聖杯争奪戦 in 木組みの街   作:パラレル。

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第一羽 聖杯に招かれた少女

木組みの家と石畳の街。

 

 

趣ある近世西洋の街並みが広がるこの街は通称「木組みの街」と呼ばれており、マスメディアも度々紹介するほどの知る人ぞ知る観光地なのである。

その理由として車道がない。唯一の交通手段である汽車以外は全て徒歩で行かなくてはならないため、空気は澄んでいる。また野生のウサギが行く先々で見られ、尚且つ人懐っこいのでそこが女性たちに人気な点である。

何より一番の理由がその街は極東の日本にあって、日本にいることを忘れるほどの完成度の高い作りであるためである。

 

 

そんな街には喫茶店が多数あり、その中の一つに香風という家族が経営している「ラビット・ハウス」という店があった。

十つ余りのテーブルとカウンターがある店で木組みの街に相応しい木造の店内に二人の従業員と思われる少女が作業をしていた。

 

 

「チノちゃ〜〜〜〜〜ん。暇だよ〜〜〜」

「ではいつも拭かないところも拭いてください。汚れはどんなところにもあるので・・・」

「ぶぅ〜〜〜〜〜。チノちゃんのいけず〜〜〜!!少しは構ってよ〜〜〜ッ!!」

 

 

桜の花を半分にした形の髪飾りをつけた橙の髪の少女、ココアは客のいない店のテーブルを雑巾で拭きながらペットであるアンゴアうさぎを頭に乗せながら食器を洗う少女、チノに不満を漏らした。

左右の髪に×印の髪留めをつけた銀髪のチノはブツクサ言うココアをいつものように軽くあしらった。そんな冷たい態度を取られたココアは頬を膨らませて不貞腐れ始め、チノは頭を痛める。

本来ならこんな時はバイトとして働いている年上のリゼが手綱を握るわけだが、彼女はとある都合で休んでいるためここにはいない。内気のチノにはあまり強い言葉が言いづらいためどうしたものかと悩んだ。

 

 

「・・・ではココアさん、地下室の整理をお願いします。そろそろ掃除をしようと考えていたところなので・・・」

「分かった!・・・でもその前に、チノちゃんをもふもふしてからねぇ〜〜〜。もふもふぅ」

「ちょっ・・・ココアさんやめてください」

 

 

悩んだ末にチノはコーヒー豆の貯蔵庫の掃除を思い出してココアに丁寧に命じた。塵芥の他に袋から微かに漏れたコーヒー豆を近日中にやっておこうと思っていたので、絶好の機会だとチノは睨んだ。

そして思惑通り不貞腐れているココアを奮起させることに成功したものの、いきなりココアは抱きつき、自分の頬をチノの顔に擦り付ける。

この行為はココアの愛情表現であり、チノを自分の妹ように可愛がっている表れだ。そのことを知っているため表面上は嫌がっている態度を見せるチノだが、心の底では安らぎすら感じている。

 

 

「じゃあチノちゃん!お姉ちゃん、頑張ってくるぅ!!」

 

 

十分にチノをもふもふして満足したココアは上機嫌で地下室へと駆けていき、チノはそんなココアの背を見つめていた。

ココアが居なくなって一気に静かになった店内でチノは抱きしめられた際に乱れた髪を手櫛で整えると洗った食器を布巾で水気を取り始めた。

 

 

「全く・・・ココアの奴はホントに忙しないのぉ・・・」

「仕方ありませんよ・・・それがココアさんの個性なんですから・・・」

 

 

ペットのうさぎを頭に乗せて食器を拭いているチノは独り言を言っていた。

だが正確に言えば、チノの頭の上にいるうさぎのティッピーがチノに話しかけたのに対してチノは返答していた。

チノの身内のみ知る事実だが、実はティッピーはチノの祖父なのである。チノも何故祖父がティッピーになったかは知らない。祖父が天寿を全うして亡くなった途端、ティッピーがこうなってしまったのだ。

祖父が言うには、チノが悲しむから意地でも現界し続けようと足掻いた結果、こうなったとのこと。しかし原因を調べようにも仮説という仮説も立てられないので、何よりそのままでも問題はないという理由で現在に至る。

