東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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第3区 鉄道開業に向けての準備編
第16駅 疑問と出現


 

 

 

 

 線路調査から後日。

 

 

 

 

『幻想郷に現れた新勢力!!』

『外来人と蒸気機関車と呼ばれるからくりと、その神霊を中心とした「幻想機関区」。その目的はいかに!?』

『今回の異変に関与か?』

 

 

 見出しに大きく書かれた射命丸文の発行した文々。新聞を見ながら女性は注文した掻き揚げうどんの麺を啜る。

 

「まぁた新しい勢力が現れたなぁ」

 

「あぁ。先日人里の近くに現れたんだろ?」

 

「俺見たぜ。黒いやつが煙を吐き出しながら走っていったのを」

 

「この間出来たやつの上を走っていたんだろ?」

 

「新聞にも書かれているが、あの異変と関係しているのか?」

 

「でもこの外来人は関係無いって書いてあるぞ」

 

「そういやこの間東風谷様がこの外来人のことを言っていたな」

 

「言っていたな。何だが妙に興奮しながらだったのが気になったが」

 

 近くの席に座る人里の住人達が各々の事を話している。

 

(これで北斗達の存在が幻想郷に知れ渡った)

 

 掻き揚げを齧りながら彼女は内心呟く。

 

(これで良しと思う者も居れば、快く思わない者もいるだろうが……)

 

 当然彼らの存在に興味を持つ者も居れば、快く思わない者もいるだろう。前者の場合は河童と一部の人里の住人だが、後者の場合は妖怪の山を支配している天狗とあのスキマ妖怪だろう。

 

(もう動き出したんだ。後は流れに任せるしかない)

 

 女性は汁を飲み干すと、代金をテーブルに置いて新聞を丸めて左脇に挟み、店を出る。

 

(あのスキマ妖怪が何もしないと良いが、それは虫が良すぎるか)

 

 小さくため息を付き、空を見上げる。

 

(今は、何ともなければいいんだが……)

 

 女性はポケットに右手を突っ込んで鉄道懐中時計を取り出すと、蓋を開けて時間を確認する。

 

(今頃、あれが現れている頃合いか)

 

 彼女は時間を確認した後蓋を閉じてポケットに戻し、コートの胸ポケットから折り畳まれたある物を取り出して広げる。

 

「……」

 

 古びたそれに写っているのを見た後、再びそれを閉じて胸ポケットに戻すと、彼女は歩き出す。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 場所は変わり魔法の森。

 

 

 幻想郷で森と言えば、誰もがここを指すだろう。

 

 

 鬱蒼としたこの場所では様々な植物が生えており、特にキノコといったものは様々な種類が多く生えている。人里に住む薬剤師にとってはまさに薬剤の材料の宝庫である。

 

 しかしそこには当然人を襲う妖怪が多く棲んでいる。その上魔法の森にはキノコから発せられる瘴気が漂っており、普通の人間が何の対策もなしに森に入れば瘴気に当たられて最悪死に至る。

 

 とは言えど、逆にその環境の方が適した者達がいる。

 

 その魔法の森に暮らしているのは白黒の魔法使いこと霧雨魔理沙の他にもう一人居る。ちなみに外側だが、もう一人住んで居る者も居る。

 

 

 魔法の森の中で、開けた場所に一軒家が立っている。

 

 和風な建物が多く立ち並ぶ人里であるが、この一軒家は洋風な一軒家であった。

 

 

 

「……」

 

 その家の中では一人の少女が文々。新聞を見ていた。

 

「シャンハイ」 

 

「ありがとう、上海」

 

 すると少女の近くで宙に浮かぶ人形がテーブルに置かれているカップに紅茶を注ぐと、少女は人形にお礼を言う。

 

 彼女の名前は『アリス・マーガトロイド』。幻想郷に住む人形使いの魔女であり、霧雨魔理沙と友人である。

 

 普段から家に引き篭りがちな彼女はたまに人里に買い物や人形劇をしに行くことがあるが、その頻度は決して高くない。その為彼女は世間情報に少し疎い。

 だから、彼女は情報を得る為に文々。新聞を購読している(まぁ半ば文に強引に買わされているともいえるが)。

 

「……」

 

 アリスはカップを持って注がれた紅茶を一口飲みながら新聞の内容を見る。

 

(外来人、ね)

 

 新聞の内容を読み、カップをソーサーに乗せて内心呟く。

 

(最近外来人による異変が起きたのに、今度は外来人が大規模な施設と共に幻想入りした。最近の幻想郷は飽きないわね)

 

 最近起きた異変の事を思い出しながら、次のページを捲る。

 

(そういえば、魔理沙も言っていたわね。何だが凄い物も一緒に入ってきたって)

 

 先日自分の家に訪れた魔理沙の話を思い出し、首を傾げる。

 

「そんなに凄い物なのかしら……?」

 

 ふと、彼女の目がある行で止まる。

 

 その行には外来人の名前が載っていた。

 

(霧島、北斗?)

