儂の生涯は…大半が、あの世界で生きてきた。
日本…いや、儂がいた世界では無い物ばかりの世界。
魔法
魔物
他には、獣人とかだったかの。
儂は日本が好きじゃあ。
だけどあっちも好きじゃあ。
一期一会。
時一瞬事一生の人生。
生きてる中…何が起きるか、誰も知らんじゃろ?
それが楽しいんじゃ。
さぁ、皆も楽しもう!
悔いが無いようにな。
日記の最後には何か書かれていた。
『十 一二日記 未知の世界で』
西暦2019年…平和な世界である日本で生まれ、少し変わっている家系である一家で僕は普通な日常を過ごしていた。
そんな中で僕の家族で、変わった人がいる。
それはお爺ちゃんだ。
大正12年で2月22日生まれ、もう少しで100歳近い人なのだ。 90歳代だけでも凄いなのに、変わっているのは長生きしているだけでは無いのだ。
それは、歳相応な…姿をしていないのだ。
とても100歳近い老人には見えず、知らない人がお爺ちゃんを見たら30代ぐらいの姿。
僕が物心がついた時にお爺ちゃんを見た時は、親戚の叔父さんだと思ったほどに。 今の僕は中学一年生で、夏休みが始まって母親の田舎である北海道に来ていた。
「坊、今日はどうする?」
居間に座るお爺ちゃんは、胡座をかきながら僕に話しかける。 色々と物知りなお爺ちゃんであって、可愛がってくれて優しくしてくれるから僕は大好きなのだ。
「一二(かずじ)お爺ちゃん、僕…話が聞きたいな」
一二お爺ちゃんは不思議な話を持っている。 僕の家系である十(つなし)家は、ある一族の如月家の分家にあたる。
その為に…如月家には不思議な体質を持って生まれるのが普通らしい。
そんな如月家の分家である十家にも、薄くはなっているらしいけど血が…まだ健在しているのだ。
それが影響されているのか、お爺ちゃんは若々しい。
そして、お爺ちゃんは…2つの歴史を生き延びている。
それは、『日中戦争』と『太平洋戦争』だ。
僕も学校の授業ではある程度知ってはいるけど、それを生き抜いているのだ。
「…ふむ、坊が言うなら誰も信じようとしなかった話をしよう。 お前も儂を信じなくても構わん。
だが、儂は今でも昨日のように覚えとる。
この世界とは違った世界の話を」
お爺ちゃんは、僕の家族内では変わり者として扱われていた。 だけどお爺ちゃん子のもあって、僕は普通に接している。
「ううん、僕はお爺ちゃんを信じるよ。 だって嘘つくなんて思えないもん」
「よかろう、では話そう。 儂が実際あった事を」
晴天の中、北海道の為に暑すぎない部屋の中で向かい合わせでお爺ちゃんは語っていく。
★★★★★★
1945年8月6日、歳が23になった儂は広島に用があって町を歩いていた。 朝飯の握り飯を食いながら、広島県立商品陳列所の横を歩いていた。 最後の一口を食べようとした瞬間、目の前が真っ白に爆音が発生すると儂は意識が途切れたのだ。
気がつき目を開くと…目の前は木製の天井だった。 身体を起こして周りを見回すと、知らない部屋で儂は一人だった。
「はて…ここは。 儂は確か広島にいた筈」
ガチャッ
独り言を漏らす中、突如扉が開かれ人が入ってきた。 入室したのは男で、前に見た米国人と似ていて髪は金に輝いていた。
顔つきは日本人と違い鼻は高く、目は蒼く頬も出ていない。 服装は、良い布を使っているのか見栄えが良かった。 やはり米国の者かと儂は思った。 噂では、あっちの者は裕福な生活をしていると聞いていたからだ。
だが、不思議に思ったのだ。 儂のような日本人を作りの良い部屋に招きいれているのだから。
『今』は日本人と米国人で太平洋戦争を行い、殺し合っている筈だ。 敵対する人間を檻や拘束もしていない事に儂は混乱していた。
入室した米国人だと思われる者を警戒しながら見ていると、奴さんは笑顔で話しかけてきた。
「&&÷¥°>○*☆→。 +×〒〆々々〒〆」
「…はっ?」
余りにも聞いた事が無い言葉に驚いた儂。 米国人が使う『英語』は、知人が米国人の翻訳する為に覚えた為に儂にも少しは教えてもらった。
…しかし、今奴さんが喋った言葉は確実に『英語』では無かった。
「〆^|\・÷+×=€$〜/^#°%?」
日本語は46のひらがなを1つ1つを繋げて言葉にして言語となっている。
だが、英語は単語単語を繋げて言葉にしていると聞いている。
奴(やっこ)さんのは…呪詛のようなお経に近い感じなのだ。
反応が出来ないでいる儂を心配しているのか、奴さんの後ろに控えていたのであろう…女と会話を始めた。
女の方は、髪が茶色で日本の軍に配属された救護班の女に着せられた服に近い物を着ていた。 そして、女は儂に近づき話かけてくる。
「○*+€$%#¥☆?」
やはり分からん。 女が何を言っているのかも分からず、首を傾げる儂。 すると、女はゆっくりと儂の額に右の掌を押し当てた。
これは…儂の体調を確認しているのか?
