仮面と海月と白鷺と   作:光の甘酒

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前回までのあらすじ

起きてしまった凶行。俗芽音との出会いを、そして何かを思い出す白鷺千聖。そして松原花音もまた、凶行が起きてしまうまでの日を回想する。


第2話 松原花音

これは私、松原花音の話だ。

あの日に至るまでの物語だ。

 

 

「そっち教室じゃないけど用事あるのかな?」

「え?え?え?」

「あ、ごめん!見えてないよね。同じクラスの俗、松原さんだよね?」

 

 

初めて話したのは学校の廊下。何も考えずに教科書を山積みで運んでフラフラしてた私を助けてくれたのが始まりだった。

 

 

「あの・・・改めまして松原花音です。助けてくれてありがとうございました」

「うん、俺は俗 芽音!同じクラスなのは知ってるかな?」

「ごめんなさい!まだクラスメイトのこと覚えて切れてなくて・・・特に男の子は・・・」

「いや、大丈夫だよ!慣れないだろうしまだ入学してそんなに経ってないからさ。ゆっくり馴染めばいいと思うよ。それで、なんでこんなところにいたの?」

 

 

最初に感じたのはなんか底知れないなぁ・・・って感じだった。

よくわからないけどすごく違和感がある人。一言でいうなら機械がそのまま正確に作業をしているのをみているような感覚だ。

でもその違和感の正体は意外とあっさり解明することになった。

 

 

「松原さん、あそこのコンビニで待ってて。俺、このお兄さんと話付けてくるから」

「え!?でも・・・」

「いいからいいから。平和的に、ね。帰れなくなると大変だから俺が来るまで待っててよ」

「う、うん・・・・」

 

 

 

クラスの親睦会の帰り、芽音くんと一緒に帰ったところ通行人の人にぶつかってしまった。でもその人が怖い人で、そこで芽音くんが助けに入ってくれたはいいけどその人に連れて行かれることになってしまった。

 

 

「おいおいお兄さん、話し合いするんじゃなかったんですか?」

「うるせー!話なんかせずにテメーをぶん殴って金貰ってそれで勘弁してやる!感謝しろ!」

「・・・本気でいってますそれ??」

 

 

芽音くんは待ってろっていったけど、私が招いたことだしどうしても気になってあとをつけて裏路地まで来てしまった。

相手の人からは怒りの気配を感じる。

でも不思議だったのが芽音くんからは恐怖や畏れのような気配は全く感じず、むしろ余裕まで感じるようだった。

 

 

「2、3回で勘弁してやるからじってしてろ!」

 

 

相手の人が殴りかかる。私は思わず目をつむってしまったが、聞こえてきたのは芽音くんの悲鳴ではなかった。

どうやら芽音くんは避けて相手の足を引っかけたようで、そのまま相手の人はすごい勢いで転倒する。

 

 

「・・・・ほらよ」

 

 

そのまま芽音くんの蹴りが相手の人に炸裂し、相手の人はそのまま動けなくなった。

 

 

「話っていうけどさぁ、俺今すんげーイライラしてんの。ただでさえ疲れるのにお前が絡んだせいで疲れ倍増。まじつらたんなの。わかる?この罪の重さ?」

「うぐおおおおお・・・・・」

 

 

それは芽音くんが隠していたであろう違和感の正体。怖いものをみてしまったけど、それ以上に芽音くんに感じていた変な感じの理由がわかったことの方が大きかった。助けてくれたという事実もあるのだろう。

 

その日、私たちはちゃんとした友達になった。

 

 

 

 

色々話すうちに”あ、千聖ちゃんと似てるな”って思ったんだ。

だから私が風邪で休んだ日、ノートを千聖ちゃんに見せてくれるよう芽音くんに頼んだ。そしたら案の定、千聖ちゃんと芽音くんは仲良くなってくれた。

そこに至るまで色々あったらしいけど大好きな友達同士が仲良くなってくれたのはとっても嬉しい。話を聞くに芽音くんが千聖ちゃんを助けたみたいだ。

 

 

「あ、芽音くん、千聖ちゃん!おつかれさ・・・・ま?」

「そうだ、本人に聞いてみよう。白黒はっきりするぜ?」

「望むところよ」

「あ、あの・・・二人とも・・・・?」

「「花音!」」

「は、はい!?」

「私と」

「俺」

「「どっちの方が好き!?!?!?」」

「ふえ・・・?ふぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」

 

 

・・・いささか仲良くなりすぎな気もするけど、これはこれでいいよねっ・・・?

