真剣に!   作:橘恵一

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なんとかいつもの日常のようなパターンが形になり、気も向いたので進めます。このまま何事もなく数年は過ごしたいなぁ。自粛はいつもと変わらないのでそこは気にせず。

それではお楽しみください。


第3話 「えー、そう……なるのかな。字面的には。」

 風間ファミリーが箱根に向かう日、俺は川神院で百代さんと一子ちゃんを見送った。結局、ランニングが終わったあと旅行には正式に参加しないことを伝えたのだ。そのこともありちょっとした理由を付けて駅までは行かなかった。

 

「普通に顔合わせづらいしな。」

 

 自分が選んだ答えに後悔が無いかと言われればありまくりだ。当然だろう、夢にまで見たザ・学園生活とも言える友達との旅行。この先修学旅行といった形ではあるものの、それとは全然違う。それでもこれからのことを考えると一人で出来ることを増やす良いチャンスなのも事実。

 

「さてと、俺もそろそろ出かけるとするかー。」

 

 残っていたダンボール箱から荷物を出し、一通り整理し終えた俺は軽く伸びる。基本的に衣食住は保証されているが今後の為に動かなければならない。あくまで卒業して一人暮らしするまでの間、という条件だからだ。となるとまず必要になってくるのは金。今のうちに貯金をするならバイトだけど無論、経験は無い。前の学校に居たときに興味があり、試みたが噂が広がりすぎて出来なかったのだ。当然だろう誰だってトラブルを引き込むヤツを雇いたくなんてない。

 

「でもこの地域なら門前払いされることも無いだろうし、なるようになるか。」

 

 少し大きめのショルダーバッグを持ち、コンビニやらの求人を見ながら街を歩く。念の為、良さそうな求人があればすぐに申し込めるように履歴書も持ってきた。今日の目的は地域を知るための散歩だ。

 

「でもなぁ、学校行ってから百代さんのトレーニングがあるとバイトする時間ないよな。」

 

 今のところ誘われるのは毎日じゃない。曜日など決まってなく気まぐれみたいなところがある。それに加えてルーさんとの気に関してのトレーニングもあると結構条件に合うバイトを探すのは大変そうだ。

 

「そういえば百代さんが日雇いの力仕事をたまにやるって言ってたから旅行から帰って来たら聞いてみよう。」

 

 駅まで歩いて普段は行かない方へと足を運んでいると景色が変わり、歓楽街のような場所に出た。

 

「なんかいかにも不良のたまり場ですって言ってるようなとこだな。この辺が親不孝通りってとこか?」

 

 人目につかないようケンカするならこの辺がよく使われてるんだろうな。

 

「って何考えてんだ俺。」

 

 昔の癖か、つい変なことを考えてしまった。それにここの人たちは隠れてコソコソ戦うってのはあんまりしなさそうだ。するとしても作戦で奇襲とかそんな類だろう。どうせ関わることも無いんだし、ここは流石に見なくて良いだろうと判断した俺は戻ろうとする。

 

「お、転校生がこんなとこまで何しに来てるんだ?」

 

 聞き覚えのある声がしたので振り返る。

 

「実は不良でしたってか?」

 

 そこにいたのは宇佐美先生と少し強面の男。

 

「こんにちは、宇佐美先生。川神をまだ知らないんで探検してただけです。」

「校内ならともかく、うちのクラスには進んで街を案内したがるヤツいなそうだしな。」

「葵くんたちはしてくれるって言ってたんですけど時間が合わなくて。」

「ほー、ちょっと意外。」

「見た感じS組っぽくねぇけど、例の転校生か。」

 

 俺を見ながら、男が言う。確かにSの人たちみたいな外見的特徴も無いからそう思われてもおかしくない。

 

「クラス違うし、忠勝は初対面か。」

「はじめまして神衣輝です。」

「俺は源忠勝、2-Fだ。」

「Fかぁ、いいなぁ。」

 

 今までのことがあって、自然と言葉が出てしまう。

 

「Sの担任目の前にしてよく言えるな。先生泣いちゃうぞ?」

「最初に知り合ったのが直江くん達だったんで。」

「あいつらは当たり障りねぇからな。」

「源くんは直江くんと仲良いの?」

「良くねぇよ、ただ同じ寮に居るってだけだ。うるさくて敵わん。」

 

 そう言いながらも表情は柔らかい感じ。源くんは話してみると結構わかりやすいのかもしれない。

 

「二人はどうしてこんなところに?」

 

 教師と生徒ならこんなとこに来る理由が見当たらないし、不思議に思ったので尋ねる。

 

「まー、なんだ。ちょいと仕事で、な。」

「そういうことだ。」

「じゃあ俺たちそろそろ行くわ。」

 

 話を急に切り上げるように二人はそのまま歓楽街の奥へと進む。

 