 

 

「しかしじゃの、チノ。あの血気盛んなココアを何とかせんと・・・・・。『期限』はもうないぞ・・・」

「わ・・・分かっています。最悪『暗示』を使って・・・」

「それは何度もやったじゃろう・・・。しかしどういうことかどんな『暗示』もあやつには効かんだったじゃろうが・・・」

「・・・うっ・・・・・」

 

 

ココアが居なくなってか、何かと意味深で聞き慣れない言葉を言っている一人と一匹は到底堅気のする話ではない物騒なことをのたまっている。

話の主軸はココアをどうするかについて。二人は近日中に口で言うには憚れるような事情に身を投じなければならない。そこで障害になるのが彼女だ。

チノはまだ子供だ。とりわけあと一月で十五になる中学生だ。事情を知れば是が非でもココアは『お姉ちゃん』という肩書きを盾に止めに入ることだろう。

しかしそれはできない。この時を逃せば先代達が心の底から切望し続けた"あれ"を手に入れる機会を一生失うことになりかねないからだ。それはチノにとって許されないことである。

 

 

「『期限』も『期限』じゃし、無理やりにでも・・・」

「そ・・・そんな。・・・でも、私・・・ココアさんにそんな酷いこと・・・できるわけが・・・」

 

 

しかしながら事は深刻である。この木組みの街から事が終わるまでココアを退去させようと『力』を行使したが、ココアにはまるで効果がなかった。幾度もたりとも試してみてもうんともすんとも効かなかった。

そのためティッピーはココアを泣かせることになるだろう手段で強行的に街から追い出す気でいる。

チノもその意見には賛同せざるを得ない。しかしながら自分を実の妹ように可愛がってくれる彼女をそんな無下に扱うことに忌避感を覚えてしょうがないのだ。だが、一族の悲願も見捨てるわけにはいかない。

であるためチノは、今日この日に至るまでその二律背反の感情にどっちつかず、宙吊りの状態になっているのだ。ティッピーもチノの心中を察しているためこの問題を今日まで先送りにし続けてきた。だがもう時間はない。明日までに意を決しなければならない。

二人の煮えたぎらない想いで空気が重く淀んでいた。しかしその空気は天真爛漫な声とともに消し飛ばされた。

 

 

「チノちゃ〜〜〜ん!」

「・・・ッ!?・・・ど・・・どうしましたかココアさん?」

「地下室の鍵が見つからなくて入れないんだよ・・・」

「・・・あっ。そういえば昨日鍵を私の机の上に置いた気が・・・。すいません。うっかりしてました」

「もう〜〜〜チノちゃんのうっかりさんめぇ〜〜〜」

 

 

チノとティッピーの心情を余所にココアはいつものムードで戻ってきた。彼女のいきなりの登場にもやもやしていたチノはすぐにその素振りを隠し、悟らせまいとした。そんなチノの胸懐を察する事なく戻ってきたココアは地下室に入れないことを伝えた。

普段地下室には鍵をかけてしっかりと管理しているわけだが、その肝心の鍵をチノは自室に持っていったことを思い出してココアに詫びた。対するココアは責める素振りはせず、逆におっちょこちょいなチノの一面を見てまた抱きついた。

抱きついて愛情表現を見せるココアを見るとチノは悲しくなってきた。こうやって愛してくれる彼女を非情に、冷酷に、凄然と突き放さなければならないとなると改めて良心が痛むからである。涙を流せるならばいっそのことここで流したかった。

だがここで泣いても一族の悲願は達成されない。その想いが涙を止める。然れどその想いが良心を傷つける。もしココアが自分たちと同族であれば、どれだけ気が楽になるかとチノはしみじみと感じた。

 

 

「じゃあ取ってくるねぇ〜〜〜〜〜」

 

 

相反する矛盾に苦しむチノに気づくことなくココアは鍵を取りにチノの部屋へと駆けていった。

その時チノは彼女を呼び止めようとしたが、何を言ったらココアを傷つけずに済むかを考えられなかったために開口するのを憚ってしまい、結果としてまたも機会を失ってしまった。