 

 

 

 

私と芽音くんと千聖ちゃんの3人でご飯を食べたある日のこと。

千聖ちゃんがすっごく楽しそうだった。思えばあんなイタズラ(クラスメイトの前で思わせぶりな会話をしたり)をする千聖ちゃんは初めて見たかもしれない。

芸能人ってことでクラスの人たちは少し近づきづらいみたいだし、千聖ちゃんは千聖ちゃんでなるべく目立たないようにしているようだった。

だからこそ珍しい。やっぱりこれは芽音くんの力が大きいのかな。

 

 

「千聖ちゃん、なんだか今日は楽しそうだったな」

「そうなのか?」

「うん!なんかいつもよりいい感じだったかなあ。芽音くんのおかげかもね」

「そうだと嬉しいんだけどね。でも千聖、俺に当たりキツい・・・キツくない?」

「うーん、それだけ心を開いてくれてるってことだと思うよ?」

 

 

これは本心だ。私も千聖ちゃんとそんなに付き合いが長いわけではないけれど、あの千聖ちゃんが心の底から楽しさを感じているのはわかった。

 

 

「それにね、芽音くんもすごくいいと思う」

 

 

私は思わずそんなことを口にしてしまった。

 

 

「俺も?」

「うん。最初に話したときみたいに、無理してるっていうのかな?その感じが全然なくなってるよ?」

「・・・そうだとしたら花音や千聖のおかげだな。そういえばお礼がまだだったな」

「お礼?」

 

 

なんのことだろ・・・?最近は普通に過ごしてたしなにかしたっけ・・・?

 

 

「花音。その・・・なんていうか色々ありがとう」

「ふぇ!?急にどうしたの!?」

「いや、今俺がこうやって穏やかでいられるのも、千聖と出会えてこうやって3人で仲良くできるのも・・・あの時、花音が勇気を出してくれなかったら実現しなかったことだからさ」

 

 

思わず泣いてしまった。

ありがとうって言ってくれた。そして私のことを親友といってくれた。

私がしたことが芽音くん、千聖ちゃん、そして私との絆を紡いで、みんなが本心で笑えているのは私のおかげって言ってくれた。

嬉しくないわけがない。

嬉しくないわけがなかった。

 

 

 

 

芽音くんと千聖ちゃんのおかげで日常がどんどん楽しくなっていく。

私にもいろんな変化があった。でもその日常は唐突に終わりを告げたんだ。

 

 

「もう、お母さんったら・・・」

「まあいいじゃないか。なんだかんだ花音と二人っきりで出かけるってのも始めてだしいい機会だ」

「芽音くんと二人っきりってはじめてだよね」

「まさに俺も同じことを考えていたところだ」

 

 

 

ひょんなことから二人でお出かけすることになってしまった。

確かに二人っきりでお出かけするなんて初めてだから少し緊張している。

お母さんが変な気を利かせたおかげではあるけどたまにはいいかなって思えた。

 

 

「あ、電車来たね」

 

 

今日のお出かけ先はなんと乗り換えをして3駅先。

私一人じゃ同じく電車が苦手な千聖ちゃんとふたりではとてもじゃないけどいけないところだ。

でも今日は芽音くんがいる。そんな安心感を胸に電車に乗り込んだわけではあるのだけれど・・・

 

 

「ちょ、待てい!それは・・・!」

「え?」

 

 

芽音くんが驚いたような声が聞こえたときにはもう遅かった。

すでに扉は閉まり、私と芽音くんは分厚い電車の扉で分断されてしまった。

 

 

”この電車は~快速●●行です”

 

 

そんなアナウンスが聞こえる。

 

 

 

「かい・・・そく・・・?」

 

 

快速。快速って確か駅を飛ばさなかったっけ。

あれ?次に停まる駅の名前が違う。あ、飛んでる・・・

そんな・・・

 

 

「どどどどどうしよう・・・」

 

 

ピロン

 

 

