仮面と海月と白鷺と   作:光の甘酒

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スパンが空いたにも関わらず読んでいただきありがとうございます!
ここからややダークな作風になっています。(元々ダークな感じが多いので・・・)

最後まで頑張りますのでよろしくお願いいたします!


第2話 号哭-失速-

「困ったねこれは」

「そうね。私たちとしては後ろめたいことはないのだけれど週刊誌にこう書かれてしまうと・・・」

 

 

事務所へ向かう途中の車内で俺たちはことについて考える。

俺と千聖はスタッフとタレントである以前に親友だ。ただの高校生同士の友達。それだけではあるが・・・

 

 

「迂闊だっかもしれないわね・・・」

「まったくだ」

 

 

千聖はパスパレとして、一人の女優としてどんどん名前が広がっている。それをいつまでも変わらないと思い今まで通りに過ごしてしまったが、こういった誤解を生むことをもっと考えるべきであった。

そしてうーん、うーん・・・と頭を抱えているうちに事務所に到着したのであるが、そこで待っていたのは川崎さんと社長であった。

 

 

「俗さん、千聖さん、申し訳ありません」

「川崎さんが謝ることではないですよ」

「そうかもしれませんが・・・」

 

 

川崎さんがものすごく縮こまっている。確かに俺はバイトとはいえ川崎さんの部下でありサポーターだ。川崎さんも状況判断ができていなかったことに気づき、もっと考えるべきであったという反省をしているようだった。

 

 

「とりあえず、話を進めようか」

「社長」

「当事務所としては、今回の報道は事実無根であり誤報によるタレントへの名誉棄損行為に他ならない。週刊誌には厳重に抗議します。だが・・・よく働いてくれている俗君に甘えすぎてしまった我々の落ち度でもある」

 

 

社長は淡々と話す。

 

 

「そこでだ俗くん。すまないのだが・・・」

「わかっていますよ、社長。当面の間千聖・・・いや、それだけだと不自然ですか。パスパレのサポートから一時的に外れます」

「話が早くて助かるよ」

 

 

※

 

 

「え~~~!?芽音くん、担当外れちゃうの!?」

 

社長との話が終わった後、パスパレのメンバーがちょうど集まるようだったので此度のことを話したところ、彩さんが驚きの声を上げる。

 

 

「仕方ないですよ、彩さん。今は騒動を鎮静化させることが先決ですし・・・」

「麻耶ちゃんの言う通りかもね~。今の状況ってるんっ♪ってしないしね~」

「う~芽音さんと一緒にお仕事できないのはさみしいです!でも一時的なんですよね?」

「ああ、事務所としては事実無根ってことを発表するみたいだし、ほとぼりが冷めたら復帰するさ」

 

 

ゴシップなんざそんなものだろう。本当にやましいところはない。毅然とした態度で証拠を出していけば納まるさ。

 

 

「なんだよ千聖、辛気臭い顔して」

「いえ・・・普段からみんなに色々といっておきながら迷惑をかけちゃって・・・」

「なーに言ってんの千聖ちゃん!」

 

 

彩さんが千聖さんの言葉を遮る。

 

 

「私だって千聖ちゃんに普段いっぱい迷惑かけてるし助けられてるよ?だから今回のことを迷惑だなんて思わないし、むしろ恩返しできる機会かなって思うくらいなんだから!」

「そうです!チサトさん、そんなに自分を責めないでください!」

「彩ちゃん・・・イヴちゃん・・・」

 

 

うん、これぞパスパレだ。

俺はそんな光景をほほえましく思いながら、その他の処理や仕事のため、その場を後にした。

 

 

※

 

 

その夜。俺はバイトを終え一人帰宅する。

いつもはパスパレメンバーと途中まで一緒に帰るのだが担当を外れてしまった以上、ほとぼりが冷めるまでは単独行動が良いと思ったのだ。

 

 

「・・・・誰だ」

 

 

俺は後ろから近づく気配にそう問いかける。

 

 

「気づいてたのか。只者じゃないと思っていたが予想以上だな」

「あなたは・・・」

 

 

そこにいたのは―

とあるプロデューサーの秘書であった。

 

 

さかのぼること少し前。こんなことがあったのを思い出した。

 

 

―回想

 

 

俺はパスパレの挨拶周りに同行していた。

そのうち千聖の関係者に挨拶回りに同行していた際、とあるプロデューサーのところへ出向いたのだ。

川崎さんが挨拶をし、千聖も挨拶をする。そのあとプロデューサーの秘書と川崎さんが打ち合わせをしている最中、千聖はプロデューサーと会話している。

 

 

「ん~さすが天下の白鷺千聖だねえ。会えて嬉しいよ~」

「そんな、私なんてまだまだです」

「謙虚なところもいいねぇ~」

 

 

俺はそれを黙ってみているわけだがそこでプロデューサーがやらかしやがった

 

 

「きゃっ」

「こらこら。この程度で悲鳴を上げてちゃこの業界では生き残れないよ」

 

 

あろうことか千聖の臀部にさりげなく触りやがったのだ。そのあとの言動を見ても確信的な犯行であることは明らかだろう。川崎さんは打ち合わせをしながらチラチラこちらを伺っている。おそらく圧量を恐れて動けないのだろう。

そして抵抗できない千聖に味を占めたのかプロデューサーは1回、2回とセクハラの回数を増やしていく。

俺はそこで千聖にアイコンタクトを送った。

 

 

“助けるべきか?”

