仮面と海月と白鷺と   作:光の甘酒

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長めになりましたが一区切りです!
よろしくお願いいたします!




-序章③-クラゲ大好き美少女と友達になったわけだが

さて、始まりました親睦会(死ね)

いくつかのテーブルに分かれ、男女4~5人で話をし、ローテーションするというシステムだ。

 

まあアイディアとしてはいいと思う。しかしなあ、男連中は気になる女子と少しでも仲良くなりたいのか下心満載のオーラが出ているし、女連中は品定めするかのような空気、緊張する空気等いろんなものが入り乱れている。

 

そしてその緊張オーラは違うテーブルにいる松原さんからとても強く出ていたのだ。

 

 

「ふ、ふえ~~~~」

 

 

ありゃりゃ。ガチガチに緊張しちゃって・・・

まあでも、なんとか話せているみたいだし俺は俺でやんなきゃなー・・・

 

 

「ねえ、俗君ってば!」

「ああ、ごめんね。考え事してたよ」

「もう!ま、いいや。俗君って一人暮らしなんだっけ?」

「うん、地元が遠いからね。さすがに通いは無理だから近くに賃貸を借りてるよ」

「すっごーい!大人だぁ!ねえ、今度遊びに行ってもいい?」

「機会があったらね(笑)」

 

 

うるせえ、なにいきなり人の部屋に来ようとしてんだ。

唯一の癒しポイントの自宅にまでくるんじゃねえっつの。

 

 

「お、俗の家?俺も行きたい!よっしゃ、今度いいモノもっていくぜ~お宝だよお宝」

「ちょっと男子~エロいものの話しないでよね~」

「ははは・・・・」

 

 

うるせえおめえのお宝なんかに興味ねえんだよ。

来るんじゃねえ、絶対来るんじゃねえ。来たら睡眠薬でも盛って地下室にでも閉じ込めてくれようか(ないけど)

 

 

「さて、次のテーブルに移動してくださーい!」

 

 

幹事の掛け声とともにテーブル移動。結局聞かれるのは同じようなことばかりでうんざりだ。ようやく最後のテーブルになると俺は疲弊しきっていた。

いやね、慣れない仮面被るのほんと疲れるの。

今日何回とれかけたかわかったもんじゃないよ。

平日は常に被りっぱなしだし休めるはずの休日ですらコレ。

ほんとたまんねーわ。正直キツい。マジできついの。

 

ああ、帰りたい、早く帰りたい・・・・・・

あ、最後のテーブルは松原さんと一緒か。

まあこの子なら話してても疲れないし、あとちょっとの辛抱か。

 

 

「ねえねえ松原さんと俗君て付き合ってるの?」

「・・・・・・・は?????」

「ふえ・・・・?ふええええええええええええ!?」

 

 

クラスメイトの放った爆弾。まさに不意打ち。何を言ってんだこいつ。

何がどう転んだら俺と松原さんが付き合ってるようにみえるんだよ。

 

 

「んなわけないでしょ(笑)そんな噂経ったら松原さんに失礼だよ(笑)」

「え?!そんなそんな!俗君に対して失礼だよ~・・・」

「いやだって結構二人が一緒にいるところ見たって人いるよ?」

「「あれは違くて!」」

 

 

二人の声が重なる。

 

 

なんてやりとりをしていると「やっぱり息ぴったり・・・・」とクラスメイト達にからかわれたのであった。

 

 

さて親睦会(くたばれ)が終わったところで解散になった。

2次会でカラオケに行くということだったが、正直行きたくなさMAXで疲労困憊。

“家事やんなきゃいけないから”と断った。

そこからはいくやつらといかない奴で別れ、俺も帰ろうかな・・・・と踵を返すと明らかにあたふたしている松原さんの姿があった。

 

 

「まさかねえ・・・・」

 

 

正直めんどくさかったが乗り掛かった舟だ。

俺は彼女に近づく。

 

 

「松原さんは帰らないの?」

「えっと・・・そのつもり・・・なんだけど・・・」

「まさか帰り道がわからないとか・・・?」

「ふえっ!?なんでわかったの?」

 

 

正解かーい!