Sakinari:花音、とりあえず落ち着け。俺もそっちに向かうから次の駅についたら合流しよう

 

 

芽音くんからメッセージが届いた。それをみてすごく安心する私。

うん、芽音くんの言う通りにしていれば大丈夫なはず。

 

 

松原花音:ごめんね!うん、できるだけわかりやすい場所にいるから着いたら教えてくれると嬉しいな

Sakinari:了解

 

 

 

 

「うわぁ~おっきい駅」

 

 

なんて感心しているけど心臓はばくばく言ってる。

私が早とちりしたせいで芽音くんとはぐれちゃって、しかも来たことがないような大きな駅にポツンと一人。

不安しかなかった。

 

 

「でもすぐ来てくれるっていってたから大丈夫だよね・・・?」

 

 

そう思いながらとりあえずわかりやすい大きな時計の足元に移動した。

他にも人がたくさんいて、どうやらここは待ち合わせスポットとして多く使われているようだった。

 

ピロンッ

 

Sakinari:駅についた。どこにいる?

 

構内を行きかう人たちをぼんやり流れていたらスマホが反応した。

どうやら芽音くんが駅についたみたいだ。

 

松原花音:大きな時計の足元にいるね

 

私でもわかったんだから芽音くんならすぐにわかると思う。

そう思って待っていたけど5分経っても10分経っても芽音くんは現れない。

それどころか既読すらつかない。

もうすぐ芽音くんと合流できる。そんな安心感を抱えていた私は徐々に不安を募らせていく。

 

 

「おかしいなあ・・・そうだ」

 

 

私は電話をかけること試みる。もしかしたらうまく受信できてないだけかもしれない。電話なら・・・

 

 

”おかけになった電話は、電波の届かないところにいるか電源が入っていないため、かかりません。おかけになった電話は・・・・”

 

 

「えっ・・・・?」

 

 

おかしい。ほんの10分前までは普通にメッセージが届いていたのに、それが急につながらなくなるなんて。

 

 

「もしかして、何かあったのかなあ・・・・」

 

 

でも騒ぎが起こっている気配はない。もし芽音くんの身に何かあって、仮に事件が起こっているんだとしたら少なからず騒ぎになっているはずだ。

 

 

「改札の方へ行った方がいいかな?」

 

 

そうだ、もしかして電池切れとか落として壊れちゃったとかかもしれない。

それなら改札の方に行けば絶対に会えるはずだよね・・・?

 

 

「大丈夫、来た道を戻るだけ。来た道を戻るだけだから・・・・」

 

 

改札からこに時計までそんなに歩いた記憶はない。なら来た方に戻るだけで改札に行けるはず・・・・いけたはずなのに。

 

 

「どこ・・・・?ここ・・・・?」

 

 

私の目の前に広がるのは知らない風景。少なくとも私が来た改札出ないのだけは確かだ。それどころか駅の構外に出てしまっている。

ふぇぇぇぇ・・・こんなところで方向音痴が発動しちゃうなんてぇ~・・・

 

 

「しょ、しょうがないね。また時計に・・・時計に・・・・・」

 

 

私は気づいてしまった。

 

 

「どうしよう・・・どっちからきたかわからなくなっちゃった・・・・」

 

 

その事実に気付いてしまった私の心は不安と焦りでいっぱいになる。

 

 

「ふぇ・・・・ふぇぇぇぇぇ・・・」

 

 

そしてその不安は限界を迎えてしまった。そのまま私は人目をはばかり隅に移動すると・・・静かに泣いてしまった。

 

 

―どうしよう

 

このまま芽音くんに見つけてもらえなくてこのまま動けなくて・・・

どうしたらいいんだろう。

冷静になって考えれば駅員さんに頼ったり、構内の交番にいったりいくらでも手段はあったのだけれど、この時の私はそこまで考える余裕なんてなかった。

 

 

「嫌だよ・・・芽音くん・・・芽音くん助けてよぉ・・・・」

 

 

思わず読んでしまう芽音くんの名前。でもこんな喧噪にかき消されれるような小さな声で呼んだところで聞こえるはずが―

 

 

「ああ。ごめん花音、待たせた」

「え!?」

「やっと見つけた」

 

 

