東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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第145駅 メンツの問題

 

 

 

 あの後、北斗はレミリア達と世間話をした後、フランはレミリア達と残るとのことで、北斗は彼女達と別れて境内を散策する。

 

 

 

「~♪」

 

 境内を散策する北斗の隣では、こいしが手にしているリンゴ飴を舐めて気を良くしている。先ほど北斗が露店でこいしに購入したものだ。

 

「おいしいか?」

 

「うん。おいしいよ、お兄さん♪」

 

 北斗が声を掛けると、こいしは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

(そろそろさとりさん達を探すか)

 

 笑顔を浮かべるこいしを見てから、北斗は周囲を見渡しながら内心呟く。

 

 ある程度挨拶回りは終わったので、そろそろさとり達地霊殿組を探そうと考えていた。

 

(でも、さとりさん達は宴会に参加しているんだろうか?)

 

 しかし北斗はふとそう思い、首を傾げる。

 

 そもそも地底に住んでいるさとり達が、地上に出てくることがあるのだろうか。

 

(仮に参加しているとすると、目立たない隅辺りだろうか) 

 

 北斗はさとり達が居るである場所を予想しながら周囲を見渡す。

 

 

「あっ! 区長!」

 

 と、聞き覚えのある声がして前の方を見ると、そこには明日香(D51 241)七瀬(79602)文月(C55 57)夕張(E10 5)の蒸気機関車の神霊の少女たちの姿があった。

 彼女達は幻想機関区の蒸気機関車の神霊の少女達の代表で宴会に参加している。

 

明日香(D51 241)達か。宴会を楽しんでいるか?」

 

「はい! 楽しんでいます!」

 

 と、明日香(D51 241)は手にしているお菓子を見せながら笑顔を浮かべる。

 

「こういった場所は初めてだけど、楽しめているわ」

 

 普段から表情の変化が乏しい七瀬(79602)であったが、そんな彼女もどこか楽し気な様子であった。

 

「楽しめて何よりだが、あまりはしゃぎ過ぎるなよ」

 

『はいっ!!』

 

 北斗から言われて四人は返事をしつつ頷く。

 

 

 その後北斗は明日香(D51 241)達と別れて、さとり達の捜索に入る。

 

「なぁ、こいし」

 

「何、お兄さん?」

 

「さとりさん達って、参加していると思うかい?」

 

「うーん。分かんない」

 

「そりゃそうか」

 

 北斗はダメ元でこいしに問い掛けるが、彼女は首を傾げて少ししてそう答える。答えを聞いて北斗は肩を竦める。

 

 そもそも無意識に歩き回っている彼女に、さとり達の行動を知っているわけが無い。

 

(やっぱり、参加してないんだろうな……)

 

 彼は内心呟きつつ、博麗神社の境内を歩いていると……

 

 

「あっ! 北斗さん!」

 

 と、声を掛けられて、北斗は声がした右の方を見る。そこには赤い髪をおさげにして、猫の耳と二本の尻尾を生やした少女の姿が居た。

 

「あなたは確か……」

 

 見覚えのある少女に、北斗は地霊殿の誰だったかを思い出していると、こいしが北斗の陰から出て少女を見つける。

 

「あっ、お燐だ。やっほー!」

 

「こ、こいし様!?」

 

 こいしが少女こと『火焔猫 燐』に手を振ると、彼女は驚いた様子で声を上げる。

 

「ここにいらっしゃったんですか! またこいし様がいなくなってさとり様心配されていましたよ!」

 

「ごめんごめん」

 

 燐がこいしに詰め寄ってそう言うと、彼女は頭の後ろに手を当ててカラカラと笑みを浮かべて謝る。

 

「って、それよりも、探しましたよ、北斗さん」

 

 燐は咳払いをして気持ちを切り替え、北斗と向き合う。

 

「自分を、ですか?」

 

「はい。さとり様が北斗さんに話があるとのことで、探して居られたら、連れて来て欲しいとのことです」

 

「そうですか。さとりさんも来ていたんですね」

 

「参加し始めたのは割と最近な事ですが……まぁそれは良いとして、来てくれますか?」

 

「えぇ。ちょうど俺とこいしもさとりさん達を探していたので」

 

「そうだったんですね。では、こちらに」

 

 燐は北斗とこいしを連れてさとりの元へ向かう。

 

 

 

 三人は境内の隅にある木の下へとやって来て、そこには敷かれた茣蓙にさとりと空の姿があった。

 

