東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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最近KATO製のC62 2号機とC62 3号機を買って重連で走らせています。
やっぱりKATOは安定した走りとディティールが良いですね(SLの種類は少ないけど)



第26駅 人里での会談

 

 

 

 

 翌日。

 

 

 

 幻想郷には人間が暮らす人里と呼ばれる集落がある。

 

 その日も人里ではいつものように人々が賑わいを見せていた。

 

 

 そんな時、汽笛の音がして人々は音がした方向を見る。

 

 空には薄く煙が上がっていて、一部興味を持った人々は人里の外側に沿って立っている塀の出入り口の門から外を見る。

 

 そして人里付近の地面にいくつも張り巡らされた線路に、ゆっくりと客車一輌を牽いて走るD51 241号機の姿があった。

 

 人里に一番近い場所でD51 241号機が停止すると、密閉式の運転室の扉が開いて明日香が降りてくる。

 

 それと同時に客車から北斗と早苗が降りてきて、それに続いて夢月も続き、最後に様々な器機を持った妖精達が降りてくる。

 

 妖精達は周辺調査の為に散らばり、北斗達は人里へと向かう。

 

 

「あれが蒸気機関車ってやつか」

 

「ここからでも大きいな」

 

「あれ、妖精か?」

 

「おい見ろよ。あの妖精が真面目に働いているぞ」

 

「あれが新聞に載っていた外来人か?」

 

「というか、あの外来人の隣に居るのは、東風谷様じゃ?」

 

「博麗神社と紅魔館のメイドさんみたいな格好の子もいるわ」

 

 住人達は遠くから蒸気機関車の姿を興味津々な様子で見ていた。

 

 今まで走っている姿しか観ていなかったので、こうしてじっくりと見る機会は無かった。

 

「あれが文屋の新聞に載っていた蒸気機関車とやらか」

 

 門の前で腕を組んで停止しているD51 241号機を見ている少女はそう呟く。

 

 足元まで届きそうな白く長い髪を根元をリボンで束ねており、白いシャツにサスペンダーの付いた赤いもんぺといった格好をしている。

 

 

 少しして北斗達が少女の元へとやってくる。

 

「こんにちは、妹紅さん」

 

「早苗か。で、そっちが例の?」

 

「はい」

 

「霧島北斗です」

 

 北斗は頭を深々と下げる。

 

「藤原妹紅だ。妹紅と呼んでくれ。慧音から話は聞いている。付いて来い」

 

 妹紅と呼ばれる少女は後ろを向いて歩き出し、その後を北斗達が付いて行く。

 

「ところで、そこのメイドは誰だ?」

 

「夢月さんといって、今自分の所で居候しています。今日は自分の護衛に付いて来ています」

 

「そ、そうなのか」

 

 妹紅は戸惑いながらも返事を返す。

 

 そりゃ護衛にメイドと言われたら、そりゃ戸惑うだろう。

 

 まぁ知人にそれが可能なメイドがいるので、すぐに納得したが。

 

 

 

 江戸から明治に入るぐらいの時代を彷彿とさせる建造物が立ち並ぶ人里を北斗達は世間話をしながら歩いていき、妹紅は大きな長屋の前で止まる。

 

「ここは寺子屋だが、今日はここを話し合いの場にするそうだ」

 

「寺子屋ですか」

 

「慧音はここの教師をしているんだ」

 

「なるほど」

 

 そう話しながら寺子屋の中に入ると、そこには二人の女性が座布団に座っていた。

 

 一人は青いメッシュが入った長い銀髪に特徴的な形をした帽子をかぶり、青を基調としたドレスの様な服を着た女性で、もう一人は赤い髪を黄色いリボンで束ねて、赤い袴に紫の羽織りを着た女性であった。

 

「慧音。連れて来たぞ」

 

「すまないな、妹紅」

 

「気にするな」と、そう言いながら妹紅は畳の上に何枚も敷かれた座布団の内一枚に座る。

 

「どうぞ」と慧音と呼ばれた女性は北斗達に座布団を勧めると、北斗達はそれぞれ敷かれた座布団に座る。

 

「初めまして。もうご存知かもしれませんが、この度幻想郷の一員となりました、幻想機関区の区長、霧島北斗と申します」

 

 北斗は姿勢を正して深々と頭を下げる。

 

「初めまして。私は寺子屋の教師をしている、上白沢慧音だ。今日は風邪で寝込んだ里長の代理で出席している」

 

「私は小兎姫(ことひめ)と言います。人里の治安を守る自警団の副団長をしています。今日は欠席している団長の代わりに代表を務めます」

 

 それに続いて二人の女性もそれぞれ自己紹介をする。

 

「里長と自警団の団長は欠席ですか?」

 

「えぇ。昨日調子に乗って酒を飲みすぎて、二人揃って寝込んでいます」

 