聞きたかった声、見たかった顔。

それを視認した私はものすごい安心感を覚え、体の力が抜けて足がガクンときてしまう。

 

 

「おっと!大丈夫か?花音」

 

 

そこには額に汗を浮かべ、息を切らした芽音くんの姿があったのであった。

 

 

 

ああ、やっぱり。すごく安心する。

その姿はすっごくまぶしくて、安心して。私の中にはやっぱり芽音くんに対する特別な感情があるんだなって完全な自覚をさせた。

 

 

 

 

 

『もう彼女泣かすんじゃないぞ!』

 

 

私が泣きじゃくってしまったせいで勘違いされてしまい、お巡りさんのお世話になってしまい、落ち着いた私が誤解を解いたところ終わり際にお巡りさんにそんなことをいわれたのだった。

 

 

 

「でもさ・・・芽音くん。彼女だって。そんな風にみえるのかな・・・?えへへ」

「どうなんだろうな。まあ男女が並んで歩いてりゃ付き合ってる認定したがる奴はおおいからな~」

 

 

さっきのこともあってついつい嬉しくなってしまう私。

普段だったら絶対そんなこと言わないんだけど思わず言ってしまった。芽音くんはあまり気にしてなさそうだけど・・・

でもそんな帰り道。芽音くんは立ち止まり、そのまま固まってしまう。

 

 

「・・・・・!?」

「・・・?芽音くん、どうしたの?」

 

 

目の前にいるのは可愛い女の子。年は私たちと一緒くらいかな?

でも私のそんな考えとは裏腹に、芽音くんの表情は違った。

 

 

「なんで・・・お前がここに」

「芽音くんやっほー。ねえねえ新しい学校でも暴力振るってるの?」

 

 

感じるのは恐怖・・・遺恨・・・驚愕・・・?

とにかくいいものではなかった。

 

 

「なによー。久しぶりに地元の友達に会えたんだからもっと喜ぼうよ?・・・って隣のその子はなんなのかな?」

 

 

そういって私の方を向いた途端、すごくよくない感じがその子から伝わってくる。

 

 

「あの芽音くん、この人は・・・?」

「はじめまして!清田美緒っていいまーす!んーとねー・・・芽音君の元カノでーす!」

「ふぇぇぇ!?も、もとかの・・・・?」

 

 

自分でも素っ頓狂な声が出たと思う。でもそれくらい驚きだった。

そっか、そうだよね。芽音くんみたいないい人だったら彼女の一人くらいいたことがあってもおかしくない。

 

 

「デタラメ言ってんじゃねえぞクソ野郎」

「まぁ!クソ野郎だんなんてひどーい!」

「大嘘つくからだろ。さっさと俺の前から消えろ」

「うわ~そこまでいう?ねーねーアナタ、こんなのと付き合ってて大丈夫ー?こいつはねー暴力を振るって暴れたり、女の子に暴言を吐くDV気質満載の最低野郎だよ?」

「その子に話しかけるな。花音、いくぞ」

 

 

でもそれはなんだか違うようだった。

芽音くんからあふれ出るネガティブな感じは変わらず、それどころか嫌悪すら感じる。そして相手の子からは芽音くんについていろいろなことが出てくる。

そんなやりとりをしているうちに芽音くんがしびれを切らし、私の腕を掴んでその場を後にしようとした。

かなり焦っているのか、力いっぱい私の手を掴んでいる。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってよ芽音くん!いたいよ・・・」

「あっ・・・ごめん」

 

 

驚きと痛みで私はつい声を上げてしまう。

それを聞いた芽音くんははっとしたのかすぐに手を放してくれた。

 

 

「ほーら、そういう男なんだって!ねえねえ、芽音君が何をやってきたか、教えてあげようか?」

「やめろ!今となっては関係ないッ!」

 

 

そこから始まったのはいかに芽音くんが危ない人で、怖い人で、暴力的な人かの説明。その人の説明は真に迫っていてすごく説得力のある言い方だった。

私はチラッと芽音くんの顔を見る。

 

 

「・・・・ッ」

 

 

芽音くんは唇をかみしめ、悔しそうに、不安そうにしていた。

 

 

―そんな顔しなくても大丈夫だよ、芽音くん

 

 

私はぼんやり、そんなことを考えていた。

それと同時に、相手に対してのちょっとした感情が現れ始めた。

 

”あなたが芽音くんの何を知っているの?”

