東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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第123駅 再会と目覚めと衝撃的事実

 

 

 

 

 二人は宿舎へと移動し、食堂に向かっている。

 

(それにしても、一体誰が来たんだろう?)

 

 北斗は内心呟きつつ、誰が来たのか知り合いの顔を思い浮かべる。まぁ候補が多くて絞り切れていないが。

 

(でも、何でだろう。この場合って何だか頼み事をされそうな気がする)

 

 どことなくデジャブな感覚を覚えながら食堂へと入る。

 

 

「あっ、区長!」

 

 食堂に入ると、夕張(E10 5)が北斗を見つけて声を掛けつつ近づく。

 

夕張(E10 5)。俺を待っている人っていうのは?」

 

「はい。あそこで待っています」

 

 彼女はそう言うと、後ろを振り向く。

 

 そこには一人の少女が座っている。

 

(あれは……)

 

 その少女は北斗の見覚えのある人物であり、彼は驚く。

 

 

「久しぶりだな、北斗」

 

 少女ことみとりは北斗の姿を見ると、声を掛けながら立ち上がる。

 

「みとりさん。地底から出てきたんですか?」

 

「まぁな」

 

「でも、なぜ地上へ?」

 

「色々とあるが、強いて言うならお前の所に行くつもりでな。で、途中で蒸気機関車に乗せて貰った。その前に行き倒れていた人間を連れていたが」

 

「それについてはお聞きしました。その、ありがとうございます」

 

「気にするな。ただの気まぐれだ」

 

 北斗が頭を下げてお礼を言い、みとりは顔を背けてそう言う。

 

「しかし、一体なぜ自分の所に?」

 

「……」 

 

 みとりは口を閉ざし、間を置いてから口を開く。

 

「急な話ですまないと思っているが、ここに住まわせてもらえないか? もちろん働くつもりでいるが」

 

「えっ?」

 

「本当に急ですね」

 

 早苗は思わず声を漏らし、北斗は首を傾げる。

 

「……なぜわざわざ北斗さんの所に来たんですか」

 

 早苗は機嫌を悪くして、みとりに問い掛ける。

 

「他に行く当てが無かったからな。少なくとも、人間や河童の所に行くつもりは無い」

 

「……」

 

「それに、私は彼に聞いている。お前ではない」

 

「……」

 

「それで、どうだ?」

 

 睨みつける彼女をよそに、みとりは北斗に問い掛ける。

 

「……」

 

 北斗は静かに唸り、どうするか悩む。

 

 というのも、つい最近で魅魔を短期間であるが、既に泊まらせる事になっているので、また新しく居候を増やすことになるのは、慎重になる。

 

「つかぬ事を聞きますが、みとりさんって手先は器用ですか?」

 

「ん? まぁ、器用だとは思う。作業を教えてもらえれば、すぐに覚えられる」

 

「そうですか」

 

 その辺は河童らしいんだな、と北斗は内心呟く。

 

「そもそも、なぜ地底から地上へ出てきたのですか? こう言ってはなんですが出てくる必要は無かったのでは?」

 

「……」

 

 北斗がそう問い掛けると、みとりは沈黙する。

 

 少なくともみとりには、地上に出てくる理由は無いはずである。それどころか、彼女の過去的に地上へ出ることを拒むはずだ。

 

 彼女は少しの間沈黙下の地、口を開く。

 

「……変わらなければならないと、そう思っただけだ」

 

「そうですか……」

 

 彼女の短くも、覚悟のある言葉に北斗は頷く。

 

「ここで覚える事は多いですよ」

 

「元よりそのつもりだ」

 

 北斗がそう言うと、彼女は頷く。

 

「……」

 

 ただ、早苗はその光景を見てどこか面白く無さそうな様子で、無表情で目を細める。

 

 

 

「おや? ずいぶんと賑やかだねぇ」

 

 と、食堂にこの場に居ない者の声がして、北斗達が声のした方を見ると、そこには魅魔の姿があった。

 

「だ、誰ですか!?」

 

 事情を知らない早苗は魅魔を見て、警戒心を露わにする。

 

「魅魔さん。どうしましたか?」

 

「あぁ。何でも行き倒れがここに運ばれてきたって聞いたからねぇ。少しばかり手伝ってきたのさ」

 

「そうですか。それはありがたいです」

 

「何。少しの間とは言えど泊まらせて貰っているんだ。このくらい当然さね」

 

「それで、容態はどうでしたか?」

 

「今は安定しているよ。起きたら軽く食べさせてやると良いさ」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 北斗は魅魔に感謝して頭を下げる。

