東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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第22駅 いつから幻想機関区は民宿になったのだろうか

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 その場所は緊迫した雰囲気に包まれていた。

 

 宿舎内の応接室にて、北斗は緊張した面持ちで姿勢を正して座っている。その後ろではお盆を持った水無月が固まっていた。

 

 その原因は、二人の前のソファーに座る一人の少女であった。いや、正確に少女と呼べるかどうか分からないような、そんな雰囲気のある少女? だった。

 

 少女は紅茶の入ったカップをソーサーごと持ち上げると、カップの取っ手を持って一口紅茶を飲む。

 

「いや、そんなに固くなってもらうとやりづらいんだけど」

 

 二人があまりにも緊張した面持ちな為、少女は眉を顰めて複雑な表情を浮かべる。

 

「別にとって食うことは無いわ。頼みがあってきたのよ」

 

「は、はぁ」

 

 北斗は深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。

 

「で、では、改めまして」

 

「あぁ」

 

「自分はこの幻想機関区の区長をしています、霧島北斗と申します」

 

「ここの責任者なのね」

 

「はい」

 

「ふむ。なら、話は早いわ」

 

 少女はソーサーごとカップをテーブルに置く。

 

「私の名前は夢月。夢幻の世界から来た者よ」

 

「夢幻の、世界?」

 

 一瞬北斗の脳裏にムゲンノカナタヘーと過ぎる。

 

「言っておくが、そっちの無限じゃない」

 

「アッハイ」

 

 北斗は咳払いをして、気持ちを整える。

 

「それで、夢月さんはどんなご用件があってここに?」

 

「そうね。私は夢幻の世界からこの幻想郷にしばらく身を寄せることになってね。住む場所を探しているんだ」

 

「住む場所? それなら霊夢さんに聞くべきなのでは?」

 

「……博麗の巫女に関わりたく無いのよ」

 

 夢月は視線を逸らすも、機嫌を悪くしたのか雰囲気が重くなる。そしてその雰囲気に敏感な北斗はすぐに察する。

 

「す、すみません」

 

「構わないわ。まぁ要するに、泊まる場所を探しているのよ。博麗の巫女に関わらずにね」

 

「は、はぁ」

 

 北斗はこの時霊夢は一体何をしてここまで嫌われているんだ、と思っていた。

 

「とはいっても、全く当てが無いのよ。少しばかり歩いていた」

 

「それで、自分達の所に?」

 

「他と明らかに違っていたからね。その上この幻想郷中の地面にある物がここに伸びていた事もあって、立ち寄らせてもらったのよ」

 

 まぁ技術面的にも明らかに浮いているから、目立っているのも仕方無い。

 

「もちろん、タダで泊まらせて欲しいとは言わないわ。……泊まる代わりに何か手伝う」

 

 夢月は一瞬視線を横に逸らすも、すぐに正面に戻す。

 

「は、はぁ」

 

 北斗は夢月の格好を見て首を傾げる。

 

「失礼なことをお聞きしますが、夢月さんは格好からしてメイドか何かでしょうか?」

 

「いや、メイドじゃない。姉さん(コスプレ好き)の趣味よ」

 

「えぇ……」

 

 彼は良い趣味した姉だと内心ツッコミ、思わず声を漏らす。

 

「その、夢月さんは何が出来ますか?」

 

「教えれば覚える。雑用ならそれで構わない。なんなら、ここの用心棒もするわよ?」

 

「そ、そこまでは。まぁでも、雑用をしてくれるのなら、ありがたいです」

 

「ふむ」

 

 夢月は煎餅を一つ手にして齧る。

 

「あぁ、飲食に関してはそこまで気にしなくてもいい。私が必要と思う時だけで十分。あくまでも今提供して欲しいのは寝床よ」

 

「そ、そうですか」

 

 北斗はますます夢月に対する疑問が増える。

 

「とりあえず、掃除等の雑用をこなすのなら、こちらとしては助かります」

 

「なら、交渉成立でいいかしら?」

 

「はい」

 

「ありがとう」

 

 彼女はカップを持って紅茶を飲み、礼を言う。

 

「とりあえず、今日は部屋に案内しますので、仕事は明日からお願いします」

 

「分かった」

 

「水無月。夢月さんを案内してもらっていいか?」

 

「……は、はい」

 

 水無月は少し遅れて返事を返し、夢月を空いた部屋へと案内する。

 

