仮面と海月と白鷺と   作:光の甘酒

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前回までのあらすじ
花音と千聖は自分たちの身に、芽音の身に何が起きたのを回想する。
そして、さらなる真実を紐解くべく、回想を続けるのであった。


第3話 居場所

芽音くんが凶行に倒れて数カ月がたった。

 

 

「芽音くん。今日から私たち、2年生だよ」

「いってくるわね。芽音」

 

 

未だ意識が戻らない芽音くんの病室によってから私たちは学校へ行く。

表面上は明るく振る舞っているけれど、私たちはあれ以来確実に変わった。

当たり前になっていた芽音くんのいる日常。こんなにも色あせて見えるなんて思ってもみなかった。

手術は成功したものの芽音くんは頭を強く打って意識が戻らない状態。事件の犯人、清田美緒さんは完全に私怨で事件を起こしたらしい。私も事情聴取を受けて色々と説明を受けた。

詳しいことは捜査上の秘密ということだけど、清田美緒さんが逮捕されたことだけは知っている。

あの日以来、私たちは関係性は変わらずともどこかぽっかり穴の開いたような生活をしていたのだ。

 

 

運命の日までまだ少し。ここからはそこに至るまでを少しふれてみようかな。

 

 

 

気分が落ち込む。趣味のドラムも満足にできず、いっそやめてしまおうとドラムを売りに出すべく楽器屋さんを目指していた。

 

 

「ふっふっふ・・・・いいもの、み――つけた!!!!」

「えっ、えっ!?あ、あの制服・・・花咲川の・・・?」

「そうよ!あたしは花咲川の1年、弦巻こころ!あなたの名前は?その荷物って楽器でしょ?」

 

 

それがこころちゃんとの出会いだった。

こころちゃんは駅前にもかかわらずアカペラで歌いだしたり飛んだり跳ねたりととにかくすごかったのだ。そんなこころちゃんに捕まってしまったのは楽器屋さんに向かおうとするも道に迷っていた私だった。

 

 

「さあ!ドラムをここで演奏するわよ!あたしが歌うわ!!!!」

「ふぇぇぇ~こんな人前で!?」

 

 

訳が分からなかった。本当に訳が分からなかった。

 

 

「一人でも上手に叩けないのに・・・こ、こ、こんな人前で無理です・・・」

「・・・?それはそうよ?一人で演奏しても、上手く叩けないなんて当たり前よ。だって、あなたが上手いかどうかなんてどうしてあなたが決めるの?人に聴いてもらわなきゃわからないじゃない!」

 

 

は、話が通じない。

それにこんな落ち込んだ気分で、芽音くんもいなくて自信も持てなくて・・・

なによりそんな勇気、持ち合わせていなかった。

 

 

「勇気なら、あたしがあげるわっ!あたし、今ここで歌うことがとっても楽しいの!あなたも一緒にドラムをたたいてくれたらもっともーっと、楽しくなるわ!!楽しくなったら笑顔になる!そうしたらね、上手いとか下手とかそんなこと、すぐどうでもよくなっちゃうんだからっ!」

 

 

滅茶苦茶な理論だ。やっぱり無理と断ろうにもこころちゃんはすぐにパフォーマンスを始めてしまい、私もそれに乗っかる形でドラムを叩くはめになってしまった。

 

 

”なにあれ?ドラムとボーカルだけのバンド?”

”いいぞいいぞ!もっとやれ~!”

 

 

「ふぇぇぇ・・・人が集まって来ちゃったよぉ・・・・」

 

 

でも、やり切った後はなんだろう、達成感っていうのかな?とにかく満足感があった。そしてなぜかその流れで私とこころちゃんはバンドを組むことになってしまい、無謀なメンバー探しの旅が始まったのだ。

 

 

「花音ー!来たわよー!」

「花音は儚いね・・・」

「かのちゃんせんぱーい!コロッケ食べる!?」

「花音さんお疲れ様です」

 

 

なんだかんだけで結成してしまったこころちゃん。これが私の新しい居場所。

これが”ハロー、ハッピーワールド!”だ。

芽音くん。私、しっかりやってるから。だから、目を覚ますの待ってるね!

