とある日、いつものカフェ『nascita』で、第二の親であるマスターからコーヒーを入れてもらいながらこの世界の創造主である桐生戦兎は考える。
一体どうしてこうなってしまったのだと____
◇◇◇◇◇◇◇
相棒である万丈龍我が用事で戦兎と共に暮らしているマンションから出ていった後、いつも通りに仕事先である『ツナ義ーズ』がメインで活躍するライブハウスへ向かう。
戸籍すらなかった自分達がどうやって職を得たかというと、全てはマンションの管理人さんのお陰である。
「世界には顔が似ている人は3人もいるし、ね」
という言葉で
「おはようございます、店長」
「あ、え~っと、桐生君だよね?」
「はい」
あ~良かった~と呟く背の小さな女性はこのライブハウスの店長である『佐々木立夏』。ここ1ヵ月程で両親から仕事を引き継いだらしく、戦兎よりも年下なのだが先程の質問から分かるように良く戦兎と佐藤太郎を見間違えるのだ。
「そろそろ覚えないと失礼ですよね...」
「いえ、こればっかりは仕方がないと思いますよ」
戦兎がこういうのにはしっかりとした理由がある。以前、この新世界に来る前に住んでいた世界で起きた三都の戦争。その戦争を起こした張本人である『エボルト』によって気絶した葛城巧が殺された佐藤太郎の顔に変えられて
記憶を失う事で誕生したのだ。
店長と別れた戦兎は制服に腕を通し、いつも通りの仕事場へと向かう。
ここでの戦兎の仕事は機材メンテナンスと雑用である。
「ふぅ...特に問題はないかな」
「桐生君~!こっちも手伝ってくれませんか~?」
「今いきます!」
これが今の新たな戦兎の仕事である。
◇◇◇◇◇◇
「お疲れ様でした。先に上がりますね」
「はい、お疲れ様でした~」
店長に声を掛けてスタッフ専用の出入り口から外へ出る。今日は特にライブはなく、練習がメインだったのでお客が入ってくることはなかったが「次は武道館だ~~!!!」と叫ぶ自分の声が聞こえたのが記憶に新しい。
「最近はドンドン人気が上がってきているからなぁ...このままだと本当に武道館まで行けそうだなぁ...」
少し寒くなってきたのを肌で感じながらもマンションへ向けて歩き出す。
「冷えてきなぁ...」
戦兎は自分が産まれて三度目の冬。そういえば今年は例年以上に冷え込むとか言ってたっけなと思い出す。
ストーブどうしようかなと考えて帰れば福引で当てたぜ!とドヤ顔で行ってくる
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万丈が新しいバイトを始めたらしく「夜勤だ...」と嘆いていたのを思い出しながらもライブハウスから出る。
今日はあいつも家にいないのかと久々の一人に懐かしく思いながら傘をさす。
「待って下さい~!!」
「あれ、店長。どうかしましたか?」
帰ろうとすると後ろから店長が走ってくる。何かし忘れたことあったっけ?と疑問に思いながら振り返り返事を返す。
「明日なんですが...シフトを入れることは出来ますか?」
「ええ、できますけど...何かあったんですか?」
「実は...」
彼女の話によると明日新曲を収録するために使う機材のメンテナンスを頼みたいとのことだった。戦兎は明日何もない事を思い出して返事を返す。この際だからこのままライブハウスに泊まっていきませんかという店長の誘いを断り切れず、まぁ万丈もいないしいいかとこの時は思っていたのだ。
これが全てのきっかけだったとは知らずに____
まだ登場していないエボルト。
この先はまたいつか____