ココアを危険地帯から遠ざけさせる。それが『参加者』になる自分の使命なのだが、純粋無垢な彼女の背中を見ていると自然と口が開かなくなり、そんな自分が許せなくて無性に苛立ちを覚える。

時間が経つごとに取り返しがつかなくなることを頭では理解しているチノ。しかしどう言えばココアが納得してくれるか、彼女からの反論もなく穏便に済むかを画策できず、チノはそのまま食器を拭く作業へと戻った。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「良し!鍵取ったし急いでお掃除しよ」

 

 

チノの部屋から地下室の鍵を取ったココアは軽い足取りで地下室へ向かっていた。末っ子であるために妹への憧憬の念が強いココアは年下であるチノには頼りになる姉として接して欲しいので、本来は煩わしく思える要望もホイホイと聞いてしまう。

チノに頼りにされているという理由だけで陽気になり、スキップし始めたココア。しかし彼女はスキップで数歩進むととある物に注目する。

 

 

「・・・およ??・・・何でこんな所に棒が・・・」

 

 

ココアが注目したのは通り道の隅に置いてある一本の長い棒。さらにその棒の先にはフックが取り付けられていた。

普段からここにこんなものがあったのか不思議に思うココアはその棒を手に取り、その用途を考える。

その長さはココアの身長を優に越し、持ち場所によっては天井に当てることができる。このことから彼女は直感でこれは天井の隠し扉を開けるためのものだと理解したので、天井を眺め始める。

すると案の定、フック付きの棒が置いてあった場所のすぐ近くの天井にちょうどその棒のフックが引っ掛けられる取っ手を見つけた。

そしてそのまま取っ手にフックを引っ掛け、勢いよく引っ張る。するとその部分の天井が外れた。

最初は隠し扉が開いたとココアは思っていたが、もっと引っ張ってみると二段ベッドによくある木製の階段が天井の裏にひっついてあり、最早それは隠し階段と言っていい代物だった。

 

 

(面白そうだから昇ってみよう)

 

 

偶然にも隠し扉改め隠し階段を見つけたココアはチノから任された地下室の掃除のことなぞすっかり忘れている。今ココアにあるのは未発見に対する好奇心だけだ。

その子供心を抱いたままココアはゆっくりと階段を昇り、香風家が隠し通してきた秘密の部屋に足を運んだ。

 

 

 

 

隠し階段を昇った先にある屋根裏部屋は人の気配がまるでないので静謐としていた。窓が一つもないので辺りは暗晦としていたが、所々に蝋燭が設置しており、完全な暗闇にはなってはいなかった。

近くの蝋燭が置かれた受け皿を持ち上げてココアは辺りを見渡すと部屋中に古めかしい分厚い本がびっしりと収納されている本棚が羅列していた。試しに一つを取り、ページをめくってみると、ずらずらと外国語が書き残されていた。

 

 

(ふぇあぁ〜〜〜。難しい言葉がいっぱい〜〜〜〜〜)

 

 

英語やラテン語、ドイツ語といった数々の言語を書き残している書物にココアは目を回している。英語の点数が元々悪いココアは外国語に対する苦手意識がとてもあり、この古本の中に書かれている言語が何なのかを見極める前に本を閉じ、元の場所にしまった。

羅列していた外国語を見て頭痛を起こす彼女はその痛みがひいた後、一際明るい場所があることに気づいた。導かれるまま散乱している古本や紙の束を避けて通ると、何の物も置いていないスペースがあった。

勿論何もないことはない。そのスペースには円の形になるように配置された蝋燭、そしてその蝋燭に囲まれるように作られた不思議な模様だった。

だがこの独特の模様に、ココアはあるものを連想した。それは古来よりファンタジー作品で見受けられる絶対的なもの。それは・・・魔法陣。

 

 

(・・・・・まさか!チノちゃんは・・・魔法使いッ!!)

