仮面と海月と白鷺と   作:光の甘酒

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2章からはサブヒロインを採用することになりました。
1人目は沙綾です!
メインヒロインたちの出番がない回も増えますのでかのちさ出せや!!って方もどうぞお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
楽しんでいただけるように頑張りますのでよろしくお願いいたします!!






第2話 山吹沙綾

「そういや沙綾、俗くんと昨日何かあったのか?」

「え?んーちょっと助けてもらったんだけどね」

 

 

練習に向かう前にうちでパンを買ってから行こうという話になり、その役目を私と有咲で買って出た。他の三人は先に蔵に向かい、私たちはパンの調達。店に向かう途中、有咲が私にこんなことを聞いてきたのだ。

 

 

「実はね・・・」

 

 

私は昨日あったことを思い出しながら有咲に語った。

 

 

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

私の新作のパンを買ってくれた男の人が会計を終えると、怒ったような顔をした女の人がレジにやってきた。

 

 

「いらっしゃいませー!」

「ちょっと!!!ここのパン食べたらお腹壊したんだけど!!!どうしてくれるのよ!!!」

 

 

突然ぶつけられる怒り。私はびっくりしてしまい、上手く返せなかった。

 

 

「なによ!だんまりを決め込むつもり!?」

 

 

参った。今お父さんは配達でいないしお母さんも買い物に出かけている。

私で対応するしかない。

 

 

「えっと。まずは申し訳ありません。お話を聞かせていただいても・・・」

「お話も何もここで買ったパンを食べたらお腹痛くなったの!!食中毒よ!?なんてものを売るの!?」

 

 

ダメだ、取り付く島もない。

 

 

「ちょっとお姉さん、少し落ち着いてくださいよ」

「なによアンタ!?」

「偶然居合わせた客ですよ」

 

 

そこで割って入ってきたのはさっきパンを買ってくれた男の人だった。

 

 

「クレームつけるなとは言いません。問題があったのなら店側が誠意ある対応するのが当たり前ですからね。しかし怒りに任せて怒鳴ってちゃ解決しませんよ」

「私は怒っているの!!あなた、店をかばうの!?」

「そうはいってません、俺は中立です。なので一度冷静になってくださいと言ってるんですよ」

「アンタには関係ない!とにかく!病院に言ってお金かかったんだから治療費と慰謝料をもらうわよ!」

 

 

ど、どうしよう・・・

こんな大きなことになるなんて。店にいるお客さんだけでなく道路を歩いていたお客さんもなんだなんだんと野次馬化していく。

 

 

「だから落ち着きなさいって。治療費や慰謝料を請求するならなおのこと事実関係をしっかりさせないと」

「何よ事実関係って。私が嘘をついているとでもいうの!?」

「なんでそうなるんですかね。お金を請求するなら手順が必要だって高校生でもわかりますよ。それに本当に商品に問題があったのなら何を売って何が悪かったのか店側も原因しらべなきゃならないでしょう?」

 

 

男の人は全然焦らず、むしろ余裕のある感じで返す。

 

 

「あなたがお腹を壊したパン、なんでした?」

「そんなの・・・あっ!これよ!この気味の悪い色をしたパン!!」

 

 

その女の人が指さしたのは私が考案した新作パンだった。

その指摘に私はすごく悲しい気持ちになる。

 

 

「へぇ・・・ちなみにお腹を壊したのはいつですか?」

「昨日よ!昨日の朝食べて、お昼ごろにお腹が・・・」

「それは間違いないですか?ほかのパンじゃなくて?」

「間違えようがないわ。昨日はそのパンしか買ってないもの」

 

 

それを聞いた瞬間、男の人はニヤリと笑った。

 

 

「はい!言質いただきました!!」

 

 

そういうと男の人ボイスレコーダーアプリの録音画面を見せた。

 

 

「おっかしいですねぇ~このパン、出たばかりの新作で今日が初お披露目のはずなんですけどね~。昨日存在しないものをどうやって食べてお腹壊すんですか?ん?」

 

