荒ぶる神な戦艦水鬼さん   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。

今まで毎日投稿ですが、今日はFGOの姫路城イベントが最終日で、ずっと余暇時間を小説の時間に当てていたため、まだ終わってないので明日は投稿出来ないかもしれないという事を先に言っておきます。

ちなみにここまで一度もアヤメちゃんの容姿を語らなかったのは仕様です……。後、諸事情で前話のアヤメちゃんのサバイバル年数が2→3、年齢が13→14歳になりました。超ゆるして。





中に誰もいませんよ

 

 

 

 ケイトさんの妊娠発覚の翌日、俺はアヤメちゃんとケイトさんを連れ、早くもロンドンから旅立とうとしていた。

 

 行き先は無論、極東支部の対人間用だいたい何とかしてくれる人(デウス・エクス・マキナ)、ペイラー・榊博士の元だ。ケイトさんによると既に支部長らしいので尚更好都合。

 

 ちなみに対アラガミ用は無論、GOD EATER無印の主人公である。

 

 極東支部には来たときとは違い、海路は最小限にし、陸路で行くことになるため、かなりの期間が掛かることが予想される。海路を使わない理由としては、そもそもアルダノーヴァは海上を航行するような設計が成されていないため、航行中に操縦席の人間をとてつもなく揺らすのである。

 

「い、いやー、そんなに深刻に捉えてくれなくても……」

 

 ちなみにケイトさんは俺の男性体の操縦席にアヤメちゃんと共に入りつつ話している。男性体の中は俺の体内でもあるため、声を発するとすぐに届くのだ。また、操縦席内にあるスピーカーから声を届けることも可能。

 

『ケイト、妊娠周期ヲ答エテミロ』

 

 俺は全く深刻に考えていない様子のケイトさんに問い掛けた。少し意地悪にしなければならない。

 

「え? えーと……40週ぐらい?」

 

『セメテ十月十日ト答エテ欲シカッタナ』

 

 WHOでは満280日、妊娠0日から妊娠42週程度の期間だ。ちなみに最終月経開始日を0日目と考え、0~6日目が妊娠0週、妊娠7~13日目は妊娠1週と数える。

 

 もっと詳細に答えれば妊娠初期は妊娠0週0日から妊娠15週6日。妊娠中期は妊娠16週0日から妊娠27週6日。妊娠後期は28週0日から39週6日だ。

 

 ついでに言っておくと流産は21週6日まで。早産は22週0日から。正期産は37週0日から41週6日まででそれ以上の42週0日からは過期産となる。

 

『チナミニココデノ流産ヤ早産ハ別ニ死産トイウ意味デハナク、只ノ期間ダ。低出生体重児デハアルガナ』

 

「そ、そうなんだ……」

 

『諸説アルガ、流産ハ約20%、早産ハ約5%で起コル。要ハ合ワセテ4分ノ1ノ確率デ起コリ得ルンダ』

 

「………………」

 

 まあ、死亡するという意味での稽留流産は15%程だが、そちらを語る程野暮ではない。

 

『ソウナッタラコンナ文明ノ力ノ無イ場所デ低出生体重児ヲ生カセル確証ハドコニモ無イ。ソモソモ自力呼吸可能ニナルノハ34週カラナノデ完全ニ手ノ施シヨウモ無イ。私ハ、医者デモ助産婦デモ人間デモナク、只ノアラガミダカラナ』

 

「…………はい」

 

 早産で新生児が基本的に助かるのは、現在の医療技術があってこそだ。それがなければどうなるかなどわかり切っている。

 

 また、流産は12週未満の早期流産と、22週未満の後期流産に分けられ、80%は早期流産である。子宮にまつわるものや、妊娠時高血圧症候群、感染症、糖尿病や心臓病の合併症、羊水過多など早産の原因など考えても切りがない。まあ、俺が常に母体の状態を観察出来るからある程度は問題ないがな。今のところは胎児は安定しており、染色体異常も見られない。

 

『ソレニ予定通リニ産ムコトガ可能デモ、29週マデハ後遺症ノリスクモ高ク、母体ヲ危険ニ晒スコトハ、胎児ノリスクニ直結スルンダ』

 

 原因など幾らでもあるが、疾患の発病率は出生前で20%、周産期で70%、出生後で10%程だと言われている。当たり前だが、既に周産期に入ったケイトさんは一番大切な時期なのである。

 

『次ハ周産期ガ何カヲ言ッテミロ』

 

「えーと……」

 

