仮面と海月と白鷺と   作:光の甘酒

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前回の投稿かた半年!?うせやろ・・・
ゆっくりですが最終回に向けて進めていくので引き続きよろしくお願いいたします。




第1話 悪女の復活とスキャンダル?

「なんじゃこりゃ」

 

 

俺は今銀行にいる。

通帳の記帳や生活費の引き出し、固定費の支払いなどのためであるのだが・・・

 

 

「多すぎませんかね」

 

 

その正体はバイト先の事務所から振り込まれた給与の額。

中小企業サラリーマンの月収程度の金が振り込まれており困惑するばかりである。

 

 

「経理が間違えたか?」

 

 

そう思い川崎さんに電話したところ、予想に反した回答が返ってきたのである。

 

 

「合ってる・・・?」

「はい、合ってます」

「いやあでもれ、さすがに多すぎませんかね?」

「そんなことないですよ。労働時間、危険手当、時間外手当諸々合わせて時給換算するとそれくらいはいきます。本当はもっと渡したいくらいなんですけどね。いかんせん未成年でアルバイトなので色々と厳しくて・・・」

「いやあそれもで多いですよ」

「そんなこと言わずに、それはあなたが頑張った成果です。遠慮なく懐に入れてください。もちろん所得税は控除済みなので全部使っても大丈夫です」

 

 

とまあこんなやり取りがあったわけである。

一応大金なので親にも相談したら”あんたが働いた成果でしょ?よこせなんていわないからあんたの好きに使いなさい”とのこと。

素晴らしきかな自由主義。

 

 

「というわけで羽沢珈琲店にきているわけです」

「なるほどねえ」

 

 

そしてここは羽沢珈琲店。暇だったもあり花音と千聖を呼んでお茶会に耽っているわけである。もっとも千聖は仕事で遅れてくるらしいのであるが。

 

 

「今日は俺が出すから好きなものいいよ」

「そういうわけにはいかないよ」

「いいっていいって。日頃世話になってるしさ」

「うーん、じゃあ甘えちゃおうかな」

 

 

俺たちはメニューに目を向ける。

 

 

「じゃあ俺はこれを」

「え、これって・・・」

「支払いは大丈夫だよ。花音は?」

「私はこのセットで」

 

 

俺が指さしたのはこの店で一番高いコーヒー。

お値段なんと時価。値段がわからずしかもバカ高い。以前つぐみちゃんから聞いた話によると、まず頼む人はいないらしいがオーナーの趣味で置いているらしい。

注文を取りに来たつぐみちゃんもまさかこれのオーダーを受ける日が来ると思っていなかったらしく驚きを隠せていない。

 

 

「お待たせしました」

 

 

そして運ばれてくるコーヒー。うむ、香りが違う。

少しコーヒーにこだわり始めた素人でもわかる香りのよさである。

素晴らしきかなコーヒーブレイク。一生懸命働いた甲斐があったというものである。

 

 

「いらっしゃいませ~あ、千聖さん!」

「花音と芽音は来ているかしら?」

「あちらに」

「ありがとう」

 

千聖が席にやってくる。

今日は来客が多いようだ。つぐみちゃんが忙しそうにしている。

 

 

「お待たせ」

「そんなに待ってないから大丈夫さ」

「千聖ちゃん、お疲れ様」

 

 

千聖も注文を終え、しばらく談笑に耽っていた俺たち。

しかし突然、横から声が聞こえた。

 

 

「お隣の席、よろしいかしら?」

「大丈夫ですよ・・・なっ!?」

「やっほ、芽音。みなさんお揃いで」

 

 

 

そこに姿を現したのは・・・清田美緒であった。

俺も千聖も花音も、驚きのあまり絶句してしまう。

そして一番初めに我に返ったのが俺であった。

 

 

