東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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シゴナナは135号機と集煙装置を付けてた時の1号機が好きです。


第125駅 峠に挑む貴婦人

 

 

 

 

 とある日の幻想郷。

 

 

 

 その日の幻想郷は雨雲が空を覆い、雨が降っている。

 

 それでも人里の傍にある駅には、里の人間が多く居た。

 

 今日は守矢神社行きの列車が運行される日であり、客の殆どは守矢神社への参拝客だ。

 

 守矢神社方面の二番線には、スハ43三輌とスハフ42二輌の計五輌が置かれており、次々に乗客が客車に乗り込んでいる。

 

 駅の傍にある操車場では、転車台で方向を変えて、炭水車(テンダー)に合羽を纏った作業員の妖精により水と石炭を補給しているC57 135号機の姿がある。

 

「……」

 

 その足回りでは、打音検査を終えて自身を見つめる(C57 135)の姿がある。

 

(全く。どうしてこうなったのかしら)

 

 彼女は内心呟きながら、今の状況になった経緯を思い出す。

 

 

 

 今日の守矢神社行きの列車の牽引機はC57 135号機であるが、当初は本機が担当するはずではなかった。

 

 今朝方本来の牽引機であったD51 465号機は、火入れをして出発準備に入っていたのだが、その日に限って蒸気の上がりが悪く、客車を牽引できる状態ではなかった。

 

 その為D51 465号機は急遽検査が行われることになり、代わりの機関車が必要になったが、火入れしてあった機関車は蒸気タービンの検査の為に火を入れていたC57 135号機のみであった。今から火入れを行っても、最短でも三時間は掛かる。この辺りは蒸気機関車の不便なところである。

 なので、急遽C57 135号機が牽引機として運用に入ったのだ。

 

 しかし守矢神社方面の路線は勾配区間が多い妖怪の山であり、本来なら8620形や9600形、D51形、E10形が適任なのだが、その他の機関車では安定して運転を行うなら補機が必要となる。だが今回ばかりはこの二輌しか火入れを行っていないので、C57 135号機は単機で挑まなければならない。

 

 しかも昨日の夜から雨が降っており、妖怪の山の線路のコンディションは最悪だ。

 

 そんな中を、(C57 135)は不慣れな勾配区間に挑まなければならない。

 

 

 

(それに……)

 

 ふと、彼女は運転室(キャブ)に視線を向ける。

 

 そこでは機関助士の妖精より話を聞いているナッパ服姿の小傘の姿がある。

 

 彼女は蒸気機関車の運転を学ぶ為に、今回の運転に同行している。彼女は整備工場で機関車の整備士以外にも、蒸気機関車の運転も学んでおり、構内で車輌の移動をする為に、機関車の運転を学んでいるのだ。

 驚かすこと以外では有能な唐傘お化けである……

 

(あんまり同行させるのは好きじゃないんだけどね。今日みたいな天気は特にね)

 

 (C57 135)は見上げて雨雲に覆われて雨が降っている空を見る。

 

 ただでさえ線路の状態は最悪であり、尚且つこの天気だ。運転にかなり神経を使うのは確実だ。それなのに第三者が居るのは気が散ってしまう。

 

(まぁ、やるだけやるしかないか)

 

 しかしどう足掻いても現状を変えることは出来ない。今やるべきことをやるだけである。

 

 彼女は気を引き締め、C57 135号機の運転室(キャブ)へと向かって扉を開けて乗り込む。

 

(C57 135)さん! 今日はよろしくお願いします!!」

 

 運転室(キャブ)に乗り込むと、小傘が頭を下げて大きな声で挨拶をする。

 

「よろしく。せっかく乗り込んでいるんだから、ちゃんと見て学ぶのよ」

 

「はい!!」

 

 元気ある彼女返事を聞き、(C57 135)は頷いて機関士席に座り、窓を開けて頭を出して前後を確認する。

 