 ケイトさんは言葉に詰まり、舌先を出しながら笑顔でテレテレと頭を掻き始めた。こっちの心臓(コア)が高鳴るぐらい綺麗で可愛いが流されないぞ。

 

 周産期とは合併症妊娠や分娩時の新生児仮死など、母体・胎児や新生児の生命に関わる事態が発生する可能性が高くなる期間のことである。

 

 広義では妊娠してから生後4週までの期間。狭義ではICD-10に則ると妊娠22週から生後7日未満である。周産期医学や周産期医療というものもあり、それがどれほど重要かもわかるであろう。

 

『ソレカラ――』

 

「カナちゃん、カナちゃん」

 

 ケイトさんは俺の言葉を遮って笑顔で語り掛けてきた。なんだ、ケイトさんの為に言っているのだから何を言っても騙されんぞ。

 

「不安でゲロ吐きそう」

 

 そう言われてみれば笑顔のケイトさんはぷるぷる震えており、顔の血の気が少し引いているように見えた。

 

 …………………………。

 ……………………。

 ………………。

 …………。

 ……ファッ!?

 

『チ、違ウノヨ……! 別ニ不安ニシタカッタトカソウ言ウ意図ハ全然ナクテケイトノ為ヲ思ッテノコトデ妊婦ナンダカラ知ッテイテ欲シイダケデソンツモリハ――!』

 

(こんなので釣れるんだからやっぱりカナちゃん可愛いわよねぇ……)

 

 この後、早口で無茶苦茶励ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、まずグレート・ブリテン島からユーラシア大陸の本土に戻るため、最も海峡の狭い海岸沿いに来たのだが、ここに来て全く考えていなかった問題が発生した。

 

『オ前ラ、海越エレルノカ……?』

 

『………………』

『………………』

『………………』

 

 当然ながらテスカトリポカ達から返答はない。

 

 現在、俺がテスカトリポカの背中に乗って移動しているため、ここで居なくなるのは結構な痛手である。非常に速いときのママチャリぐらいの速度なため、あまり早い足ではないのだが、24時間ぶっ通しで動き続けてくれるため、重宝しているのだ。

 

 というか、グレート・ブリテン島に3体のテスカトリポカを残しておくのは幾らなんでも鬼畜過ぎると思う。

 

 このままではテスカトリポカ達は、MGSPW(メタルギアソリッド ピースウォーカー)のピースウォーカーの最期みたいになってしまうと考えていると、いつも先頭を歩くテスカトリポカが意を決して入水したのである。

 

 全俺が頭の中で17歳教の人(ザ・ボスの中の人)が歌うカーペンターズのSingを流していると、その時不思議な事が起こった――。

 

 

 

 テスカトリポカがあの質量で俺のように水面に立っていたのである。

 

 

 まあ、俺と同様に戦艦棲姫(オボツカグラ)ちゃん達も水面に立つので、作るときのオラクル細胞をそのまま与えたテスカトリポカ達が出来ても何もおかしくはないのだが、全くの予想外であった。

 

 これにはテスカトリポカ達もゲームでよく踏まれた垂直跳びをして喜びを露にしていた。3体のテスカトリポカが交互にぴょんぴょんする姿はシュールである。

 

 アヤメちゃんは目を輝かせ、ケイトさんは苦虫を噛み潰したような笑みで見ていたが、そういうものなので仕方あるまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イギリスからユーラシア大陸の本土に入り、最短距離を突っ切って極東に行こうと考えていたのだが、その認識はあまりに甘かった。

 

 まず、インフラがとっくの昔に壊滅しているため、道なき道を進み続ける必要があり、幾らテスカトリポカと言えど容易ではなかったのである。いや、むしろメタルギアでいうメタルギアみたいな機械のテスカトリポカの背に乗っていたため、随分楽だったのかもしれない。二人を男性体に乗せて俺一人でユーラシア大陸を横断するというのはちょっと考えたくないレベルであった。

 

 次に腹が立つぐらいの頻度で起こるアラガミたちの襲撃である。

 

 グボロ・グボロがボルグ・カムランを捕食したりなど、アラガミ同士でも弱肉強食なアラガミであるが、俺が人間を積んでいるためか、容姿のせいか、単純に挑みたいのかは知らないが、それはそれはとてつもない頻度で襲われるのだ。海路がどれほど安全だったのか身に染みたというものだ。

 

 無論、俺自身の砲撃と、テスカトリポカ達のトマホークミサイルによる絨毯爆撃により数に関係なく簡単に爆殺出来るが、その度にイチイチ足が止まり、倒した後ももったいないので、テスカトリポカのコア捕食(おやつ)タイムになるので地味に時間が掛かる。

 