 

 

・・・そっか

そうだ。このパン、今日から売り出したんだ。確かに昨日買えるはずがない。だって、存在していないのだから。

 

 

「なっ!?アンタ騙したわね!?」

「騙すって意味わかってます?アンタが勝手に自白しただけですよ。しかもアンタ結構慣れてるだろこういうの。個人店に言いがかりをつけて金をむしり取る小遣い稼ぎ」

「言いがかりはやめてちょうだい!!」

「言いがかりねえ・・・なんなら名誉棄損で俺を訴えますか?なんなら警察呼んで白黒つけてもいいですよ?もちろん俺は録音データを警官に渡しますけど」

「け、警察・・・」

「あんまナメたことしないほうがいいですよ」

「チクショオオオオオオ!」

 

 

そんなやり取りの後、女の人は叫びながら逃げていった。

 

 

「ありゃりゃ、逃げちゃった。大丈夫ですか?」

「は、はい。ありがとうございました!」

「大したことはしてないよ。それに・・・」

 

 

男の人は袋からさっき買った私の新作パンを取り出すと一口かじった。

 

 

「こんなおいしいパンでお腹を壊すなんて、そっちの方がどうかしてるよ」

「ほんとありがとうございました!でもよくここまで冷静に対応出来ましたね。私なんてあたふたしてただけなのに」

「いんや。話聞いてて最初から因縁つけに来てるのわかってたんで。うまいこと自爆してくれてよかったよ。おっとそろそろ時間がヤバい。んじゃ、俺はこれでいきますので」

 

 

 

 

「はぇ~かっけぇ~・・・」

「とまあそんな感じ。その後名前も名乗らず出て行っちゃって」

「やるなあ俗くん」

「そのあとお父さんも帰ってきて一応警察には相談したよ。また来たらすぐに通報してくれって」

 

 

そんな話をしながら歩いていると店についた。店に入ると沙綾のお父さんが出迎えてくれる。

 

 

「おかえり、沙綾」

「ただいま~っていっても練習用のパンを買いに来ただけですぐ行くんだけどね」

「そっかそっか。有咲ちゃんもいらっしゃい」

「こんにちは」

 

 

私たちはみんながリクエストしてくれたパンをトレイに乗せる。

すごく平和な時間。でもそんな時間も長くは続かなかった。

 

 

「オイコラ、ここか?オレの嫁に因縁つけたっていうパン屋は?」

 

 

見るからにガラの悪そうな男の人。その人がドアを勢いよく開けると突然怒鳴り声をあげた。その後ろには昨日因縁をつけてきた女の人もいる。

 

 

「そう、ここよ。早くやっちゃってよ」

「まあ待て。いちおー相手の話も聞いてやんねーとなあ。おいお前が店主か?」

 

 

そういって突っかかる男の人。これは・・・まずい気がする。

お父さんも突然の出来事で困惑している。他のお客さんや有咲も怯えたような目でその様子を見ていた。

 

 

「あ、そいつ!その小娘が私に因縁つけてきたの!!」

 

 

そして指をさされたのは私。

いけない、これはほんとうにまずい気がする。私自身、突然のことで頭が回っていない。

 

 

「テメーか!うちの嫁にエライ恥かかせてくれたみたいだけどよ・・・どう落とし前つけるんだ?あ?」

「娘には手を出さないでくれ!」

「うるせえ!ジジイは引っ込んでろ!!」

「お父さん!!」

 

そういってとびかかるが、あっけなく突き飛ばされるお父さん。

商品棚にぶつかり、いくつかパンが落ちる。

 

 

「あ、それよ!そのパン!その気味の悪い色をしたパンが原因!」

「これか?きたねー色だなあ」

「・・・ッ」

「まあいいや。俺たちは別にことを荒げるつもりはねえ。うちの嫁に治療費と慰謝料・・・昨日因縁つけてくれた分もコミで包んでくれりゃ退散してやるよ」

「バカなこといってんじゃねー!」

「なんだお前?関係ない奴は引っ込んでろ!」

 

