日が開いて申し訳ありません。
実際のバイトはこんなに簡単じゃないです!
これは二次創作主人公補正ということで。
「 金 が な い 」
「藪から棒に何を言っているのかしら?」
なんてことない、いつもの帰り道の光景。
俺が放った一言にあきれた感じの声で
一人暮らしは何かと金がかかる。特に最近は花音や千聖と遊ぶ機会が増え、出費もかさむばかりである。
故に最近結構カツカツになってきている。うーむ、やはり遊ぶ金くらいは自由に、苦労しないようにしたいものである。
「バイトかなあ・・・・」
「芽音くんバイトするの?」
「ああ。もうちょっと生活に余裕が欲しくてな」
二人と遊ぶ出費がかさんでいるなんていったら気を遣われそうなのであえて言わない。俺が遊びたいから遊んでいるのであって、こいつらに責任はないしね。
「そういや花音ってバイトしてるんだったよな?」
「うん、ファーストフード店でね」
「・・・俺もやってみようかな、そこ」
こういう言い方をしちゃ失礼だが、花音が苦手なはずの接客業をちゃんとやれているんだ。
バイト経験はないが俺でもやれるかもしれない。
「え!?芽音くんも来てくれるの!?」
「うぉ!?びっくりした!」
花音が突然らしからぬ声で言うのに思わずビクッとしてしまった。
それに気づいたのか花音ははっとして恥ずかしそうだ。
「あっ///うんとね、いっつも人手不足だから大歓迎だと思うよ?」
照れながらも言うなんだが花音は嬉しそうだ。まあ実際のところ俺も知り合いが一緒の方が何かとやりやすいので望むところである。
「芽音と花音は同じところでバイトをするのね。私だけなんだか仲間外れの気分だわ」
「あっ・・・えっと、千聖ちゃん・・・あの・・・・」
「ふふっ、冗談よ。どちらにせよ私は仕事はあるしね。それに二人なら息ぴったりだから、同じ職場というのはいいかもしれないわね」
そういって笑う千聖はまるで子供を見送る母親のような笑顔だった。
「すぐ出られる?」
「望むところです」
「OK,採用ね」
とまあこんな感じで俺はその後面接を受け、即採用となったのであった。
※
「とりあえずオーダーはこうやって受けて、清算したら指示を送って・・・」
先輩バイトからレジの打ち方を教わる。
うん、一回覚えてしまえばそんなに難しい操作ではない。機械の操作は得意な方だし、体に覚えさせれば”やるだけ”ならば造作のないことである。
「そうそう!いや~俗君、飲み込みが早くてまさに即戦力だね!よろしく頼むよ!」
「あ、はい」
そういって先輩バイトは作る側に回るために離脱する。
おいおいいきなり一人かよ、よっぽど。まあレジだけなら支障はないからいいが・・・
「すみませーん」
おっといけない。いかなきゃ。
バイト初日は特に問題はなく、その後も様々な業務を覚えていく俺であった。
「あ、芽音くん。今日は一緒だね!」
そんな感じでバイトをこなす俺。
レジの他キッチンにも回り、もともと食品を扱うのに慣れていた俺は割と早く習得できた。
そして遂に、何回かこなしたある日、花音と同じシフトに入る日がやってきた。
「ここじゃ花音の方が先輩だからな、色々教えてくれよな」
「えへへ~先輩かぁ~。うん、任しておいてよ」
なんてことない友人同士の軽口のたたき合い。
普段の花音からは想像できない姿ではあるが俺たちの間ではわりと普通のノリだ。
「んじゃ、でますかね」
「頑張ろうね」
よーし、芽音くんに教えるぞーと息巻く花音。
うん、俺もぜひ花音先輩にレクチャーしてほしいものだな。
※
「セット上がりました!あ、レジ入ります!いらっしゃいませー」
「・・・・はぇー」
「こら松原さん、ぼーっとしてないでキッチン回って!」
「ふぇぇぇ~わかりましたー」
よーし、芽音くんに教えるぞーと息巻いた私だったけど、そこで見た光景はあらゆることを難なくこなす芽音くんの姿。
あれ?これもしかして芽音くんの方が仕事できるんじゃ・・・?と考えていたらそれがぼーっとしているように見えたようで先輩バイトに少し怒られちゃった。
「俗君、このセットは!?」
「それ4番でお待ちのお客様です!」
「了解!松原さん、コレ4番の札もってる人のところね!」
「わかりました!」
指示された通り、4番の札を立てているテーブルに運ぶ。
そこにいたのはちょっと怖そうな二人組だったけど、置くだけ、置くだけ・・・
「失礼します、セットお待たせしました!」
「あーはいはいアリガトー」
「おっ、君可愛いねー!スマイル一つ頂戴スマイル!」
「えっ!?」
ど、どうしよう・・・こういうときどうやって対応したらいいんだろう・・・?」
「えっと・・・こうですか・・・?」ニコッ
「うぉ!マジ可愛い!君、バイト何時終わり?このあと俺たちと遊びに行こうぜ!なっ?」
「ふぇぇぇぇ!?」
「おお、可愛いね~!なんなら今から行く?」
「えっ!?」
「よし、決まり!俺たち怖い人じゃないから大丈夫だって安心しろよ~、ヘーキヘーキ、ヘーキだから!」
ふぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?
