ーこれは世界の運命を切り開く物語。
「はぁ…はァ…」
男が息を途切らせながら、歩く。そこは暗い迷宮だった。
「ここにあるはずと…聞いたのですが…」
彼は『ブレイド』と呼ばれるカードを求めていた。地上の洞窟からかなり奥深い所に位置する迷宮。そこにブレイドは存在しているとの噂だ、と情報屋から手に入れた情報に頼り、ここまでやって来たのだ。
「やはり…噂は噂なのでしょうか…」
ブレイドのカードの噂はガセだったのか。そう思う男の前に扉が見えた。男はその扉に急ぎ足で向かい、間髪入れず扉を開ける。開けた先には瓦礫が転がっているばかりであったが、その中にただ一枚カードが見えた。
「アレが…ブレイド…!」
目は紅く、白銀の体。そして剣を持った姿がそのカードには描かれていた。
できる夫はカードを探すようです。
この世界にはかつて「女神」と「ガチャ」が存在していたという。
女神はあらゆる望みが叶うカードを作りあげ、それはガチャと呼ばれる箱の中へと入れられた。人々はそのガチャの中にあるカードを求め、使い、戦った。
だが、突如として世界は荒廃する事となる。
「…やっぱり強いなアンタは。俺の長く愛用してきたカード。まさかこの一戦で割れるとは思っていなかったぜ。」
「俺も驚いてます。噂に聞いていた『Z』。まさか拝めるとは思っていませんでしたよ。強敵だった。こんな形で戦わなけばいろいろと話を聞けたかもしれない。」
2人の男が戦っていた、お互い消耗しあっていたが、長身の男は自分にいつも勝利をもたらしてくれたいわば相棒と呼べるカードを失い、追い詰められていた。
「だが…お前の負けだ、■■■。」
「…それはどういう意味で?」
「どうもこうもねぇよ。お前は最初から詰んでいたんだ。俺が最初に出したカードのこと覚えているか?」
「確かSRの『カリス』と呼ばれるカードでしたね。」
「そうだ。そして、そのカードが…」
長身の男は勢いよくブックからカードを取り出す。
「見せてやる!これが世界が!女神が!終わるとき!」
高笑いしながらカードを
「マスター…やめ…ろ…。」
そこからゲインされたカリスは弱っている様子だった。
「悪いな。もう俺にはこうすることしかできないんだ。」
そうして、男はカリスの『アナザースキル』を発動する。
「カリス!アナザースキル!ーーー」
ー現在ー
謎の世界の崩壊から50年。今では大災害と呼ばれる崩壊事件は女神による発展をリセットするほど世界は逆戻りを始め、女神が残した箱・「ガチャ」と女神は世界から消えた。そして女神の力の鱗片が世界のあらゆる場所と結びつき、いつしか
そうしてまた一人、探求者は迷宮へと挑む。新たなるカードを求め…。
時は迷宮から数日まで遡る。
BAR『アダムの林檎』
探求者が集まる酒場である。そこでとある話が進められていた。
「…本当に行くのか。まあ、お前はそういってもいっちまうんだろうが。」
「ええ…どうしてもあのブレイドのカードが必要なんです。」
「何がお前をそうさせるのかわからんが…生きて帰ってこい、できる夫。」
「必ずブレイドのカードを手に入れてみますよ。雑賀さん。」
「そうか。じゃあ行ってこい。」
探求者であるできる夫と情報屋である雑賀。彼らの絆は厚い。できる夫はこの『アダムの林檎』へと拠点を移してから、必ずと言っていいほど雑賀の情報を利用していた。
「ではまた会い…」
「ちょっと待ってぇ!」
彼の出発の言葉は突然遮られた。
「どうしたんだマギー。そんなに慌てて。」
「慌てるどころじゃないわよ!なんで私が外出している時に行っちゃうのかしら!」
マギー。『アダムの林檎』のオーナーであり、探求者。できる夫や雑賀と付き合いが長い存在である。
「できる夫君酷い!私に黙って行っちゃうなんて!」
「いや…その…アハハ…」
できる夫は苦笑いで返す。
「もう!迷宮に行くってことは命を賭けることだって忘れてない?『自動人形《オートマトン》・SE.RA.PH』は持った?水や食料は?」
「持ってますよ。心配しないでください。必ず帰ってきますから。」
「…本当ね?帰ってこなかったら承知しないわよ!」
「ええ…では。」
親しい二人に一時の別れを告げ、彼は『アダムの林檎』を後にした。
ーそして 《迷宮》内にてー
「やっと…見つけましたよ マギーさん、雑賀さん…!」
できる夫はブレイドのカードを手にしたその瞬間ー
「…!」
できる夫が目を覚ました時には周りは暗い洞窟から荒廃した都市部へと居た。
「ここは?僕は迷宮にいたはず…」
突然の出来事に迷うできる夫。
「カロロロ…」
「
イナゴのような姿をした怪物がそこには居た。
できる夫が遭遇者と呼んだ存在。それは迷宮に巣食うカードのことである。以前あらゆるカードはガチャから排出されていた。大災害以降、量産系カードやN、HN、Rの一部は自我を失い、ゲインされた状態で迷宮内に現れている。
「訳は分かりませんがここにもエネミーがいるとは…となれば」
すかさずブックからカードを取り出す。
「ゲイン!」
現れたのは、顔のない人形であった。だが、普通の人形と違う所は手脚。針のように尖ったこの箇所はマスターを守る剣となり、盾となる。観賞用ではなく、戦闘用に作られているのだ。
「いけっ!」
人形が勢いよく突撃し、エネミーの脳天を狙う。
しかしー
「カロロロ…!」
エネミーの身体は数百匹のイナゴとなり、人形の攻撃を躱す。
「何!?」
並のエネミーでは致命傷になりかねない一撃を避けられた。だが、このエネミーがイナゴへと変化したのはただ「躱す」だけではない。最初はかろうじて聴こえる程度だったうるさく感じられるほど強まっていた。
(ーあのエネミーの羽音が強まっている…?)
