仮面と海月と白鷺と   作:光の甘酒

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サブヒロイン決着沙綾編スタートです!

そういや前回のイベント、登場人物がイヴ以外この作品のヒロインとサブヒロインが(チュチュのをぞいて)勢ぞろいでしたね。
物凄い偶然で少しびっくりしました。




第16話 √山吹沙綾

「うーん、ごめんね。こんなこと頼める人、芽音くんくらいしかいなくて」

 

 

沙綾さんに呼び出されて店に行くと呼び出された理由が分かった。

沙綾さんだけでなく有咲さんも一緒だ。

 

 

「気持ちは嬉しいんだけどさ、その気がないのに期待させるのはかわいそうだと思ってハッキリいったつもりだったんだけど・・・」

「むしろそれをポジティブに捉えて激化していると」

 

 

ある日、沙綾さんが一人で店番をやっていると一人の男性が声をかけてきたらしい。それは近くのお坊ちゃん学校に通う人で、それなりに山吹ベーカリーにパンを買いに来ていると。

 

「いらっしゃいませ~」

「あの、俺と付き合ってください!!」

「・・・・え?」

 

 

店には沙綾さんとその男子生徒のみ。

そのタイミングを見計らってかその男子生徒は突然、沙綾さんに告白をしたというわけらしい。その男に対してどういった対処をするか。それが今回の相談というわけだ。

 

 

「えっと、あの・・・」

「友達からでも構いません!!」

「・・・ごめんなさい。私そういうの全然考えられなくて。あなたのこともよく知らないですし」

「これから知ってください!きっと俺のこと好きになりますから!」

「(うわーすごい自信)・・・本当にごめんなさい。あなたとはお付き合いできないです」

「なんでですか!?あ、そういうことですか!」

「・・・・?」

「きっと俺の努力がまだ足りないんですね!好きって気持ちが伝わり切ってないんですね!なるほど。ではもっと男磨いてきますし店にも毎日通いますから!」

 

 

そう言い切って出て行ってしまったらしい。

うーん、なんというかすごい奴だな。自分の都合のいい方にしか考えられないというか無駄にポジティブというか。しかしアレだなー振られてるのに無駄にポジティブになってアピールを続けるのって・・・ストーカーの典型例じゃないか?

 

 

「それだけならいいんだけどね~・・・本当に毎日お店に来るし、中には学校の帰りとかお店の前とかで待ってることあってさ・・・」

「本当にストーカーやんけ!」

「やっぱ芽音もそう思うか?沙綾から話聞いてから私も心配でよ・・・それでなんかないかって考えたんだけど・・・・」

「なんかいい手段あんの?」

「えっと・・・それは・・・」

 

 

沙綾さんが言いかけたところで店のドアが開いた。

 

 

「山吹さん!来たよ!」

 

 

ああ・・・こいつがそうか。

なるほど、ぱっと見はさわやかなイケメンではある。しかし話を聞く限り自分に自信を持ちすぎるストーカー気質のある奴のようなので注意しなければならない。

俺は沙綾さんが出す困惑の雰囲気を肌で感じ、俺は瞬時に状況を悟った。

 

 

「・・・君たちは?」

 

 

 

親しげに話す俺と有咲さんに向けてそいつは嫌悪感を纏う。

正確には俺に対してだけであるかもしれないが。

 

 

「私は沙綾の友達。んでこっちが沙綾の彼氏」

 

 

突然何を言い出すんだこのツンデレ金髪ツインテールは・・・?

沙綾さん方をチラ見すると申し訳なさそうに話を合わせてくれとアイコンタクトを送ってくる。

ああなるほど。さっき言いかけていたお願いってのはこのことか。

 

 

「山吹さん!?どういうことなの!?」

「えっと・・・」

「今そっちの子がいったでしょ。悪いんだけどそういうことだからさ。人の彼女に手を出さないでくれるかな?」

 

 

俺は話を合わせる。しかしこういうストーカー気質のある奴、さらに自分に自信を持っている奴に通じるかどうか。仮に俺と沙綾さんが本当に付き合っていたのだとしても略奪を狙ってきそうな雰囲気がある。

 

 

「ふ、ふざけるな!俺のことを弄んだのか?」

「そんなこと・・・私、ずっと断ってきましたよね?」

「嫌よ嫌よもスキのうちっていうじゃないか。駆け引きされていたのだと・・・俺のこと試していたのか思っていたのに・・・」

 

 

うわ、こいつマジでヤバい奴だ。どれだけポジティブなんだ・・・?

