仮面と海月と白鷺と   作:光の甘酒

5 / 47
ヒロイン白鷺さんの続きです。





-序章⑤-友達の友達を助けたわけなんだが

「つぐみちゃん、こんにちは」

「あ!千聖さん!いらっしゃいませ!」

 

 

白鷺さんに連れてこられたのは、元気な女の子が店員をやる喫茶店。

商店街にあり、個人経営ではあるが内装にアジがあって、こだわりを感じる。

街の隠れ家的な店なのかもしれない。

 

 

「え!?千聖さんデートですか!?」

「もう、違うわよ。この人はクラスメイト、それと花音と共通の友人ね。花音が風邪で休んだから一緒にお見舞いに行った帰りよ」

「そうなんですか!えっと、私は羽沢つぐみっていいます!中学3年生、ここのお店のオーナーの娘で手伝ってます!」

「へ~ってことは1つしかかわらないのか。俺は俗芽音(ならわし さきなり)。よろしくね!」

 

 

この子も明るくてなんというか頑張り屋さんという雰囲気が出ている。

この感じは多分表裏のないいい子なんだろうな。

 

 

「私はいつもので。俗君は?」

「じゃあブレンドをブラックで」

「はい!かしこまりました!」

 

 

注文を取ってパタパタと厨房へ向かう羽沢さん。

対してまったく雰囲気が伝わってこず、よくわからない白鷺さん。

さっきのはいったいなんだったんだ・・・・?

なんか怖い。それに俺、白鷺さんのこと全然知らないし。

しばらくすると注文品がやってきて俺たちはそれを口に運びほっと一息ついた。

 

 

「それで何を話せばいいのかな?」

「そうね。あなた、花音と仲がいいのよね?」

「うん、まあ世間一般的にいうとそうなるのかな?」

「そうなの・・・・じゃあ一ついいかしら」

「なにかな・・・はっ!?」

 

 

まただ。背筋が凍るようなプレッシャー。それを感じた俺は心臓が握りつぶされそうになる。

一体・・・これは何なんだ・・・・!?

 

 

「もう花音には近寄らないでくれるかしら?」

 

 

彼女が言い放った一言は聞き逃せるわけもなく、衝撃的な一言あった。

 

 

「な、なんで君にそんなこといわれなきゃいけないのかな・・・?」

「私が花音の親友だからよ。親友のことは私が守る。ただそれだけのことね」

「意味が分からないよ!それがなんで俺が近づかないのが解決になるのさ!?」

 

 

ふざけてもらっては困る。

今や俺にとって花音は大きな存在だ。それを奪うなんて・・・いくら花音の親友といえど許せねえ。

しかし、こんなことをいうってことは何かかワケがあるんだろう。

それを聞き出さねば。

 

 

「ねえ俗君。私のこと知ってるかしら?」

「白鷺千聖さんでしょ?クラスメイトなんだし知ってるよ」

「そうじゃなくて、私の仕事のこと」

「・・・・仕事?」

 

 

そんなもん知るわけがない。

まともに話したのだって今日が初めてだ。

 

 

「本当に知らないのかしら・・・・?」

「ごめん、知らないや」

「白鷺千聖。元子役・といえばわかりやすいかしら」

「元子役・・・白鷺千聖・・・・・・あああああああああああ!」

 

 

思い出した。そういえば昔テレビで見たことがある。

まさかそれがこの白鷺さんだっていうのか!?

 

 

「知ってたみたいね」

「なるほど、それでみんなどこかよそよそしくなったのか」

 

 

相手が有名人だと確かにどこまでの距離感が適切かわかんねえもんなあ・・・

しかも仕事で忙しいのか、白鷺さんは学校を休みがちだ。

普段の交流も少ないためより一層どうしたらいいのかみんなわからないのだろう。

 

 

「さすが鋭いわね。それで話は戻るけど・・・改めて、花音には近づかないでくれるかしら?」

「だからなんでそうなるの!?」

「私は役者よ?あなたが仮面を被ってるなんてお見通し。そんな状態で花音に近づいて・・・何をたくらんでいるの?」

 

 

マジかよ・・・・俺の仮面、バレてたのか・・・

 

 

「それにあなた、人の雰囲気を察するのが得意よね?」

「・・・・そこまでわかってるのか」

「ええ。だからこそあなたの前では考えていることを漏らさないようにしてた。そして必要な時だけ出してたのよ」

 

 

雰囲気をシャットアウトしたり、あの刺すような雰囲気をコントロールできるっていうのか・・・・?

