その後弥生のB20 15号機に持って来させた手漕ぎ式のトロッコに乗った北斗と魔理沙の二人はトロッコに乗り込み、交互にハンドルを上下に動かしてトロッコを走らせて幻想機関区を出発した。
「け、結構、きついんだな」
「まぁ、そうですね」
二人は少し息を切らしながらトロッコのハンドルを上下に動かしてトロッコを進ませる。
幻想機関区からここまでかなりの距離を漕いできたので、結構重労働であったりする。
当然道中には緩やかな坂があるので、かなりきついだろう。
「いやぁ、やっぱり、か、身体は鍛えておくもんだな」
魔理沙は顔中汗を掻きながら漕いでいる。
「すみません。手伝ってもらって」
「良いんだよ。案内は必要だしな」
ニカッとぎこちなく笑みを浮かべる。
「でも、そろそろ着きそうですね」
北斗はハンドルを漕ぎながら前を見ると、以前見た分岐点が姿を見せる。
「魔法の森の入り口に着いただけだぜ。中は結構広いんだからな」
「そりゃそうですよね」
彼は苦笑いを浮かべる。
そして分岐点の前でトロッコを停車させてから北斗はトロッコを降り、転轍機の変更レバーを動かして線路を魔法の森へと向けると、すぐにトロッコに戻って再び魔理沙と一緒にハンドルを漕いでトロッコを走らせる。
「……」
魔法の森の中に敷かれている線路を走らせながら、北斗は森の中を見渡す。
「……」
「凄いだろ?」
ハンドルを漕いでいると、魔理沙が北斗に声を掛ける。
「ここにはさ、色んなキノコが生えているんだよ。食べられるものもあれば、猛毒のキノコだってな」
「猛毒、ですか」
北斗は某配管工の毒キノコが脳裏に過ぎる。
「でも、ちゃんと扱えば猛毒のキノコでも魔法薬の材料になるんだぜ」
「なるほど」
「特にこの時期はな、おいしいキノコが取れるんだよ! 先が丸い傘の開いてない茎の太いキノコなんだけど」
「へ、へぇ(それってマツタケじゃ……ってか、こんな森に赤松が生えているのか? よく覚えて無いけど)」
北斗は魔理沙の言うキノコに覚えがあって苦笑いを浮かべる。
「この時期ぐらいしか多く取れなくてさ、それでも中々……あっ、ここで止めてくれるか?」
と、魔理沙は何かに気づいて北斗に止まる様に声を掛ける。
「え? この辺りにあるんですか?」
「いや、まだ先なんだけど、休憩がてら立ち寄りたい所があるんだ」
「立ち寄りたい所ですか?」
「あぁ」
「……分かりました」
北斗と魔理沙は漕ぐのをやめるとトロッコはゆっくりと速度を落としていき、彼はブレーキを掛けてトロッコを停止させる。
「でも、立ち寄りたい場所って?」
彼はトロッコから降りると、備え付けられている車輪止めを車輪の前後に挟みながら魔理沙に聞く。
「この近くに私の友達が住んでいるんだ」
「住んでいる? ここにですか?」
「あぁ。引きこもりがちなやつだけど、良いやつなんだよ」
「そうですか」
「ここから少し歩くけど、付いて来てくれ」
箒を持った魔理沙が歩き出すと、北斗も一応護身用としてトロッコに備え付けられたスコップを手にして彼女の後に付いて行く。
しばらく歩くと、鬱蒼とした森から開けた場所へと出る。
「あそこだぜ」
彼女が立ち止まって指差す先に、洋風な佇まいの一軒家が立っていた
「結構洋風なんですね。人里の建物って、和風だったのに」
「そうか? まぁ細かい事は気にするな」
魔理沙はそう言うと、一軒家へと向かって歩き出し、北斗もその後に付いて行く。
「おーい、アリス!! 遊びに来てやったぜ!!」
彼女は大きな声を出しながら扉を強く叩く。
(どう見ても遊びに来たって雰囲気じゃないんだが)
ツッコミたい気持ちがあったが、内心に留めた。
「聞こえているわよ、魔理沙」
と、扉が開いて中から一人の少女が出てくる。
「よぉ、アリス」
「もう少し静かに呼べないの? 本を読んでいたのに、気が散ってしょうがないわ」
「別にいいじゃないか。静かに呼んだって聞こえないだろ?」
「はぁ、全く。あなたはもう少し魔法使いらしく―――」
目頭を押さえながら愚痴る彼女は魔理沙に向かって文句を言おうとして、視界に北斗の姿を捉える。
「……」
その瞬間、アリスの動きが止まる。
「アリス?」