 

 

千聖が望むなら俺は助けよう。

しかしこのセクハラが芸能界の慣習だ、耐えねばならない・・・と千聖が考えているなら俺は耐えるつもりだった。(慣習だったらクソ極まりないが)

考えてみろ、親友がセクハラされて黙ってることがどれだけ辛いことか。

でも俺が軽はずみに動くことで千聖の芸能人生活に陰りが出たら?事務所に圧力がかかったら?いろんな汚い事情と権力が跋扈する世界だ。川崎さんが動かないところを見ると影響力があるプロデューサーのようだし、敵意をむき出しにして軽はずみに動くことはできない。俺は今すぐプロデューサーをぶん殴りたい衝動を必死に抑え、千聖の回答を待った。

 

 

“たすけて”

 

 

しばらくして俺はそのメッセージを受け取った。

そして俺はその瞬間、偶然を装って大げさに“コケた”

 

 

「あちちちちちちちちちち!!!!!!!!」

「ああ、申し訳ありませんプロデューサー!」

 

 

俺はテーブルにダイブし、その拍子で卓上に合ったお茶を・・・プロデューサーの股間に向かって投げつけた(もちろん偶然を装って)のだ。

 

 

「キキキ、キミ!なんてことを・・・!あちちちち!!」

「すみませんすみません!すぐに拭きますから!」

 

 

そして俺は持っていたタオルでプロデューサーの股間を拭いてやった。

・・・・タオルを握る手に目いっぱいの力を込めて

 

 

「いでででででで!キミい!なんでそんな力が強いの!!??」

「すみませんすみません!!!」

 

 

俺は“マヌケなスタッフ”を演じきった。

 

 

「もういいから!あーもう災難だよ」

 

 

その後、プロデューサーは着替えのために退室、ちょうど打ち合わせも終わったようで俺たちも退室することになった。

 

 

「俗さん、あとでプロデューサーに事務所から謝罪をしておきます」

「・・・申し訳ありません」

「川崎さん!芽音は私のために・・・!」

「わかっています。これはあくまで“取引先として”です。私個人的な感想を言わせてもらうと・・・よくやりました!」

 

 

アカン、この人男前や・・・・

満面の笑みでそう答える川崎さん。結局俺もそのあとお咎めはなく、社長にも「もう少しスマートにやるように」という謎の注意を食らってこの事件は幕を閉じた。

 

 

―回想終わり

 

 

「何かご用ですか?あの時は私もミスで申し訳ないことをしましたし、事務所からも謝罪をさせていただいて・・・」

「ハハッ。白々しいなあオイ。わかってんだよ。アレ、わざとだろ?アホプロデューサーは本当に偶然だと思ってるみたいだけどよ」

「・・・どういうことでしょうか」

「あーいいっていいって。別にアホプロデューサーにチクる気もねーしそんな猫被りなさんな。おっと君には自己紹介がまだだったな。俺は鬼頭国光(きとう くにみつ)ってんだ。今は色々理由があってあのアホプロデューサーの秘書やってんだけどよ。んで君は俗芽音だったか?」

 

 

こいつの漂わせる気配が只者ではない。

逃げ切るのが不可能だと判断した俺は奴に向き直ることにした。

 

 

「調べは済んでるみたいですね」

「まあな。んでよ~芽音」

「気安く呼ばないでくれますかね」

「いいじゃねえかよ。話を戻そうぜ。君さ、週刊誌で出てた白鷺千聖の彼氏だろ?健気だね~彼女を守るために仕事まで一緒してさ~」

「彼氏でも彼女でもないし友達ですよ。仕事はまあなりゆきですけど」

「いいっていいって皆まで言うな!んで、そろそろ担当外れたころだろ?」

「なぜ知っている・・・?それに、それがどうしたと・・・?」

「だってよ~気になるじゃん。週刊誌にリークした身としてはよ~」

「てめえだったのか・・・!?」

「イイね~その目!そういう目が見たかったんだよ」

 

 

挑発するように言葉を吐き散らかす鬼頭に、俺はだんだんといら立ちが抑えられなくなってきた。

 

 