 ちなみにアラガミ対アラガミの光景を、男性体のモニター越しに見るケイトさんは、野球中継をテレビで見るオッサンのような反応で応援しており、なんとも言えない気分になった。

 

 そして、ぶち当たった壁は、ユーラシア大陸をヨーロッパとアジアに分ける境界線の北側を形成しているウラル山脈であった。

 

 最初はどうにか山越えをしようとしたのだが、海路では全く問題なかったテスカトリポカ達が倒れたのである。正確には一回キャタピラがぶっ壊れたのだ。ノシノシ歩くから忘れるが、基本的に歩行かキャタピラ走行で明らかに足場悪いとこ問題ありそうだもんなお前ら。

 

 足が潰されたとなれば今後の移動に影響が出るので、その辺のアラガミでテスカトリポカのキャタピラを治しつつ断念。その時はウラル山脈の中央にいたので、南側か北側に抜けるか考えたとき、南に行くとすぐにテンシャン山脈や、アルタイ山脈や、クンルン山脈、そして世界最高峰のヒマラヤ山脈がお目見えすることになり、どうせ迂回するはめになるのは目に見えていたため、北側からのルートを取った。

 

 そして、ここで再び問題が発生。

 

 冬のロシアという極寒の気候に耐えきれず、テスカトリポカ達がまた破損したのである。今度は全身に人間で言うところのあかぎれのような裂傷が大量に出来て、動きもかなり悪くなりだした。

 

 そういえばわざわざ寒冷地仕様のクアドリガ堕天が存在する意味をここで思い知らされた。気づくかそんなもん。

 

 テスカトリポカ達はぶっ壊れながらでもアラガミや建材を捕食して修復しつつ進もうとしていたが、アヤメちゃんが泣きそうなのでケイトさんと相談して止め、ウラル山脈中央に引き返して南方ルートに戻り、ヒマラヤ山脈らを迂回する道を選んだ。

 

 総合すると山脈の話だけで1ヶ月以上のタイムロスである。

 

 まあ、それまでの食い物に関しては、食品表記上付けねばならないだけで賞味期限が実質存在しない缶詰を中心に廃墟で集めたり、適当な支部の目の前に一体のテスカトリポカを物資搬入口付近でウロウロさせ、業を煮やしたゴッドイーターらが対処や様子見に出てきたところで俺と戦艦棲姫が現れ、レーションと俺のおやつのOアンプルを奪うという作業を繰り返しているため、特に困ることはない。ケイトさんが絶妙な半笑いをしていたが、生きるために致し方なし。

 

 そんなこんなで、元中華人民共和国の目印として未だに残り、アラガミが移動に使う時に重宝しているように見えた万里の長城を丁度越えた程の場所にいた。始皇帝もこうなるとは思うまい。

 

 グレート・ブリテン島を出てから中国まで期間にすると約5ヶ月。掛かり過ぎなレベルであったが、なんとか無事辿り着くことが出来た。まあ、走り続けたのは主にテスカトリポカ達なのだがな。

 

 これまでで変わった事をあげるならば一番はやはり、アヤメちゃんだろう。

 

「フォウ姉ちゃん大丈夫? 無理してない?」

 

 なんというか随分色々と逞しくなった。

 

 精神面の方はまるで小さなケイトさんとでも言うべき程に強くなり、心なしか性格まで似てきたと感じる。無論、とっくの昔からケイトさんのことは慕っている様子だ。

 

 誰に似たんだかとケイトさんに言葉を投げる度に、ケイトさんはカナちゃんでしょと繰り返して来るので、いやケイトさんだろと返す日々が続く程度にはよく似ていると思う。本当にケイトさんの背中をよく見て育ったんだろうなあ。

 

 次に身体面に関しては、例えるのが難しいが、金田一少年の事件簿の岩窟王事件の犯人のような状態であろうか。これまでの成長の遅れを取り返すかの如く短期間で成長を遂げているのである。

 

 手帳の誕生日から逆算すると早生まれで今は15歳のアヤメちゃんは、年相応どころか栄養を与え過ぎたのかちょっと大人びて見えるほどである。

 

 そこそこの背の高さで、とてもよく身体が引き締まり、出るところは出ているという理想的なゴッドイーターみたいな身体をしている。最早、幼女とは呼べない悲しみもあるが、ノーブラで動く度に揺れる双丘をケイトさんとチラミする楽しみが増えたため、どっこいどっこいというところだろうか。

 

 今では"発色がよく艶のある茶髪をサイドポニーテール"に結んだりと、おしゃれにも興味が出て来たらしく、大変可愛らしい。

 

