「あ、あの、る~ことさん?」
「何でしょうか?」
北斗と霊夢のやり取りを見ていた明日香はる~ことに声を掛ける。
「霊夢さんって、結構お金に困っているんですか?」
「そうですね。今博麗神社は財政難に陥っていますね。まぁ、お金が無いのはいつもの事ですが」
「相変わらずお金に困っているんですね」
それを聞き、早苗は苦笑いを浮かべる。
「まぁ決して貧しい生活を強いられているわけではありませんが、贅沢が出来る状況じゃありませんからね」
「へぇ。幻想郷を守っているって言うから、てっきり裕福と思った」
皐月は意外そうに呟く。
「まぁ、裕福ならもう少しマシな所に住んでいるだろうし」
神流は神社の境内を見渡しながら呟く。
「収入が少ないからよ。あと汚くて悪かったわね」
と、霊夢が北斗と一緒に戻ってくる。
「どういう事なんですか?」
首を傾げながら水無月が霊夢に問い掛ける。
「ご主人様はこの幻想郷の異変解決を生業にしている博麗の巫女なので、異変以外にも人里で厄払いや妖怪退治などの依頼を受けることがあるんですが、ここ最近は平和そのもので」
「なるほど」
る~ことの説明に水無月は納得したように頷く。
「その上、参拝客が少ないのも問題の一つですね」
「大問題よ」
と、霊夢がジトッとる~ことを睨む。
「参拝客が来ないと賽銭が無いじゃない」
「いや、その考えはおかしいです」
早苗がすぐにツッコミを入れる。
「でも、霊夢さんはこの幻想郷を管理して守っているのですよね?」
「えぇそうよ」
「参拝客が来ないのって、別に嫌われているってわけじゃないですよね?」
「それは無いよ!」
と、弥生の言葉にる~ことの頭の上に乗っている針妙丸が声を上げる。
「霊夢は優しいよ! 人里のみんなから慕われているんだから! ホントたまにだけど来てはいるんだよ!」
「そ、そうなんですか。ごめんなさい」
針妙丸の迫力に弥生は頭を上げる。
「じゃぁ、何で来ないんだ?」
「……来るのが大変だからじゃないかしら?」
「えぇそうよ。ここまで来たのなら、ある程度察しが付くでしょ」
皐月の疑問に七瀬が答えると、彼女はため息を付く。
「神社前の森に何かあるんですか?」
「あるも何も、妖怪とか、熊や狼といった獣が多く棲んでいるからよ」
「あぁ、なるほど」
「そりゃ行き辛いな」と北斗は呟く。
歴代の博麗の巫女も同じ悩みを抱えていたが、博麗神社周辺の地理が原因で参拝客の少なさが一番の悩みであった。
参拝客の数次第で、収入が大きく左右されるといっても過言ではないのだ。
その上、参拝客の数は博麗の巫女への信仰にも繋がるので、かなり重要なのだ。
「……」
ふと、北斗はある考えが過ぎる。
「おやおや、今日の博麗神社は賑やかですね」
と、空から声がして全員が上を見上げると、一人の少女が神社の境内に下りて来る。
「あら、文じゃない」
霊夢は空から降りてきた少女に声を掛ける
黒いセミロングの髪をして、その頭には赤い山伏を被っており、白いシャツにフリルのついた黒いスカートを身に着けている少女だが、背中には黒い羽を持つ翼が生えている。
彼女の名前は『射命丸文』。天狗と呼ばれる妖怪の中で、鴉天狗と呼ばれる少女だ。
「どなたですか?」
「彼女は射命丸文さんでして、妖怪の山に棲む天狗の一人ですよ」
「天狗?」
早苗の説明に北斗は文を見ながら首を傾げる。
彼の脳裏には顔が赤く鼻長のイメージの天狗の姿が思い浮かぶ。しかし目の前の少女の姿とは大きくかけ離れていた。
(と言うか、ここまで幻想郷で会った人って、女性ばかりだ)
北斗は疑問に思って首を傾げるが、とりあえず頭の隅にその疑問を追いやった。
「そして、文屋、所謂新聞記者なんですよ」
「新聞記者、ですか」
すると北斗の表情が微妙なものになる。