『フフフ・・・"エクスペクト・パトローナム"ですッ!』

 

 

魔法陣と思わしき模様を見てココアは古典的な魔法使いの帽子と服装を着たチノが呪文を唱えることを連想させた。勿論その考えは至極真っ当な答えだ。

香風家の屋根裏部屋に魔法陣のような模様があれば、その家の住人がそれを作ったことに相違はない。故にココアが実の妹のように可愛がっているチノが魔法使いであるという考えに至ることは当然の結果だ。

ココアがチノの、香風家の衝撃的な事実を知ったと同時に、彼女の体にも衝撃が走った。

 

 

(あれ・・・何?・・・気分が悪い・・・何だか頭が・・・くらくらして・・・・・)

 

 

これは形容でも比喩でもない。本当に体に嫌な感覚が迸った。冷や汗が流れ、身体の平衡感覚が鈍くなって背後の本棚にもたれるココア。頭痛も酷くなり、目の焦点を合わせることができないほど不調になる一方で、長期記憶に関わる大脳がやけに冴え始める。

そして冴えた大脳から記憶されていた言葉が湯水の如く溢れ出し、気分が優れないココアの頭の中で反響していた。

反響する言葉は彼女にとって全て聞き覚えのないものなので、何故そんな言葉を自分が知っているか疑問に残る。だが、ココアは疑問の答えに行き着く前に頭の中で響いている言葉を反芻した。

 

 

「ソニギントテツ。イシズエニイシトケイヤクノタイコウ。オリタツカゼニハカベヲ。シホウノモンハトジ、オオカンヨリイデ、オウコクニイタルサンサロハジュンカンセヨ・・・・・」

 

 

何かに取り憑かれたかのように頭に響く台詞をココアは詠唱した。勿論本人は口に出している言葉の意味を理解していない。

ここで詠唱を止めることも十二分に可能だ。だが、ココアは止めなかった。というより、“止められなかった”と言えば最も正しい答えだろう。

『詠唱を行う』以外の思考がココアの中から消失しているのだ。まるで何らかの力でココアの行動が制限されているように・・・。

 

 

「―――ツゲル。ナンジノミハワガモトニ、ワガメイウンハナンジノケンニ。セイハイノヨルベニシタガイ、コノイ、コノコトワリニシタガウナラバコタエヨ・・・・・」

 

 

詠唱が半ばまで達するとココアの眼前に広がる魔法陣らしき模様が光り出した。それはまるでその模様がココアの言霊を吸収していき、今まさに必要な容量の臨界点に達した事を表しているようだった。

更にそれだけではない。ココアのいるこの空間に風が吹き荒れ始めたのだ。

改めて言うがここは窓の一つもない屋根裏部屋。それに風はココアの後ろの二階に続く扉からではなく、前から・・・。故にこの現象はあり得ない。

 

 

だが何処からと言えば、自ずと答えは出てくる。それは魔法陣のような模様からだ。その理由としては根拠となるうまい説明はできないが、あなたがこの場にいるとすれば、否が応でも感じるだろう・・・。自分達がいる世界とは繋がってはいけない場所が魔法陣を通して繋がり、その場所の瘴気がこの世界に流れ込んでいると形容できる感覚を・・・。

 

 

「ナンジサンダイノコトダマヲマトウシチテン、ヨクシノワヨリキタレ、テンビンノマモリテヨーーー!!」

 

 

詠唱を重ねる度に荒れ吹く風と魔法陣の輝きが増していき、部屋にあった蝋燭の火は突風に耐えられず全て掻き消え、紙は辺りに舞い上がり、部屋中に光が満ちていく。

そしてココアが最後の詠唱を言い終えると、その輝きは絶頂を迎え、屋根裏部屋中に目を覆いたくなるほどの閃光が照らされ、ラビットハウス全体に伝わるほどの衝撃波が発生した。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「な・・・何ですかッ!?この揺れはッ!?地震ですか!?」

 

 

店の手入れをしていたチノは家中に伝わる揺れに気付くとひとまず拭き終えた食器類が落ちて割れないようにそれらを手で押さえた。

幸い大した揺れではなかったので杞憂で済んでホッとしたチノは更なる揺れに備えて身構えてた。

 

 

「いやッ!チノ。この感じッ!魔力じゃ!!上から魔力の残渣が流れているぞッ!」

「・・・えっ!?」

 

 