 作業員の妖精から石炭と水の補給完了の報告を聞き、彼女は逆転機ハンドルを回してギアをバックに入れ、後ろを見て作業員の妖精が安全を確認して緑旗を揚げ、旗を確認した彼女はブレーキハンドルを回してブレーキを解くと、空気が抜けるような音が密閉型の運転室(キャブ)内に響く。

 次に足元にあるペダルを踏んで汽笛を短く鳴らし、加減弁ハンドルを引いてシリンダーへ蒸気を送り込み、C57 135号機を後ろに進ませる。

 

 

 操車場から後退して二番線へと入ったC57 135号機は、ゆっくりと赤と緑の旗を手にして緑の旗を揚げている作業員の妖精の誘導に従って客車へと近づき、赤い旗が揚がって手前で停車する。

 

 合羽を纏った作業員の妖精が機関車と客車の連結器に異常が無いか確認し、問題無いのを確認してホイッスルを吹きながら緑旗を揚げる。

 

 緑旗を確認して(C57 135)はブレーキを解いて汽笛を短く二回鳴らし、ゆっくりと後退させて機関車と客車と連結する。

 

「……」

 

 駅員の妖精による発車ベルを鳴らされるまでの間、(C57 135)は逆転機ハンドルを回してギアを変えてから肘掛に左肘を掛け、機関助士の妖精はスコップで石炭を掬い、床のペダルを踏んで焚口戸を開けて火室へ石炭を放り込む。小傘は後ろからその様子を熱心に見ている。

 

 少しして発車時刻になり、駅にある発車ベルが駅員によって鳴らされる。

 

 (C57 135)はゴーグルを下ろして目元を覆い、ブレーキハンドルを回してブレーキを解き、足元にあるペダルを踏んで汽笛を鳴らし、加減弁ハンドルを引く。

 

 シリンダーへ蒸気が送り込まれ、C57 135号機が煙突から煙を吐き出し、ドレンを吐き出しながら客車五輌を牽いてゆっくりと前進する。

 

 ドレンを吐き終えたC57 135号機は、激しく煙を吐き出して一気に加速する。

 

 

 ちなみに線路の脇では、合羽を纏って写真撮影に挑んでいる天狗の姿があったりする。中々気合の入った撮り鉄魂を持つ天狗が居るようである。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 人里の駅から出発したC57 135号機が牽く列車は魔法の森に沿って敷かれている線路を走り、分岐点を通ってその中へと入る。

 

 (C57 135)は加減弁ハンドルを引いてシリンダーへ送る蒸気の量を増やし、逆転機ハンドルのロックを外してハンドルを回し、ギアを上げてハンドルにロックを掛ける。

 

 機関助士の妖精はスコップに石炭を掬い、床のペダルを踏んで焚口戸を開けて火室へ投炭を数回行い、火力を上げる。数回投炭した後、水位を確認してまだ十分にあるのを確認して各所へ蒸気を送るバルブを回して蒸気の量を調整する。

 

 火力が上がったことでボイラーの水が沸騰して更に蒸気が発生し、蒸気圧が上がって動輪の回転が更に早くなり、列車の速度が上がる。

 

「あ、暑い……」

 

 小傘は揺られながら(C57 135)と機関助士を後ろから見ているが、ボイラーから発せられる熱に彼女は額に浮き出た汗を袖で拭いながら声を漏らすも、その声は密閉型の運転室(キャブ)内に響く騒音に掻き消されて両者の耳に届いていない。

 

 C57 135号機は更に速度を上げて魔法の森の中に敷かれた線路を走る。

 

(そろそろね)

 

 窓から頭を出して前方を見ている(C57 135)は、そろそろ妖怪の山に入るのを確認して機関助士の妖精に大きな声で火力を上げるように伝える。

 

 

 列車は妖怪の山へと入り、勾配のある線路を登っていく。

 

 勾配のある路線へ入った途端、C57 135号機は若干速度が落ちてしまう。しかし(C57 135)は加減弁ハンドルを引いてシリンダーへ送り込む蒸気の量を増やし、砂撒き機のレバーを動かして線路に砂を撒き、機関助士の妖精が投炭を続けて火室の火力を上げる。