 そんなこんなで総合的には順調な旅路で終わるんだなと考えていた矢先。それは起こった。

 

 

 

 

 

「う"ぅ……」

 

『ケイト!?』

 

「ケイトさん!?」

 

 中国大陸を抜ければ極東支部というところで、ケイトさんに陣痛が起き始めたのだ。

 

 あまりに早い、期間にすれば早産。通常の医療施設であればNICUに入れば助かったが、ここではそんなものが望める訳もない。まだ、呼吸が出来ない胎児を救う方法などあるはずもなかった。

 

 絶望的な状況であった。赤いカリギュラにぶん殴られたせいや、ゴッドイーターで身体を酷使し過ぎたせい等と理由なら幾らでも思い浮かぶが、全て後の祭りだ。

 

「大丈夫よ……なんとかなる……するわ」

 

 ケイトさんならば本当に1ヶ月ぐらい痛みに耐え、胎児を留めておきそうだが、そんな力業をされたら母体も胎児も無事ではすまない。

 

 俺は考えた、考えに考えた。何度も頭の中で否定し、考え抜いた末に俺の倫理観と最後のプライドを踏み倒し――。

 

 

 

 これだけは色々な意味で絶対に使いたくなかった"赤子の命を繋ぐための最終手段"に手を出すことにした。

 

 

 

『ケイト……聞イテ』

 

「なに……?」

 

 俺はケイトさんにその方法を耳打ちした。説明を続ける度にケイトさんの表情は驚きと唖然に染まる。そして、ポツリと呟かれる。

 

「正気……?」

 

『正気モ正気ダ』

 

 だったら出来ることはなんだって全てしてやる。それが俺のポリシーだ。

 

「違うわ……自分を大切にしなさい! それであなたは本当にいいの!?」

 

 まさか、拒否ではなく、俺の心配をされるとは思っていなかったのでこちらが面食らう。本当に優しい女性だ。しかし、その答えは当に決まっていた。

 

『ココマデ来テ死ナセルナド、私ハ絶対ニ認メ無イ。認メタクナイ』

 

「…………カナ」

 

『コンナ"アラガミ"ニ任セルノハ嫌ダト思ウガ――』

 

「カナ」

 

 ケイトさんは俺の声を遮った。

 

 そして、一度目を瞑ってから優しい笑顔を作ると目を見開き、丸みを帯びた自身の腹部を撫でてから口を開いた。

 

「いいわ、やって。あなたなら私は大歓迎だし、この子もきっと本望よ」

 

 それを聞いて何より俺自身が一番安心した。赤子への高いリスクだけではなく、拒絶されるのが怖くて最小限にしていたという理由も少なからずあったからだ。

 

『アア、ソウシヨウ……安心シテイイ。帝王切開ハ無理ダガ、通常出産ナラ問題無イ。細カイ事ハオラクル細胞デ何トカスルカラ、必ズ産マセル』

 

 病院の無い山奥の村などで助産師を手伝った経験ならば何度かあるため、きっとなんとかなるだろう。いや、必ずなんとしてやる。

 

「本当に似た者同士ね、私たち」

 

『ソウダナ……』

 

 そんな他愛もない話をして、俺はアヤメに手伝わせながら出産の準備を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 期間にして約6ヶ月。遂に視認できる距離にフェンリル極東支部があった。

 

 望遠鏡などを使わなくても俺は艦船なためか、遠い距離を認識出来るので、台形に削れた岩山から人の様子を眺めることが出来る。

 

 それを見ながら俺はレーションを開けると"人間が食べる中身を摂取"し、容器である金属の缶を捨てた。

 

 するとアヤメちゃんが寄ってきて、少し不安そうな表情で口を開く。

 

「フォウお姉ちゃん、少しやつれた?」

 

『1ヶ月、人間ノ食ベ物シカ食ベテイナイカラネ』

 

 まあ、問題あるまい。この程度でどうにかなるような柔な身体ではない。この時ばかりはアルダノーヴァと戦艦水鬼の強靭極まりない身体に感謝した。

 

「本当に無茶苦茶ね」

 アヤメちゃんの反対側に立ったケイトさんはそう呟く。そのお腹は引っ込んでおり、妊婦だった様子は既に無い。

 

 ケイトさんは笑顔のままそっと手を伸ばし――。

 

 

 

 

 

 俺の"膨らんだ下腹部"を撫でた。

 

 

 

 

 

 そう、ケイトさんの赤子はあの時、ケイトさんから俺の胎内に移したのだ。オラクル細胞で即座に身体の様々なものを変化・形成出来るアラガミにしか不可能な荒業である。

 

