東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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本編の執筆が思いのほか進まないので、気分転換に蒸気マシマシ回を書きましたところ、物の数時間で書き終わった。好きな描写となると書くスピードが全然違いますね……

それはそうと、大井川鐵道のSLの整備を手掛ける東海汽缶がSLの整備修繕を専門とする工場を新金谷駅近くに建てるようですね。記事によれば京都鉄道博物館の第2SL検修子庫や東武鉄道のSL検修庫みたいな感じの設備が充実した工場になる予定だそうです。
その整備第一号は先日大井川鐵道が譲り受けたC56 135号機になるようです。今後何もアナウンスが無ければC56 44号機もこの新工場で135号機の動態復元と並行して大規模修繕が行なわれる可能性が無くも無い?
しかしこの新工場建設によって、先が不透明なC12 164号機の再復活に僅かながら兆しが見えて来たんじゃないかと思います。そしてC10 8号機の大規模修繕も車入れからボイラー載せと、大分進んできましたね。トントン拍子に行けば今年中に復活した姿を見せてくれるかもしれない。さすがに営業運転への復帰は来年になるでしょうが。
今後の大井川鐵道からは目が離せませんね。


第144駅 山を駆ける大正と昭和の貨物機

 

 

 

 

 まだ夜が明けず、辺りが真っ暗な闇に包まれた幻想郷。この時間で活動しているのは夜行性の動物か妖怪ぐらいである。

 

 そんな中で、明かりが灯された場所がある。

 

 

 

 幻想機関区の扇形機関庫では電灯で薄っすらと明かりが灯され、一部の作業員の妖精達が火を入れた機関車の罐の火が消えないように、火の番をしていたり、機関車の整備をしている。

 

 その中で、火が落とされているD51 603号機に火を灯す、火入れ作業が行われていた。

 

 切り詰められた除煙板(デフレクター)と密閉型の運転室(キャブ)という、北海道で多く見られた形をしているD51 603号機。春を迎えたとあって除雪板(スノープラウ)は外されている。

 

 隣に停車して火が入っている79602号機のボイラーよりパイプを伸ばし、D51 603号機のボイラーと繋げて温かい蒸気を送り込む。

 

 作業員の妖精がD51 603運転室(キャブ)の扉を開けて木材を中へと運び込み、焚口戸を開けて火室へ木材を放り込んでいく。

 

 運び込んだ木材を火室へと入れ終えると、次に作業員の妖精は、着火剤として足回りの稼動部に潤滑油を挿した際に余分な油を拭き取った時に使った布切れを何枚も火室内へと放り込む。

 

 油が染み込んだ布切れを放り込むと、次に隣の79602号機の運転室(キャブ)に乗り込み、スコップに石炭と油が染み込んだ布切れを載せ、焚口戸を開けて火が灯っている火室にスコップを突っ込んで石炭と布切れに火をつけると、スコップを抜き取りすぐに79602運転室(キャブ)を降りてD51 603号機の運転室(キャブ)に乗り込む。

 

 作業員の妖精はそのまま燃えている石炭と布切れが載っているスコップを火室へと入れると、中に入れた油が染み込んだ布切れに火をつけて、ある程度火が広がるとスコップに載せている石炭を放り込む。

 

 火の勢いを強くする為に細かい木片や油の染み込んだ布切れを放り込み、火室内の火力を上げていく。

 

 木片や布切れを入れ続けてから少しして木材にも火が付いて火室内は燃え上がり、そのタイミングで作業員の妖精は炭水車(テンダー)から石炭をスコップで掬うと火室へと放り込む。

 

 

 火室への石炭の投炭だが、実は決まった位置と順番があり、適当に石炭を放り込むだけではうまく燃えないので火力が上がらず、蒸気の上がりが悪くなるし、火室内で不完全燃焼を起こしてしまう要因となってしまう。そうでなくても火が偏って燃えるので、火室の歪みの原因になりかねない。

 

 その為、罐焚きのうまい人と下手な人では同じ個体の機関車でも動きが違ってくるのだ。

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

 それからD51 603号機への火入れを行い、三時間以上が経過した。

 

 

 幻想郷に陽が昇り始めていたが、空は厚い雲に覆われており、その上濃い霧が発生して辺りを白く包み込んでいる。

 