 

 線路に撒かれた砂を動輪が踏み締め、しっかりと線路を掴んで機関車は勾配を登っていく。

 

「……」

 

 ゴーグルに付いた水滴を左袖で拭いながら、(C57 135)は加減弁ハンドルを持つ右手を握り直して、息を呑む。普段あまり走らない勾配区間とあって、彼女は緊張した面持ちだ。

 

 力強いドラフト音と共に煙突から煙を吐き出し、C57 135号機は一気に妖怪の山の勾配を登っていく。

 

 機関助士の妖精が注水機(インジェクター)のハンドルを回して炭水車(テンダー)からボイラーへ水を送り込んで水位をいっぱいまで上げると、(C57 135)と反対側の窓から頭を出して前方を確認する。

 

「一気に登るわよ!」

 

 彼女は騒音に負けないぐらい大きな声でそう言うと、機関車を登らせていく。

 

 

 踏切を通り抜け、C57 135号機は勾配を登っていく。その姿を妖怪の山に住む妖怪達が線路の脇から見ている。

 

 その中には合羽を纏い、カメラを手にした天狗がその姿を撮影している。彼らからすれば普段妖怪の山を走らないC57 135号機に加え雨の中を走るという珍しい被写体を必死に撮影している。

 

 列車は一気に妖怪の山を登って行くも、傾斜している線路を走っているとあって、徐々に速度が落ちていく。

 

 (C57 135)は砂撒き機のレバーを動かして砂を撒きつつ、加減弁ハンドルを操作して蒸気の量を調整する。

 

 機関助士の妖精は火室への投炭を繰り返して、火力を上げる。

 

 妖怪の山を登っていると、突然C57 135号機の煙突から吐き出される煙の間隔が短くなると共に動輪が空転を起こす。

 

「空転!」

 

 (C57 135)は空転を起こしたのを声を上げて伝えると共に、加減弁を戻して蒸気の量を調整して砂を撒いて空転を防ごうとする。

 

 機関助士の妖精はすぐさまスコップを立て掛けて各所へ蒸気を送るバルブを回して蒸気の量を調整し、再度スコップを手にして投炭を再開する。

 

 空転を起こしたことで機関車は速度が著しく低下し、吐き出す煙の間隔が少しずつ広がる。

 

 C57 135号機は苦しそうに煙を吐き出しながらゆっくりと勾配を登って行くが、再度動輪が空転を起こす。

 

 (C57 135)と機関助士の妖精は必死に抗うものも、機関車の速度はどんどん下がっていく。

 

 そこへ更に空転が起きたことで、ついにC57 135号機は空転を起こしながら道中で停止してしまう。

 

「くっ!」

 

 (C57 135)はすぐさまブレーキハンドルを回してブレーキを掛け、加減弁を閉じると、機関助士の妖精はボイラーの安全弁を開き、勢いよく蒸気が排出される。

 

「くそっ。こんな所で止まるなんて」

 

 彼女は窓から頭を出して目元を覆っているゴーグルを上に上げて、止まってしまった自身を見て思わず悪態をつく。

 

「仕方ありませんよ。この辺りの勾配はこの路線の中で一番急な上に、この天気ですから」

 

「最初の方で飛ばしたから行けると思ったんだけど……砂の撒き方が甘かったか」

 

 機関助士の言葉にそう呟くと、彼女は大きなため息を付く。

 

 

 列車が立ち往生したのは、妖怪の山でも勾配が厳しい区間だ。ここを超えれば比較的に緩やかな勾配だけになる。しかし雨の日のここは兎に角滑るので、蒸気機関車の神霊達からすれば鬼門なのだ。

 

 

(ホント、よくこんな場所を走れていたものね)

 

 (C57 135)は似たような路線を走る長女(トップナンバー)を思い出しながら、椅子から立ち上がる。

 

「ど、どうするんですか?」

 