なんて恐ろしい奴だ。

 

 

「とにかく!得体のしれない男の人を親友に近づけるわけにはいかないわ。話は終わりよ。ここは私が会計しておくから・・・それじゃ」

「オイ待てよ!そんな一方的に・・・・!」

 

 

しかし白鷺さんはそのまま店を出て行ってしまう。

何かあったんですか?という目線で羽沢さんがこちらを見る気配もわかる。

 

それに白鷺さんの話。

確かに言い分は理解できた。俺と同じようで人の雰囲気を察せるのであれば、仮面を被っているヤツを警戒するなんて当然。しかも親友と仲がいいと来たもんだ。

そう、これはボタンの掛け違いのようなもの。なぜなら花音が俺の本性をしっていることを、白鷺さんは知らないのだから・・・・

 

 

「追いかけなきゃ」

 

 

誤解を解く。そのために俺は白鷺さんを追う。

しかし誤解を解くということは俺の本性を白鷺さんにもさらけ出さなきゃいけないということであるが、その度胸が俺にはなかった。

だがこのままギクシャクしてしまえば花音にも心配をかけることになるだろう。

それだけは避けねばならない。

 

 

「白鷺さん・・・!ってあれ?いない??」

 

 

おかしい。店を出てからそんなに経っていないのに姿がなくなるなんて。

 

 

「・・・・ん?」

 

 

なんか気配を感じる。

これは恐怖と・・・醜い欲望・・・・?

 

 

「ここか!」

 

 

すぐ横にある裏路地へと続く道。その雰囲気はそこから出ていた。

 

 

「い、いやっ!離してください!」

「コラコラ、子役の頃から応援しているファンになんて言い草だ。俺が育ててやったようなもんだろ?千聖」

 

 

状況を確認。

ご立派な体系のオッサンが白鷺さんの腕を掴んでクッソ汚いしたり顔で白鷺さんの顔に接近する。

対して千聖は心底嫌そうな顔をしていたのだ。

 

 

「せっかくプレゼントも持ってきたし、育ての親同然のオレにサービスしてくれてもいいんじゃない?」

「プレゼントは事務所を通してください!それにあなたなんて知りません!」

「パパに向かってなんて言い草だ!お仕置きだぞっ!」

 

 

パパパパパパパパパァ!?

ええええええ・・・・(ドン引き)

なんかヤバい奴がいるんですけどぉ・・・・・・

うわー関わりたくねえ、関わりたくねえけど白鷺さんを放置する方がマズイ。

しかしなんで裏路地って悪いことする奴が使うのかね。

まあ裏路地だからが故のお約束なんだろうが。

 

 

「それにさっき男と一緒にいたよねえ?誰なんだ!あんなやつ許さないぞ!」

「あ、あの人は・・・・」

 

 

「それって俺のことですか?」

「え・・・?俗君・・・?」

「俺、参上!」

 

 

どっかの赤鬼みたいな感じでやってみたが決まったかな?

あ、白鷺さんがゴミを見るような目でこっちを見てる。

え?決まってない?あらそう・・・

 

 

「オイコラそこのデブ。俺の知り合いになーにやってくれちゃってんの?気色ワリィ顔を近づけんなよ、白鷺さんの顔が腐っちまうだろ?女の子の顔に傷つけて責任とれんの?」

「なんだ貴様・・・人が気にしてる体系のことまでそんなストレートに・・・それに、そんなひどいことをいうなんて・・・」

「気にしてんなら改善の一つでもしようとしないのか?それにひどいもクソも事実をそのまま言ってるだけだが?デブだし服のセンスは絶望的だし顔も脂ぎってきたねえし何よりそのしたり顔が最高に気持ち悪い。その姿で歩いてて恥ずかしくねえの?あ、もしかしてうんこの生まれ変わりかな?だったら便器に流れてろよクソ野郎」

 

 

とりあえず挑発。まずは狙いを白鷺さんから俺に向ける算段だ。

 

 

「そこまでいわなくていいじゃないかあああああ~~~~~~~」

「うぉ!?泣き出した!?」

 

 

そいつはそのクッソ汚い顔で泣き出したのだ。

犯罪じみたことやってるくせにメンタル弱いなあオイ。

 

 

「・・・ろす」

「ん???なんだって?」

「殺すぅぅぅぅぅ!殺してやるぅぅぅぅ!」チキチキチキ

 

 

奴はカッターナイフを取り出し、刃を露出させると俺の方へ向かってきた。

注意を逸らすという目的を達することはできたがこれは予想GUYデス

とりあえず、俺は近くに落ちている棒切れを拾い上げて構える。

あ、俺ってこう見えて剣道2段だったりするんだよな。

一応中学生まででとれる最高段位だったりする。中学生の頃は剣道部だったというだけだが。

 

勝負は一瞬。籠手打ちの要領でカッターを持つ手を打ち、すかさず面打ちの要領で頭に打突を加える。これでザ・エンドってね。

 

 

「うおおおおおおおお・・・・・」

「自分の欲望を満たすためだけに自分勝手やらかす奴に救いはねえよ。豚箱に入ってろ」

 

 

そして俺は周辺の人に呼びかけ奴を拘束し、到着した警察に引き渡したのであった。

 

 

 

 

 




次回でプロローグは一区切りです!
話は決まっているので今日中に出せると思います。
引き続きよろしくお願いいたします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。