 火入れを行っているD51 603号機のボイラーからは、熱が発せられて出発準備が整いつつあった。

 

 複式コンプレッサーがまるで心臓の鼓動の如く一定のリズムで作動して、まるで生きているかの様な存在感を醸し出している。

 

 D51 603号機の火室内は燃え盛っており、作業員の妖精と交代した機関助士の妖精が火室への投炭作業を行っており、数回ほど投炭を行うとスコップを置き、注水バルブを捻ってボイラーに水を送り込み、蒸気圧を確認してから各バルブを捻って各所へ蒸気を送り込む。

 

 D51 603号機の足回りでは水無月(D51 603)が金槌を手にして、部品を軽く叩いて打音検査を行い、音に異常が無いかを確認している。部品に異常があると金槌を叩いた際の音が変わってくるので、慣れていればすぐに分かる。

 その傍らで、小傘とみとりが足回りの可動部への油差しを行っており、油差しを終えると二人で指差呼称して確認を行っている。

 

 水無月(D51 603)は機関車の連結器も開閉を行って異常が無いかを確認をして、彼女は金槌を工具箱に戻し、工具箱を持って運転室(キャブ)へ乗り込む。

 

「調子はどうですか?」

 

「いつでも行けますよ」

 

「そうですか」

 

 工具箱を置きながら彼女は機関助士の妖精の報告を聞き、水無月(D51 603)は頷いて機関士席に座り、ブレーキハンドルを動かしてそれぞれのブレーキがちゃんと動いているかを確認する。

 

 その間に79602号機が扇形機関庫より出庫し、転車台で方向を変えた後、転車台を後進して降りて線路を進む。

 

「……」

 

 水無月(D51 603)は窓から顔を出し、前方と後方を確認して、作業員の妖精が転車台の位置と安全を確認し、ホイッスルを吹きながら緑の旗を上げる。

 

 緑旗が上がったのを確認して彼女は「出庫!」と号令を掛けて機関助士の妖精も復唱し、ブレーキを解いて天井から下がっている汽笛を鳴らすロッドを短く引いて汽笛を短く鳴らし、加減弁ハンドルを引く。

 

 D51 603号機はゆっくりと進んでピストン付近の排気管からドレンを吐き出しながら機関庫を出ると、ゆっくりと転車台へと載り、中央で停車する。D51 603号機を載せた転車台はゆっくりと回転して機関車の向きを変える。

 

 機関車の向きと線路の位置を変えて転車台が止まると、水無月(D51 603)は前方と後方を確認してから汽笛を短く鳴らし、機関車を前進させる。

 

 

 いくつもの分岐点を越して、一旦石炭と水を補給してから本線へと入ると、そこには弥生(B20 15)のB20 15号機と河童製造のC11 382号機とC12 294号機の三輌が『セラ1形』石炭車十五輌を運んで連結させて置いていた。

 

「……」

 

 水無月(D51 603)は逆転機を回してギアをバックに入れると、作業員の妖精が転轍機を操作して線路の向きを変え、緑の旗を揚げたのを確認して汽笛を短く鳴らし、加減弁ハンドルを引いてゆっくりと機関車を後退させる。

 

 ゆっくりと機関車を後退させて石炭車の前で一旦停車させる。

 

 作業員の妖精が石炭車と炭水車(テンダー)の連結器を確認してちゃんと開いているか、異常が無いかを確認して妖精はホイッスルを吹きながら緑の旗を揚げる。

 

 旗が揚がったのを確認した水無月(D51 603)は汽笛を短く二回鳴らして、加減弁ハンドルを引いて機関車をゆっくりと後退させる。

 

 水無月(D51 603)は機関車を後退させて、作業員の妖精が赤い旗を振ったのを確認して加減弁を閉じてブレーキを掛けると、石炭車と炭水車(テンダー)の連結器が組み合わさって連結する。

 

「はぁ……」

 

 彼女は安堵の息を吐くと、逆転機のハンドルを回してギアを前進にしてからハンドルの凸凹に合わせてロックを掛けて、機関士席から立ち上がって密閉型の運転室(キャブ)の扉を開けて、周りを見る。

 