 

 アリスはその名前に首を傾げる。

 

(北斗……どこかで聞いたような……)

 

 ふと、彼女の脳裏に古い記憶が呼び覚まされる。

 

 

 彼女がまだ幼くこの幻想郷に修行へと来る前、ある日母親の友人が彼女が住んでいる城を訪れていた。

 

 その友人の腕の中には生まれて間もない赤ん坊が抱かれていた。

 

 その時の赤ん坊の名前が確か――――

 

(北斗……)

 

 母親の友人は確かそう呼んでいた。

 

(いや、まさか、ね)

 

 彼女は様々な疑問が過ぎるも、頭を振るって疑問を払う。

 

 名前が同じ者などいくらでも居るのだ。偶々名前が被っているだけで、同じ人物とは限らない。

 

 ましても新聞に載っているのは外来人だ。万に一つの可能性だって無い。

 

「……」

 

 しかし、それでも彼女の頭から疑問が離れることは無かった。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わって魔法の森。

 

 

「ヒャッフ~。大量♪ 大量♪」

 

 キノコが大量に入った袋を担いでいる魔理沙はご機嫌な様子で鼻歌を歌って森の中を歩いていた。

 

 無類のキノコ好きである彼女はほぼ毎日日課となっている魔法の森に自生しているキノコを収穫して、現在自宅に戻っている最中であった。

 

 キノコは食べる目的もあるが、魔法薬の材料としてキノコを収穫している。今日も食べるのと魔法薬の材料のキノコを収穫していた。

 

 その道中妖怪に襲われることがあったが、彼女の実力からすれば問題なかった。

 

「いやぁ、これならしばらく問題は……ん?」

 

 鼻歌を歌いながら歩いていた魔理沙はある物を見つけて立ち止まる。

 

「これって、線路だったか?」

 

 彼女の足元には魔法の森の地面に敷かれた線路があった。

 

「こんな所にも線路があるのか。北斗達も大変だな。ここも調べないといけないなんて」

 

 彼女は森の奥へと伸びる線路を見ながら呟く。

 

「でもこれって、何処に繋がってんだ?」

 

 首を傾げながら、興味本位で彼女は線路の上を辿って歩き出す。

 

 

 

 

「……え?」

 

 と、しばらく線路を辿って歩いていくと、彼女はある物を見つける。

 

「あれって、確か……」

 

 彼女は慌てて走り出すと、それの傍まで行く。

 

「これって……蒸気機関車ってやつ、なのか?」

 

 魔理沙の視線の先には、線路の上で静かに佇む蒸気機関車の姿があった。

 

「何でこんな物がこんな所にあるんだよ……」

 

 蒸気機関車の正面から見上げるように見えていた。

 

「にしても、大きいな。あそこで見たやつと比べると大分形は違うけど」

 

 彼女は目の前にある蒸気機関車を見ながら側面へと回り込む。

 

 目の前にある蒸気機関車は確かに大きかったが、幻想機関区で見られたD51形と比べると小さく、運転室の後ろに繋がれた炭水車は両側の一部が切り取られたような形状をしていた。

 

「こんな大きなのが動くんだよな。ホント外の世界は進んでいるな。でも確かこれでも外の世界じゃ古いんだっけ?」

 

 ジロジロと蒸気機関車を見ながら彼女の視線は右へと向かう。

 

「って、後ろにもあるのか!?」

 

 彼女は回り込んだことで蒸気機関車の後ろにもう一輌の蒸気機関車があるのに気づく。

 

「何か、こっちは小さいな」

 

 二輌目は前の機関車と比べると大きさ的には同じ様に見えるが、運転室の後ろに炭水車が無い、タンク型機関車であった。まぁ魔理沙にはその事を知らないが。

 

「何でこれが二つも……ここにあるんだ?」

 

 魔理沙は思わず首を傾げるしかなかった。

 

 

 

 




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