C56 44号機の修繕の為の部品取りにされるかの世が高いですが、記事の一文を見ると動態復元も視野に入れている可能性もあるみたいですね。
今後の展開に期待です
それから更に二日後、未来から岡崎夢見が人造石油を作る為の設備と、製油設備の建築資材を持ってやってきた。
間欠泉センターでは、すでに受け入れの準備を終えており、すぐに夢見が持ってきた作業ロボットと、河童たちが設備の建設に入る。
そして幻想機関区でも、新たな設備が建設されている。
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幻想機関区では、機関庫と整備工場の横に、作業員の妖精たちがある設備を作っている。
それは液体燃料を入れて貯蓄する為のタンクであり、重油と軽油を溜めて置く為のタンクを二種類建設している。
そんな中、18633号機がC59 127号機を扇形機関庫から出して整備工場へと運び込んでいる。長らく動いていないとあって、試運転に向けて再整備が行われることになった。
「それにしても、本当に良かったのですか? ここまでしてくれて」
「良いのよ。私が好きでやっているんだから」
作業の光景を北斗と夢見が見ながら、会話を交わしている。
「人造石油の精製施設と製油設備が出来れば、あの機関車を動かせるようになるわね」
「そうですね。あれが動くなるようになれば、今後の運行形態も増えていくと思います」
「それは楽しみね」
夢見は楽しそうに笑みを浮かべる。
「設備の維持管理は作業ロボットを置いておくから、他は何もしなくてもいいわ」
「そうですか。しかし、整備とかそういうのはしなくて大丈夫なのですか?」
蒸気機関車の整備なら問題ないが、それ以外は門外なので整備することは当然出来ない。
「整備用のナノマシンが入っているから、問題無いわ。ナノマシンが古くなっても、中で新しく精製されるから、半永久的に稼働できるのよ」
「は、はぁ。本当に未来の技術は凄いなぁ……」
北斗は改めて未来の技術の凄さに、驚きを隠せなかった。
「それにしても……」
と、北斗は後ろを向いて、そこにある物を見る。
「本当にこれをもらっても良いのですか? 未来ではとても貴重な物のはずでは?」
「良いのよ。私が持っていても、宝の持ち腐れにしかならないし。だったら、活用してくれる所にあげる方が、この子達にも良いのよ」
「そうですか。ありがとうございます」
北斗はそう言うと、目の前にある物を見る。
二人の目の前には、線路の上に鎮座する二輌の鉄道車輛があり、どれも似たような形状をしている。
凸型の形状をした車輛であり、先頭の車輛は均等の長さがあるが、後ろの車輛は片方が短い形状をしており、どちらも赤と白のカラーリングをしている。
これらの車輛は、戦後の日本で開発され、各地で活躍したディーゼル機関車……『DD51形ディーゼル機関車』と『DE10形ディーゼル機関車』である。
DD51形ディーゼル機関車は、戦後の日本が開発したディーゼル機関車であり、おそらく一般の方でも目にしたことがあるかもしれない、日本で一番有名な機関車だ。
しかしこのDD51形ディーゼル機関車は、戦後の近代化に伴い蒸気機関車に代わって配備が進んだとあって、蒸気機関車を駆逐したDD51形ディーゼル機関車は鉄道ファンから『赤豚』だの『文鎮』だの、『デラックスデゴイチ』だの、言われ放題だった。
だが、それでもDD51形の汎用性と性能の高さは確かなものであり、様々な場所に配備されて、蒸気機関車を廃車に追いやった。
DD51形は旅客列車、貨物列車を牽引したり、寝台特急も牽引している。特に有名なのは青いボディーのDD51形二輌が重連で牽く『北斗星』だろう。
そして、あまり一般的に知られてはいないが、このDD51形はかつてある震災にて、被災地が燃料不足に陥り、非常に危険な状況が起こっていた。その被災地へ燃料輸送を行った機関車の中に、このDD51形が活躍したのだ。
全国から引退間際にあったDD51形が搔き集められ、燃料を満載したタンク車を何台も繋げた貨物列車を重連で牽き、被災地に燃料を届けたのだ。このことは絵本になっていたり、ドキュメンタリーになっていたりする。
だが、このDD51形もやはり時代の流れには逆らえず、新型のディーゼル機関車や電気機関車の配備が進むにつれて、その数を減らしていった。中には海外に輸出されて活躍する個体や、博物館や鉄道資料館にて保存される個体があったものも、それ以外は解体されてしまった。
その為、今となっては現役のDD51形ディーゼル機関車は、数える程度しか残っておらず、絶滅危惧種となっている。蒸気機関車を絶滅に追いやった本人が、その立場になろうとしているのだ。こんな皮肉は無いだろう。
そんなDD51形ディーゼル機関車だが、その中には動態保存されている蒸気機関車の補助を行う個体もあり、有名なSLやまぐち号でも試運転や天候次第では補機として連結され、牽引する蒸気機関車が不具合を起こしたり、検査期間に入った時は代理として列車を牽引することがある。
そして彼らの目の前にあるDD51形ディーゼル機関車は、『DD51 1169』というナンバーの個体である。
この個体はDD51形の中で、最も短い生涯で最期を迎えた機関車であり、あの追分機関区の火災にて被災し、焼失した機関車なのだ。
そのDD51 1169号機の後ろには、DD51形を片方短くしたような形状をしたディーゼル機関車であり、その名を『DE10形ディーゼル機関車』という。
DE10形ディーゼル機関車は、実質的にDD51形ディーゼル機関車をローカル線に入線できるように設計を変更した機関車ともいえる。実際ローカル線での貨物列車や、入れ替え作業を行う機関車として開発された。