外の世界での出来事もあって、新聞記者に良いイメージを持っていなかった。
「ようやく見つけましたよ」
と、文は北斗の姿を見つけると、ゆっくりと歩み寄る。
「あなたが今噂になっている外来人ですね?」
「そうですが、あなたは?」
「私は文々。新聞の清く正しい射命丸文と申します。以後、お見知りおきを」
文は礼儀正しく北斗に自己紹介をする。
「霧島北斗です」
「北斗さんですね。いやぁ探しましたよ」
「探していた?」
「はい。今朝あなた方を取材しようと向かっていたのですが、貴方達が居る所には妖精しか居なかったので」
「そうですか」
「それで、探していた道中で博麗神社に居たという事です」
「……」
「それでですね」
と、文は手帳とペンをスカートのポケットから取り出す。
「是非取材をさせて頂けないでしょうか?」
「取材、ですか」
「はい。この幻想郷に幻想入りした外来人の事を記事にしたいので」
「……」
「文さん。そうやってまた脚色して載せる気ですよね」
と、ジトっと早苗が文を睨む。
「あやや。これは心外ですね、早苗さん」
彼女は惚けたように困ったようなポーズを取る。
「私は面白い記事を購読者の皆様に提供したい願いで新聞を書いているのですよ?」
「だからと言って一部を脚色したり改竄していいわけないですよね!」
早苗は大きな声を上げる。
「
「そうなんですか……」
と、一瞬毒を見せたる~ことからの説明に北斗はある確信を得る。
どこでも、マスコミは○゙○という事か、と。
「まぁ大丈夫ですよ、早苗さん。ちゃんとした記事を書きますから」
「そういう問題じゃ」
ガルルと言わんばかりに早苗は睨み付ける。
「それにしても、随分と北斗さんに肩入れしていますね。何か困ることでもあるのですか?」
「当然です! 彼は同じ志を持った貴重な
「物凄く私情が混じっていたような気がするんですが」
ドヤ顔で言う早苗に文は呆れた表情を浮かべる。
「まぁ兎にも角にも、ちゃんとした記事を書くのは事実。心配ないですよ」
と、文は早苗をあしらい、北斗に向き直る。
「では、いくつか質問をしますので、宜しくお願いします」
「は、はぁ」
「まず一つ目。北斗さんはどうして幻想郷へ?」
「どうしてって、気付いたらこの幻想郷に居た、としか」
「ふむ。これまで話を窺った外来人と同じですね」
(やっぱり幻想郷に迷い込む人は結構居るんだな)
文の一言で外来人の数は決して少なくないようだと北斗は認識する。
「でも、本当に気付いたら、と言えるのでしょうかね」
「え?」
「いえ、こちらの話です」
と、一瞬文の視線が鋭くなったが、すぐに笑みを浮かべたので北斗はその視線に気付かなかった。
「では二つ目です」
それから文の北斗への質問は続いた。
それからしばらくして質問を終えた文は博麗神社を後にして、早苗も一旦北斗達と別れて人里に向かい、チルノ達も博麗神社を後にして、北斗達もしばらく神社で話しをした後機関車へと戻った。
「すみません。わざわざ見送りをしてくれて」
「まぁ、お賽銭を入れてくれた参拝客だからね。見送りぐらいしないと」
D62 20号機の運転室前で北斗は見送りに来てくれた霊夢達にお礼を言う。
「またいらして下さいね、北斗様」
「はい。機会があれば是非」
る~ことは姿勢を正してお辞儀して、北斗も頭を下げる。
「北斗さん! またお話を聞かせてくださいね!」
「もちろんだ」
る~ことの頭の上でそう言う針妙丸に、彼は笑みを浮かべて頷く。
どうやら針妙丸はSLに興味を持ったようである。
「それでは、俺達はこれで」
北斗は敬礼をした後、運転室に登って入る。
直後D62 20号機とD51 1086号機の汽笛が森の中に響き渡り、ドレンを出しながらゆっくりと客車を牽いて前進する。