 

 

「それは押し付けが過ぎるってものでしょう。実際、沙綾さんは断ってたんだし勝手に勘違いして勝手に舞い上がって勝手にここまでやったのはあなたです」

「うるさい!ねえ山吹さん、こんなやつやめておきなよ!こんな見るからに軟弱で貧乏そうな奴。こんなやつじゃなくて俺の方がずっとキミを幸せにできる!お金だってあるし腕っぷしにも自信がある!ねえ、いいだろ?」

 

 

うーん、これは救いようがない。世間知らずというかきっと今までも金の力で色々乗り越えてきたんだなってのが分かる。

うーん、人間のクズがこの野郎

 

 

「・・・まって」

「え?」

「黙って!!!!!」

 

 

すると突然沙綾さんが叫んだ。

 

 

「あなたに芽音くんの何が分かるんですか?お金?腕っぷし?ふさわしい?そんなこと、あなたが決めることじゃないです!」

「な、なんだよ?口ごたえすんなよ」

「いくらお金があっても、腕に自信があっても・・・人間性に問題があったらお断りです!どんな人でも私の大切な人の悪口を言うのは許せません・・・二度と来ないでください!!」

「くっ・・・」

「・・・というわけだ。君さ、今のこの状況すごくカッコ悪いよ。生まれ変わって出直してきな」

「くっそおおおおおおお!」

「あ、逃げた」

 

 

顔を真っ赤にして走り去る奴の背中を見ながら俺たちはほっと一息ついた。

 

 

「なんかゴメンね。まさかこんなことになるなんて」

「いや、大丈夫だよ。それにさっき言ってくれたことは普通に嬉しいしね。大切な人・・・うーんいい響きだ」

「か、からかわないで///ご、ごめんなさい、私その、夢中で」

「おまえらーいちゃつくなー」

「有咲!?いちゃっ!?」

「何言ってんだこのツンデレ金髪ツインテール」

「おまっ!?誰がツンデレ金髪ツインテールだ!?」

「あ、心の声漏れてた」

「さーきーなーりー!!!」

「うわ、ツインテール振り回してペシペシするのやめろ!」

 

 

澤〇・スペ〇サー・〇梨々かあんたは

 

 

「あははは!やっぱ芽音くんに頼んでよかった」

「お、笑顔に戻ったね」

「おい芽音、後で覚えておけよ」

 

 

うーん、後が怖い。ま、仕方ないね。

 

 

「・・・・あ、そうだ」

「どうしたの有咲?」

「なあ芽音、今日はあいつは帰ったけどさ。今後も現れないとも限らないじゃん?」

「うん、確かに」

「そこでだ、しばらく彼氏のフリしてしばらく沙綾と一緒に帰ったりしろよ」

「有咲!?」

 

 

有咲さんはそう提案し、沙綾さんは驚きの声を上げる。

 

 

「いやだってさ、万が一また来たら沙綾一人で対処するの怖くね?」

「確かになあ・・・ああいうタイプってここまでなっちゃうとムチャしそうだしね。あいつより俺の方が魅力的だってことを証明する!みないな感じできて」

「・・・それはちょっと怖いかも?」

「よし、決まりっ!じゃあ芽音はしばらくの間、学校が終わったら沙綾を迎えに行くこと!わかったな?」

「乗り掛かった舟かー。了解」

 

 

そんな感じで突然俺は沙綾さんの彼氏(仮)となった。

そうういえば昔、千聖の彼氏の役をやったりもしたなー

あ、そうだ。一緒に帰ることもある花音や千聖にはこのこと話しておかないとな。

そんなことを考えながら俺は一日を終えるのであった。

 

 

 

 

「つーわけで沙綾、頑張れよ」

「あ、有咲あ・・・」

「大丈夫だって。せっかくチャンスが巡ってきたんだし、これを機に一気に行っちゃえよ」

 

 

 

芽音くんが帰った後有咲と話したのであるが、「やはりさっきの提案は有咲の思惑通りだったようで、気を遣って芽音くんと二人きりになれる時間を増やしてくれたのだ。

 

 