突然黙った彼女に魔理沙は首を傾げる。
「……ま」
「ま?」
「魔理沙が男を連れて来たぁぁぁぁぁっ!?!?」
アリスは森中に響くほどの大声を出して驚愕した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「いやぁ、アリスのあんな声初めて聞いたぜ」
魔理沙は後頭部に両手を組んで座っている椅子の背もたれにもたれかかってどこか楽しそうに言う。
「恥ずかしいわ……もう」
その向かい側の席ではアリスが肘をテーブルに着けて真っ赤になっている顔を両手で隠していた。
「そもそも、こんなガサツな魔理沙を好きになる男が居るわけ無いわ。相当の物好きよ」
「おいおい、さすがにそれは傷付くぜ? 私だって乙女なんだしよ」
「どの口が言うのかしら」
顔から両手を外して深くため息を付くと、アリスは魔理沙の隣に座る北斗を見る。
「それで、あなたは確か」
「霧島北斗です」
「例の外来人ね。新聞で見たわ」
アリスは咳払いして調子を整える。
「アリス・マーガトロイド。魔法使いよ。さっきはごめんなさい。少し取り乱してしまって」
「いえ、大丈夫です」
そう言う北斗に、アリスは安堵する。
「……」
アリスは魔理沙に声を掛けられて返事を返している北斗を目を細める。
(やっぱり、違うわよね……)
あの時の疑問が未だにに残る彼女は内心呟く。
「シャンハーイ」
「ホーライ」
「うぉっ!? びっくりした!?」
後ろから声がして北斗は身体が跳ねて後ろを振り向く。
そこには青い服と赤い服を来た人形が浮かんでいた。
「に、人形?」
宙に浮いている二体の人形に北斗は瞬きを繰り返す。
「それはアリスが作った人形だぜ」
「アリスさんが?」
魔理沙がそう言うと、北斗は二体の人形を見る。
「青い服の方が上海で、赤い服の方が蓬莱よ」
「へぇ。可愛いですね」
北斗が上海人形の頭を優しく撫でると、「シャンハーイ」と嬉しそうに声を上げる。
「珍しいわね。上海と蓬莱が懐くなんて」
「そうなんですか?」
「人見知りってわけじゃないけど、初対面の人に懐くなんてあまりないから」
「はぁ」
彼女の話を聞きながら北斗は蓬莱の頭を優しく撫でると、「ホーライ」と少し恥ずかしそうに声を漏らす。
「で、今日は何の用なの。わざわざ世間話をしに来たってわけじゃないんでしょ?」
「あぁ、そうだったぜ」
と、魔理沙はハッとする。
「ちょっと森に用事があってな。休憩がてら立ち寄ったんだ」
「人の家を休憩所代わりにしないでくれるかしら」
アリスはジトッと魔理沙を睨む。
「でも、貴方の用事って、わざわざ外来人にキノコ採りを手伝わせているの」
「違う違う。逆に北斗に関係ある事なんだよ」
「?」
「私が昨日キノコを取って家に帰る途中で、森の中に蒸気機関車があったんだよ」
「蒸気機関車? あぁ、確か新聞に書いてあった」
アリスは昨日見た新聞の記事を思い出す。
「それがあった場所に北斗を案内していたんだ」
「ふーん」
アリスは魔理沙の顔を見ながら、首を傾げる。
「でも、何であんなに汗を掻いていたの?」
「そりゃ、ここまで移動してきたからな」
「箒で移動していたわりには、随分疲れているようだけど?」
「いやぁ、たまに健康を気にして身体を動かしたんだぜ」
魔理沙は少し動揺したように視線を泳がせてそう言う。
「でさ、折角だし、アリスも一緒について来てくれよ」
「何でそうなるのよ」
唐突の話題の転換にアリスは魔理沙をジトッと睨む。
「どうせ暇なんだろ? それにたまに外に出て日の光を浴びて身体動かさないと病気に掛かるぞ」
「暇で悪かったわね。それに魔法使いに健康をどうこう言ったって意味ないわよ。と言うか森の中じゃ日の光も注さないじゃない」
アリスは怒涛のツッコミを返す。
「なぁ、いいだろう?」
「……」
アリスは呆れた様に深々とため息を付く。
「まぁ、その蒸気機関車とかも気になるし、いいわよ」
「さっすがアリスだぜ」
「調子の良いんだから」
呆れた様子でアリスが立ち上がり、魔理沙と北斗も席を立って家を出た。
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