東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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第129駅 無縁塚の再調査

 

 

 

 

 快晴な天気で、過ごしやすい気候になって徐々に春の訪れを感じさせる幻想郷。

 

 

 その幻想郷に、一編成の列車が走っている。

 

 

 D51 241号機がスハ43二輌に、炭水車(テンダー)側と連結したD51 1086号機を牽いて走っている。所謂プッシュプル編成だ。

 

 D51 241号機は特徴的なギースル・エジェクタから煙を吐き出して走り、D51 1086号機も後進で煙突から煙を吐き出して走る。

 

 しかしよく見ると、D51 1086号機は以前と比べて大きく装備が変わっており、北海道の罐の特徴であった切り詰めデフの除煙板(デフレクター)が通常の幅の除煙板(デフレクター)に変わっており、更に煙突には『長野工場式集煙装置』と呼ばれる集煙装置が取り付けられている。

 これは様々な装備を試して性能を確認すると共に、色んな見た目で楽しませるという目的がある。D51 465号機の除煙板(デフレクター)が通常の幅仕様に変わったのもそれらの理由がある。もちろんD51 1086号機には集煙装置を取り付けた経歴は無い。

 

 この編成は現在、無縁塚へと向かって驀進している。

 

 

 

 

「今日は同行してもらって、ありがとうございます、霊夢さん」

 

「別に良いわ。博麗の巫女として、異変解決の為に動かないのは沽券に関わるし」

 

 スハ43の車内にて、北斗が向かい側の席に座る霊夢に頭を下げると、彼女は窓から外を見ながらそう答える。

 

 北斗達は無縁塚の再調査の為に、協力者を乗せて無縁塚に向かっていた。

 

「北斗さん! 何があっても、霊夢や私が守りますからね!」

 

 と、霊夢の傍にあるお椀の中に居る針妙丸が両手をグッと握り締めながらそう言う。彼女も協力を申し出たら、快く承諾した。

 

「ありがとうございます、針妙丸さん」

 

 北斗は彼女に頭を下げる。

 

「これで、無縁塚の調査が完了すれば良いんですが」

 

 北斗の隣に座る早苗が呟く。

 

「まぁさすがに終わるだろう。今回は人数も多いしな」

 

 霊夢の隣に座る魔理沙が腕を組んだまま答える。

 

「それにしては、多過ぎるんじゃないかしら?」

 

 と、霊夢と魔理沙の後ろの席から声がすると、アリスが頭を出す。

 

「何を言っているんですか! 万全を期す為に大人数が必要なんですよ!」

 

 早苗は立ち上がり、アリスに対して両手を握り締めながら力説する。

 

「それにしたって、呼び過ぎよ」

 

 と、霊夢は後ろを見るように視線を向ける。

 

 

 一輌目のスハ43には、全ての席を占めるほどではないが、半分近くの座席を占めるほどに大人数が乗っている。二輌目に調査を行う作業員の妖精達が乗り込んでいる。

 

 無縁塚の調査の為に、早苗が知り合いに声を掛けた結果、この人数になったようだ。まぁ中には夢月や幻月、エリス、みとりの姿がある。魅魔と幽玄魔眼は留守番である。

 

 だが、中には見慣れない者の姿がある。

 

 

「おぉ! これが列車か! 初めて乗ったが、中々凄いぞ!」

 

 と、アリスの横から一人の少女が出てくると、席を離れて北斗が座っている席の前に来る。

 

 薄紫味のあるピンクのロングヘアーをして、同色の瞳の色をしているが、その瞳に光が無い無表情の少女で、青のチェック柄の上着に膨らんで顔のようにも見えるいくつものスリットがあるバルーンスカートを穿いており、赤と青にリボンのある白い靴を履いている。

 少女は頭に『火男』の能面を付けており、楽しそうな様子である。

 

 彼女の名前は『秦 こころ』 面霊気と呼ばれる付喪神であり、付喪神としてのレベルは恐らく追随を許さないぐらいに時を経ている。

 