「だ、大丈夫かな・・・?」

「大丈夫かどうかは私にもわかんねーけどさ。その沙綾が抱く気持ちは本物だろ?いずれは打ち明けなきゃいけないんだし、その前の下積みだよ」

「・・・そうだよね。せっかく有咲が私のためにやってくれたんだもん。私、頑張る!」

 

 

有咲は本当に私のことを応援してくれている。

その応援にも応えたいし、なにより今日の出来事で芽音くんに対する好きの気持ちが増大した私を自分でも止められる気がしなかったのだとその時に気が付いてしまった。

 

 

 

 

「あいつより俺の方が魅力的だってことを証明する!山吹さん、迎えに来たよ!」

「本当に言うのか・・・(困惑)」

 

 

沙綾さんと帰るようになってちょっとしたある日。

ストーカー野郎(後付光朗(あとつけみつろう)という名前らしい)が本当に現れてしまった。

 

 

「おい俗 芽音!俺と勝負しろ!」

 

 

そしてそれはとてもめんどくさいことになっているのだなとわかったのである。

 

 

「勝負って何?じゃんけんでもする?」

「ふざけないでもらおう。男の勝負といったら喧嘩だろう?」

「そうはいうけどね。それ決闘罪っていう犯罪だから」

「俺が怖いのか?」

「話聞いてた?怖いとか挑発されたところで結局それ犯罪なの。なんで法を犯してまで君の相手をしなきゃならないの?頭がいいのは見た目だけで本当はバカじゃろお主」

 

 

あきれ顔で返す俺。そんな風にあしらわれたのが癪に障ったのか後付は怒りの雰囲気を纏いこちらに近づいてくる。

 

 

「舐めるのもいい加減にしろ!!!」

「危ない!」

 

 

殴りかかってくるやつ。

それをみて叫ぶ沙綾さん。そして体を少し横にずらし後付の足元に足を延ばす俺。

 

 

「ぶべっ!?」

「うわー顔面ダイブとか痛そうだなオイ」

 

 

俺が伸ばした足に引っかかりそのまま躓いて地面に顔面ダイブする後付。

うむ、実に痛そうである。

 

 

「き、き、キサマ~!!!」

「断ってんのに勝手にキレて勝手に突っ込んできて勝手に人の足に引っかかってコケてさらにキレるってお前の頭ン中どうなってんですかね?」

「絶対に許さん!」

 

 

おおっと。スタンガンなんてもの取り出しやがったよ。

 

 

「さすがお金持ち坊ちゃん。護身用武器もお高いものをお持ちで」

「くたばれ!!!・・・ってえ?」

「いくら立派なオモチャをパパに買ってもらおうと当てなきゃ意味がない。ふむ、これって正当防衛だよね?襲われたからやむを得なく無力化するだけなので」

 

 

 

俺は奴の腕を掴みながら思案する。

これなら決闘に応じたことにならないし一方的に危害を加えられたゆえの反撃だ。

そう考えた俺は奴の腕を一気にねじり上げる。

 

 

「いでででででで!」

「お前じゃ俺に勝てない。わかったろ?さっさと俺たちの目の前から消えてくれよ。放課後デートの最中なんだ」

 

 

そう凄んでみると捩じり上げた腕から落ちたスタンガンを拾い、そのまま逃げていった。うむ、やはり大したことないやつであった。

 

 

「ごめん沙綾さん、怖かったよね」

「ううん、でもまさか本当に来るなんて」

「まだしばらく続けた方がいいかもね、この関係」

「うん!!」

「うお、びっくりした!」

 

 

嬉しそうに声を上げる沙綾さん、きっと奴へのリスクが俺の存在で軽減されるのが嬉しいのだろう。

しかし沙綾さんって普通に可愛いよなあ

(仮)といえ彼氏やってると本当の彼氏になれた人はさぞ幸せなんだろうと思うよ。

 

 

「そ、それじゃ。放課後で、デートの続きしよっか///」

「そうだね」

 

 

なぜかモジモジする沙綾さんの提案を受けまた歩き出す。

その日のその後から何日かは至って平和であった。

何日か・・・は。

そう何日か後に俺はまた奴の襲撃を受けることになるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 




√というタイトルですがIFや分岐、個別ルートというわけではありません。

そしてお気に入り700突破FOOOOOOOO!!!(紡木吏佐さんリスペクト)
本当にありがとうございます!!
評価や感想もいっぱいお待ちしております!

引き続きよろしくお願いいたします!!

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