「てめえ。こんなところにまで現れやがって」

「もう、そんなに目くじら立てなくてもいいじゃない。別にとって食おうってわけないんだから」

「存在自体が危険なんだよてめえは」

「うふふ、否定できないわね」

「謝りたいとかいって虎視眈々と俺への復讐の機会をうかがっているってところか?」

「もう、信用ないなあ」

 

 

当たり前だ。お前が俺にやったことを考えたらそういう結論にいきつくのは当たり前のことであろう。

 

 

「あ、それとね。私の名前・・・」

「おいなんだこのコーヒー!ムシが混入してるぞ!!」

 

 

清田美緒が何かを言いかけた瞬間、違う座席から響き渡る声。

声の主の方に目を向けると男が一人、キレ気味に叫んでいる。

すかさずつぐみちゃんが駆け寄り、状況を確認すると男はつぐみちゃんを見て嘲笑し、一気に畳みかける。

 

 

「この店じゃ虫いりのコーヒーを客に出すのか?ああん?どう落とし前つけてくれるんだコラ!」

「申し訳ありません・・・!すぐ新しいものにお取替えしますので!」

「そんなじゃすまねえんだよ!誠意見せろコラァ!」

 

 

物凄い剣幕にすっかりビビッて声が出せないつぐみちゃん。

周りの客も誰も止めようとしない。

千聖と花音は俺に目配せをしている。しゃあない、ここは仲裁に入るか。

 

 

「おいあんた・・・」

「少しよろしいかしら?」

 

 

俺が立ち上がろうとした瞬間、遮る声。

その声の主は清田美緒であった。

 

 

「私ねえ、見ちゃったのよねえ。あなたが故意に虫を入れるところ。そっちのポケットに虫が入った袋持ってるでしょ?出してはいかがか?」

「て、てめえ因縁つけるんじゃねえ!」

 

 

ははーん。なるほど。あの焦りよう、まさに図星を突かれて動揺している素振りそのものである。これだけバレバレな雰囲気を出しておいてまだしらばっくれるとはふてえ野郎だ。

ふむ、なるほど。こいつはタカリか。それなら話は早い。

 

 

「そうですよ!ムシが入って困っている人に因縁をつけるなんて!ねえ?」

「そうだ!こいつの言う通りだ!」

「え・・・?芽音さん・・・」

 

 

”私の味方じゃないの?”と不安げにこちらを見るつぐみちゃん。

”また悪い癖が出たわね”と俺が何をしようとしているかを把握し呆れ笑いする千聖の目。

”ほどほどにね?”とこれまた俺が何をするのか分かっている花音の目が俺を刺す。

俺はつぐみちゃんに”大丈夫”とアイコンタクトをすると、つぐみちゃんは安心したように目を伏せた。

 

 

「ほら!冤罪だって証明しましょうよ!ポケット裏返して!!」

 

 

すかさず俺は清田美緒が指したほうのポケットに手を突っ込み裏返す。

 

 

 

「あれ~?なんだこのジップロック。そのコーヒーに入っているのと同じ虫がたくさん入ってますね~?」

「てめっ!ふざけんな!!」

「おおっと」

 

 

俺は瞬時に回避をした。するとチンピラは頭からテーブルに突っ込み、虫入りコーヒーを被ってしまった。

 

 

「あちちち!てめえ!おいそこの女ァ!てめえのせいで!」

 

 

そして今度は清田美緒に狙いを定める。うーむ、真っ先にターゲットを女性に変えるとは情けない奴である。

 

 

「それは心外だなあ。そんなアホみたいな計画でやるのがダメなのよ。クレヨンし〇ちゃんでも今時こんな古臭いネタやらないわよ」

「なめやがって!俺のバックに誰がいると思ってるんだ!」

「誰がいるのかしら?」

「樹海組だ!俺を怒らせやがって・・・!ただで済むと思うなよ!!」

 

 

樹海組。おそらく暴力団の名前だろう。しかし参った。これだとこの場は解決してもそのあと嫌がらせをしてくる可能性がある、そうなると羽沢珈琲店のような個人経営の店は少し辛いかもしれない。