 なぜ彼女が北斗達に同行しているかと言うと、道中線路の沿線に居た彼女が何を思ってか、走行中の列車に向かってジャンプし、スハ43の窓に張り付いて無理やり入ろうとして、そこから半ば強引に付いて来たのである。

 その際に霊夢にゲンコツを貰ったが。

 

 なんでここまで無理矢理付いて行こうとしたのかと言うと、本人曰く『面白そうだから♪』だそうである。

 

「は、はぁ。それは、良かったですね」

 

 無表情なのにどこか楽しそうなこころの姿に北斗は苦笑いを浮かべる。

 

「で、付いて来るからには、私達の用事を手伝ってもらうわよ」

 

「良いよ。迷惑を掛けたからには、その清算をしなければならないからな。それに―――」

 

 と、霊夢の条件を了承すると、こころは能面を『狐』に変化させて北斗を見る。

 

「多くの付喪神に囲まれた君には、興味があるんだ。後で話を聞かせてくれないか?」

 

「話、ですか?」

 

「うん。君自身にも興味がある。他の人間と違う感覚があるからね」

 

「……」

 

「あぁ、安心してくれ。私はそんじょそこらの妖怪より強いからな。君の事は守って見せよう」

 

「えっ? あっ、はい」

 

 急に脈絡の無い話の流れに、北斗は戸惑うしかなかった。

 

(相変わらずこころさんは話が急に変わりますね)

 

 急な変化を見せるこころを見ながら早苗は内心呟く。

 

「しっかし、こりゃ豪勢な面々だよな。逆にこの面子に喧嘩を挑むやつの顔が見てみたいぜ」

 

「居たら相当の大馬鹿よ」

 

 面白そうに魔理沙がそう言って霊夢が毒を吐いて、それを聞いた早苗は苦笑いを浮かべる。

 

「それにしても、お前が付いて来たのは意外だったな、菫子」

 

 魔理沙は隣の席を見る。

 

「ま、まぁ、ちょっと興味があるし、付いて来ただけよ」

 

 と、隣の席に座る菫子は戸惑った様子でそう答える。

 

 彼女も偶々幻想郷に訪れた時が、ちょうど無縁塚の調査に出発する時だったので、霊夢に声を掛けられて参加したのだ。

 

「すみません、菫子さん。貴重な時間を割いて来て頂いて」

 

「い、いえ。別に大丈夫です。魔理沙にも言ったけど、興味があるから付いて来ていますので」

 

 北斗がそう言うと、菫子はどこか気恥ずかしそうに伝える。

 

「……」

 

 ただ、ちょうど北斗に隠れて見えないが、彼の背後で妙に圧の強い笑みを浮かべている早苗の姿があった。

 その姿を見た針妙丸は「ヒィッ」と怯えた表情を浮かべる。

 

「……」

 

 すると、菫子は戸惑った様子で、前の座席を見る。

 

「すぴー、すぴー」

 

 そこには鼻提灯を出して寝ている萃香の姿がある。別に鬼である彼女を初めて見たわけでは無いが、なぜ彼女が付いて来ているのかが疑問のようである。

 

「今は寝ているだけだから、別に気にしなくてもいいわよ、菫子」

 

 と、そんな彼女の様子を察してか、霊夢が素っ気無く伝える。

 

「そうは言っても……どうして連れて来たんですか?」

 

「そいつが宴会で使う予定だった酒を飲んだからよ。樽一つ丸々飲み干して、どうしてくれるのよ」

 

 と、霊夢はブツブツと愚痴を零す。どうやら宴会で出す予定だった酒を彼女に飲まれたそうである。

 

「だから、散々こき使ってやるつもりよ。もちろん宴会の準備にもね」

 

「鬼相手によくそんなことが出来ますね」

 

 相変わらず怖いもの知らずな霊夢に、早苗は呆れた様子で声を漏らす。

 

 

 

 するとD51 241号機が汽笛を連続して鳴らし、ゆっくり速度を落としていく。

 

「んげ!」

 

 少し急に速度を落としたせいで、座席に横になって寝ていた萃香が転げ落ちて変な声を漏らす。

 