 隣ではB20 15号機が汽笛を鳴らして別の車両の移動をしながらD51 603号機の横を通っていく。

 

 するとD51 603号機の前方では、79602号機が汽笛を短く鳴らしてゆっくりと後進してこちらに向っている。

 

 79602号機はD51 603号機の前で一旦停止し、作業員の妖精が連結器を確認してホイッスルを吹きながら緑旗を上げる。79602号機は汽笛を短く二回鳴らして後進し、D51 603号機と連結して停車する。

 

 

 今回の石炭列車は前日に雨が降って風も吹いていたとあって、妖怪の山の線路は滑りやすいと予想されている。D51形なら登り切れるだろうが、一応万が一を考えて前部補機として79602号機が入ることになった。更に万が一を考えて救援車としてE10 5号機が待機している。

 

 

 

 しばらくして出発時刻になり、北斗と打ち合わせを終えて水無月(D51 603)七瀬(79602)はそれぞれ運転室(キャブ)に戻って機関士席に座ると、懐中時計の時刻を確認して運転表の横にある置き場に置く。

 

 隣では機関助士の妖精がスコップに石炭を載せて床にあるペダルを踏んで焚口戸を開け、火室へと石炭を放り込む。

 

 投炭を数回繰り返して機関助士の妖精はスコップを道具置きに戻す。

 

「……」

 

 水無月(D51 603)はゴーグルを着けて目を覆い、その時が来るまで加減弁ハンドルを握って待ち続ける。

 

 

 そして出発時刻となり、線路上の安全も確認されたので、腕木式の信号機の腕木が下りて赤から青へと変わる。

 

「出発進行!!」

 

「出発進行!」

 

 水無月(D51 603)は出発の号令を掛けると機関助士の妖精も復唱し、彼女はブレーキを解くと、79602号機が汽笛を鳴らし、彼女も続いて汽笛を鳴らすロッドを引いて汽笛を鳴らし、加減弁ハンドルを引く。

 

 79602号機とD51 603号機はピストン付近の排気管からドレンを出しながら、石炭車十五輌を牽いてゆっくりと前進する。

 

 二輌の蒸気機関車の煙突から灰色の煙が吐き出されて、次第に煙を吐き出す間隔が短くなると共に速度が上がっていく。

 

 79602号機とD51 603号機が牽く列車は幻想機関区を後にして、守矢神社にある石炭集積所へと向かう。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 幻想機関区から出発した列車は霧に包まれた幻想郷の平野に敷かれた線路を走り、迫力のあるドラフト音を奏でながら79602号機とD51 603号機は持ち前のパワーを発揮して突き進む。

 

 79602号機が汽笛を二回鳴らして、合図を送る。

 

「……」

 

 合図の汽笛を聞き、水無月(D51 603)は速度計を見て加減弁ハンドルを少し引き、逆転機のハンドルのロックを外して回し、メーターを見ながらギアを一段上げ、ハンドルにロックを掛ける。

 

 機関助士の妖精がスコップに石炭を乗せて床のペダルを踏み、焚口戸を開けて火室へ石炭を決められた場所に投げ入れ、床のペダルから足を離すと焚口戸が閉じる。

 

 決められた位置へと火室へ投炭を数回繰り返し、スコップを道具置きに置いて、各所へと蒸気を送るバルブを捻って蒸気を送る。

 

 同じように79602号機の運転室(キャブ)でも、機関助士の妖精が鎖に繋がれた焚口戸を鎖を引っ張って開けて片手スコップで石炭を掬い、火室へと投炭する。

 

「……」

 

 水無月(D51 603)七瀬(79602)は霧の中を目を凝らして線路脇に立っている標識を確認し、そろそろ分岐点が近いのを確認する。

 

 列車は魔法の森前にある分岐点へと差し掛かり、転轍機の向きは魔法の森方面へと向いている。列車はそのまま魔法の森方面へと入る。

 

 水無月(D51 603)七瀬(79602)は天井から下がっているロッドを引いて汽笛を鳴らし、霧の中で列車の接近を知らせる。

 

 魔法の森の中に敷かれた線路の上を列車が走っていき、リズム良くジョイント音が奏でられる。

 

 霧の中で列車の存在を知らせる為、再度二人は汽笛を鳴らして、汽笛の音色が森の中に響く。

 