ローカル線に入線出来たり、入れ替え作業を行う汎用性の高さは、DD51形ディーゼル機関車を上回っており、様々な所で活躍した。
現在でも多くの個体が現役で活躍しており、貨物列車の牽引はそうだが、中には動態保存されている蒸気機関車の補機として活躍する個体もある。
彼らの目の前にあるDE10形ディーゼル機関車は、『DE10 1744』というナンバーの個体である。
このDE10形ディーゼル機関車も、追分機関区の火災で焼失したディーゼル機関車であるのだ。
この二輌はある日、夢見の元に突然現れた。当時は焼け焦げた状態で彼女に発見され、触っただけで崩れてしまうぐらいにボロボロだったが、その後未来の技術で全力で走行が可能になる状態まで復元され、保管されていた。
今回の一件で、彼女は北斗にDD51 1169号機とDE10 1744号機をネットで見つけた整備マニュアルと運転マニュアルと共に譲渡するようである。まぁ彼女が持っていても、未来の鉄道規格ではこの二輌を使うことが出来ないので、仕方ないのだが。
(とりあえず燃料は今建てている燃料タンクに軽油が入れられるから、重油共々供給ができるようになるまで走行は可能か)
北斗は二輌のディーゼル機関車を見ながら、今後の運用を考える。
恐らくこの二輌は列車の運行に運用することはあまりなく、あくまでも後方支援を行う補機として使っていくだろう。ここでは蒸気機関車がメインなので、ディーゼル機関車をメインで使ったら元も子もない(メメタァ
運転手の教育や整備員の教育もマニュアルがあれば、何とでもなる。
まぁそれでも整備技術や運転技術の習得にまで、試運転までに最短で二週間ほど掛かるだろうが。
「……あっ、もうそろそろ時間か」
と、北斗はポケットから懐中時計を出して時刻を確認すると、声を漏らす。
「何か用でもあるの?」
「えぇ。この後ここに研修に来る方が到着しますので、その対応に」
「なるほど。まぁ私のことは良いから、来客の対応をしていてもいいわよ」
「すみません。では、自分はこれで。敷地内の見学は作業員の迷惑にならないようにお願いします」
「分かっているわ。迷惑かけないようにするからさ」
北斗は頭を下げて、夢見の元を離れる。
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北斗は人里行きの路線が伸びている敷地の端に来ると、一人の女性が大きめの鞄を持って待っている。
「すみません、こあさん。待たせてしまって」
「いいえ。そんなに待っていませんよ。私もさっき来たばかりですので」
と、女性ことこあが頭を下げる。
(ホント、パチュリー様にお嬢様は考えが唐突ですよ)
こあはため息をつき、こうなった経緯を思い出す。
パチュリーとレミリアの発案によって、こあは7100形蒸気機関車こと比羅夫号の機関士として研修に来ることになった。その目的は北斗の監視と、近況報告を行うためだ。
当然彼女は反対したものも、新しく小悪魔を召喚するし、教育だってここあとここで出来るということで、こあは納得せざるを得なかった。
(まぁ、お嬢様の決定ですし、どうしようもないですけどね)
こあはレミリアの決定には逆らえないので、とりあえず与えられた使命をこなすことにした。
「それでは、詳しい話を宿舎にある自分の執務室で行いますので、付いて来てください」
「分かりました」
北斗が説明してこあが頷くと、宿舎に向かおうとする。
「あら、区長じゃない」
と、宿舎の陰から竹箒を持ったエリスが出てくる。
「エリスさん。掃除の方はどうですか?」
「もう終わったわ。さすがにもう落ち葉は少ないしね」
「そうですか」
「……それで、誰?」
と、エリスはこあを見る。
「今日から機関士の研修に来た、紅魔館の小悪魔のこあさんです」
「は、初めまして。小悪魔の、こあと申します」
「へぇ、小悪魔なんだ」
エリスは何やら獲物を見つけたような視線を向けたが、すぐに友好的なものにする。
「私はエリスっていうの。よろしくね」
「は、はい」
ニッコリと笑みを浮かべるエリスに、こあはどこか怯えた様子で頷く。
(な、なんで上位種の悪魔が居るんですか!? そんなの聞いてないですよ、パチュリー様!?)
内心完全に恐怖に染まっているこあは、自分の主人に抗議を声を飛ばす。
小悪魔のこあからすれば、エリスは上位種の悪魔なのだ。怯えるのは当然といえば当然だろう。
「あら、お客さんかしら?」
と、次に宿舎の入口から幻月と夢月が出てくる。
「えぇ。今日から研修に来た小悪魔のこあさんです」
「そう。ここ最近機関区に来るやつが多いわね」
「は、ははは……」
夢月がジト目でそう言うと、北斗は苦笑いを浮かべる。
「よろしくね、小悪魔さん」
「は、はい……」
幻月が笑みを浮かべて挨拶をすると、こあは青ざめながらも頷く。
(私、パリュリー様に売られてしまったのかしら?)
彼女は主人から売り飛ばされたのかと、疑い始める。
まぁ上位種の悪魔が三人も居るのだから、格下の彼女からすれば食われてしまわないかという、気の休まらない日々を過ごさなければならない。
そんな事はないのだが……
「と、まぁ、今日からしばらくお世話になるので、仲良くしてください」
「えぇ、もちろん」
「ギスギスしても、過ごしにくいしね」
「仲良くするわよ。私たちなりにね」
北斗がそう言うと、エリス、幻月、夢月が順番にそう言うも、こあからすればその様子は自分を捕食対象に見ているようにしか見えない。
(……これ、パチュリー様とお嬢様から言われた目的、果たせそうでしょうか)
そしてこあは、三人の悪魔に囲まれて本来の目的を果たせるのだろうかという、不安を抱くのだった。
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