「これは……!」

 

 北斗は窓を上げて開けると、頭を出して前を見る。

 

 D51 241号機は汽笛を何度も鳴らして速度を落としている。何かしらの事態が発生しているのを伝えている為の警笛だ。

 

「一体何が……?」

 

 北斗の隣から早苗が頭を出して前を見る。同じように窓を開けた各々が前を見ている。

 

 

 やがて列車は停止し、D51 241号機とD51 1086号機は安全弁からボイラーに溜まった蒸気を噴射する。

 

 北斗はすぐに立ち上がってスハ43の扉を開けて外に出ると、D51 241号機の元に向かう。

 

明日香(D51 241)! 一体何があった!」

 

「区長。それが、線路脇に人影があって、緊急停止しました」

 

「人影?」

 

 運転室(キャブ)の窓から頭を出した明日香(D51 241)が答えると、北斗は首を傾げる。

 

 無縁塚付近とあって、この辺りでも妖怪や獰猛な獣が多い。そんな所に来る者が果たしているのか……

 

 

「北斗さん!!」

 

 と、客車から早苗が北斗を呼び、彼はすぐに早苗の元に向かう。

 

「早苗さん。どうしましたか?」

 

 北斗は客車を見上げて窓から顔を出している早苗に声を掛ける。

 

「北斗さん。あなたに話があるって方が」

 

「自分に?」

 

 

「やぁ、初めまして」

 

 と、前から聞き慣れない声がして前を見ると、一人の少女が立っていた。

 

 クセのある灰色のセミロングの髪をした少女で、深紅の瞳をして、その頭には丸いネズミのような耳が生えており、腰からもネズミのような尻尾が生えている。黒い上着の上に水色のケープを羽織り、セミロングの黒いスカートを着用している。

 

「えぇと、あなたは?」

 

「私はナズーリンという、一端のネズミ妖怪さ」

 

「は、はぁ。初めまして、ナズーリンさん」

 

「噂はかねがね聞いているよ、霧島北斗」

 

 北斗は戸惑いながらも挨拶をする。

 

「おぉ、ナズーリンじゃないか!」

 

 と、客車の窓からこころが顔を出して彼女に声を掛ける。

 

「こころか。まさかお前が居るとは思わなかったな」

 

「前から興味あったからな。ちょうど見かけたから、同行したんだ」

 

「そうか」

 

 こころの姿を見たナズーリンが意外そうな表情を浮かべてそう言うと、彼女はそう答える。

 

「列車を止めたのは、あなたですか?」

 

「そうだ。ちょうど君達に用があってね、少し強引に止めさせてもらったんだ」

 

「は、はぁ」

 

「ふーん。無縁塚に入り浸ってるあんたがねぇ」

 

 と、素っ気ない様子で霊夢が上から呟く。

 

「あぁ、そうだ。君には礼を言わないとね」

 

「礼?」

 

 北斗は首を傾げながら声を漏らす。

 

「主人が無くした宝塔を拾ってくれた礼さ。おかげで探す手間が省けたよ」

 

「宝塔って言ったら……」

 

「以前自警団に届けたあれですよ。ナズーリンさんはその持ち主のお目付け役なんですよ」

 

 北斗が思い出していると、早苗が宝塔の事と、ナズーリンのことを教える。

 

「あの時の。ちゃんと届いたんですね」

 

「あぁ。お陰で助かったけど、私としてはご主人にお灸を添える目的で簡単に見つかって欲しくなかったけど」

 

「は、はぁ」

 

 地味にきつい一言を発するナズーリンに北斗は苦笑いを浮かべる。よほど彼女の主人は宝塔をなくすようだ。そしてその度に探しているのは彼女のようだ。

 

「で、何の用で止めたのよ」

 

 と、霊夢が頬杖を着きながら問い掛ける。

 

「あぁ、そうだったね」と言いながら、ナズーリンは北斗を見る。

 

「君たちを止めたのは、無縁塚にある物を見てもらいたいんだ」

 

「無縁塚に?」

 

「それって一体……」

 

 