「神衣!」

「はい?」

 

 宇佐美先生は少し真面目な顔で俺を呼ぶ。

 

「用があってもここには近づくなよ。どうしてもってんならまずは俺に相談しろ? そんなことないとは思うけどな。」

「わかりました。」

「それじゃあな。」

 

 そのまま二人は通りの奥へ姿を消し、俺は反対に明るい道の方へと進む。

 

「教えてくれるか微妙だろうけど今度直江くんに聞いてみよう。」

 

 俺は宇佐美先生が言ったことをそこまで気にしないまま、街を見て回った。

 

 風間ファミリーが旅行に行ってから一日経った日の夜。

 

「ルーさん、準備出来ました。」

 

 ジャージ姿でタオルと飲み物を持って川神院の道場に入る。二人が居ないので効率を良くするため、コミュニケーションを取りながらの鍛錬を俺から申し出たのだ。予定が無かったようでルーさんは快く引き受けてくれた。

 

「うン。あれから気は感じられたかナ?」

「それが全く。」

 

 ルーさんに言われたような感覚はわからないままだったので正直に答える。少しでも違和感とか感じれば良いんだろうけど全くと言っていいほど感じることはなかった。

 

「そうカ、じゃあ今日は気に関しての説明を詳しくやろウ。」

「はい、お願いします。」

「武闘家同士の決闘を見たことハ?」

 

 今までの話を聞いた限り不良のケンカと違うのは明白。俺が転校してくる前に一子ちゃんとクリスさんが決闘したらしいけど見てないわけで。

 

「無いです。」

「武と関わっていなかったから当然だネ。ある程度の実力がある者同士は気を用いて戦うんダ。」

「百代さんとかですよね。」

「間違ってはいないけど百代はちょっと例外ダ。今回は私のような使い方があることを教えよウ。」

「見たことがなくて実感無いですけど例外ってのはわかる気がします。」

「思いっきり殴ってごらン。」

 

 ルーさんは腰に手を当てる。

 

「え?」

「大丈夫、大丈夫。」

 

 俺は恐る恐る拳を握る。

 

「じゃあ遠慮なくっ。」

 

 ドンッっと拳がルーさんのお腹に当たる。もちろん全力は怖くて出して無いけどいろんな不良を殴った中で一番硬い。仮にケンカしてた頃みたいに殴っても効きそうに無いくらいだ。

 

「実に平均的な威力かナ。今は気を込めていない状態だったから次は込めるヨ。」

 

 そう言うルーさんの体は何も変わらない。

 

「はイ、殴ってみテ。」

「それじゃ行きますよ。はっ!」

 

 一度殴ったことで本当に効かないことがわかり、さっきより力を入れる。

 

「っ――なんか硬いし、痛い?」

 

 気を込めたことによってさっきより硬いのがわかるし、さらに言うならこっちの拳に痛みが出た。程度によっては逆にこっちが怪我するかもしれない。

 

「どうやら感触の違いがわかるようだネ。これが気を込める事。基礎みたいなものかナ。」

「こんなのを無意識でやってるんですか、百代さんは。」

「さすがにやってないヨ。」

「あ、そうなんですね。」

 

 例外とは言われていても常にこういったことはしてないのか。できないのとしないでは意味が大きく変わるし、理由が気になる。

 

「百代さんは常に気を込めれないってことですか?」

「今は込めてなイ、ってところかナ。これの応用で例えば足に気を込めて走れば早くなるシ、拳に込めて突き出せば威力が上がル。」

「自在に扱えるなら使い勝手いいですね。」

「けど無限じゃなイ、なんせ使うのは自分の気だからネ。個人によって気の容量も違ウ。」

「なるほど、その容量の桁が違うってのが百代さんってことですね。」

「そウ、桁が違うから気を使い放題にしていると見えるが底はあル。」

 

 その後はルーさんから気に関して色々教わりながら、軽く組み手をした。相変わらず気を扱うことが出来ないまま、時間だけが過ぎていった。

 

 風間ファミリーが旅行に行ってから二日目。川神学園に向かう通学路を軽くランニングをしながら景色を眺める。

 

「おい、そこの転校生!!」

 

 多馬大橋を走っていると車から九鬼くんの声がしたので振り向く。

 

「九鬼くんっ!? それにあずみさんも。」

 

 止まった車の窓が下がると座っている二人の姿が。

 

「どういった経緯で知り合ったか想像もつかぬが姉上から話は聞いた。少しばかり気にかけろとな。」

「姉って言うと揚羽さんだよね。そっか、気にしてもらっちゃってるんだな。」

「うむ、あずみよ!!」

「はい、英雄さま!!」

 

 あずみさんが小さい二枚の紙を差し出してきたのでそれを受け取る。

 

