仮面と海月と白鷺と   作:光の甘酒

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この町治安ヤバい・・・ヤバくない・・・?




第7話 上原ひまり

「オイコラてめーら!表のドアとカーテン閉めろ!早くしろ!!」

「ひまりちゃん!!」

「つ、つぐ・・・・」

「とりあえず言う通りにした方がいい。俺がやります」

 

 

怯えるつぐみちゃん。

指示に従う俺。

そしてひまりちゃんを人質にとり拳銃を手に興奮する男。

これが今、羽沢珈琲店で起きていることだった。

 

 

 

 

「こんにちは」

「あ、芽音さん!いらっしゃいませ!!」

 

 

俺は羽沢珈琲店に来ている。

つぐみちゃんの依頼で新作のスイーツの品評をしてくれないとの依頼があったためだ。

 

 

「あー芽音さんも呼ばれてたんだ!」

「ひまりちゃん」

 

 

席について待っていたところやってきたのは上原ひまりちゃん。

ひまりちゃんとは羽沢珈琲店に通ううちに知り合いになった。つぐみちゃんの幼馴染で、さらにバンドのリーダーをやっている子らしく女の子らしい元気いっぱいの子だ。

 

 

「ひまりちゃんもいらっしゃい」

「ひまりちゃんも一緒とはね。うん、楽しくなりそうだ」

「やだ~芽音さんったら口が上手いんだからあ~」

「(おだてられて喜ぶ近所のおばちゃんみたいだ)」

「新作の試食はひまりちゃんにいつもやってもらってるんですけど、お父さんが最近男の子の感想も聞いておきたいっていうから今回は芽音さんにもきてもらったんです」

「なるほどそういうことね」

 

 

合点がいった。確かにメインターゲットは女性とはいえカップルも来るだろうしテイクアウトしていく男性客も多い印象だ。

そういう意味では俺は年齢もメイン層に近く適しているかもしれない。

 

 

「つぐみ、私は買い物に行ってくるからおふた方に出して差し上げなさい」

「あ、はーい!」

「すみませんね、どうしてもいかなきゃならなくて。もうラストオーダーは終わっているので他にお客さんは来ません。ゆっくりしていってください」

「ありがとうございます」

「つぐのお父さん、ありがとうございます!!」

 

 

マスターはそういうと入り口の札を準備中に裏返し、店を出ていった。

 

 

「さあ、ではまず一個目からいきますよー!」

「おーおいしそう!!」

 

 

 

 

「それでモカがいうんですよ~やっぱりひーちゃんはひーちゃんだねーって。ひどくないですか!?」

「あはは、モカちゃんは相変わらずだね」

「もう~!笑い事じゃないですよー!」

「でもひまりちゃん、あれはさすがに・・・」

「む~つぐまでぇ・・・」

 

 

一通りの試食が終わりレビューを伝えると、一息ついて雑談する俺たち。

 

 

「あ、そうだ。甘いものが続いたのでよかったらこれどうぞ」

「お、コーヒーか。ありがとう」

 

 

つぐみちゃんが持ってきたのは2つの淹れたてコーヒーだ。

いい香りが鼻孔をくすぐり、気分が良くなる。

 

 

「あれ?マスターは出かけているとうことは・・・」

「は、はい。私が淹れましたどうでしょう・・・?」

 

 

つぐみちゃんは緊張するように俺たちがコーヒーを口に運ぶさまを凝視している。

 

 

「・・・・うん、おいしいよ」

「ほんとですか!?」

「うん。確かにマスターほどの洗練さはないけど一生懸命淹れたのがわかるしなんだろう、すごく優しい味がする。きっとつぐみちゃんはいいバリスタになれるよ」

「よかったぁ~!ありがとうございます!」

「ほんとつぐもコーヒー淹れるの上手くなったよね~」

「ひまりちゃん、結構味の違いわかる派?」

「・・・じつは全然。でもつぐの家のコーヒーだけはブラックでもいけちゃうので特別なんだと思います!」

「も、もうひまりちゃんったら」

 

 

そんな感じで照れるつぐみちゃんはとてもかわいいと思う。

まあ実際美味いんだから仕方ないよね。

そんな感じで笑いが絶えない羽沢珈琲店の一風景。

しかしそれは突然終わりを迎え、この場は混沌とした恐怖に包まれる羽目になる。

そう、一人の男が店に入ってきたのがすべての始まりだった。

 

 

「いらっしゃいませ。ごめんなさい、もうラストオーダー終わってて・・・きゃあ!?」

「え!?つぐ!?きゃあああああ」

「なに・・・!?」

 

 

男は何も言わず、興奮した様子でつぐみちゃんを突き飛ばし、奥にいたひまりちゃんを捕らえるともっていた拳銃をこちらに突き付け叫んだ。

 

 

「オイコラてめーら!表のドアとカーテン閉めろ!早くしろ!!」

「ひまりちゃん!!」

「つ、つぐ・・・・」

「とりあえず言う通りにした方がいい。俺がやります」

 

 

あ、これ多分あれだ。立てこもりだ。

相手は拳銃を持っている。隙をついて攻撃すれば無力化できるかもしれないがひまりちゃんがとられられている今、それは現実的ではなく下手に抵抗するべきではない。

俺は言われた通りに入り口のシャッターを下ろし、カーテンを閉め、外が確認できる部分をすべて遮断した。

 

 

「よし、それでいい。おいそこの娘!」

「は、はい!?」

「110番に電話して俺の要求を伝えろ。逃走用の車と極道会組長を連れて来いといえ!」

 

 

つぐみちゃんはガタガタ震えながら電話を手に取る。

 

 

「俺は何をすればいいでしょうか?」

「お前はなにもしなくていい。でも妙な真似はするなよ?妙な真似したらこいつの頭が吹き飛ぶぞ」

「さ、芽音さん・・・・」

「・・・わかりました。わかりましたからせめてその子を放してもらえませんか?なんなら俺が変わります」

「ダメだダメだ!要求が通るまでとにかくお前はおとなしくしていろ!」

 

 

こうして突如始まった、俺とつぐみちゃん、ひまりちゃんを巻き込んだ拳銃籠城戦が始まってしまった。

その外にはすでに警察官が多数押し寄せ、包囲している様子が雰囲気で分かったのであった。




NextサブヒロインはAfterglowの上原ひまりちゃんです!
引き続きよろしくお願いいたします!!

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