儂の中で色々な情報が書き混ざれてしまい、女のなすがままだった。
「・#<$+〒:☆$%^?」
一通り儂の身体を触診?したのか、女は男に何か話し部屋を出ていった。 そして、残った儂らは向かい合わせでお互いの顔を見る。
儂の寝ていた所は布団の下に段があるのか高くなっていた。 その近くに椅子を使い、儂の目線と合わせるように男は座って話をかけてきた。
だが、相変わらず状況も読めずに男が何を言っているのかは分からないでいた。 そんな反応に男は困ったようにため息を一つ。
男は言葉では通じないと踏んだのか、両手を使い身振り手振をし始めた。 色々な手振りをしている中、儂が拾える物に反応して対話を試みた。
しかし、少ししかお互いの伝いたい事が送れず難航していた。 儂も話はかけるのだが…やはり男は日本語を知らないのか首を傾げて『何を言っているのかが分からない』と言いたげな表情だった。
なんやかんや、対話を試みる中に部屋に入ってくる者が。
「+÷×+€¥$」
先程の女が入ってきた。 女は配膳を持ち皿をのせて儂に近づいてくる。 男と女は話し合っていると、男は残念そうに首を振り女は渋い表情をしていた。
少し読めてきた。 大方、儂との会話が出来ないで困っていると見た。 余りにも変わってしまった状況に儂は、少しずつと心に余裕が出来てきて相手方の反応が読めるようになってきた。
そんな所に女が近づき、儂に配膳を渡してきた。
「÷<#☆♪→○」
なんとなくだが…女は食せと言っているのだろう。 確かに意識を失って何日過ぎたのか判らんが、腹は正直に空腹感を知らせてきた。
よし、とりあえず腹を満たしてから考えようと儂は米国人が使っている食器である『フォーク』を持った。
布団の上で配膳を胡座かいた足に乗せて食す事に。
ふむ、汁物が一つと何かの肉を使ったのか分からんがこんがりと焼かれた肉が皿の上に存在した。
最初に汁物を口にする。
「まっっっっっっっっっずっい!!!」
「「!!?」」
儂は余りの不味さに大声で叫んでしまった。 それに驚く二人。
これは…儂が生きてきた生涯の中で一番と言ってもおかしくないほど不味い。 もしやと思いながら肉の方も手をつけると…。
「生臭…獣の匂いが強い」
「「??」」
なんて言うか…肉に関しては血生臭いのと味が無いに等しい。 汁物も、中に野菜だと思われる物が入っているのは確認とれたがボロボロになっている。 野菜の一つに馬鈴薯(ジャガイモ)だと思われる物が。
試しに男の方に汁物が入った皿を渡す仕草を見せ手振りで食べろと送ると…男は苦笑いしながら遠慮する。
変わって女の方にも同じようにすると、女は距離をとって受け取る事すら避けているように見える。
これは一種の拷問か?