 

 彼女は「良いってことさね」と一言言ってから食堂を後にする。

 

(とりえあえず、もう一人に関しては起きてからになるな)

 

 北斗は安堵して息を吐く。

 

 

「北斗さん!!」

 

「うぉ!?」

 

 と、突然北斗は無理やり後ろを振り向かせられると、怒っている様な必死な形相の早苗が北斗の両肩をガシっと掴む。

 

「今の人は何ですか!? それに泊まらせてもらっているってどういうことなんですか!?」

 

「お、落ち着いてくださ―――」

 

「最近増えたのにみとりさんの住み込みを許可したんですか!? いつからここは民宿になったんですか!?」

 

「い、いえ、ですから―――」

 

「大体北斗さんはお人好し過ぎるんですよ!! 少しは自重するの覚えてください!! そんなんじゃポンポンと泊まりに来る人が出てきますよ!!」

 

 頭に血が上っている早苗は北斗を前後に揺らしながら問い詰めていく。

 

 北斗は何か言おうとするも、勢いよく揺らされているせいで声を上げられずに居た。

 

 さすがにまずいと思い、夕張(E10 5)やみとりが早苗を止めに入る。

 

 

 

 その後早苗は落ち着きを取り戻し、激しく揺らされた北斗は体調を整えつつ、彼女に説明する。

 

 

「……悪霊で、それも魔理沙さんの魔法使いとしての師匠ですか」

 

 何とも言えない表情を浮かべて、早苗は声を漏らす。

 

 まぁ悪霊なのに魔法使いの師匠と言われても、俄かに信じ難いものである。

 

「それでしたら魔理沙さんの所にお世話になれば良いのに」

 

「愛弟子のことを考えてのことらしいです。まぁ師匠として弟子の所にお世話になるのは考えものなんでしょうけど」

 

「……」

 

 北斗の言葉を聞き、早苗は苦虫を噛んだような表情を浮かべる。分からなくはないが、納得出来ないでいた。

 

「まぁ、魅魔さんは短い間だけここに泊まるということなので、泊まらせているんです」

 

「それでも、みとりさんを住み込みで働かせるのをすぐに決めるのはどうかと思うんですが」

 

「まぁ、整備士であったり、機関士として働き手が増えるのは悪いことじゃありませんし」

 

「……」

 

 早苗はどこか納得いかないような、半ば諦めた様子でため息をつく。

 

「それはそうと」

 

 と、北斗は夕張(E10 5)を見る。

 

「その行き倒れた人はどこに?」

 

「二階の休憩所よ。今長月(C59 127)(C57 135)の二人が看ているわ」

 

「分かった」

 

 

「区長。ちょうどよかった」

 

 と、北斗が二階の休憩所へ向かおうとした時、食堂に長月(C59 127)が入ってくる。

 

長月(C59 127)? 今お前と(C57 135)が看ていた人の所に行こうとしていたんだが」

 

「それなんだが、ついさっきその者が目を覚ましたから呼びに行こうと思っていたのだが」

 

「目を覚ましたのか。それならちょうどいい。案内してくれ」

 

「分かった」

 

 北斗は夕張(E10 5)にみとりのことを任せて、早苗と共に長月(C59 127)の後に付いて行く。

 

 

 

 長月(C59 127)の後に付いて行き、北斗たちは二階にある休憩所へと入る。

 

「はい水。一気に飲まないで少しずつ飲みなさい」

 

「あぁ。かたじけない」

 

 そこでは長椅子に横になり、上体を起こしている女性が(C57 135)より水の入った湯呑を受け取り、水を少量飲む。

 

「区長を連れて来たぞ」

 

「ありがとう。区長が来たわよ」

 

 長月(C59 127)が北斗達が来たのを(C57 135)に伝えると、彼女はお礼を言いつつ女性に向く。

 

「あたながここの責任者か?」

 

「えぇ。幻想機関区区長、霧島北斗と申します」

 

「そうですか。私は『明羅』と申します。倒れていたところ助けていただき、感謝します」

 

 北斗が自己紹介をすると、女性こと『明羅』も自己紹介をして頭を下げてお礼を言う。

 

 明羅という女性は腰まで伸びた紫色の髪を根元で纏めたポニーテールにしており、白い和服に裾に赤いラインの入った袴を穿いており、和服の上に赤い羽織りを着ている。彼女の傍には鞘に収められた刀が壁に立て掛けられている。

 

(パッと見だと男性のようにも見えましたけど、よく見ると女性なんですね……)