 

 

 その後夢月を空き部屋に案内して、北斗は深くため息を付き、こんな事を呟いたそうだ。

 

『大変なことになりそうだ』と。

 

 

 

 

 

 その後北斗は宿舎の廊下を歩き、一回にある食堂を目指していた。

 

「腹減ったな……」

 

 彼はそう呟きながら腹に手を置くと、腹の虫が鳴る。

 

 朝から魔理沙に案内されて魔法の森から機関車三輌を幻想機関区に持ち帰り、帰ったのは昼過ぎだ。その上魔法の森へと向かう際に運動をしたので、余計腹が減っていた。

 

 ちなみにこの幻想機関区における飲食事情だが、今のところ食料の備蓄はあるので問題は無い。そもそも鉄道運営ゲーム内の施設だったのになぜ食料があるのかは分からないが。

 

 と言うのも、ここに居る者達は種族的な関係もあるのだろうか、それほど多くの頻度で食事を取る必要が無い。特に蒸気機関車の神霊である明日香達は水だけ飲めば十分らしく、それ以外は口にしなくても問題ないとのことだ。

 これを聞いた北斗は思わず「○○ック星人か」と突っ込んだそうだ。

 

 妖精達も別にエネルギーを摂取しているらしく、食事をする必要は無い。まぁそれでも食べる事はある。

 

 その為、幻想機関区で食料を消費しているのは実質北斗である。

 

(朝食のご飯まだ残ってたかな)

 

 朝食べたやつが残っているかどうかを心配しながら食堂に入る。

 

 

「ん?」

 

 北斗は食堂に入ると、首を傾げる。

 

 何やら食堂の一角に人だかりが出来ていた。

 

 彼は首をかしげながら人だかりに近付く。

 

「あっ、区長」

 

 その人だかりの一人である明日香が振り向く。

 

「どうしたんだ?」

 

「それがですね……」

 

 明日香は戸惑いの表情を浮かべ、前の方を見る。

 

 彼は首を傾げながらその方向を見る。

 

 

「……」ムシャムシャ!

 

 そこではご飯を貪るように食べる一人の少女? の姿があった。

 

 なぜ? が付くかと言うと、彼女の背中に生えているものがそれを表している。

 それはまるで悪魔の羽を彷彿、というかそのものであった。

 

 腰まで伸びた金髪のロングヘアーに左頬に赤い星があるのが特徴的で、赤いリボンをしている。耳は普通の人間と違って尖っており、瞳の色は赤い。そんな少女? がご飯を食べている。

 

「……」 

 

 北斗は無言で明日香を見て説明を求める。

 

「え、えぇと、区長が先ほどの女性と面会している時に、機関区の敷地内に突然落ちてきたんです」

 

「落ちてきた?」

 

「はい。物理的に」

 

 

 オヤカタ-! ソラカラオンナノコガ!!

 

 

 一瞬お決まりの幻聴が聞こえたようなしたが、彼は気にせず更に説明を求める。

 

「七瀬さんが聞いた所、お腹を空かせていたようで、結構大きな腹の虫を鳴らしていたそうですよ」

 

「そ、そうか」

 

 その後はどうなったかは、目の前の光景を見れば理解出来る。

 

 

 

「プハー! 食べた食べた!」

 

 少女? は大きな声を出して両手を腹に当てる。

 

「ありがとう! おかげで助かったわ!」

 

 彼女は笑顔を浮かべてお礼を言う。

 

「お礼なら、彼に言ってね」

 

 と、少女? の様子を見ていた七瀬が北斗の方を見る。

 

「あら、あなたは」

 

 と、少女? は北斗の存在に気付く。

 

「えぇと、あなたは?」

 

「あら、ごめんなさい。恩人相手にこの態度で」

 

 コホンと咳払いをした少女? は立ち上がるとスカートの両端を摘まんでお辞儀する。

 

「初めまして。私の名前はエリスです」

 

「は、初めまして。ここ幻想機関区の区長をしています、霧島北斗です」

 

 エリスと言う少女? は淑やかに自己紹介すると、北斗も続いて自己紹介する。

 

「あなたの部下には助かったわ。ありがとう」

 

「いえ、どう致しまして」

 

 北斗は戸惑いながらも、エリスの背中に生えている羽を見る。

 

(見た感じ、作り物じゃないよな)