そう考えた儂は間違っていないと思う。
★★★★★★
「それでお爺ちゃんは、その後はどうしたの?」
「それはな…アイツらに儂が知ってる料理を教えてやる事になったわ。 アレは…もう食いたくなかった」
★★★★★★
神の怒りと言われた地揺れが起きてから数日。 私は森の中で狩りを行なっていた。
私は、少し名のある貴族で少しばかり大きめの領地を持っている。 今日も食料の為に野生の動物を狩る為、森に足を運ばせていた。
それが彼との出会いだった。
森の中を獲物を探している所…足場を探しながら進む中で途中開けた場所に辿り着いた。 すると、その場所の真ん中に人が倒れているではないか。
私は倒れた人に近寄り、うつ伏せになっている所をひっくり返す。 すると倒れていた人物は男であった。 しかし、私は驚いた。
彼は…少し変わっているのだ。
私が管理している領地は、国王から授かっている。 その国王が作り上げた国に住む人間は、大抵は私と同じ金髪か茶髪など其々の色がある。 それに顔の作りは頬は出ておらず鼻は高いのだ。
しかし…彼は違っていた。 髪は黒で鼻は…そこまで高くない。 そして肌が少し黄色な感じであった。
私のような白い肌か、褐色の肌を持つ人間はいるが…彼のような人間は初めて見たのだ。 とりあえず、彼を起こそうとする。
何故か彼の服は、所々が焦げてしまって火で焼かれたような感じでボロボロになっていた。
『おい、君! 大丈夫か!』
揺すったりするが、全く彼は起きる様子は無く私は困り果てた。 仕方なく私の城に運ぶ事にした。
召使いに命令し、彼に私の服を着せてベットに寝かせた。 この時に発見した事は…彼は足が私達と違って少し短い事だ。 その為に裾が余る。 身長は私と余り変わらないのに。
3日過ぎて、獲物を捕らえて城に戻り彼がいる部屋に行ってみると目を覚ました彼がいた。
『おぉ、起きたのか。具合はどうだい?』
私は彼が起きた事に安心して話をかける。 また、私は彼で発見した事がある。 瞳の色が黒なのだ。
これは…余り良いとは言えない事だった。 まだ髪が黒いなのは良いとして、瞳の色が黒なのは…災いを呼ぶ人間と言われている。 昔からの伝承なのか、私達人間の中で黒い目を持った者は災いを呼ぶと言い伝えがあるのだ。
その為か間違って生まれてくる子で、黒い目の子などは森などに捨てられるか…自分達の手で『始末』するのだ。 私は差別する方では無いが、周りが彼を見たら…何て言うか。
そんな事はさておき。 私は彼に話しかけるが、彼はこちらの言葉が分かっていないのか反応が驚きだった。
「…はっ?」
ふむ、彼の言葉は私達の言葉と違うようだ。 だが分かる所があるかもしれないと思って再び話しかける。
『君は何故あんな所で倒れていたんだ?』
私の問いかけに、彼は言葉が通じていない為に反応が無かった。 仕方ない、呼んでいた彼女に診療してもらおう。
『おい、イリス。彼を見てくれ』
『承知しました。アレク様 』
彼女は私の持ち召使いの中でも、治療が出来るのだ。 彼女は彼に近づき話しかける。
『お機嫌は如何ですか?』
やはり彼は言葉が理解できず、首を傾げた。 これは大変だな。
意思疎通が出来ないのだから。 私は色々と考えている内に、イリスは彼の様子を見ていた。
少し時が過ぎてイリスが彼を調べ終わる。
『アレク様、あの方に異常は見られませんでした。 なので食事をお持ちしても構いませんか?』
イリスの言葉に私は頷くと、彼女は部屋から出ていく。 部屋に残る私と彼だけになった。
『私の言っている事が分からないか?』
私は近くある椅子を持って彼に近寄り、彼と目線を合わせる為に座る。
何個か質問していくのだが…やはり通じない。 流石にため息すら自然と出てしまう。
言葉で通じないなら、私は身体を使って身振り手振りで意思表現を見せる。 それに対して彼も対話を試みようとしてくれたのか、お互いに身振り手振りする事に。
だか、お互いに拾えるものが少ない為に苦労する。 彼も話しかけるが…やはり知らない言葉だ。 いったい何を言っているのかが分からない。
2人で苦い表情しているとイリスが戻ってきた。
『お持ちしました』
『待っていたよ』
『どうですか?』
『駄目だったよ』
残念がる私を見てイリスは持ってきた物を彼に渡す。
『お召し上がってください』
すると彼はイリスが言いたい事が行動で理解したのか、食事を開始する。 私は余り食は好まない。
何故か…それは苦痛でしかないのだ。 腹を満たすだけの行動で、口に入れる度に不快感しかないのだから。 これは国全部が統一されている。
誰もが食事は苦痛だと思っているだろう。 しかし食わねば死んでしまう。 だから食す。 彼もそれは同じだろう。
彼が食べ終わり次第、再び対話してみよう。
そう考えると…。
「まっっっっっっっっっずっい!!!」
『『!!?』』
突然彼が大声で叫ぶので、私とイリスは驚いてしまった。
そして彼は食べ続けると…。
と…。
「生臭…獣の匂いが強い」
『『??』』
何か呟いている。 彼の方では食事している時は叫ぶ習慣でもあるのだろうか?