 

 

「樹海組・・・ふうんあなた、名前は?」

「愚藤だ!だからなんだってんだ!」

「あらそう」

 

 

そうやって清田美緒は電話をかけ始める。

 

 

「あたし。ねえ、あんたのところに愚藤ってのいる?・・・あらそうなの。ちょっとカタギに迷惑かけててね。しかもあたしにタダで済むなって言ってくるんだけど。・・・あらそう?わかったわ。じゃあね」

 

 

電話を終えた清田美緒。間髪入れずに愚藤に言い放つ。

 

 

「なによあんた、まだ盃もらってないじゃないのよ。おおかた組員に知り合いができてその威光を使いたくって仕方なかったのね。バカねえ、組の名前使ってカタギ相手にこんな真似したら一発でアウトなのに」

「ど、どういうことだ・・・?」

 

 

その刹那、屈強な男二人が店内に入って愚藤を取り押さえた。

 

 

「なんだお前ら!?女あ!何者だ!?」

「お嬢に向かってなんてクチ利きやがる!このお方は神山会総長のお嬢様だ!」

「ひぇ!?」

 

 

神山会。芸能界にいるおかげかその名前を知っている。

関東最大の広域指定暴力団である志賀組の傘下でも最大級の規模を誇る組だ。

 

 

「お嬢、こいつどうしますか?」

「うーんそうねえ。樹海組の組長はこいつのこと知らないみたいだし多分末端に知り合いがいるだけね。樹海組は注意だけでヨシ。そいつは・・・まあ二度とこんなナメた真似ができないように教育してあげなさい」

「かしこまりました!オラ!こい!」

「ぎゃああああああ」

「皆様お騒がせしました。そちらの壊れたテーブルと食器は私が弁償します」

「あ、ありがとうございます」

 

 

怒涛の勢いで行われたイベントに全員理解が追い付いていない様子。

無論、俺もである。

 

 

「お前の新しい親って・・・」

「そ、ヤクザの親分。名前も変わったんだけど・・・まあ今まで通りでいいわ」

 

 

 

 

「大変なことになったね・・・」

「芽音、大丈夫・・・?」

「あ、ああ」

 

 

そうはいっても動揺を隠し切れていない。あいつが。あの清田美緒がヤクザの力まで手に入れてしまった。

そうなってしまっては手段を選ばないかもしれない。力でねじ伏せ、俺を思い通りに潰しに来るかもしれない。

 

 

「まあなるようにしかならんか・・・っと電話だ」

 

 

そんな話をしていると電話がかかってきた。

ディスプレイを見るとパスパレマネージャーの川崎さんだ。

今日はメンバー全員オフのはずだがなんだろうか?

 

 

「はい、俗です」

「すみません、休みの日に・・・ちょっと緊急事態です」

「え?」

「今日発売の週刊誌ですが・・・少し面倒なことになっておりまして。今からデータを送るので見てもらえますか?」

 

 

そういって電話を切る。

 

 

「川崎さんかしら?」

「ああ。なんか週刊誌がマズイとか言ってて今データを・・・ってなんじゃこりゃ」

「・・・!?これは確かにマズイわね」

 

 

”現役高校生アイドルバンドグループP ベースのSが高校の同級生と熱愛!?”

 

 

そんな低俗タイトル。そしてそこにはオフの日に会っていた俺と千聖の隠し撮り写真が写っていた。目線は入っているがタイトルの書き方からしてすぐに特定可能だろう。

そして川崎さんから迎えの車を寄越すからすぐに事務所に来るようにというメッセージがはいっていた。

 

 

「事務所に行こう、この誤解を解く対策をせねばならなくなった。すまん花音」

「ううん、芸能人ってこういう時大変だね」

「ごめんなさい花音」

 

 

そういって花音と別れた俺たちは事務所へ向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

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