※
「松原さん、遅いわね。セットを運ぶだけなのに何分かかってるのかしら?」
「そういやそうですね。俺、見てきますよ」
「うん、よろしくね」
確かに遅い。花音の性格からしてサボるのはありない。だとすると一体どうしてしまったというのだろうか。
そんなことを考えながら進むと、あまりよろしくない光景が繰り広げられていた。
「ほら~、いこうよ~!」
「ふぇぇぇぇ無理ですぅ~・・・」
「無理かどうかは俺たちが決めること。俺たちは無理じゃないって決めたから」
「ふぇぇぇぇぇ~!?!?!?」
ハァ~~~~~~~~~(クソでかため息)
そこにいたのはクソみたいなカッコをした高校生二人組。
なーにやってんのあいつら・・・・・
あのさぁ・・・・
そんなことを言っていても仕方ない。花音を助けねば。
「お客様、いかがなさいましたか?」
「ん~?なんだテメエカンケーねーよ。失せな」
「そうおっしゃいましてもそちらのスタッフはまだ業務中でして。長時間お話になられると困ります」
「だからカンケーねえって!いい加減にしねえとボコっぞ?」
「それは困りますねえ。僕も仕事中ですし」
あーもうめんどくえなコイツら。
”丁寧な店員の仮面”を被るのも疲れてきたよ。
こいつらの暇つぶしに付き合っていられるほど俺たちは暇ではない。
それに早くこの異変を聞きつけて社員か店長来いってんだ。
「もういいや、こいつボコって終わりでいいんじゃない?」
「それもそうだな。オイテメエ!ついてこいや!」
「うっそぉ・・・」
「芽音くん!?」
二人がかりで引っ張られる俺。
あらいやだわ、若い男の子二人に腕を引っ張られるなんて人気者は辛いわね。
・・・なんてふざけている場合じゃない。今は俺はバイト中だし、こいつらに付き合う義理も暇もない。
「ほら君も一緒に行こうか?」
「ふぇぇぇ!?」
そんなことをいいやがりながら花音の腕も掴むゴミ①。
ん・・・・?花音の腕を掴むだと???????
イライラしているところにそんな光景を見せつけられた俺。
あの時と同じ、またしても何かが切れる音が俺の中でした気がした。
「おきゃーくさーまー・・・・そんな粗相をされては困りますねぇ・・・・!」
「は?えっ!?いででででででで!」
花音を掴むゴミ①の腕をガシッと掴んだ俺は花音からそいつを離し力いっぱいねじり上げる。
「おいテメエ!そいつを放しやがれ!」
そういいながら殴りかかるゴミ②。
さすがに俺も二人を一気に相手にするのはキツイ。
俺は考える。そう、ならば二人を一気に相手しなくていいようにしよう、と。
というわけで俺はそのパンチの軌道上、ちょうど拳が着地する位置になるよう・・・・
ゴミ①の顔面を引っ張って持って行ったのだ。
「ぐおおおおおおおおおお」
「オイ、大丈夫か!?」
予定通り、ゴミ②のパンチはゴミ①の顔面にヒット。
これは俺が直接殴ったわけじゃないからセーフ・・・セーフじゃない?