 思わぬ状況に小傘はオドオドした様子で(C57 135)に問い掛ける。

 

 彼女は一考して、小傘に伝える。

 

「あなたは最後尾の客車に乗っている車掌に状況と列車を一旦下げるから誘導を行うようにと、伝えてきなさい」

 

「えっ?」

 

「急いで! 雨の中の勾配起動は時間との勝負よ!!」

 

「は、はい!」

 

 (C57 135)の一喝に小傘は驚きつつ運転室(キャブ)の扉を開けて降りると、最後尾の客車に乗っている車掌の元に向かう。

 

 ただでさえ線路は雨に濡れて滑りやすい状態だ。その上更に降る雨に加え、撒いた砂が雨に濡れて余計に滑りやすくしてしまうのだ。

 なので、時間が過ぎれば過ぎるほど線路の状態は悪くなり、勾配を登れなくなってしまう。最悪救援が必要になるが、まだ罐の火は上がっていないだろうから、救援は望めないと思った方が良い。

 

 最後尾の客車に向かう途中、小傘は客車の窓から頭を出して様子を伺っている乗客に状況を説明し、彼女は車掌に用件を伝えてから運転室(キャブ)に戻る。

 

「バックしてやり直すわよ」

 

 (C57 135)は逆転機ハンドルのロックを外して回し、ギアをバックに切り替えながら投炭作業を行っている機関助士の妖精と戻ってきた小傘に伝える。

 

 彼女は後ろを見て最後尾の客車の扉を開けて車掌が上半身を出し、緑旗を出しているのを確認し、汽笛を鳴らして加減弁ハンドルを引く。

 

 立ち往生したC57 135号機は勾配を下って行き、ゆっくりと元来た線路を戻っていく。

 

 

 ゆっくりと後退する列車は、平坦で尚且つ直線区間へ入り、車掌が止めるまでギリギリ下がり、車掌が赤旗を手にして振っているのを確認して停車する。

 

「ここから一気に加速して登るわよ。罐焚きをしっかりとね」

 

「はい!」

 

 機関助士の妖精は焚口戸を手動で開けてロックを掛け、開けっ放しの状態で投炭を始めて空転で崩れてしまった火床を作る。

 

「小傘。あんたは炭水車(テンダー)に登って石炭を寄せてきなさい」

 

「は、はい!」

 

 小傘は敬礼をしてからスコップを手に運転室(キャブ)から炭水車(テンダー)に登り、先ほどより勢いが弱まって小雨程度になっている中、スコップで積まれた石炭を前へと寄せていく。

 

 (C57 135)は席を立って運転室(キャブ)を出ると、器用に機関車をよじ登って蒸気ドームと共に覆われている砂箱を開いて砂の残量を確認する。

 

(幸い結構な量が残っているか。まぁケチったから残っているのは当然か)

 

 彼女は砂箱の蓋を閉じて機関車を降り、運転室(キャブ)に戻る。

 

 

 

「ほぅ。これは珍しい光景に遭遇したな」

 

 C57 135号機が再スタートの準備をしている中、線路の脇で合羽を纏い、カメラを手にしている天狗の女性が列車を見て声を漏らす。

 

「この雨では線路が滑りやすいんだと思います。それで先ほど止まってしまったんですが」

 

 その天狗の隣で線路を見ながら合羽を纏う射命丸文が説明する。

 

「ふむ。それもあるだろうが、いつもの蒸気機関車では無いのも大きいだろう。恐らくこれは峠向きではないのだろうな」

 

 天狗はC57 135号機の動輪を見ながらそう呟く。

 

「というより、簡単に外に出歩かないでくださいよ。大天狗様達から文句を言われる私の身にもなってください」

 

「私からの命令だからと言えばいいだろう?」

 

「『天魔』様のお目付け役として居るんですから、そんな理由が通じるとでも?」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

 文がジトーと見ながらそういうと、天狗こと天魔は苦笑いを浮かべる。

 

「だが、これほど素晴らしい物があるのに、見に行かないわけにはいかないからな」

 