 

 北斗の後ろで早苗は明羅を観察して、一瞬男性かと思ったものも、よく見ると胸に少しだけ膨らみがあって喉仏が無いのを見つけて、女性だと確信する。

 

「あなたを助けたのは別の方ですが、とりあえず後で連れてきます」

 

 北斗は気持ちを切り替え、明羅を見る。

 

「明羅さん。一体何があったのか、説明できますか?」

 

「あぁ。と言っても、お恥ずかしい話なのだが……」

 

 明羅は言いづらそうであったものも、気を引き締めて説明を始める。

 

「私はある時に自分の未熟さ故の浅はかさを実感して、それを直すべく里を出て修行の旅に出ていました。そして里へと戻ろうとしていたのですが、長らく帰っていなかったせいかその帰り道を忘れてしまい、迷っていました」

 

「……」

 

「里に辿り着けず彷徨った挙句、空腹に耐え切れず、行き倒れたわけです。そして気付いた時には、ここに……」

 

「なるほど(その後みとりさんが見つけて連れて行き、習志野(9677)に見つけてもらったのか)」

 

 事情を聞き、北斗はその後の展開を予想して納得する。

 

「迷惑は掛けません。すぐに出て行きます」

 

「ちょっと、まだ動いちゃ駄目よ」

 

 (C57 135)が明羅を止めようとするも、彼女は「構いません」と言って止めると、立ち上がろうと床に足を着ける……

 

 

 グゥゥ・・・・・・

 

 

「……」

 

『……』

 

 それは立派な腹の虫が鳴り、明羅は顔を真っ赤にして固まり、北斗達は何ともいえない気持ちになり、気まずい空気が流れる。

 

「……ご飯、食べますか?」

 

 北斗がそう言うと、明羅はゆっくりと頷く。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 その後明羅は食堂に案内されて、軽く食事を取ることになった。みとりにはとりあえず食堂にて待機してもらうことにした。その際に明羅はみとりに助けてもらったお礼を言った。

 

「とりあえず明羅さんの体調が整うまではここに居てもらって、それから人里に送るしかないか。でも万が一を考えて永遠亭に送った方がいいか?」

 

「永遠亭への案内は妹紅さんしか出来ませんし、事情を説明すればいいのでは?」

 

「それもそうですね」

 

 宿舎を後にした北斗達は夢見達が居るであろう整備工場に向かっていた。

 

「それにしても、北斗さんはもう少し自重するっていうのをして欲しいです。大体悪霊を泊まらせるって普通じゃないですよ。ただでさえ悪魔が三人も居るのに」

 

「ま、まぁ、確かに普通じゃないですね。でも、魔理沙さんの師匠だから泊まらせているんですよ。あの三人は……まぁ成り行きで」

 

「魔理沙さんの師匠というのも、怪しいんですけどね」

 

「……」

 

(まぁ、そこが北斗さんらしいですけどね)

 

 早苗は横目で悩む北斗を見ながら、目を細める。

 

(でも、だからこそ、北斗さんの優しさに漬け込む方が現れるかもしれない)

 

 彼女はそう考えながら、警戒心を抱く。

 

 

 

「おぉ、北斗君!」

 

 すると整備工場から夢見とちゆりの二人が出てきて、北斗を見つけるなり夢見が走ってくる。

 

「いやぁ凄いな!! 蒸気機関車が動く状態であるってだけでも凄いのに、分解整備の様子まで見せてもらって!! こんなの未来じゃ中々無くてね!」

 

「は、はぁ」

 

 興奮気味の夢見に北斗は押され気味になって北斗は苦笑いを浮かべる。

 

「大変ですね」

 

「お互い様だよ」

 

 早苗はそんなやりとりを見ながらちゆりに声を掛けると、彼女は短く返す。

 

「……」

 

 北斗は工場の中で見た物を語る夢見を見ながら、目を細める。

 

「夢見さん」

 

「おぉ、なんだい?」

 

「先ほど聞きそびれましたが、お聞かせてもらえませんか? 実物(・・)を見たことが無いという意味を」

 

「……」

 

 と、興奮気味だった夢見は落ち着き、真剣な表情になる。

 

「……」

 

 夢見は少しの間沈黙した後、口を開く。

 

「正直、君に対してこれを言うのは気が引けるけど……」

 

「……」

 

「北斗君。未来じゃ――――

 

 

 

 

 

 

 ――――蒸気機関車は存在しないんだ。少なくとも、実物はね」

 

 

 

 




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