 

 しばらく魔法の森に敷かれた線路を通って、列車は河童の里近くまでやってくる。

 

 川の傍の沿線を通っていくと、線路から少し離れた場所では、カメラを構えている列車を待ち構えている河童達の姿があった。技術に興味を持っているといっても、中には蒸気機関車に魅入られて写真を撮る河童も居るのである。

 

 水無月(D51 603)七瀬(79602)は河童達に応えるようにロッドを引いて汽笛を鳴らす。

 

「そろそろ勾配ですよ!」

 

 彼女がそう言うと、機関助士の妖精は頷いてスコップを手にして投炭作業を行う。

 

「……」

 

 水無月(D51 603)は気を引き締め、加減弁ハンドルを引いて、逆転機のハンドルのロックを外して回し、メーターを見ながらギアを調整する。

 

 そして列車は妖怪の山へと入り、緩やかな勾配を登っていく。

 

 

 79602号機とD51 603号機が牽く列車は妖怪の山の緩やかの勾配を順調に登っていく。

 

 霧の中を二輌の機関車の煙扉の上にある前照灯と副灯より光が照らされ、霧の中を突き進む。その後に汽笛を鳴らして列車の接近を周囲に知らせる。

 

 機関助士の妖精は投炭を何回も行い、すぐに注水機のバルブを回して炭水車(テンダー)からボイラーへ水を送る。

 

 緩やかとは言えど、勾配のある線路を二輌の蒸気機関車が迫力のあるドラフト音を奏でて、79602号機とD51 603号機は重連時の汽笛の合図を奏でて石炭車十五輌を牽いて妖怪の山を登っていく。

 

 その道中をカメラを構えた天狗達が、珍しい編成をして霧の中を駆ける列車をカメラに収めていく。

 

「……」

 

 窓から顔を出して前方を見ている水無月(D51 603)は目を細めると、加減弁ハンドルを引き、逆転機のハンドルのロックを外してメーターを見ながらギアを調整する。

 

 列車は先ほどより更に角度の付いた勾配に入り、少しだけ速度が落ちるが、事前にピストンへと送り込む蒸気の量を多くしていたので、速度の低下は最低限に押さえ込んだ。そして何より長大で重い貨物列車を牽くことを前提にした二輌の蒸気機関車は、力強いドラフト音と共に勾配を登っていく。

 

 水無月(D51 603)七瀬(79602)は空転に備えて砂撒き機のハンドルを前後に動かして線路に砂を撒き、動輪が砂を噛んで滑りにくくする。

 

「……」

 

 空転を起こさないように、彼女は加減弁ハンドルを握る手に汗を滲ませながらも、微調整を繰り返す。

 

 

 しばらく山を登っていると、踏切が近づいているという標識を確認し、水無月(D51 603)七瀬(79602)はロッドを引いて汽笛を鳴らす。

 

 列車は勾配を登っていき、再度汽笛を鳴らしながら踏切を通過した。

 

「……」

 

 勾配は更にきつくなり、加減弁ハンドルを握る彼女達の手に力が入る。

 

 その直後、リズム良く奏でていたD51 603号機のドラフト音が突然早くなる。雨に塗れた落ち葉を動輪が踏んだことで、動輪が滑って空転を起こしたのだ。

 

「っ! 空転!」

 

 水無月(D51 603)はとっさに加減弁ハンドルを戻して蒸気の量を減らし、砂撒き機のハンドルを前後に動かして砂を撒く。

 

 機関助士の妖精は各バルブを捻って蒸気の量を減らしつつ、ボイラーの安全弁を開いて蒸気を排出させる。

 

 そしてすぐに空転した際の衝撃で崩れた火床を直す為にスコップを手にして、火室へ石炭を放り込む。

 

 それに気付いた七瀬(79602)も加減弁ハンドルを操作して蒸気の量を減らし、機関助士の妖精が安全弁を開いて蒸気を排出させる。

 

 空転したことで速度が著しく低下するが、水無月(D51 603)七瀬(79602)は汽笛で合図しながら加減弁ハンドルを引いたり戻したりして蒸気の量を調整しつつ、砂を撒きつつ逆転機のハンドルを回してギアを調整して、何とか持ち直した。

 