 

 

 

 

事務所の意向で結成された異色のアイドルバンド。それが”Pastel*Palettes”通称パスパレだ。

ファーストライブは散々だった。いや、もはや散々で片付けられれば良いレベルだ。

事務所の指示で行った口パク、エア演奏が機材トラブルで露見してしまいSNSは大炎上。スタートから躓くどころか顔面からアスファルトに突っ込むレベルの大失態を犯してしまったのだ。

 

私は芽音の事件以来、今まで以上に仕事に没頭した。とにかくネガティブなことを考えないようにするため、そして芽音がいなくなった穴を埋めるためだ。でもそんなことをしてもその穴が埋まらない。改めて芽音の存在がいかに大きかったかを思い知った。

 

 

「もうこのグループはダメね」

 

 

あんな大失態を犯したグループが復活するなんて到底無理な話だ。

努力すればなんでもできると思い込んでいる研究生上がりのボーカル、モデル出身で純粋すぎる心が逆にあだになっているキーボード、技術は素晴らしいけどアイドルらしさのないドラム、天才で何でもできるけどイマイチ心の読めないギター。一緒にやっていくなんてとてもじゃないけど想像できなかった。

特にボーカルの丸山彩ちゃん。彼女はどんなひどい目にあっても、どんな誹りを受けようとめげず、挑戦していく。

なんで彼女があそこまでするかわからなかった。

 

 

「でも、だからといって・・・」

 

 

在籍している以上は私の仕事だ。どんな小さな仕事でも、無理な仕事でもやり切る。そうでないと芽音に申し訳が立たない気がした。

そう考えた私はスタッフに掛け合いパスパレの次の仕事であるアイドルイベントの仕事をとってきた。

これが上手くいけばパスパレは存続するし、ダメなら消えるだけ。判断するいい機会だと思ったからだ。

 

 

「・・・?どうしたのみんなびしょ濡れで」

「実は・・・」

 

 

その知らせをした数日後、事務所では雨でずぶ濡れになった彩ちゃん以外のメンバーがいた。

私の問いかけに対し、ドラムの大和麻弥ちゃんが答える。

どうやらチケットを駅前で手売りしていたらしい。しかし雨が降って中断したところ、彩ちゃんだけが残って売り続けているということだった。

 

 

「次の仕事があるから私は行くわ」

 

 

そんなことを言って退出したけど、なぜか私は彩ちゃんが気になって仕方なかった。

駅前についたら彩ちゃんがいた。チケットを売る声は雨にかき消され、通りかかる人は見向きもしない。

 

 

「彩ちゃん、あなたはどうしてそこまで・・・?」

 

 

雨にもかかわらず叫び続ける彩ちゃんは儚げで、でも芯の強さがはっきりわかった。

 

 

「お願いします・・・私たちの歌を・・・・」

「聞いてください!!」

 

 

気が付いたら私は駆け出し、声を出していた。

 

 

「え・・・?千聖ちゃん・・・?」

「彩ちゃん、チケットはまだこんなに残っているわよ?」

「・・・・」

「雨で声がよく聞こえないわ。もっと大きな声を出さないと歌声どころか聞きに来てくれる人すら集まらないわよ?」

「・・・うんっ!」

 

 

私はそんな中に”丸山彩らしさ”を見た気がした。

夢に向かって、どこまでも愚直に突き進んでいく。自分にはそれしかないからって自覚したうえであがき、夢を叶えようともがき続ける、とっても不器用な人。

 

 

「まるで芽音みたい」

 

 

チケットを売った帰り道、ふと口に出てしまった。厳密にはまったく違う。芽音はどこまでも計算して、先を読んで行動する。

でもその信念の強さがどこか似ているな、とも思った。

 

 

「なにかいった?千聖ちゃん?」

「いいえ。そろそろ事務所につくわよ」

 

 

その後はすごかった。あれだけ酷いことが書かれていたSNSは「雨の中チケット売る根性見直した」「またひたむきな彩ちゃんが見られて嬉しい」「口パクバンドって思ったけど頑張ってる」などプラスの口コミが増え始めたのだ。

そして歌が安定しない彩ちゃんにまた口パクさせるというスタッフの意向を押し切り、パステルパレットはイベントのライブを大成功させてしまった。

 

 

「そっか、ここが今の私の居場所なのね」

 

 

変わった人ばかりだけど、きっと私は嫌いじゃないのだろう。

 

 

「あ、千聖ちゃん!お疲れ様!!」

「チサトさん!ゴキゲンウルワシュウです!」

「あ、千聖さん!ベースの弦、新調しておきました!」

「おお、これでるるるんっ♪ってする演奏ができるね」

 

 

芽音、私、新しい居場所を見つけたわ。

役者として、アイドルとして、パスパレという居場所を守りながらあなたが目を覚ますのを待ち続けます。

だからいまはゆくっり休んで、早くいつもの感じで声を聞かせてくれるかしら?

 




時系列がガルパ本編に移行しました。登場人物も同じみの顔ぶれですね。
次回もすぐに更新します!3人の身に何が起きているのか、何が間に合わなかったのか・・・紐解かれていきます!
引き続きよろしくお願いいたします。
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