 

 

「ええ(困惑)それでよくここに来ようと思ったね・・・・」

「ふ、普段この辺には来ないけど・・・スマホのマップ見れば大丈夫だと思ったんだけど方角がわからくなっちゃって・・・・」

「地図も読めないんだ・・・・」

 

 

考えてみれば行きも怪しかったもんなあ・・・

しゃーねえ。

 

 

「家はどこ?」

「え?えっと・・・」

 

 

聞いた場所は意外や意外。俺の借りている賃貸からそう遠くないところだった。

はぁ~~~~ほんと特別。仕方ない。

 

 

「俺の家の近くじゃん。近くまで送っていこうか?」

「いいの?」

「いやここでダメって言ったら松原さん帰れないでしょ」

 

 

そんなこんなで二人で帰路に就く。

他の奴らが解散した後でよかった。こんな姿を見られていたらまたよからぬ噂が立つに違いないしな。

 

 

「松原さんってなんか趣味あるの?」

「趣味・・・かどうかはわからないけどドラムとかやるよ」

「ドラム!?すげえ、バンドマンか!」

「ふふっ・・・そんな大したものじゃないよ。でも最近あまり自信が持てなくて・・・」

 

 

今日の俺は口がよく回る。それは松原さんも同じようだ。

らしくねえけどまあたまにはいいだろう。どうせ帰宅するまでの数十分の間だ。

 

 

「それで―」

 

 

ドンッ!

 

 

少し会話に夢中になってしまったせいか、松原さんは通行人にぶつかってしまった。

 

 

「あ、ごめんなさい・・・」

「ってーなー。うわーこれ折れてるわーいってー」

 

 

そこにいるのはパリピ系の男。

なんだこの白々しいクソ棒読みは。

 

 

「折れて!?大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃねえよー。おー痛えー。償いしてもらわなきゃな―」

 

 

なんでこんな戯言を真に受けちゃうかね?

あんなんで折れたらお前の骨どうなってんだって感じよ。

ふ菓子だって折れねえぞあんなんじゃ

 

 

「それは大変ですね!まずは病院へ行って診断書をもらって、それから話し合いをしましょう!」

「あん?なんだお前?」

 

 

乱入する俺。

ハァ~~~~(糞デカため息)

このまま平和に終わると思ったのになんでこうなっちゃうかなあ・・・・

しかも昭和並みの古臭いネタで絡んでくるアホが相手ってこれ絶対なんかあるパターンじゃん。

黙っていたほうが問題が大きくなるパターンじゃん。

しゃーねえ・・・・

 

 

「本当に折れているなら治療が必要ですし、費用を出すには病院へ行かないとわかりませんよね?あ、救急車も呼びましょう!それと一応警察にも行ったほうがいいですか!?」

「チッ・・・めんどくせえなおめえ・・・・」

 

 

よしよしこのまま諦めて消えろ。

これは因縁をつける相手には俺が良く使う手だ。因縁をつけてくるならその内容を肥大化させて大げさにしてしまえばいい。

もちろん正論を混ぜてね。

 

 

「じゃあそっちのカノジョと話させてもらおっかな」

「そこは去っていくところでしょ!?」

「おめえには聞いてないわ!んでどうすんのお嬢ちゃん」

「ふぇ!?」

「ふぇ、だなんてかわいいね~~~そうだ、今からお兄さんと一緒に遊ぼうよ!こんな頼りなさそうな男放っておいてさ!それで許してあげるよ」

 

 

頼りなくて悪かったな。

許してあげるってお前骨折はどうした骨折は。

ていうかなんだこいつ日本語通じてないの?どこの国の方なの?

アホなの?バカなの?