「……」

 

 彼女は安堵の息を吐き、再度前を見る。

 

 

 

 列車は勾配を登っていくと、森のトンネルを抜けて左側に景色が広がる路線に出る。

 

 辺りを覆っていた霧は少しだけ晴れており、視界は先ほどよりマシになっている。

 

 この辺りからは勾配が緩やかになっているので、水無月(D51 603)七瀬(79602)は汽笛で合図しつつ、加減弁ハンドルを戻して蒸気の量を減らす。

 

「……」

 

 ふと彼女は窓から空を見上げると、列車の後を追いかけるように鴉天狗が平行して飛んでおり、カメラを手にして上空から列車を撮影していた。

 

 重連で走っている光景もそうだが、何より今回はあまり見ない組み合わせの重連とあって、いつもより鴉天狗の人数が多い。しかし列車の運行や編成はその時にならなければ分からないというのに、天狗の連絡速度の速さには脱帽である。

 

「……」

 

 水無月(D51 603)は汽笛を鳴らして鴉天狗に挨拶して、前を見る。

 

 力強いドラフト音を奏でながら79602号機とD51 603号機は、その大きなボイラーと四軸動輪、更に重連とあって、力強い姿を鴉天狗達に見せつけて勾配を上っていく。

 

 

 

 そしてしばらく列車は妖怪の山を登り、目的地である守矢神社付近まで来る。

 

「……」

 

 七瀬(79602)は分岐点の向きがちゃんと石炭集積所へ向いているのを確認し、汽笛で水無月(D51 603)に合図を送って加減弁ハンドルを戻し、逆転機ハンドルのロックを外してメーターを見ながらギアを調整し、速度を落とす。

 合図を聞いた水無月(D51 603)も加減弁ハンドルを操作して蒸気の量を調節し、速度を落とす。

 

 それから少しして列車は守矢神社脇の石炭集積所へと到着し、一定の場所でゆっくりと停車する。

 

 石炭集積所には一足先に幻想機関区からC11 312号機とC10 17号機が作業員を乗せる為の客車を牽いて来ており、作業員の妖精共々列車の到着を待っていた。

 

 作業員の妖精は機関車と石炭車の連結を外し、異常が無いかを確認し終えたらもう一人の作業員の妖精がホイッスルを吹きながら緑の旗を振るう。

 

 緑の旗を確認した水無月(D51 603)は汽笛を短く鳴らし、79602号機を押してD51 603号機をゆっくりと前進させて石炭車から離れる。

 

 ある程度機関車を進ませて停車させると、作業員の妖精が転轍機を操作して分岐点の向きを変えて、ちゃんと変わったかの確認を終えた後に緑の旗を振るうと、水無月(D51 603)は汽笛を短く鳴らして機関車を後退させ、79602号機と共に別の線路へと入れる。

 

 79602号機とD51 603号機が別の線路に入ってその後にC10 17号機が入って停車すると、作業員の妖精が転轍機を操作して分岐点の向きを戻し、緑の旗を振って待機しているC11 312号機が汽笛を短く鳴らして後退し、石炭車の前まで近づいて一旦止まる。

 

 作業員の妖精が連結器がちゃんと開いているかを確認して緑の旗を振るい、確認した睦月(C11 312)が汽笛を短く二回鳴らし、後退させて石炭車と連結する。

 

 すぐに作業員の妖精が十二輌ある石炭車を七輌と八輌に分けると、それを確認した睦月(C11 312)は汽笛を鳴らして七輌の石炭車を牽いて石炭の投入装置の元へと運ぶ。

 

 その後に分岐点の向きが変えられると、C10 17号機が前進して分岐点の前で停車すると、作業員の妖精が転轍機を操作して向きを変える。

 

 向きが変わったのを確認した作業員の妖精が緑の旗を振るい、それを確認した葉月(C10 17)は汽笛を短く鳴らして後退し、残りの石炭車八輌の元へと向かう。

 

 

 

 その頃D51 603号機は79602号を引っ張りながら後退して転車台の元へと向かう。

 

 水無月(D51 603)は転車台の前で停車させると、作業員の妖精がD51 603号機と79602号機との連結を外し、79602号機は汽笛を短く鳴らして待避線の方へと入る。