「さとり様! 北斗さん見つけてきましたよ!」

 

「そうですか。ご苦労だったわね」

 

 燐はさとりに報告すると、彼女は燐を労い、北斗を見る。

 

「お久しぶりですね、北斗さん」

 

「お久しぶりです、さとりさん。宴会に参加されていたんですね」

 

「えぇ。時折こうして地底から出て来て参加しています」

 

「そうですか」

 

 

「やっほー、お姉ちゃん」

 

 と、北斗の陰からこいしが出て来て悟りに声を掛ける。

 

「こいし。そこに居たのね」

 

「うん。居たよー」

 

 こいしを見つけてさとりは少し驚いていた。北斗の心を読んでこいしがここに居るのは知っていたが、居場所までは分からなかった。

 

「あなたと会う度にこいしが常に傍に居ますね」

 

「そういえばそうですね」

 

 さとりの指摘に北斗は思い出して納得する。以前もこいしは北斗の傍に居て、さとりの前に姿を現している。

 

(これからこいしを探す際は北斗さんの所に行けば大抵居そうね)

 

 さとりはこれからこいしを探す時は、北斗の元に行けば大抵居ると考えるのだった。

 

「……」

 

 ふと、さとりは北斗に声を掛けるこいしを見る。

 

 とても楽しそうな雰囲気の妹の姿に、さとりは表情に出さないが、嬉しく思えた。

 

(あぁこいし楽しい雰囲気のあなたを見るのは久しぶりねその笑顔を私に見せてくれるのならもっと嬉しかったんだけどまぁ北斗さんが相手なら許せる範囲だわね彼のお陰でこいしが屋敷に戻って来る頻度が上がったしあなたと話す機会も増えましたしこれが別の男なら決して忘れられないトラウマを植え付けて二度とこいしに近づかないようにするところですでも北斗さんでもやはり姉としては嫉妬してしまいますねその笑顔を私に向けられないのはパルパルパルパルって他人の持ちネタですねこれはですがこいしいつ見ても本当に可愛いですね世界で一番の可愛さです正に生物の理として当然の摂理ですこいしを崇めるのです再びこいしの可愛さを世界に知らしめるのですそうすべきです)

 

 

 ……まぁ所々過剰な部分が無い気がしないでもない。

 

 

「久しぶりですね、空さん」

 

「久しぶり、北斗さん!」

 

 さとりが内心トリップしている間に、北斗は空に声を掛けており、そう遠くない内に間欠泉センターにて新たに行われる人造石油の精製についてのことを話していた。

 

(っと、大きく脱線するところでしたね)

 

 既に大きく脱線しているようなものだが、さとりは咳払いをして頭を切り替えて、北斗を見る。

 

 北斗の周りには空の他に、燐とこいしの姿がある。

 

(こいしはともかく、お空とお燐が周りに居て優越感に浸らず、平然としているのはさすがと言うべきか。二人とも美人と言うべき容姿ですから、地底の男共の目は二人によく向かれますからね)

 

 さとりは美少女と言える三人に囲まれている北斗が落ち着いている様子に感心している。こいしは当然の事だが、空と燐も容姿が整っている美少女だ。特に空に関してはスタイルも良い長身の美少女だ。精神年齢は子供だが。

 それでも、美少女に囲まれている現状は、世の男性が羨む光景だろう。

 

(というより、北斗さん三人を異性として認識していないのは少し疑問ですね。こいしに関しては妹のような感じですが。お空もお燐も友人の様に見ているわけですし)

 

 北斗が三人というより、幻想郷で知り合った多くの女性達に対してそもそも異性として認識していないのが、さとりに疑問を抱かせている。

 

(そして唯一異性として認識しているのは、早苗さんだけ、ですか。良いですね、一人の女性に一途なのは。ヒロインをポンポン増やしてハーレムを築くラノベの主人公は彼を見習うべきそうすべきです)

 

 何やらおかしい方向に進んでいるが、さとりは頭を切り替える。

 

(しかし、逆に異性として見られていないのはそれはそれでどうなんでしょうかね)

 

 さとりは北斗が早苗以外をそもそも異性として見ていない事実に、複雑な気持ちを抱くのだった。

 

(まぁ、それはともかくとして)

 

 さとりは咳払いをして再度気持ちを切り替え、北斗の傍に座る。

 

「ところで、北斗さん」

 