「ある目的のためにやったわけだけどよ、なかなか効果覿面だったろ?」

「・・・!?千聖に何をする気だ!?」

「とある方のために色々動いている。それしか言えねえなあ」

「あのプロデューサーか?」

「あんなカスなわけねーじゃんwwwんでも君みたいなのが白鷺にべったりひっついているとだとやりづらいからさ。学校もそろそろ冬休みだろ?その間、病室で健康的な生活はどうだ?動けないかもだけどよ」

「!?」

 

 

その瞬間奴は襲い掛かってきた。

目にもとまらぬスピード。俺はガードが間に合わずもろに攻撃を受けてしまった。

 

 

「ガハッ」

「おいおいこの程度よけられねーのかよ」

 

 

「喧嘩売ってんなら買うぞコラ」

 

 

俺は反撃の一手を繰り出す。その拳は鬼頭の腕にヒットし、確かな手ごたえがあった。

 

 

「おー痛ってえ。なかなかやるじゃん」

「余裕ぶっこいてないで自分の心配しろよ」

「あ?グオオオオ!」

 

 

俺はそのまま立て続けに攻撃を食らわす。本気モードでひたすら怒りに任せて連打だ。

その一撃一撃には確かに手応えを感じ、鬼頭はその場に崩れ落ちたのであった。

 

 

「が、ガハッ・・・」

「大口たたいてた割には口ほどにもないねお前さん」

 

 

鬼頭はうずくまって動かなくなった。

なんというか奴がまとっていた殺気にしては弱すぎである。

うーむ、ひとまず警察にでもいうべきか・・・?

 

 

「・・・・おー痛ってえ。もう許せんぞオイ」

「なんだと・・・?」

 

 

色々考えていたら鬼頭は何事もなかったように立ち上がった。

 

 

「んな馬鹿な・・・あんだけぶち込んだのになんでそんなピンピンしてんのよ・・・」

「遊んでやっただけだよ。じゃあ、お・や・す・み」

「は?何を言って・・・な・・・?が、くはっ・・・!」

 

 

反応できなかった。

 

 

「おおっと、今ので倒れないのはすげーな。んじゃあこれはどうかな?」

「あぐっ・・・てめえ・・・クソッ・・・」

「やるじゃん。しかし君も健気だねえ。たかだか女一人のために体張ってさ。君まだ18歳でしょ?まだまだこれから出会いがたくさんあるし・・・ここらで白鷺のことは諦めてよ」

「なっ!?どういうことだ!?」

「そのまんまの意味。言ったでしょ、とある方のためってさ。君は障害にしかなんねーのよ。んーでも悔しいでしょ?白鷺のこと守りたいんでしょ?じゃあもっと立ち向かって来いよ。俺を楽しませろよ」

「こんの・・・クソがあああああ!」

 

 

俺は今までで出したことのない渾身の力で立ち上がり鬼頭へ立ち向かう。

かつてないスピード、拳に力を込める。

 

 

「えっそれだけ?」

「ウソだろ・・・・」

「ウソじゃあない。うん、でも今まで一番力入ってたしホントのホントに全力だったんだねえ」

「腕が・・・動かない・・・!」

「じゃあ本当のお休みの前に言っとく。白鷺は諦めろ。あと俺のこと他言したりヘタな動きするようならよ―事務所ごとパスパレ潰すからよ」

 

 

そういって一瞬だけ奴の狂った笑顔が目に映った。

なぜ一瞬かって?次に俺が視界を認識したのは、病院のベッドに寝ていた時に見える白い天井であったからだ。

 

 

「芽音くん・・・!」

「花音か。えっと・・・何が・・・!?」

 

 

何があったのかを聞こうと思った瞬間、俺はあの瞬間を思い出す。

繰り返される暴力、そして遊ぶような笑い声。徹底的にプライドも、身体も、全部打ちのめされた。

そうか・・・俺は

 

 

「負けたんだ」

 

 

そう、こんなに無様に。完膚なきまでに

 

 

「芽音くんとりあえずお医者さんを呼んで・・・え!?」

 

 

俺は気が付くと花音に抱き着いていた。

 

 

「くっ・・・くうう・・・ううううう」

 

 

涙が止まらない。

 

 

「芽音くん!?どこか痛いの!?」

 

 

ああ―

痛いさ

 

 

からだも

 

 

こころも

 

 

ぜんぶぜんぶぜんぶいたいいたいいたい

 

 

「芽音くん!だれか!だれかいませんか!?」

 

 

俺はひとしきり花音の胸の中で泣き、そして

そのまま再び眠りについたのであった。

 

 

※

 

 

「さて、いこうかな」

 

 

 

そう呟くと、一人の女性は芽音の病室のドアに手をかけたのであった。

 

 

 




引き続きよろしくお願いいたします!!
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