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「ねえ有咲さん聞いてもいいかな」
「・・・なに?」
「空気重くね?」
時は少し遡り、ちゆちゃんのマンションに行く前である学園祭翌日。
俺は風紀委員の後処理を生徒会室にて行っていた。
生徒会室にいるのは俺と有咲さん二人。白金会長と紗夜さんは羽丘の方に出向いて処理をしていていない。
花咲川サイドの簡単な処理を任せられたため来たのであるが・・・
こう、有咲さんの空気がめっちゃ重かった。
「大体察してんだろ?」
「まあそれは」
ポピパのライブができなかったことであろう。
結成1周年記念ライブ。思い出になるはずがならなかったという事実は高校生にとって酷なことであろう。
「おたえと沙綾がさ」
「うん」
「おたえは自分のせいだって自分を責め続けてて、沙綾はとにかく元気がない」
「・・・だよね。沙綾さんの学校での雰囲気、どんよりしてたし」
「香澄とりみはフォローに回ってくれるんだけどどうにも上手くいってなくてさ」
有咲さんの話は止まらない。 有咲さんも今回はフォローに回る側になっているけど、この様子だと結構限界が来ているみたいだ。
「有咲さんってさ」
「なんだよ」
「口は悪いしツンツンしてるけどめちゃくちゃ優しくていい人だよね」
「ちょま!?突然何を言い出すんだよ?」
「思ったことを言っただけですが」
「んなことねーよ!・・・たださ、うちら結成の時も色々あってさ。いろんなもん乗り越えてきて強い絆で結ばれてる・・・そう信じてきたのに今こんなじゃん。本当に大丈夫かなって不安になんだよ・・・・」
「ふむ、俺が見てる限りポピパのみんななら大丈夫さ。人間なんだ。すれ違いなんて1度や2度じゃない、何度だってする。それはその都度乗り越えていけばいいし、乗り越えた分、絆は強くなるもんだよ。今までもそうだったんでしょ?」
「・・・・確かに」
「有咲さんは有咲さんのスタイルを貫けばいい。大丈夫、君は間違っていない」
俺は語る。俺自身そうだったんだ。
最初は仮面を被って軸がブレブレな良いクラスメイトを演じる。
でもそこで花音や千聖と出会って救われて、仮面を被る必要のない今に至る。
その間にもいろんな出来事があったもんだ。
「ってか芽音ってけっこー恥ずかしいこと平気でいうよな」
「自覚はあるさ。たまにはこういうのもいいでしょ?」
「ま、ありがとな。少し楽になった」
そういって有咲さんは笑い、生徒会室を包む空気が少し軽くなったのであった。
※
「いらっしゃいませー・・・あ、芽音くん」
「や、沙綾さん」
さあ最後の砦だ。
ちゆちゃんとの話を終えた帰宅途中、俺は山吹ベーカリーに寄った。
閉店間際の時間なので客は俺一人のようだ。
俺は残り少ないパンから適当に選び、トレイに乗せてレジに向かう。
「360円です」
「ちょうどで」
「ありがとうございます」
会計をするがやはり沙綾さんはどうにも元気がない。
やはりライブのことを何かしら引きずってるのだろう。
「ねえ沙綾さん。この後って時間あるかな?」
「・・・え?」
「もうすぐ閉店でしょ?もし時間があるなら・・・」
そんな話をしていると奥から沙綾さんのお母さんが出てきた。
「沙綾、いってきていいわよ」
「でもご飯の準備が・・・」
「今日はとても調子がいいから私がやるわ。せっかくだからお友達と話して来たら?」
※
「話って何かな?」
「有咲さんから聞いたよ」
「やっぱそのことかあ」
沙綾さんはなんとなく察していたようで、こちらに視線を向けた。
「学校で見たときもなんとなく落ち込んでるの雰囲気で察したからさ。やっぱ気になっちゃって」
「・・・少し話を聞いてもらってもいい?」
沙綾さんは自らのことを語る。ポピパ結成前に違うバンドをやっていたこと、そのバンドのファーストライブ直前にお母さんが倒れてしまいバンドをやめることになったこと。そのあとポピパと出会いバンド再スタートさせたこと。
「あの時香澄が私を見つけてこれたから。りみりんやおたえがいたから。有咲さんが優しくしてくれたから、私はここにいる。でも・・・」
話を続けて聞くとRASのボーカルが花園さんの幼馴染らしく、さらにバンド自体もガールズバンドの中では最高クラスのパフォーマンスを誇るらしい。