 その後、ナズーリンの口から伝えられた事実に、北斗達は驚きに満ちることになる。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

『……』

 

 そして無縁塚に到着した北斗達は、その光景に呆然を立ち尽くす。

 

 無縁塚は以前と変わりない、不気味な雰囲気であったが、以前と違う光景が目の前に広がっている。

 

「うわぁ……いっぱいだぁ!」

 

 宙に浮かんでいるお椀の中にいる針妙丸が、目を輝かせてそれを見ている。

 

 

 

 それはまるで投棄されたようで、そうでもないように並べられた多くの蒸気機関車の姿があった。

 

「な、何ですかこれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?」

 

 早苗はそんな非常識な光景に、思わず叫ぶ。

 

「なに、この蒸気機関車の不法投棄現場は……」

 

 董子はその光景に思わず声を漏らす。彼女の言う通り、どう見ても不法投棄現場にしか見えないからだ。

 

「これは……」

 

 北斗は今までに無い蒸気機関車の状態に、声を漏らす。一部を除けば、蒸気機関車は線路の上で見つかっていたのに、目の前にある蒸気機関車達は地面に直接置かれている状態だった。

 

「何だか、今までと違って随分と適当な感じね」

 

「それに、機関区にある機関車と雰囲気が違うわね」

 

「確かに、かなり違うな」

 

 蒸気機関車の状態を見て、幻月や夢月、みとりがそれぞれ呟く。

 

 

 これまで幻想郷で見つかった蒸気機関車と違って、彼女たちの目の前にある蒸気機関車はかなり雰囲気が違う。

 

 それもそのはず。彼らの目の前にある蒸気機関車の全てが、海外で作られた蒸気機関車だからだ。

 

 色取り取りなカラーリングだったり、特殊な足回りであったり、巨大な姿であったりと、様々な姿や構造を持っている。

 

 

「これは、全て海外の蒸気機関車ですね」

 

「そうなんですか?」

 

 蒸気機関車を見て北斗がそう言うと、早苗が問い掛ける。

 

「えぇ。あまり詳しくありませんが、それでも見たことがあるものが多いですね」

 

「そうですか。確かに日本の蒸気機関車と比べると、大分違いますね」

 

 早苗はそう言いながら、『C53』と書かれたナンバープレートを持つ蒸気機関車を見る。

 

「で、見せたかったのって、これのこと?」

 

「そうだよ。今朝見つかってね、これに詳しい君たちに伝えようと移動していたら、ちょうど君たちが来てくれたんだ」

 

「なるほどね」

 

 お祓い棒を手にしている霊夢がナズーリンに問い掛けると、彼女が答える。

 

「それにしても、これどうするんだ?」

 

 と、魔理沙が「どうするよ」と言わんばかりに問い掛ける。

 

「さすがに、この状態では……」

 

 北斗は苦虫を噛んだような表情を浮かべる。

 

 蒸気機関車があるのは、線路から大きく離れた場所であり、どう考えても操重車のクレーンでは届かない。そうなると蒸気機関車の近くに仮設の線路を敷く必要があるが、地形の隆起が所々にあるので、そのままでは敷設できない。

 

「……」

 

 すると霊夢はチラッと何かを一瞥して考え込む。

 

 

 

「何やら大所帯で来ましたね」

 

『っ!』

 

 するとこの場に居る誰のものでもない声がして、彼女達は顔を上げてとっさに声がした方を見る。

 

 そこには、一人の少女が立っている。

 

 背丈は霊夢や魔理沙よりも高く、髪の色は緑で、右側が長いショートヘアーをしている。服装は白いシャツに青いベストを上から来ており、白いフリルが付いた黒いスカートを穿いている。

 頭には、厳かな帽子に紅白のリボンが付いているものを被っている。腕を組んでいる中、右手には金色で何らかの文字が刻まれた笏を手にしている。

 

「あの人は……」

 

「閻魔じゃない。なんであんたがここに居るのよ」

 

 北斗が見知らぬ少女に首を傾げていると、霊夢がどこか面倒くさそうな様子で問い掛ける。

 

