「なによー。久しぶりに地元の友達に会えたんだからもっと喜ぼうよ?・・・って隣のその子はなんなのかな?」
目の前にヤツがいる。
―清田美緒
俺の・・・俺たちの人生をめちゃくちゃにした張本人は悪びれずに云う。
「あの芽音くん、この人は・・・?」
「はじめまして!清田美緒っていいまーす!んーとねー・・・芽音君の元カノでーす!」
「ふぇぇぇ!?も、もとかの・・・・?」
それどころか大嘘まで吹き込む始末。
人に親友に手を出すクソさ加減は相変わらずのようだ。
「デタラメ言ってんじゃねえぞクソ野郎」
「まぁ!クソ野郎だんなんてひどーい!」
「大嘘つくからだろ。さっさと俺の前から消えろ」
「うわ~そこまでいう?ねーねーアナタ、こんなのと付き合ってて大丈夫ー?こいつはねー暴力を振るって暴れたり、女の子に暴言を吐くDV気質満載の最低野郎だよ?」
「その子に話しかけるな。花音、いくぞ」
俺は一刻も早くこの場から離れたくて花音の手を掴む。
「ちょ、ちょっと待ってよ芽音くん!いたいよ・・・」
「あっ・・・ごめん」
俺は無意識に力加減を忘れて花音の手を掴んでいたことに気付き猛省する。
「ほーら、そういう男なんだって!ねえねえ、芽音君が何をやってきたか、教えてあげようか?」
「やめろ!今となっては関係ないッ!」
俺は再び清田美緒という女に恐怖する。何をしでかすかわからない意味不明さは健在で、俺がぼんやりと花音に伝えていた過去を克明に覚えている人物だ。
しかもかつて俺と親友を引き裂いた実績付きである。
”もし、花音が清田美緒の話を聞いて俺に対する態度を変えたら?”
”清田美緒の都合のいいように吹き込まれてそれを信じてしまったら?”
そんな恐怖が俺を襲っていた。そして清田美緒はそんな俺のことなどどうでもいいといった風で、問答無用で話を始めた。
俺がどうして暴力沙汰を起こしたのか、喧嘩の生々しい描写、嘘は言わずいかに俺が凶暴で恐ろしい人物かを脚色して話す清田美緒。正直清田美緒の本性を知らない人からすると本当のことに聞こえてしまうくらい説得力のある話し方をしたのである。
「・・・というわけ!暴力は振るうわ、女の子に暴言吐くわ・・・・とにかくこいつから離れたほうがいいよ!」
「・・・あの・・・えっと・・・私、そもそも知ってるんです。芽音くんがその・・・人を傷つけてしまったってこと」
花音がそう言った瞬間、清田美緒の雰囲気が変わった気がした。
”想定外”
といわんばかりの雰囲気だ。
こう言ってはアレだが、花音は見るからに大人しく、争いを好まないように見える。清田美緒の目論見は俺の本性(脚色付き)を暴露して、花音にこう言わせたかったのだろう。
”最低、もう話しかけないで”
みたいな。しかし意外や意外、花音が俺の過去をある程度知ったうえで一緒にいることが判明したのだ。
自信満々に俺の罵詈雑言を並べた清田美緒からしたら困惑する答えだったのだろう。
「で、でも!暴力は暴力だし、それに女の子に暴言を・・・」
「それにねっ・・・!」
「・・・!」
ならば攻め方を変えよう・・・としたが花音はまたしても言葉を遮る。
「それに、知ってます。あの、芽音くんの口が悪くなる時は誰かのためになにかを言うときだって・・・」
「くっ・・・!」
「芽音くんと出会ってから、確かに怖い一面を見たり、口が悪いなあ・・・って思うこともあったけど」
「えっマジかすまん花音」
反射的に謝罪が出る俺。
「ううん。いいの。その・・・それは決まって私や千聖ちゃんのために何かをするときだったから・・・私は芽音くんがあなたの言うような人じゃなくて、他人のために行動できる立派な人だと思います」
花音は緊張気味に時々下を向きながらではあるがそう言い切った。
「な、なによ!せっかく人が親切で言ってあげてるのに!!あたしの忠告を無視する気!?」
それに対し狂ったようにヒステリックを起こす清田美緒。こいつこんなに気性の激しい奴だったか?
「ふえっ!?えっと・・・あのですね。急に出てきていっぱい芽音くんの悪口を一方的にいう人より、いままで一緒にいた芽音くんを・・・自分の目を信じたいなぁ・・・って。えっと、それだけです」
※
すべて杞憂だった。
”花音が俺を見る目を変えてしまうのではないか?”と少しでも思ったさっきの俺をぶん殴りたい。
「花音」
「なにかな、芽音くん?」
喚く清田美緒を無視して奴の目の前を離脱した俺たちは電車に乗って自宅の最寄り駅を降り、帰路につきながら話していた。
「その、さっきはありがとね。奴にハッキリいってくれたさ、正直すげー嬉しかった」
「ちょっと怖かったけど・・・うん、私は思ってることを言っただけだよ?芽音くんがそんな人じゃないっていうのはわかってるし」
「信じてもらえるってこんなに嬉しいものだな」
清田美緒と再会するという不幸があったが、それを上回る幸福があったので今の俺は大変気分が良い。
「でも花音があそこまで言ってくれるなんて思わなかった。いや、嬉しかったんだけどさ。なんかいつもの花音より強いというか、らしくないというか・・・うわ、何言ってんだろ俺」
あたふたする俺。しかし花音はそんな俺の姿をみて考えるしぐさをしながら話し始めた。
「うーん・・・そうだなぁ・・・それはね、私もちょっと思うところがあったんだ」
「思うところ?」
花音は振り返り俺のを目を見て、ほほ笑むとともにこう言い放った。
「私だって、大事な人を悪く言われたら怒るってことだよ」
その笑み、優しい声。それを直視した瞬間、俺は違和感を覚えた。
胸がうるさい。それとなんか体温が上がってきた。なんというかとにかく変な感じだ。
花音も結構恥ずかしいことを言った、という雰囲気が伝わってきて、顔がほのかに蒸気しているのが感じ取れた。
「あっ!お、おうち着いたね!?芽音くん、今日はありがとねっ」
「あ、ああ。ありがとう。楽しかったよ」
「じゃあまた学校でね!」
「お、おう。おやすみ」
なんというか勢いよくわかれた俺たち。
花音が家に入るのを見送り、その場に立ち尽くす俺。
「えっ。ちょ、待ってよ。これなに?」
今までに経験のない感情。もしかしてこれが恋愛感情なんだろうか?それとも特別な親友へ向ける類の愛情なんだろうか?
その感情の正体がわからない。
果たしてこれはなんなのか。俺は自問自答しながら帰路についたが、結局答えが出ないまま帰宅し、そのまま眠れぬ夜を過ごしたのであった。
次回は多分千聖さん回です。
引き続きよろしくお願いいたします!