「え? これは?」

「我とあずみの連絡先だ。何か困ったことがあれば連絡してかまわん!」

「とはいえ、英雄さまは多忙ですのでまずは私を通してください! その後、英雄さまも目をお通しになります。」

「わかりました、わざわざありがとうございます。」

「かまわん!! 姉上の頼みとあらば無碍にすることはできんからな、フハハハハ!!」

「あっ、もしよかったら仕事紹介してくれないかな? 日雇いでもいいんだ。」

 

 ここぞと思った俺はあわよくばとかばんから履歴書を取り出し、窓越しに渡す。

 

「これは履歴書ですね。」

「川神院でお世話になってるんだけど早いうちにお金貯めておきたくて。」

「い、いま、なんと言った……。」

「日雇いでもい――」

「その後だ!!」

 

 九鬼くんは急に車から降りて近づいてくる。

 

「……川神院でお世話になっ――」

「貴様っ!!!」

「おわっ!?」

 

 そしていきなり胸ぐらを両手で掴み上げた。

 

「我が愛しの一子殿と、同じ、屋根の、下、だとっ!?」

「えー、そう……なるのかな。字面的には。」

 

 まさか一子ちゃんを想っているとは思わなかった。

 

「無いとは思うが万が一、一子殿に迷惑を掛けようものなら我が許さんぞっ!!!」

 

 表情から察するに本気といった感じだとわかる。

 

「迷惑、か……もう迷惑かけちゃってるかもしれない。色々気を使わせちゃってるし。」

 

 登校初日とか色々考えてくれてたみたいだし、この前のランニングもだいぶペース落としてたようだし。自分のペースで過ごせないことによって結構なストレスになるかもしれない。そんなことを考えて俯いていると首元から手が離れた。

 

「……一子殿はやさしく、そして広い心を持っている。一子殿が嫌々対応しているように見えるか?」

「今の所はしてない、と思う。」

 

 表情を思い出しながら自信なく答える。

 

「なら、それはお前のことを一生懸命考えている姿だろう。」

「一生懸命、か……。」

「フン。いくぞ、あずみっ!!」

 

 そう言いながら九鬼くんは車に乗り込んだ。

 

「いいんですか、英雄さま。」

「思ったよりも時間を使った。そろそろ行かねば会議に間に合わなくなる。」

「わざわざありがとう九鬼くん。」

「ここまでするのはこれが最初で最後だと思え!!」

「それでは、失礼します!」

 

 そのまま車は動き出し、進んで行った。

 

「九鬼家って凄いんだな。」

 

 揚羽さんも初めて会ったとき凄い感じしたし、九鬼くんにも感じた。さすが世界の九鬼。俺は橋から街を見渡しながら自分が入った学園のことを改めて凄いと感じ直した。

 

 その日の夜、九鬼財閥。

 

「あずみよ。」

「はい、何でしょう英雄さま!!」

「転校生から預かった履歴書は一応周知させておけ。」

「お言葉ですが軽く目を通した限り、極めて平凡。これですと短期ですら登用されることは無いと思いますが。」

「それでもだ。無論九鬼従者部隊にも通達しておけ。」

「はい、かしこまりました!!!」

 

 そして九鬼従者部隊・特別会議。

 

「ってわけで一応周知させてもらう。」

 

 主な議題は終了し、何か周知連絡があれば伝える場であずみはコピーした神衣の履歴書を配る。

 

「過去の経歴も出生も至って普通、知能が極めて高いわけでも、強いわけでも無い。強いて言うなら川神のS組在籍ってくらいだ。」

「実に平凡ですね。特徴が無いのが特徴ですか。」

「ふつーの学生ならこんなもんなんじゃねーの?」

 

 黒髪と金髪のメイドはちらっと履歴書を見てつぶやいた。するとまるで手品のようにあずみの横にひげのある金髪の執事が現れた。

 

「げ、なんで来てるんだよ。」

「それはこの履歴書の人物に少し興味があってだ。」

 

 机に置いてある履歴書を一枚手に取る。

 

「あんたで言うところの赤子同然だぞ。」

「ああ、だがここまで言葉通りの赤子は珍しい。」

 

 そう言うと何かを考えている表情のまま、老執事は再び姿を消した。




いかがでしたでしょうか?

前の二次創作に比べると原作をやり込んでないので台詞周り不安ですが広いお心でよろしくおねがいします。次回はいつになるかわかりませんがちょっとしたバトルイベントがあるかもしれません。

そんなわけで次回は雑種イベント回の予定ですが変わる可能性が大いにありますので読者の方々も妄想を膨らませながら御待ちくださいませ。

読者の方々、ご観覧ありがとうございました。
ご意見、ご感想、ご指摘がありましたらお気軽にメッセージ等にお願いします。
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