 

足をガタガタさせながら声を上げてくれた有咲だったけど、怒鳴り声に委縮して黙ってしまった。これは私でもそうなる。声を上げてくれただけ有咲は勇気があってすごいと思う。

 

 

「んでどうする?払うのか払わねーのか?ま、後者なら店をめちゃくちゃに荒らしてやっから払わねーって選択肢はないけどよ」

 

 

 

 

ふむ。予想通りであったな。

実は昨日やまぶきベーカリーから出た帰り、例の因縁女を偶然発見し、今日誰かと再びやまぶきベーカリーを襲撃することを電話で話していることを聞いたのであった。

ここまでくると見過ごせないわけでやまぶきベーカリーに来たのであったのだが・・・

 

 

「すごいことになってるわね・・・」

 

 

偶然千聖と会ってしまい、なしくずしに一緒に来ることになってしまったわけだ。

 

 

「とりあえず千聖は警察に連絡してくれ」

「芽音はどうするの?」

「そりゃ俺がここに来た役割を果たすだけさ」

「警察が来るのを待った方がよくないかしら?」

「確かにそれも正解かもしれない。でも警察が来る前に店がメチャクチャに荒らされたら?山吹さんにけがでもあったら?」

「それは・・・・」

「自分の城で命かけて商売している人にそれは酷だろう。まあ俺がやるのは警察がくるまでの時間稼ぎ程度さ。俺もやられるつもりはない」

「はぁ・・・そうなった芽音は止められないか・・・・」

 

 

さて、いこうか。

 

 

 

 

「オラ!払うのか?払わねーのか?なんとか言えや!店ぶっ潰すぞ!!」

 

 

依然として怒鳴り声は店内に響き渡る。

お父さんは必死で抵抗しているけど私は怯えるばかりで黙ることしかできなかった。

 

 

「あれー?昨日の食中毒おばさんじゃないですか?まーた来たんですか?」

「え!?」

 

 

しかしそんなか空気が変わった。そこに現れたのは―

俗くんだった。

 

 

 

「お腹壊したんなら家でトイレにこもっててくださいよ。アンタの顔またみるなんてパンがまずくなっちゃうし」

「だれがおばさんよ!?それにアンタは昨日の!!」

「覚えててくれたのはいいんですけどあんま嬉しくないですね」

「おい、このガキなんなんだ?」

「昨日話した奴よ!」

「テメーがそうなのか!!」

 

 

ふむ、どうやら食中毒おばさんは俺のこともダンナに話していたらしい。

 

 

「あなたは?」

「こいつの旦那だ。昨日は嫁に恥をかかせてくれたみたいじゃねーか」

「へぇ!あなたが。ってことはさしずめ食中毒おじさんってところですかね?いや、それよりももっと下劣なうんこの擬人化ですかね?おっとパン屋でこの表現はいささか不適切ですか」

 

 

恐ろしいほど口が回り、相手を挑発する俗くん。

その挑発に相手は顔を赤くさせ怒りに震えている。

 

 

「ナメてっと殺すぞ?」

「きゃーうんこおじさんこわーい」

 

 

棒読みでさらに挑発を続ける俗くん。

 

 

「あんまでかい声で喋んないでくださいよ。うんこの臭いが移るんで」

「ぶっ殺す!!!!!!ってオイ!?」

 

 

その瞬間、俗くんはお店を出て裏路地の方へ走り出した。

 

 

「待てゴラァ!オイ、追うぞ!!!」

「う、うん!」

 

 

その後を追って店を出る相手二人。

私は見逃さなかった。俗くんが店を出る瞬間、私と有咲に目配せをしたことを。

 

 

”あとは任せて”

 

 

そう言ってる気がした。

 

 

 

 




仮面を被るのやめた芽音ってわりと自由にかけるんで好きです

引き続きよろしくお願いいたします!!

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