「バカじゃねえの(嘲笑)あ~手が滑ったぁ(棒読み)」
続けてゴミ②に向けてゴミ①の顔面を打ち付ける。
これも直接的にダメージを与えてるのはゴミ共だから多分セーフ!よしっ!(よくない)
地面で悶えるゴミ①、②。ここはゴミ集積場じゃないんだけどなあ。
「おい、俗君!何をやっている!?」
その声をきっかけに、俺はここで周りを見渡す。
そこにはざわつく一般客、騒ぎを聞きつけて現れた店長や他のバイトの姿があった。
「あっ・・・すまん花音。俺がここで働けるのは今日まで見たいだ」
それは俺の短いバイト人生に終止符を打った。
ただそれだけの、些細な出来事であった。
※
あの後、ゴミ共は事務所に連行されて、出禁の誓約書を書かされた。
ついでに店長が警察を呼んだようで、他の人の証言から俺は一応お咎めなし。
だけど俺はこの日付でバイトを辞めた。
なんでも俺の姿を見て怖がっている従業員が出てきたらしい・・・という口実だ。実際は正当防衛とはいえ暴れた俺を置いておきたくないのが本音だろう。
まあ、どちらにせよ本性の一片を出してしまった以上、あそこにはいられないだろうから、どちらにせよやめるつもりだったけどね。
「芽音くん・・・・あの、ゴメンね」
「なんで花音が謝るんだよ?」
「だってあの人たちの相手、ちゃんとできなかったからっ。それにバイトまでやめることになっちゃって・・・」
どうやら俺がこうなったことに責任を感じているらしい。
「別に花音は悪くないしさ。まあ仕方ない、他のバイトを探すさ」
「ううん、それだけじゃなくて。あのっ・・・芽音くんの過去を掘り起こすようなキッカケを作っちゃったから・・・」
「俺の過去??」
はて、なんのことやら。
「だって芽音くん、地元で・・・・」
「あっ!そういうことか」
花音がいいたいのはこうだ。
俺はが花咲川に来た理由。それは地元で暴力沙汰を起こしたから。
これは俺の中でトラウマになっている出来事で、今の俺を形成している要因である。
そして今回の出来事はそのことに近く、結果だけを見れば暴力沙汰でバイトを追い出された、という形に見えなくもない。
「だから本当にごめんねっ」
「不思議なもんだ」
「え?」
俺は今、思ったことを口にする。
「花音に言われるまで、自分が自分のトラウマに触れていることに気が付かなかった」
「ふぇ!?そうなの!?」
「ああ。なあ花音」
「なにかな・・・・?」
「多分、それは花音のためにやったからだと思うんだ」
「私の・・・?どういうこと?」
頭にクエスチョンマークを浮かべたような表情になる花音。
ぶっちゃけ俺自身も驚きを隠せないでいる部分もある。
「あの時の俺は理由もなく、ただただムカついて・・・手あたり次第にケンカした」
そう、拳を振るう理由。コレって結構重要なことなんだと実感する。
「でも今回は違う。花音を助けなきゃってちゃんと俺なりの正義を持ってやったことなんだ。その結果、俺はバイトを辞めるハメになったけど花音は何ともないし、俺自身も後悔していない。だから何も謝ることはないんだよ」
「芽音くん・・・」
「だからそんな暗い顔して謝んないで笑って過ごそうぜ。今この時、この一瞬は一度しかないんだしさ」
「うん、わかったよ。芽音くんがそういうなら私もそうする!」
相も変わらず、何の変哲もない帰り道。
うん、やっぱり花音といる時間は俺にとって特別なんだと実感する。
―いつまでも、いつまでもこの時が続いてほしい。
俺の本能が、そう言っていった。
「あ~でも芽音くん、さっきのはちょっと恥ずかしいセリフ・・・だったかな?」
「花音にツッコミを入れられる日が来るなんて?!」
ああ、平和だ。明日も、これからも、平和に過ごしたい。
そう願わずにはいられなかった。
次回は千聖回やりたいなあ・・・・
引き続きよろしくお願いいたします!
★9 峰風さん 水雪儚さん
ありがとうございます!