余震に備えて身構えているチノの頭の上でティッピーは魔力を感じ取り、それをチノに伝えた。

一瞬そのことにチノは狼狽えるが、今上にはココアがいることを思い出し、胸騒ぎを覚えたため急いで2階へと向かった。

 

 

 

 

頭の上にいるティッピーを振り落としかねない速度で階段を駆け上がったチノは屋根裏部屋へと続く隠し階段が出ていることに驚きを隠せなかった。

身内のルールで隠し階段は使用したら必ず閉めるように取り決めていたので、屋根裏部屋にいるのは十中八九ココア―――御家とは無関係な人間だ。

あまりの出来事に驚愕し、言葉が出ない一人と一匹だが、冷や汗が止まらず、息が荒くなったことで口の中が乾燥しているにも関わらずあそこにいるであろうココアを連れ戻そうとチノは隠し階段を登った。

 

 

 

 

屋根裏部屋へ入ったチノは辺りが靉靆としているため部屋の壁にかけてある懐中電灯を持ってココアを探した。

本や紙はそこら中に散らばっており、うっかりすると躓いたり、滑ったりしそうだ。そんな中でチノはしっかりした足取りである地点へとゆっくり進んでいく。

これはチノの直感だ。されど外れてほしいものだ。何故なら自分の姉として接してくれているココアには"あれ"を見られたくはないからだ。

だが、そんなチノの願いも虚しくココアはチノの予想通りの場所で立ち尽くしていた。昨日の夜、ココアが寝静まった後にティッピーの指示の下で作った魔法陣の前に・・・。

 

 

「コ・・・ココアさん・・・?」

「・・・・・チノ・・・ちゃん?」

 

 

魔法陣の前で放心状態になって立ち尽くしているココアに不安感が過ったチノは声を掛けると、ココアは肩を一瞬ビクつかせた後、ゆっくりと振り返った。

振り返ったココアにチノは「こんなところで何やっているんですか??」といった言葉をかけて無理矢理にも部屋から追い出そうと思っていた。この屋根裏部屋にある魔術に関することを有耶無耶するためにだ。

しかし、実際にはできなかった。有耶無耶に出来ない確固たるものがココアの体にあったからだ。

 

 

「ココアさん・・・・・その・・・右手の甲・・・」

「えっ?・・・あっ、何?この模様?」

 

 

ココアは記憶が混濁しているため今まで自分が何をしていたか分からない中、チノに指摘された右手の甲を確認すると、三つ葉のクローバーの形を模した朱い紋様が付いていた。

右手の甲に朱い紋様が付いていることに不思議がるココアだが、チノにはその紋様、否、刻印が刻まれていることがどういう意味を示しているのかが分かった。

そのためチノはその刻印をまじまじと見ているココアを尻目に、魔法陣を確認した。すると案の定、そこにはあった。否、正確には「いた」と言った方が正しいだろう。

 

 

まだ僅かに光っている魔法陣。その上に一人の少女が立っていた。

青を基調とした銀の甲冑付きのドレスで身を包み、大昔のヨーロッパの女性らしく長い金色の髪を三つ編みにし、後頭部にまとめている彼女は眼前に二人の少女がいることをその美しい翠眼で確認すると手元に黄金の剣を出現させ、床に軽く突き立てる。この時になって始めてココアがその少女に気づいて振り返った。

 

 

チノは彼女が何者なのかがこの時になって始めて理解できた。見目麗しいけれども、畏怖の情をも思わせる風格を持ち、煌びやかな黄金の聖剣を扱う人物。

其の名は・・・・・。

 

 

「問おう・・・。貴女が・・・・・私のマスターか?」

 

 

 

 

・・・・・アーサー王。

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

「サーヴァント・セイバー。貴女の召喚に応じ参上仕りました」

 

 

「本当にあなたは自分が何に挑もうとしているのか分かっているのですか!!?」

 

 

「これが・・・『彼』の聖遺物・・・」

 

 

「我々が召喚する英霊は真贋問わず確実に弓兵(アーチャー)のクラスで現界する」

 

 

「必ず勝ち残れよ・・・・・千夜」

 

 

「・・・とても綺麗ですね」

 

 

『それぞれの開戦準備』

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