 

 

「で、でも帰らないと・・・・」

「ダイジョーブダイジョーブ!夜遊びくらい1回経験しとくと世界が変わるよ!」

 

 

松原さんと話してて忘れてたけど、俺は疲れていたのを思い出してだんだんとイライラしてきた。

あーめんどくせー。ほんとめんどくせー。

松原さんも結構限界みたいだ。

 

 

「遊ぶんなら俺が相手になりますよ」

「だーかーらーダサい男にはキョーミないの!いこうぜカノジョ」

 

 

プチンッ

 

 

何かが切れちゃう音がした。

あ、これ俺からだ。

 

 

「松原さん、あそこのコンビニで待ってて。俺、このお兄さんと話付けてくるから」

「え!?でも・・・」

「いいからいいから。平和的に、ね。帰れなくなると大変だから俺が来るまで待っててよ」

「う、うん・・・・」

 

 

コンビニに入店する松原さんを見送ると、俺はアホに向き直った。

 

 

「さて、話し合いをしましょうか」

「てめー・・・勝手なことしやがって。ムカついた。ついてこい!」

 

 

そうして俺は腕を掴まれ、引っ張られるような形で裏路地の方へ連れていかれた。

その様を松原さんがコンビニの窓からおびえた様な目で見ていたのは印象深かった。

 

 

 

 

「話っていうけどさぁ、俺今すんげーイライラしてんの。ただでさえ疲れるのにお前が絡んだせいで疲れ倍増。まじつらたんなの。わかる?この罪の重さ?」

「うぐおおおおお・・・・・」

 

 

地面に這いつくばる男。それをゴミを見るような目で見降ろす俺。

 

 

「もういいよね?じゃあ俺帰るから」

「ま、待ちやがれ・・・」ガシッ

 

 

俺の足を掴むヤロウ。

 

 

「あのさ・・・お前、この前まで中坊だった高校生に負けてさ、さらに醜く抵抗して恥ずかしくないの?」

「舐めやがって・・・不意打ちで勝ったからって調子に乗るな・・・!」

「不意打ち!?あのねえ、お前から殴り掛かってきたじゃん!事実のねつ造はよくねーぞ?一応警告ね。すぐに手を放してそのまま俺たちのこと忘れろ」

「だれが・・・!」

「あーーもうめんどくせーーー。こっちは疲れてんだよ。愛想振りまいてストレスマッハなの!もういいや、強制的に忘れてもらうことにするから」

 

 

俺は手を緩めない。軽く意識が飛ぶ程度に攻撃を加えて、それを終えると俺は踵を返し、松原さんの待つコンビニへ向かう。

はず・・・だったんだが・・・・

 

 

「俗・・・くん?」

「松原さん?なんでここに・・・・?」

 

 

俺が奴を眠らせた裏路地の入り口付近。

そこにはコンビニいるはずの松原さんが立っていた。

 

 

 

 

「あの、ごめんなさい!私・・・やっぱり気になって・・・」

 

 

あーーーーーーーーーーーーーーーーもーーーーーーーーーーーどーーーーでもいいやーーーーーーー

もーやだーつかれたーーーーーーー

 

 

「見てたのかよ?」

「う、うん」

「あーあ。短かったなー。明日から俺は本性が全校に知れ渡って腫物扱いかよ」

 

 

俺は思い出す。中学の時の事件・・・俺がここに来ることになったキッカケの事件。

あのときの俺は、停学が解けたあとの俺はまさに腫物を扱うかの如くだった。

他のクラスメイトは怯え、教師も異常に気を遣う。推薦で決まっていたはずの合格は取り消され両親には責められる。

あの時のトラウマがまーた戻ってくんのか・・・・

 

 

「ハァ・・・・みたでしょ?あれがホントの俺。普段クラスメイトに振りまいてる愛想はぜーんぶウソ」

「じゃあ私との会話も全部・・・?」

「それはどうだろうな。取り繕ってたのは認めるがお前との会話だけは何となく疲れなかった。今となっては意味をなさないけどな。他人を脅すほど度胸もねえし、このままお前がバラしたら俺は終わり。ちゃんちゃん(昭和)って感じ」

 

 

ぜーんぶ台無し。まさか入学数週間でダメになるとは。まぁ元々ボッチ貫くつもりだったしそれが早まるだけか。

あと2年と11か月ちょっとあるけど・・・・

 

 

「・・・わないよ」

「あ?なんだって?」

「いわないよっ」

 

 

何言ってんだこいつ。言わない?何を?俺の本性を?