”何の権利があってそんなひどいことを言うの?”

”あなたは芽音くんのなんなの?”

 

そう、これは怒りだ。

そっか、私は怒ってるんだ。

 

 

「・・・というわけ!暴力は振るうわ、女の子に暴言吐くわ・・・・とにかくこいつから離れたほうがいいよ!」

 

 

言いたいことはそれだけ?

 

 

「・・・あの・・・えっと・・・私、そもそも知ってるんです。芽音くんがその・・・人を傷つけてしまったってこと」

 

 

そんなドライな感情とは裏腹に私の声はいつも通りだ。

どんな言い方をしたらわからないし、そもそも私にきつい言い方なんてできない。

あくまで、いつも通りのトーンで話す。

 

 

「で、でも!暴力は暴力だし、それに女の子に暴言を・・・」

「それにねっ・・・!」

「・・・!」

 

 

そんな私の反応を見て再び悪口を重ねようとしてきた。

どうにもイライラが収まらない私はつい上からかぶせる形で反論してしまった。その反応を見て芽音くんも相手の子も驚くような様子を見せる。

 

 

「それに、知ってます。あの、芽音くんの口が悪くなる時は誰かのためになにかを言うときだって・・・」

「くっ・・・!」

「芽音くんと出会ってから、確かに怖い一面を見たり、口が悪いなあ・・・って思うこともあったけど」

「えっマジかすまん花音」

「ううん。いいの。その・・・それは決まって私や千聖ちゃんのために何かをするときだったから・・・私は芽音くんがあなたの言うような人じゃなくて、他人のために行動できる立派な人だと思います」

「な、なによ!せっかく人が親切で言ってあげてるのに!!あたしの忠告を無視する気!?」

「ふえっ!?えっと・・・あのですね。急に出てきていっぱい芽音くんの悪口を一方的にいう人より、いままで一緒にいた芽音くんを・・・自分の目を信じたいなぁ・・・って。えっと、それだけです」

 

 

それ以上相手は何も言わなかった。芽音くんもなにも言わなかった。

 

 

「じゃ、いこっか。芽音くん」

「お、おう」

 

 

今度は私が芽音くんの手を引く。

 

 

「なによおおおおおお!」

 

 

そんな声が背後から聞こえてくるけど、私や芽音くんは振り返ることなくその場を後にした。

 

 

 

 

この日、事故にあった千聖ちゃんが無事に目覚め、病院の帰りでの出来事だ。

千聖ちゃんが目を覚ましてひと段落したはずだった。

 

 

「やっと見つけた・・・」

 

 

私たちは気づいていなかった。安堵から油断していたんだ。

 

 

「さあああああきいいいなりいいいいいいい!!!!」ドガッ

「・・・なッ!!!!!」

「きゃああああああああああああああああああああああ!」

 

 

吹き飛ぶ芽音くん。それをみた私は感情を抑えることができず叫ぶ私。

 

 

「あーっはっはっはっはっは!!!!!」

「いったい・・・なん・・・・で・・・・」

 

 

そして響き渡る不快な高笑い。

地面に伏し絞るような声を出す芽音くん。

すべてが混沌としたこの状況は誰にも理解することはできなかった。

 

 

「カッ・・・ガハッ・・・・!」

 

 

芽音くんはそのまま言葉を発することができず、清田美緒さんの手には血の付いたレンガが、そして私は足がすくみ、震えあがって動けなくなっていた。

 

 

「さき、なりくん・・・・!」

 

 

”おいアンタなにやってんだ!”

”とりおさえろ!”

”離せ!離せええええええええ!!!”

 

 

周りが異常を察知して騒ぎになった。

 

 

”キミ、大丈夫か!?”

 

 

私が正気に戻るころ。芽音くんは救急車で病院に運ばれ、私は手術中のランプが光る扉の前に座り込んでいた。

 

 




長い!!
そして既存の回想はここで終わり、次回は先に進みます。
スパンが長くご迷惑をおかけしますがバッドエンドにはなりませんのでご安心を。
引き続きよろしくお願いいたします。
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