 

 その証拠に彼女の背中に生えている羽は時折動いている。

 

「フフ、私の背中に生えている羽が気になる?」

 

「え、えぇと」

 

「えぇそうよ。私は見ての通り、悪魔よ」

 

 と、彼女は聞いても無いのに、自分が悪魔である事を告げ、背中の羽を広げる。

 

「それで、エリスさんはどうして行き倒れていたのですか?」

 

「それね。実はね――――」

 

 と、エリスは今に至るまでを説明する。

 

 

 簡単に説明すると、普段彼女は魔界と呼ばれる所に住んでいて、知人に挨拶ついでに観光目的で幻想郷に向かおうとしたら、転移に失敗して体力と魔力を使い果たしてしまい、ちょうど落ちてきたのがここだった。との事だ。

 

 

「それでね。しばらくの間ここに泊まってもいいかしら」

 

「何をどうしてそんな流れになったかを小一時間ほど話し合いたいのですが」

 

 唐突に宿泊を希望してきたエリスに北斗は思わずツッコム。

 

「だって、ここだと知り合いは靈夢だけだし、あの暴力巫女が悪魔を泊まらせてくれるわけ無いじゃない。それに、あの悪霊だってどこに居るか分からないんだし」

 

 エリスは視線を逸らして両人差し指の先を付けたり離したりを繰り返す。

 

「霊夢さんと知り合いなんですか?」

 

「えぇ。ある異変の時に巫女になったばかりのあいつと戦ったのよ」

 

「へぇ。巫女になったばかりの霊夢さんか(と言うか、暴力巫女って)」

 

 北斗は初々しい姿を想像しようとするも、なぜか今のイメージが離れなかった。と言うのも、暴力巫女と言われてしまっているので、想像できないのも無理ない。

 

「それに、悪霊って?」

 

「気にしなくてもいいわよ。ただの独り言よ」

 

 彼女は咳払いをする。

 

「まぁ兎にも角にも、ここに泊まる場所の当てが無いのよ」

 

「ですから、泊めて欲しいと?」

 

「そっ。もちろん、ご飯を食べさせてもらった恩もあるし、タダで泊めさせて貰おうって気は無いわ。雑用辺りするわよ」

 

「そ、そうですか(何か、さっきと同じやり取りをしているような)」

 

 と、彼はデジャブを覚える。

 

「……何か、私が泊まると都合が悪いの?」

 

「いえ、そういうわけじゃないのですが、つい先ほどここに寝泊りする人が決まったばかりでして」

 

「あら、そうなの?」

 

 エリスは意外な事にキョトンとする。

 

「で、でも、一人二人増えても、問題はありません」

 

「ってことは、泊まっても良いわね?」

 

 と、エリスはニヤッと口角を上げる。

 

「……ま、まぁ、泊まる条件に働くのなら」

 

「それなら問題無いわ」

 

 彼女はなぜか胸を張りながら言い切る。

 

 そして北斗はしてやられた、と内心呟く。

 

「じゃ、しばらくの間よろしくね」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 北斗は頭を下げると、ふとある疑問が過ぎる。

 

「あの、エリスさん。一つお聞きしたいのですが」

 

「何かしら?」

 

「エリスさんは、日光大丈夫なのでしょうか?」

 

「……は?」

 

 北斗の質問にエリスは唖然となる。

 

 そして彼が聞いた内容の意味を理解して、明らかに怒りの色が表情に浮かぶ。

 

「そんなわけ無いでしょ!! 私は正真正銘の悪魔よ!! あんな弱点だらけの吸血鬼と一緒にしないでよ!!」

 

 エリスはウガー!! と言わんばかりに怒鳴りつける。

 

「す、すみません。一応確認したかったので」

 

「……」

 

 北斗は深々と頭を下げて謝り、エリスは深くため息を付く。

 

「ま、まぁ、あんたは恩人だから、これ以上言わないわ」

 

 フンッと、彼女はそっぽを向く。

 

 

 

 まぁ、なんやかんやあったものも、幻想機関区に機関車が新たに三輌追加され、新しく住人が増える事となった。

 

 

 

 ちなみに北斗の昼食だったが、エリスが朝食残りを全て食べてしまったので、彼は昼飯抜きになったとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




旧作キャラは多く出していく予定です。

感想、質問、要望等がありましたら、お待ちしています。
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