 

 

「寝言は寝て言えよ」

「寝言じゃないよ・・・・それに、その。私、何となく・・・気づいていたから。俗くんが無理してるの」

「・・・どういうこったよ?」

「あの、私も自分に自信がなくて・・・ずっと他の人の顔とか雰囲気とかを伺いながら過ごしてきたの。俗君は話してて楽しいけどすごく無理してる感じがしたから、なんでだろうってずっと思ってて・・・・」

 

 

こいつはたまげた。松原さんも俺と同じ、人の雰囲気に敏感なんだ。

 

 

「それに今日すごく疲れてたよね?それなのに私のためにここまでしてくれて・・・感謝こそすれど俗くんのマイナスになることなんてしないよ?」

「・・・なんでそこまでするんだよ」

 

 

驚きのあまり俺は聞いてしまう。

そして彼女から帰ってきた答え、それは・・・・

 

 

「えっとね!その、俗くんが・・・・はじめてできた、男の子の友達・・・だからかな・・・」

 

 

そういい終わったあと、顔を真っ赤にして伏せてしまう松原さん。

それを見た俺は自分の顔がぬれていることに気が付いた。

 

 

「ふぇ!?俗くん泣いて・・・?」

 

 

俺は物事を湾曲させて考えすぎていたかもしれない。

考えてみろ、松原さんが人の嫌がることをしたりする奴だったか?

いままで話す限りそんなことはあり得ない。そんなことわかりきっているはずだ。

松原さんは俺が本音で話してないのを見抜き、そのうえで友達と言ってくれたんだ。松原さんにしてみればどれだけ勇気のいることだったんだよ?

 

つまり、この涙は屈折した考えを持っていた自分への情けなさと、そして純粋な嬉しさによるもの。

我慢できなくなってボロボロと涙が出てくる。

 

 

「あのあの、ごめんなさい!いやだよね・・・私みたいなのと友達なんて・・・」

 

 

―違う、そうじゃない。

 

 

「違う、そうじゃないんだよ!」

 

 

ビクッとする松原さん。

だが俺は続ける。

 

 

「俺はこんな奴だ。地元で暴力沙汰を起こして逃げるようにここに来た。振りまいてた愛想も全部作り物の仮面。こういうやつなんだよ」

「・・・でもそれが本当の俗くんでこれ以上はないんだよね?」

「ああ、そうだな。正直コレ、かなり素だぞ」

「やっと本音の俗くんがみられたな。あのね、私の前ではそれでいいから・・・その・・・よかったらまた話し相手になってくれませんか?」

「本当にいいのか?こんな奴だし元来口もすげー悪い。松原さんを怖がらせてしまうかもしれない」

「うん、大丈夫。それにめんどくさいとか疲れたとかいいつつ私のこといつも助けてくれる俗くんが、心の底では優しいって知っているから」

「・・・・よく恥ずかしくないねそのセリフ」

「ふええええええ!私ったらなんでこんな・・・!?!?!?」

 

 

我に返ったのか沸騰したタコのように顔を染める松原さん。

そんな彼女の姿を見た俺は、声が震えないように息を吸い込み、そしていう。

 

 

「松原花音さん」

「は、はい!」

「改めて俺と・・・友達になってください」

 

 

それを聞いた松原さんは一瞬、驚いた顔したがすぐに微笑み、こう返した。

 

 

「はい、喜んで」

 

 

これが俺と松原さん・・・・花音と俺が本当の意味で出会った日の顛末だ。

これから俺はクラスメイトの前ではいつも通り、そして花音の前では素をだすという感じになり、かなり楽になった。

 

 

そしてこの出会いからちょっとしてー

俺はもう一人、かけがえのない女性と出会うことになる。

 

 




花音が1年生の時に出会うってあんまなかったパターンだと思うんですけどいかがでしょうか?
次回、違う人物のプロローグになります!

感想などもお待ちしております!
引き続きよろしくお願いいたします。

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