すると、彼は自分が食べていた物を私達に渡し食べるように身振り手振りしてきた。 これには私は苦笑いで断り、イリスは距離を取る事に。
そんな私達の行動を見て、彼は不思議な身振り手振りをしてきた。
彼は食べ物に指を指しては、料理するような仕草を見せてから彼は自分に指を向けた。 その行動には、私とイリスには理解が出来なかった。
誰が作っても変わらない事を、何故彼は自分でしたいと思うだろう。 これには私とイリスで顔を見合わせる事に。
でも彼は必死に頼むように、顔の前に両手で拝み頼み込んでいた。
そんな彼を見て、仕方なく調理場に連れて行く事に。
…それが私、いや国中が変貌する事に繋がるとは誰も考えられないだろう。
これを機に彼から教わる事は、誰の今まで考えられなかったモノばかり。 そして彼との出会いは国の歴史を変えるほどだったのだ。
とりあえず彼を調理場に連れてきた。
「調味料は…ある程度あるな。 それなのに何であんな物作れるかね…」
何かブツブツと彼が呟きながら、調理場を隈なく調べていると苦痛を生み出す料理を作る為に調理が始まった。
彼は鍋を用意すると中に水を入れて、釜戸に火をつけて放置する。
私は彼がどんな苦痛を生み出す料理を作り出すのかを調理場の端で眺めていた。
何個か食材の野菜を集めて水で洗い、それらをナイフを使って皮を剥いていく。
これには私は理解出来なかった。 普通は食材を適当に切り刻んで入れるだけなのだから。 態々野菜の皮を剥く必要が分からなかった。
彼の不可解な行動は終わらなかった。
皮を剥き終わった野菜達を、寝かし端っこから均一に刻んでいくではないか。 野菜を抑えているであろう左手は横に滑るような動きをしながら。
何か魔物に化かされた感覚になるが、彼の行動が新鮮味を感じてきたので黙って眺める事に。
水からお湯になった鍋に野菜を入れていく。 これは私達と変わらない行動。 しかし、彼は先程何個か確かめていた物を入れていく。 あれは商人が味を変える為に必要な調味料と言われる物。 それを量は少なく、彼は何処か納得したような表情をしていた。
私は本当に彼が何しているのか理解出来ないでいた。
鍋を熱している中、彼は鍋の中から何かを掬っては捨てている。 アレは食材の栄養なのを彼は知らないのか。 だが…彼が作り終わるまで私は何も言わない気でいた。
ある程度鍋からアレを捨て終わると、彼は私を呼んだ。 彼は今日狩ってきた獲物を指差して、使って構わないかと言わんばかりに身振り手振りしてきた。 まだ獲物は生きており、罠で捕らえた物で前足と後ろ足で縛って置いていた。
私は頷いて許可した。
すると、また彼は不思議な事を始める。 獲物(猪だと思われる物)を木の棒で頭を叩いて気絶させる。 その後、後ろ足だけ紐で縛ると…天井に吊るしたのだ。
本当に何がしたいのだ?