 その間に作業員の妖精が転車台を確認して異常が無いのを確認したらホイッスルを吹きながら緑の旗を振るう。

 

 緑の旗を確認して水無月(D51 603)は汽笛を短く鳴らし、加減弁ハンドルを引いてゆっくりと機関車を後退させて、転車台に機関車を載せて停車させ、ブレーキを掛ける。

 

 作業員の妖精が八人集まり、転車台のロックを外して前後にある太い棒を四人ずつ持ち、力いっぱい押して転車台を回す。

 

 ゆっくりと回る転車台によってD51 603号機はその向きを変え、転車台の位置が正しいのを確認してロックを掛け、安全を確認した作業員の妖精がホイッスルを吹きながら緑の旗を振るう。

 

 水無月(D51 603)は短く汽笛を鳴らし、加減弁ハンドルを引いて機関車をゆっくりと後退させる。

 

 ゆっくりと後退するD51 603号機はここまで来る道中にある給水塔と給炭設備の近くで停車し、水と石炭の補給を行う。

 

 その間に待避線に入っていた79602号機が転車台に乗り、方向転換を行う。

 

「……」

 

 水無月(D51 603)は深く息を吐きながらゴーグルを下に下げて首に掛け、額に浮かんだ汗を袖で拭う。

 

 補給が終わるまで機関助士の妖精共々休憩に入り、持ち込んだ水筒を手にして運転室(キャブ)の扉を開けて下りると、水筒の蓋を外して中に入っている水を飲む。

 

 作業員の妖精達が炭水車(テンダー)の水タンクの蓋を開けて、給水塔から伸びるホースが差し込まれて大量の水がタンクに流し込まれる。それと同時にベルトコンベアのような機械で石炭が炭水車(テンダー)へと積み込まれて、作業員の妖精が石炭の表面をスコップで均していく。

 足回りでは作業員の妖精が異常が無いかの確認を行い、灰箱に溜まった灰を捨てている。

 

 

 休憩も終わり、水無月(D51 603)と機関助士の妖精は運転室(キャブ)に戻り、出発準備を整える。

 

 石炭車は石炭を満載にして積み終え、既にC11 312号機とC10 15号機によって本線に運び込まれ、十五輌連結した状態で待機していた。

 

 水無月(D51 603)はゴーグルを目元へと上げて、ブレーキを解いて汽笛を短く鳴らし、加減弁ハンドルを引いて機関車をゆっくりと後退させる。

 

 D51 603号機はゆっくりと後退して本線へと入ると、石炭車の前で停車する。

 

 作業員の妖精が連結器が開いて異常が無いのを確認して、ホイッスルを吹きながら緑の旗を振るう。

 

 水無月(D51 603)はブレーキを解いて汽笛を短く二回鳴らし、加減弁ハンドルを引いて機関車をゆっくりと後退させて、作業員の妖精が赤い旗を上げたのを確認してブレーキを掛け、石炭車と連結させる。少ししてちゃんと連結した確認が取れて、水無月(D51 603)は頷く。

 

 しばらくして水と石炭の補給を終えた79602号機がやって来て、D51 603号機の前で一旦停止し、作業員の妖精が連結器を確認してホイッスルを吹きながら緑旗を揚げる。

 

 それを確認した七瀬(79602)は汽笛を二回短く鳴らして後退させ、79602号機をD51 603号機と連結させる。

 

 

 その後しばらくして腕木式信号機の腕木が下りて赤から青信号に変わる。

 

「……」

 

 彼女は前を見てブレーキを解き、天井から下がっているロッドを引いて汽笛を鳴らすと、加減弁ハンドルを引いて機関車を前進させる。

 

 石炭車に石炭が満載になったことで行きとは全く違うが、79602号機とD51 603号機は持ち前のパワーで石炭満載の石炭車十五輌を牽いて前進する。

 

 駅のホームより守矢神社の八坂神奈子と洩矢諏訪子、東風谷早苗に見送られながら、列車は幻想機関区に向けて出発する。

 

 帰りは下り坂続きなので、慣性を用いて列車は絶気運転にて妖怪の山を下っていくことになる。

 

 そして列車は石炭を持ち帰る為に、幻想機関区へと向かうのであった。

 

 

 

 

 




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