そんな凄いバンドのギターにヘルプといえ抜擢され、高見を目指す花園さんをみて、さらに結果的にポピパの記念すべきライブよりそのバンドを優先する形になってしまったこと、そのことを受け花園さんがショックを受けてこのままポピパを離れてしまうんじゃないかと思えて怖いこと。
そのすべてを吐露し終える頃には沙綾さん目からは涙があふれていた。
「私は5人でポピパでいたい。おたえにいってほしくない・・・!でも怖い・・・怖くて言えないの・・・」
グスグスと鼻をすすりながら心の内をさらけ出す沙綾さんをみて、俺は思った。
こんな姿を見せてくれるまで俺のことを信用してくれているんだ。俺が何もしないわけにはいかない。
「沙綾さんってさ。すっごく優しい人でいつも周りに気を配って。本当にすごい人だと思うんだ」
「え・・・?」
「俺が沙綾さんと出会ってから抱いた感想だよ。でもだからこそ、それが弱点でもあると思うんだよね」
そう、それこそが今回を乗り切るキーとなることである。
「周りのことを気にしすぎて、色んなことに気を配りすぎて逆に判断ができていない状態っていうのかな」
「・・・芽音くんはすごいね。うん、その通りだよ。昔もそうだった。ポピパに入る前の私なんか特にそう」
「その時はポピパのみんなが沙綾さんの手を引いてくれたんだよね?じゃあ今度は沙綾さんが手を引く番じゃないかな?」
「私が?」
「そう。さっきもいったけど沙綾さんのその優しさはいいところであり弱点でもある。周りのためにはなるけど自分のためじゃあない。ではどうすればいいか?」
沙綾さんは腫らした目で俺をじっと見て、俺の次の言葉を待つ。
「今度は沙綾さんが自分のために動いて、ワガママをいって、花園さんや他のみんなに本音をぶつければいい。いかないでって。花園さんにちゃんと伝えるんだ」
「・・・大丈夫かな?嫌われたりしないかな・・・?」
「逆に聞くけどみんなが沙綾さんを嫌いになると思う?」
「それは・・・」
「大丈夫。有咲さんだってすごく心配してたよ」
「有咲が?」
「うん。有咲さんってツンデレだし妙に達観してるところあるからアレだけど、俺が見てわかるくらい気にしてた」
「そうなんだ・・・」
「沙綾さん、君には仲間がいる。1年間苦楽を共にして音楽に打ち込んで、いろんなことを乗り越えるたびに絆を深めた仲間がね。これは有咲さんにも言ったことだけど、困難やすれ違いってのは1度や2度じゃない、何度だって来るんだ。でもその都度それを乗り越えれば絆はもっと深まる。仲間っていうのはそういうものだよ」
「芽音くん・・・」
「俺が保証する。俺なんかの保証が何の役に立つかはわからないけどね」
「ううん。ありがとう。なんか、やるべきことが見えてきた気がする」
そういう沙綾さんは涙交じりの笑顔になっていた。
うん、これなら沙綾さんの方は大丈夫そうだ。
「いい笑顔になったじゃないか。さて、長いこと話しちゃったね。あまりおそくなってもよくないしこの辺で切り上げようか」
「うん!・・・でも芽音くん。なんで私たちのためにここまでしてくれるの?」
疑問形で訪ねてくる沙綾さん。なんだそんなことか。
そんなの決まっている。
「俺だって仲間・・・仲間だよね?」
「・・・・ぷっ!あははは!そんな心配そうにしないでよ。うん、そうだね。芽音くんだって仲間だもんね」
「あーよかった。これで”え・・・?仲間?”とか言われたら恥ずかしさで悶絶死するところだわ」
「それ以前にだいぶ恥ずかしいこと言ってような気がするな~」
「うう・・・掘り返すのはやめてくだされ・・・・」
うむ。沙綾さんも調子が出てきたようだ。
「んじゃ改めて頑張ってね。陰ながら応援しているからさ」
「うん!本当にありがとね!」
そういう沙綾さんの背中に迷いはない。
いや、まだあるのだろうが行くべき道を決めたというべきだろうか。
多分これでポピパは大丈夫だ。俺はそんな確信を胸に、パンを片手に帰路についたのであった。
※
数日後。5人揃った元気なポピパをみることができたのであった。
そして時は流れポピパの主催ライブが開催された。
ポピパ、Roselia、Afterglow、ハロハピ、パスパレと最近話題のガールズバンドが勢ぞろいである。これだけ揃うのはサークルというライブハウスで行われたというガールズバンドパーティ以来だとか。
ライブは大盛況。全バンドセトリを無視した大暴れといった具合でスタッフさんが目を回していたのは記憶に新しい。