「それはサボっている小町を探しに人里に向かう途中で、この無縁塚でこれらがあったもので。これに関して幻想機関区とやらに向かおうと考えていたところ、ちょうどあなた方が来ましたので」

 

「ふーん。というか、あの死神またサボってるのね」

 

「いつものことです。博麗の巫女は……どうやら彼の護衛兼調査に同行している、といったところですね」

 

「まぁね」

 

 閻魔と呼ばれた少女は、北斗を見てから霊夢を見て彼女が居る理由を察する。

 

「早苗さん。あの人は?」

 

「あの人はこの幻想郷の閻魔ですよ」

 

「閻魔、ですか」

 

 早苗から少女の事を聞き、北斗は息を呑む。

 

「……」

 

 すると少女は北斗を見ると、彼の元へと近づく。

 

「霧島北斗ですね」

 

「は、はい」

 

「初めまして。私はこの幻想郷で閻魔をしています『四季映姫・ヤマザナドゥ』と申します。あなたのことは聞いていますよ」

 

「閻魔、ですか」

 

 北斗は少女こと映姫を見ながら声を漏らす。

 

「なんです、その反応は? 私が閻魔であるのがそれほど意外ですか」

 

 彼の反応が気に食わなかったのか、映姫は不機嫌そうに目を細める。

 

「い、いえ。ただ閻魔といったら、厳つい雰囲気なのが多かったもので」

 

 北斗は映姫の雰囲気を察して、弁明する。といっても、そのイメージの元はアニメや漫画が多いが。

 

「……まぁ、そういう閻魔も居ますけど、どうやら外の世界ではそのイメージで通っているようですね」

 

 彼女はどこか納得しがたいという雰囲気だったが、渋々と納得する。

 

「まぁ、良いでしょう。本当なら色々と言いたいところですが、あなたにも仕事があるようですし、今回はこれで済ませますよ」

 

「……」

 

(あの閻魔が説教をしない、だと!?)

 

 映姫が説教をしない事態に、魔理沙は内心驚愕している。

 

「で、何の用なの、閻魔? こう見えても忙しいのよね」

 

「とても忙しいように見えないのですが……まぁ、用はあれです」

 

 どこか言いたそうな雰囲気だったが、映姫はそう言うと、無縁塚に投棄された蒸気機関車を見る。

 

「あれをあなた方に片付けて欲しいのですよ」

 

「なんで私たちが……」

 

「あんな物をいつまでも放置するわけにはいきません。あなた達が責任を持って回収してください」

 

「だからって」

 

「それに、あなた達もあれをどうにかしようとしていたのではありませんか?」

 

「……」

 

 映姫にそう言われて、霊夢は何も言えなかった。

 

「これも、異変解決の一環と思ってやってください。これも博麗の巫女としてのあなたが行なう善行です」

 

「……」

 

「もちろん、あなたにも協力してもらいますよ、霧島北斗」

 

「は、はい。もとより、そのつもりです」

 

「良い心掛けです。では、私はこれで。この間に小町が逃げるかもしれないので」

 

 映姫はそう言うと、人里を目指して歩いていく。

 

「……」

 

「何だか、一方的に言われたような気がしますね」

 

「まぁ、閻魔はあんなもんだぜ」

 

「は、はぁ」

 

 戸惑う北斗に、魔理沙は肩を竦めながらそう言う。

 

 何とも言えない雰囲気が漂う中、董子が切り出す。

 

「と、とりあえず、調査やあの蒸気機関車をどうするか考えますか?」

 

「そうね。まぁ一応あれを運び出す方法は考えてあるわ」

 

「えっ? 方法があるんですか?」

 

 早苗は驚いた様子で霊夢に問い掛ける。

 

「まっ、力があって自在に大きさを変えられるやつが居るしね」

 

「えっ?」

 

 と、霊夢は萃香を見ながらそう言うと、彼女は驚いた様子で振り返る。

 

「な、なぁ、霊夢? まさかと思うけど、あれ全部運べって、言うんじゃないよな?」

 