そんな思いは通じないまま、彼は吊るした獲物の首をナイフで切ると夥しい血が溢れ出すではないか。 ただ殺すのでは無く、残酷な殺し方に私は彼の行動に肝を冷やす。
獲物から血が止まると天井から下ろし、ナイフを腹部の方から切っていく。 すると、獲物は綺麗に毛皮が剥がされていくではないか。 この技術には感心した。 これなら、毛皮を使って何か作れるでは無いかと。
獲物は毛皮だけでは無く、体すら綺麗に切り裂かれていく。 私は気付いた事があった。
それは匂いだ。 普通なら獲物を切り分ける時は、血の匂いとその獲物の動物臭さがあるのだ。 だが彼が切っていく獲物からは匂いが目立たないのだ。 これにも驚きを隠せない。
肉と骨すら分けていき、骨は血を水で洗い流してから野菜が入った鍋に入れたのだ。
肉の方は綺麗な形に切り分けられ、予め熱していた鉄板に毛皮と肉の間にあったブヨブヨした塊を置いた。 すると、塊はバチバチと音を鳴らしながら…溶けていく! 彼はそれを溶けた液を鉄板に広げていく。
何処か調理場には嗅いだ事が無い匂いが充満していく。 何処か空腹を誘った。
液を広げた鉄板に先程の獲物の肉を置いた。 その瞬間!
ジュー
肉が焼ける音が鳴り響く。 彼は焼けていく肉を見つめながら、時が来たのを分かっているのか肉をナイフでひっくり返す。 すると、焼けた部分の肉は灰色に近い色になり調理場に新たな匂いが広まっていく。
匂いを嗅いだ私は、無意識に唾液が口から溢れ出して端から溢れ涎を垂らす。 この未知な現象に驚いている中、彼は肉にも調味料を少しかけていた。
何処か彼が作り終わった料理が…食べてみたいと思ってしまった。
時は過ぎて、漸く彼は作り終わったのか皿に肉を乗せる。 鍋に入った物は底が深い食器に。
何処か満足気な彼は、自分で作った料理を食べた。
その光景に私は溜まりに溜まった唾液を飲み込む。
うんうんと頷く彼に食べ続けていく。 そんな姿を見て、私は彼に近寄り身振り手振りで、私にも食べさせてほしいとお願いする。
彼はナイフで食べやすいサイズに切り分けて、フォークに刺して私の口に。
人とは肉を食べ始めてきて、私達は今まで何をしてきたのか。
初めて人間が肉を食べた時は…どうだったのだろう。
肉など腹に入れるだけの物だと思っていた。
違う!!!
この幸福感を得る為だ!!
苦くもない、硬くもない、臭くも無い。
純粋に食べたいと思う気持ち、歯で肉を噛みちぎると中から幸せな液体が溢れる。
噛み続けることによって味が広がっていく。
私の口は、広大な土地に変わってしまっていた。
神の使いが空に羽ばたき、楽器を持ち音を鳴らし楽園と思わせる光景が頭の中で過ぎった。
これには私は自然と目から涙が溢れ出た。 余りにも幸せな気分になると、人は泣いてしまうと初めて知る。
そんな泣き顔を見た彼は一言。
「美味い?」
そんな一言を言ってきたが私は分からないが、彼が何を言いたいのが。
『「美味い」』
意味など分からないが…これはそういう意味なんだと思った。 これが、私が初めて彼の言葉を理解できた気がした。
私は生涯にして『食べたい』と思えた日であった。
私は彼が持ち出す知識には、この先…驚かない時は無かった。
…本当に食事は序盤に過ぎなかった。
私は彼との出会いで、世界観が変わったと思う。
色々な知識に性格、彼と関わるだけで周りを引っ掻き回していくのだから。
…だけど悪い気はしなかったよ?
だって楽しかったんだ。
辛い時や悲しい時もあったさ。
彼に助けられ助けた間柄、私の世界は広がっていった。
彼が消えてからも皆は覚えていた。
笑ってる彼、死にそうな彼、悲しんだ彼、怒りに染まった彼、周りを引っ張った彼。
残していった物は…多くも少なくもなかった。
私の中で彼のしてきた事は、死ぬその日まで残り続けていくだろう。
ありがとう、『………』