それにどうなることかと思っていたちゆちゃんも招待された来たわけだが、演奏中ノリノリで見ていたのは微笑ましかった。
そしてライブは終わり帰り道。主催ライブに参加したバンドは打ち上げに向かったらしい。
「ちゆちゃん」
「サキナリ?」
「芽音さん!お久しぶりです!!」
「パレオさんもこんばんは」
一人で帰っていたところ帰宅途中のちゆちゃんとパレオさんに会った。
まあ厳密には会うように仕向けたわけであるが
「さっきは楽しそうだったね」
「そうなんです!チュチュ様ったらー可愛いんですよ~」
「うんうん、ちゆちゃんって結構そういうとことあってね。リハビリ施設でも・・・」
「ちょっと!本人の前でそうこと話さないでくれるかしら!?」
おっとストップがかかってしまったようだ。仕方ない。
「それにポピパ?Roselia?そんなの私がぶっ潰してやるわ!」
「ぶっ潰すとはまた物騒な」
「チュチュ様のぶっ潰すとは、バンドの世界で勝ってNo.1になるって意味なので悪意はないんですよ~」
「わかってるよ。ちゆちゃん、人を傷つけることはしないし。いい子だからね」
「だから本人の目の前でやるのはやめなさいよー!!!!!!!」
そんな感じでパレオさんと二人がかりでちゆちゃんをいじる。
おっと、そろそろ本題に入るか。
「ギターは見つかりそうかい?」
「・・・まだよ」
「ってことは打ち込みか」
「ええ。でも順次オーディションはやってるわ」
「なかなかいい方が見つからないんですけどね~」
「そんな君にコレを。・・・の前に連絡先交換しない?」
「そういえばそうね。わかったわ」
「パレオもお願いします!」
ひとまず連絡先を交換する俺たち。
そして俺はすぐさま、とある動画のURLを張りつけ、送る。
「・・・?これは何かしら?」
「多分、ちゆちゃんが今一番求めているものさ。上手くいくかはちゆちゃん次第だけどね」
「・・・動画?」
俺が渡したのは学園祭で撮影されたある動画がアップロードされているURLだ。
ここにはおそらくちゆちゃんが求めているものが映っていると確信している。
「まあ時間があるときにでも見てみなよ。んじゃ、俺はこれで・・・と思ったけど」
時間が時間だ。夜道を中学生(一人は年齢的にはだけど)を二人で歩かせるのは少々気が引ける。
というわけで送っていくことにした。ちゆちゃんは強がって断ってきたがそのまま押し切った次第である。
そしてマンションに到着し、ちゆちゃんと別れる。
「・・・ありがとう」
「どういたしまして」
「それではチュチュ様、明日また参りますので~」
ちゆちゃんがマンションに入っていくのを見届け、今度はパレオさんを駅まで送ることにした。
※
「さてパレオさんも駅まで送るね。・・・いや、今はレオナちゃんでいいかな?」
「なるほど・・・さすがですね。芽音さん」
「そ。人の雰囲気ってさ、大体話してるとわかるのよ。俺は人一倍そういうのに敏感なだけ。昔はね、いい子ちゃんの仮面を被って自分を殺しながら過ごしてたりもした」
今さら隠すことではないしおそらくこの子は同族だ。
俺は軽いジャブを打ってみることにした。どうやらそれはあたりだったようだ。
「俺は君がパレオでもレオナでも構わない。君自身が今辛い思いをしてるのでなければ俺が口を出す問題じゃないしね」
「お気遣い感謝します。大丈夫ですよ。無理なんてしてませんし、私を暗闇から拾い上げてくれた”ちゆ”をパレオとして支えるって決めたのは私ですから」
「なるほどね。わかったよ。あの子は色々と突っ走るところがあるけどいい子だから・・・おっとこれはレオナちゃんの方が詳しいかもね。まあそういうわけだからちゆちゃんのこと、よろしく頼むね」
「はい!たとえ世界中の人がチュチュ様の敵に回ってもパレオだけは味方で居続けます!!」
曇りのない満面の笑み。
レオナちゃんは、最後はパレオになりそう言い切ったのであった。
そしてその後・・・
RASのギターが正式に決定したという知らせが入ってきたのであった。
※
ある日の休日。
スマホが鳴る。そこには沙綾さんからのメッセージが届いていたのであった。
というわけでいろんな要素が入ってまいりました。
ちなみに話の構成としては第2部でサブヒロインをメインに進め、第3章が最終章を予定しております。
かのちさだけでいいんだよ!って方はしばらく退屈かもしれませんが、頑張って書きますのでどうぞお付き合いくださいませ。
引き続きよろしくお願いいたします。