 無論、こんなもの胎児がどうなるか最早、予想も出来ない上、その……俺の倫理的にも最終手段だったわけだ……うん……今でもその……凄く……複雑な気分です……はい。

 

 その後は細心の注意を払い、読み取った情報から極限までケイトさんの胎内に似せた環境をオラクル細胞で再現し、栄養の方は全て体外から摂取したものを利用して賄っている。無論、アラガミが食べるものは一切禁止だ。何が起こるかわかったものではない。

 

 膨らんだ腹を俺も撫でてみると、オラクル細胞で認識する必要もなく、命が宿っていることがわかる。時々動いており、その度になんだかとても幸せというか、愛しい気分になってしまうのは母性本能という奴なのだろうか。

 

『ン……』

 

 すると、ケイトさんがお腹を触りながら俺の胸やお尻にも触れ始めたので、変な声が出てしまった。

 

「それにしてもアレね。随分、母親って感じの身体つきになったわね」

 

『……ソウダナ』

 

 赤子がいるためか、俺の身体のオラクル細胞は無意識のうちに変化し、容姿を微妙に変えていた。具体的に言えば胸やお尻が少し大きくなり、前のように多少痩せ過ぎなぐらい細身な身体ではなく、若干全体的に肉付きの良い身体になったのである。

 

 無駄なところに本気出しやがって俺の身体……この様子だとそのうち母乳とかも出るようになりそうだな……。

 

「いやー、自分の時は何とも思わなかったけど――」

 

 ケイトさんは頭から爪先まで俺の身体を眺めてから片手の親指を立てて笑顔で口を開いた。

 

「スゴいえっちいわね、妊婦さんのカナちゃん」

 

『ケイト……』

 

「ケイトさん……」

 

 色々台無しだよこの人は……やはりケイトさんはなんというか、ハルオミさんの嫁なんだなと思いつつ、極東支部の空を眺めた。

 

 やっぱり寺院で見るのと大差無いな。

 

「それで極東支部にはどうやって潜り込むの?」

 

「いや、アヤメちゃん"アレ"使うって言ってたじゃない」

 

「あ……やっぱり本気なんだ……」

 

 なんだか物凄いアレなモノを見る目で見てくるアヤメちゃん。ケイトさんよりも常識人なのがポイントである。しかし、常識に囚われているようではまだまだ。

 

『大丈夫、絶対上手ク行クワ』

 

 はっきり言って全く確証はないが、それでも自信を持ってそう言えた。というか、これは最早、運命とかそういうレベルである。

 

 俺が振り向くと、釣られて二人も振り向く。そして背後に居た俺の男性体の手にはグラスゴーにいる時に拾って以来、密かに操縦席に収納し、座布団代わりになっていた"ソレ"がお姫様抱っこで抱えられている――。

 

 

 

 

 

 "紫色と灰色をメインカラーとした、継ぎ接ぎだらけのパンキッシュなウサギの着ぐるみ"である。

 

 右腕のでっかい腕輪もなぜか近くに落ちていたので、世界がきっと俺にそうしろと求めているのだろう。中は結構ゆったりしているので妊婦でも着ぐるみに入れるしな。

 

 そう、この世界では俺が……俺こそが――。

 

 

 

 "キグルミ"の正体(中の人)だ……。

 

 

 

 

 

 






 感想欄で生まれた赤ちゃん瑞木さんのオラクル細胞のせいで大変なことになるのでは等と予想していた読者様方。安心してください、見ての通り、もう気にならないぐらい展開はもっと酷いですよ!



~この世界線のキグルミさん~

刀身:ヴァリアントサイズ
銃身:ブラスト
装甲:タワーシールド

パーソナルアビリティー:
・ニライカナイ
・裏方
・影の実力者
・トリガーハッピー

ブラットアーツ:
・デッドヴィーダーⅣ(飛行種は神削ぎⅣに自動変更)

リンクサポート:
・主人公と同じ

ニライカナイ

体力:Lv6
オラクル:LV10
被ダメージカット:Lv4
耐久値上昇:Lv3
オラクル:LV10
乱戦時防御力:Lv10
近接特殊攻撃威力:Lv10
スタミナ自動回復:Lv10
駆除技術:Lv10
近接火属性追加:Lv2
銃身火属性追加:Lv2
近接神属性追加:Lv2
銃身神属性追加:Lv2
奉仕の心:Lv10


Q:なんでヴァリアントサイズ?
A:カマ野郎だから

Q:作者医学系の人間なん?
A:ただのホモだよ!


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