不思議に思うできる夫。その時。
勢いよく、イナゴの集団が『
「は、早い!」
驚く暇もなく、自らの人形はイナゴの群れによって空中へと上げられる。
「くっ!自動人形!その状態で回転してください!」
できる夫の判断は的確であった。押し上げられているだけならまだ脱出するすべがある。
(まとわりついているイナゴ達をのければ…!)
そう思考していたできる夫であったが、イナゴは再び集まり、1匹のエネミーへと戻る。姿が戻ったエネミーは自動人形を抱え込み、荒廃したビルへと叩きつける。
「まさか、ここまでとは…一般のエネミーとは違うのでしょうか…」
(この迷宮に現れていた『がいこつ』や『SDザク』とは明らかにカードの性能が違うー!)
「……」
(自動人形も相当なダメージを食らっている。早くケリをつけなければ!)
ボロボロの自動人形は立ち上がる。
「自動人形!先程のような攻撃は通用しないようです!大群に分裂しても戻るまで攻撃しないで下さい!」
自動人形はコクリと頷き、戦闘態勢に入る。
エネミーは自動人形を完全な敵と見なし、飛行しながら近づいてくる。自動人形も迫ってくるエネミーを警戒し、構えをとる。素早く飛行して来たエネミーのパンチを自動人形はガードする。
地面に着地したエネミーは自動人形へとさらに近づく。自動人形はすぐさま左足で蹴りを入れようとする。しかし、その蹴りはあっさりと受け止められた。
「やはり早い!」
驚くのもつかの間。エネミーは自動人形の頭を掴み、叩きつけたー。
「……」
反撃しようとする自動人形。だが、そのエネミーはその隙も与えなかった。すぐさま胸部にパンチを食らわす。
「… …??!」
パンチの衝撃に耐えきれなかった自動人形は遠くへと飛ばされた。
「…ピ…」
ーパリン!
そして、機械音と共にできる夫が手に持っていた『自動人形・SE・RA・PH』のカードは本体と共に消滅した。
「まさか…」
予想外の出来事に戸惑う。だが、エネミーは違う。鳴き声と共にできる夫を仕留めるため近づいてくる。
(僕はここで終わるのか?)
自分に問いかける。
『生きて帰ってこいー』 『帰ってこなかったら承知しないわよ!ー』
「まだ…諦める訳には行けないんです!あの2人と約束した!必ずブレイドのカードを手にして、帰ってくると!」
エネミーはできる夫との距離をつめ、殴りかかる。その時ー!
「えっ…!?」
突然青い壁のようなものが現れ、エネミーを吹き飛ばす。これはできる夫にもエネミーにも予想外の出来事だった。
自分の命を救った青いモノ。その真ん中にはカブト虫とトランプのスペードが合わさった様なマークがあった。さらに周囲を見渡すと先程の荒廃した都市部とは違う。神殿のような空間へと来ていた。
(よく来た。できる夫。)
「この声は何処から…!?貴方は一体…」
(君の覚悟、見せてもらった。大切な者との約束。君にはブレイドを手にする資格がある。)
「僕が…ブレイドを…?」
困惑するできる夫の手にはブレイドのカード、そして一枚のスキルカードが握られていた。
「いつの間に…」
(スキルカードは私の餞別だ。ブレイドをゲインするのだ、できる夫。世界の『運命』は君が切り開く。)
「待ってください…貴方はー!」
(光の神・エロール…)
そう声は語りかけると周りの景色は再びイナゴの
(今のは夢?)
唐突の出来事に疑いを持つ。だが、手にあるブレイドのカードがその可能性を否定する。
「…ならば やるしかありませんね!」
カードを構え、エネミーの前へと立つ。
「ゲイン!」
カードが光り、そこに人影が現れる。
目は紅く、白銀の体を持つ戦士がそこには立っていた。
To be continued…
※登場したキャラクターやカード等は今後設定集を書く予定です。