「あら。よく分かったわね。察しが良いやつは嫌いじゃないわ」

 

「ちょ、ちょっと!? 結構な数がある上にでかいんだけど!?」

 

 萃香は慌てた様子で霊夢に訴える。

 

「鬼のあなたなら余裕でしょ」

 

「大きくなるのは結構疲れるんだぞ!?」

 

「なら日ごとに分けてもいいわよ。それなら疲れないだろうしね」

 

「いや、でも……」

 

「ねぇ、北斗さん」

 

「なんでしょうか?」

 

 まだ抗おうとする萃香を無視して、霊夢は北斗に問い掛ける。

 

「多少時間は掛かっても、良いわよね?」

 

「え、えぇ。まぁ大丈夫ですが……」

 

「だ、そうよ、す・い・か?」

 

「ひぇぇぇぇ……」

 

 それはそれはイイ笑顔を浮かべる霊夢に、萃香は震え上がる。鬼である彼女であっても、霊夢に逆らったらいけない、と本能が訴えている。

 

 その様子に、北斗は罪悪感を抱く。

 

(相変わらず変わらないわね、この巫女は)

 

 夢幻姉妹は霊夢の様子から、全く変わらない姿に呆れるのだった。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 それからして、妖精達が無縁塚の調査を開始し、その妖精達の護衛に各々が付く。幻月と夢月、エリス、みとりは列車の護衛に着く。

 

 そんな中、北斗と早苗はある所を目指して歩いている。

 

「あの、北斗さん。気になるものって、一体なんですか?」

 

 お祓い棒を手にして周りを警戒している早苗は、北斗に問い掛ける。

 

「自分にもよく分からないんですが、最初見た時からどうも気になって」

 

「そんなに、ですか?」

 

「えぇ。自分でも、おかしいと思っているのですが……」

 

 北斗は思い悩んでいる様子で、丘の上に登る。

 

「あれは……」

 

 丘の上に登り切ると、そこにあったものに早苗は息を呑む。

 

 そこには、多くの小石が積み上げられたものがいくつもある。それが簡易的な墓であるのは容易に想像できた。

 

「お墓、ですね」

 

「そう、ですね」

 

 いくつもある墓の前で、二人は両手を合わせて黙祷する。

 

「……」

 

 ふと、北斗はいくつもある墓の中に、一つだけ違う墓を見つけると、ゆっくりとその墓に近づく。

 

「これだけ、他のお墓と違いますね」

 

 早苗はその墓が、他の小石を積み上げたものではなく、木材で十字に組み上げた墓であるのに、首を傾げる。

 

「……」

 

 と、北斗はその十字の墓の前に片膝を地面に着けてしゃがむと、十字の墓に掛けられている物を見る。

 

 それは長い間雨風に晒されて錆びているが、パッと見た感じ懐中時計みたいである。

 

「北斗さんが気になっていたのって、これですか?」

 

「えぇ。そうです」

 

 北斗はその墓の前で、両手を合わせて黙祷する。

 

「でも、どうして気になったんですか?」

 

「……正直な所、自分にも分からないんです」

 

「……」

 

 どこか悲しそうな、そんな雰囲気の北斗に、早苗は何も言えなかった。

 

「ただ、何て言えばいいか、分からないんです。でも、このお墓を見ていると、妙に引っかかるような、そんな感じがあるんです」

 

「……」

 

「すみません。おかしなことばかり言ってしまって」

 

「い、いえ。私は気にしていませんから。大丈夫です」

 

「……」

 

「そろそろ、行きますか?」

 

「はい。個人的な用はこれで終わりました。後は無縁塚の調査のみです」

 

 北斗は立ち上がり、無縁塚を見渡す。

 

「行きましょう、早苗さん」

 

「はい」

 

 早苗は微笑みを浮かべて頷くと、北斗の後に付いて行く。

 

「……」

 

 北斗は立ち止まって十字の墓を一瞥すると、再び歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 すると、墓の傍で薄っすらと人の姿が浮かび上がり、北斗の姿を見てその人影は微笑みを浮かべて、再び姿を消す。

 

 

 

 




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