「はい。何でしょうか?」

 

「近い内に以前の誘拐での一件について謝罪の意を込めて、招待したいと思っているのですが」

 

「招待、ですか?」

 

 北斗は怪訝な表情を浮かべて首を傾げる。

 

「えぇ。まだ具体的な案は無いですが、いずれ北斗さんを招待してもてなしたいと思っています」

 

「はぁ。別に俺はいいんですが……」

 

 北斗はあの時の事はもう過ぎた事として気にしていなかったが、さとりは首を左右に振るう。

 

「北斗さんが良くても、こればかりはそういうわけにはいかないんです。こちらとしてもメンツの問題がありますので」

 

「メンツ、ですか……」

 

「えぇ。身内が起こした事ですので、尚更です。ですから、正直にこちらの好意を受け取って欲しいんですよ」

 

「……」

 

「と言っても、先ほども言いましたが、まだ具体的に決まっていないので、決まったらお知らせに行きます」

 

「分かりました」

 

 北斗は頷いて了承する。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 北斗はさとり達と人造石油の精製についての話をした後、こいしはさとり達と残るとのことで、北斗は再び博麗神社の境内を歩く。

 

「さてと、そろそろ早苗さん達を探すか」

 

 十分挨拶回りはしたので、北斗は早苗達を探すことにした。

 

(でもこれだけ歩き回って見ないものかな)

 

 北斗は内心呟きつつ早苗達の姿を探しているが、中々見つからない。

 

(こうして見ると、ホント色んな方々が居るんだな)

 

 内心で呟きつつ周りを見渡し、宴会に多くの参加者を確認する。人間はもちろんだが、多くの妖怪や妖精の姿もある。

 

(これも霊夢さんの人柄故のことかな)

 

 この幻想郷において、多くの種族が一同に会して問題を起こしていないのは、ある意味奇跡に近い。

 

 まぁ人間の参加者が多いのは、やはり鉄道の存在が大きいだろう。

 

 

 

「ほ、北斗さん!!」

 

 と、何やら慌てた様子で北斗を呼ぶ声がして、彼は思わず立ち止まり、声がした方を向く。

 

 そこには明らかに慌てた様子のはたての姿あった。しかしその姿はなぜかボロボロだった。

 

「は、はたてさん? どうしたんですか?」

 

 明らかに様子のおかしいはたての姿に、北斗は戸惑いを見せる。

 

「お、お願い! 助けて……!」

 

「えっ?」

 

 北斗の手を握って助ける求める彼女の姿に、北斗はより一層戸惑いを見せる。

 

 

「お~い、天狗ぅ」

 

「ひぃっ!?」

 

 と、第三者の声がして、その声を聴いたはたてが顔を青ざめさせて身体を震わせる。そして油の切れたブリキ人形のようにぎこちない動きで後ろを振り向く。

 

「私から逃げるとは~随分いい度胸してんなぁ」

 

「い、伊吹様っ!?」

 

 そこには明らかに酔っぱらっている萃香の姿があり、瓢箪片手に千鳥足で二人の元にやって来ている。その萃香の姿にはたては青ざめた顔をより一層青くし、その場に座り込んで北斗が履いているズボンを掴んで震える。

 

「ちちち、違います。べべ、別に逃げたのではなくでしてね!? ちょちょ、ちょっと休憩がてら歩いていた所でして」

 

「ほ~。じゃぁまだ私に付き合うよなぁ?」

 

「ひぃ!」

 

「ん~?」

 

 萃香は北斗の足元で震えるはたてから彼に視線を向ける。

 

「おぉ~あんたか~」

 

「えっ? あの、自分達は初対面のはずじゃ?」

 

 彼女は北斗を見て顔見知りのような反応を見せるが、北斗からすれば萃香とは初対面なはずだし、向こうも初対面のはずである。

 

「まぁその辺はゆっくりと酒飲んで話そうや」

 

「は、はぁ……」

 

「そんじゃぁ、行くかぁ~」

 

 と、萃香は北斗の足元で震えているはたての足を掴むとそのまま彼女を引き摺って歩いて行く。

 

「い、伊吹様!? じ、自分で歩けますから、離してくださいぃぃぃ!?」

 

 引き摺られながらはたては涙目で萃香に懇願するも、彼女はそんなはたての懇願を無視して引き摺って行く。

 

「……」

 

 北斗は罪悪感を抱きながら、萃香の後に付いて行く。

 

 




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