「全く。あなたという方は」

 

 文は呆れた様子でため息をつく。

 

 

 天魔と呼ばれた天狗の女性。彼女こそが天狗の長であり、この妖怪の山を統べる大妖怪なのだ。彼女の反応から察しは付いていると思うが、意外にも天魔は蒸気機関車に興味津々、というより結構のめり込んでいる。

 その為、こっそりと抜け出しては蒸気機関車の撮影に向かっているという。

 

 それ故に、大天狗達は天魔の行動に頭を悩ませているとか何とか……

 

 

 

 

「罐は良い?」

 

「オーライ!」

 

「水はいっぱい?」

 

「オーライ!」

 

「良し……」

 

 機関助士の妖精から準備万端であるのを確認し、(C57 135)は機関士席に座ってブレーキハンドルを握る。

 

「……」

 

 彼女は深呼吸をして気持ちを整え、「行くわよ」と声を漏らしてブレーキハンドルを回してブレーキを解き、ペダルを思い切って踏み込み、汽笛から大きな音と共に蒸気が吹き出され、加減弁ハンドルを大きく後ろに引く。

 

 シリンダーに多くの蒸気が送り込まれ、C57 135号機はドレンを吐き出しながらゆっくりと勾配を登って行く。

 

 C57 135号機は勾配とはいえど、その加速力を生かしてどんどん加速していき、登りつつ速度を上げていく。

 

 (C57 135)は加減弁ハンドルを引いてシリンダーへ送る蒸気の量を増やし、逆転機ハンドルを回してギアを上げ、更に砂撒き機のレバーを動かして線路へ砂を撒く。

 隣では機関助士の妖精が必死に火室へ投炭を繰り返して火力を上げている。

 

 C57 135号機は激しいドラフト音と共に煙を吐き出し、動輪が線路に撒かれた砂を踏み締めてしっかりと捕らえ、直線区間をその加速力でどんどん速度を上げて行く。

 

 その猛々しく、どこか生命の息吹を感じさせる姿に見物している天狗や妖怪達は息を呑み、真っ直ぐ見据えている。そしてカメラを手にしている天狗達はその姿を逃がさまいと、一心不乱にシャッターを切る。

 

 先ほどよりも多くの砂を線路に撒き、動輪を空転させずにC57 135号機は先ほど立ち往生した区間へと差し掛かる。

 

「……」

 

 (C57 135)は加減弁ハンドルを握り締め、息を呑んで気を引き締める。機関助士の妖精もパワーを落とさないように投炭を続ける。

 

 そしてC57 135号機は空転を起こさずに速度を維持したまま、立ち往生した区間へと入る。

 

 しかしやはりきつい勾配が掛かることで、速度を維持していた機関車は少しだけ速度が落ちる。

 

 (C57 135)は線路に砂を撒いて空転を起こさないようにしつつ、蒸気の量を慎重に調整して速度を維持させる。

 

 その隣で、小傘は機関助士の妖精から大声でボイラーの水位を確認するように言われてすぐに水位計を見る。その水位を機関助士の妖精に伝えると、彼女は小傘に注水機(インジェクター)のハンドルを回すように伝え、小傘は戸惑いながらも機関助士の妖精から指示を受けて注水機(インジェクター)のハンドルを操作する。

 

「……」

 

 C57 135号機は息切れを起こすかのようなドラフト音と共に煙を吐き出しているが、それでも前へ前へと進んでいる。

 

 

 途中一瞬動輪が空転を起こして速度が落ちるも、C57 135号機は立ち止まることなく立ち往生した場所を通り抜け、やがて難所を突破した。

 

「……」

 

 (C57 135)は静かに頷くも、彼女は気を抜くことなく、加減弁ハンドルを握り締め、前を見る。

 

 難所を突破したC57 135号機は、緩やかな勾配を加速して登って行く。

 

 

 その後列車は難なく山を登っていき、目的地の守矢神社へと到着した。

 

 

 

 




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