノ……』
「ふふ、急に縮こまっちゃって可愛いなあ」
なんだこの人凄いグイグイ来る。現在、肩に手を回され、ガッチリと掴まれており、逃げようがない。女性特有のいい匂いがスゴい。女性経験は乏しいというほどでもないが、それにしてもここまでの人は早々いない。
よくこんな女性落としたな……スゲーよハルオミさん……。
そんなこと言っている場合ではない。緊急事態である。このままでは根掘り葉掘り聞かれて素直になんでもかんでも喋ってしまうかも知れない。ケイトさんにはなんかこうなんでも話したくなるような魔力があるのである。
考えろ俺。戦艦水鬼でアルダノーヴァな俺の像は崩れても、まだ瑞木フォウ姉ちゃんが残っている! というかそちら以外の内容を語ると流石にヤバい。
『エート……ダッテ私ハアラガミダケド"神機"デモアルカラ……』
「神機……?」
俺はⅣと刻まれた首のナンバープレートをケイトさんに恭しく見せた。言葉とそれにケイトさんは目を丸くする。
『私ハ"アルダノーヴァ プロトタイプ Ⅳ号機"。人間ガ作ッタ人造アラガミ……神機ト似タヨウナモノダ』
その後、俺は終末捕食と、エイジス計画の裏にあったアーク計画。そして、アルダノーヴァはエイジス計画を破綻させた謎のアラガミなどではなく、アーク計画の中で製造されたアラガミだということ。ぶっちゃけ、この世界で目を醒ましてから得られたであろう情報を全て吐いた。
ごめんなさい、シックザール前支部長。当事者兼部外者だから超許して。 あなたに席は無くても、俺は一刻も早くこの席を離れたいんです。
「何それ……まさかまだあなたが死傷者をひとりも出していない理由って――」
『神機ガ
実際、この辺りは俺の本心である。この身体は100%アラガミなため、既に人類の敵であるということは受け入れており、自分から友好を結ぶようなことは基本的にしたくない。
仮に結局、本部の指令で俺が討伐されることになってみろ。苦しむのは俺じゃない。俺と友好を結んだような心優しい者たちだろう。
だったら最初から言葉は話すが対話は望めない人類の敵でいい。そちらの方がゴッドイーターが、一切の躊躇なく俺を殺すことに専念できるハズだ。そして、俺は"人間"だ。殺人は決してしない。それでいいんだ。
ケイトさんも残酷なアラガミの暇潰しに2年程付き合わされ、最後に奇跡的に生き残ったゴッドイーターという筋書きが最もよいと考えていた。アヤメちゃんはもう少し彼女の心を説きほぐせたら極東支部にでも置いてこようと思っていた。まあ、無論、この本心はケイトさんには語らないがな。
「"カナ"ちゃん……ッ!」
カナちゃんってなんだよ。結果的に距離が更に縮まってしまい、ケイトさんに抱き締められ、胸に顔を埋めるハメになった。ケイトさんの胸に俺の角が刺さらないか心配である。
「だめぇぇぇぇ!!」
すると突然聞き慣れた少女の大声――アヤメの慟哭が響いた。
その直後、アヤメが俺とケイトを引き剥がし、壊れそうなモノを抱くように震えながら俺に抱き着いた。
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしているケイトはぽつりと呟いた。
「子供……?」
すると次の瞬間、アヤメは俺から顔を上げてケイトを睨み付け口を開く。
「"また"……私からとらないでッ!」
涙と共にその目に浮かぶ恐怖と憎悪は、ケイトにではなく、壊れかけの赤い腕輪と、服に付いたフェンリルの紋章に注がれているように見えた。
◆◇◆◇◆◇
ケイトが、ニライカナイを問い詰めてから一時間程経った頃。疲れ果ててベッドで眠っている少女の横で疲れたような表情をしているアラガミ――ニライカナイがいた。
エイジス島、アーク計画、アルダノーヴァの正体。ケイトはとんでもないフェンリルの闇を、アルダノーヴァのプロトタイプから直接聞くという稀有な体験をし、彼女に対する偏見も蟠りも完全に消えていた。それが彼女の長所である。
『ゴメンナサイネ、悪気ハ全ク無イノヨ』
「いいわ、それよりこの娘はどうしたの……?」
ケイトはニライカナイに少女――アヤメについて問い掛けた。するとニライカナイは数秒何かを考えてから口を開いた。
『アナタニハ関係ノ無イ事ヨ……ソレヨリ出来レバ彼女ノ前デアマリ私ニベタベタシナイ方ガイイ。アナタガイルダケナラ彼女モワカッテクレテタカ――』
「関係無くないわよ」
ケイトはニライカナイの言葉を遮り、話を続けた。
「目の前でこの娘がこんな状態なのに放っておけって言うの?」
『ソウダ、精神ノ治療ニハ休息ト睡眠ト食事、ソレト適度ナ余暇活動ガ必要ダ。時間ヲ掛ケテユックリト――』
「ダメよ」
『………………』
ケイトに言葉を止められ、ニライカナイは押し黙る。そしてまた口を開く。
『アナタハ自分自身ノ身体ノ心配ヲシタ方ガイイ。今ノアナタハアクマデモ――』
「あなたが感応能力で私の中のオラクル細胞と偏食因子を支配して、無理矢理休止させているから私は生きているんでしょう? 違う?」
『…………イヤ、ソウダガ……何故……』
ニライカナイはケイトのオラクル細胞と、偏食因子を支配下に置くことで無理矢理アラガミ化を抑え、生かすということをしていたのである。それ故にオラクル細胞を利用して動いている腕輪の機能も全て停止しており、位置情報の取得すら不可能な状態だ。
「アラガミの感応種なら理論上は可能だもの。あなたぐらい優しいアラガミなら、きっとそうすると思ったの」
『…………敵ワナイナァ』
ニライカナイは溜め息を吐きながら前髪を捲し上げ、頭を掻いた。その姿は諦めというより、降参といった様子である。
「私なんて今はどうだっていいわ。それより彼女のことを教えてくれないかしら?」
『早死ニスルワケダ』
「……言うわねえ、あなたも」
『オ互イ様ダロウ』
徐々にケイトはニライカナイのメッキが剥がれてきていることを感じ、それを嬉しく思った。しかし、それだけで止まる彼女ではないことは最早明白である。
ニライカナイはこれまでケイトが見た中で、ずっと自然で人間染みた薄笑いを浮かべてから、真顔に戻り、重い口を開ける。
『結論カラ言オウ。彼女カラ直接聞ケタワケデハナイガ、恐ラク――』
ニライカナイは一旦言葉を止め、一冊の黒く擦りきれて汚れた手帳を取り出すと、溜め息を吐いてまた言葉を紡いだ。
『彼女ノ父親ハ、彼女ノ目ノ前デ
Q:なんでこの主人公結構なんでも知ってたりパイプオルガンまで弾けるん?
A:ホモは博学