 呆れた様子で小兎姫はそう言うとため息を吐く。

 

「そ、そうですか」

 

 北斗は苦笑いを浮かべるも、咳払いをして気持ちを切り替える。

 

「今日は話し合いの場を設けて頂き、ありがとうございます」

 

「早苗の話では、何でも大事な話があると」

 

「はい」

 

 北斗は木を引き締め、本題を切り出す。

 

「知っていると思いますが、自分達には蒸気機関車と呼ばれる外の世界でかつて使われていた乗り物があります」

 

「人里の外で止まっているあれですね」

 

 小兎姫はここに来る前に人里の外で停車している機関車を思い出す。

 

「はい。我々はその蒸気機関車で幻想郷の役に立てればと思い、一つ提案があるのですが」

 

「提案ですか?」

 

「えぇ。色んな人達から話を聞いた所、人里に住む人達はここから遠くにある場所、例えば博麗神社や守矢神社に向かいづらいとか」

 

「あぁ。確かに」

 

「昔ほどじゃないが、人里の外では妖怪による襲撃が起こっているからな。住人の殆どはあんまり出たがらないんだ」

 

「そうですか」

 

 北斗は考えるような仕草をして、提案を切り出す。

 

「そこでですが、我々が鉄道、先ほど言った蒸気機関車を使い、人里から離れた場所へと送り届けようと思っています」

 

「送り届ける?」

 

「はい」

 

 北斗は早苗を交えて外の世界で鉄道がどれだけ便利なものかを説明する。

 

 

 

「それは凄いな」

 

「外の世界は進んでいるんですね」

 

 北斗と早苗から話を聞いて、慧音と小兎姫は驚きを隠せなかった。

 

「まぁ、もし本当なら便利だな」

 

 腕を組む妹紅は「だが」と声を漏らしながら北斗を見る。

 

「問題は、それが安全だっていえるのか?」

 

「……」

 

 妹紅の指摘に北斗は何も言えなかった。

 

 事象に絶対は無い。どれだけ注意しても、どれだけ用意周到にしていても、どこかで綻びが起きて何かが起きる。

 

 鉄道の事故は予想し得ない状況によるものや、自然的なもの、人為的なもの等、様々な状況がある。

 

 中にはマナーの悪い大人達を真似てしまった子供が列車に轢かれる、痛ましい事故だってある。

 

 どれだけ安全な策を講じても、事故はどこかで起きてしまう。

 

 

「絶対な保障はありません。実際鉄道の事故は今も昔も起きていましたから」

 

「……」

 

「当然事故を起こさないように、努力は惜しまないつもりです」

 

「当然だな」

 

「……」

 

「まぁ、事故を起こさないようにするのは当然だ。だが、一つ聞かせてくれないか」

 

「……?」

 

 北斗が首を傾げる中、慧音は鋭い視線を彼に向けて問い掛ける。

 

「仮にもこの幻想郷でその鉄道とやらを運行するとしても、君達は何を求めるのだ」

 

「……」

 

「まぁ、鉄道も商売の一つだと言うのは分かる。そこは追々決まったら話し合いで決めよう。だが、それよりも君達の真意を聞きたい」

 

「……」

 

「君達は、この幻想郷で何をしたいんだ?」

 

「……」

 

 慧音の問いに、北斗は口を閉じる。

 

「文屋の新聞には、君達が今回の異変に関わっていると書いてあったが」

 

「け、慧音さん! あの記事は……」

 

 早苗は慌ててフォローに入る。

 

「分かっている。あの文屋の新聞の記事をそのまま鵜呑みにはしていない。だが、全てが嘘だとは言い切れないだろう」

 

「それは……」

 

「……」

 

 慧音の指摘に、早苗はそれ以上言えず、北斗は黙ったままだ。

 

 射命丸文の新聞は捏造した箇所こそあるが、ほぼ必ず元となるネタがあるので、記事自体が嘘とは言い切れないのだ。

 

 北斗はしばらく沈黙し続けたが、口を開く。

 

「自分達は今回の異変に関わっていません、とは言い切れませんが、少なくとも自分達はこの幻想郷をどうかしたいわけではありません」

 

「……」

 

「純粋に、自分達の力を幻想郷の為に役立てたい。それだけです」

 

『……』

 

 北斗の言葉に、慧音達は何も言わなかった。

 

「その言葉に、嘘偽りは無いんだな」

 

「はい」

 

 妹紅の問い掛けに北斗は迷わず答える。

 

『……』

 

 三人は顔を見合わせて頷き合うと、北斗を見る。

 

「あなたの意気込みは理解しました。その鉄道の利用ができれば、今後人里に住む人々は博麗神社や守矢神社、命蓮寺への行き来が楽になるでしょう」

 

「まぁ道中の安全とかを考えなければなりませんが、足腰の弱い老人や障害者には便利になりますね」

 

 慧音と小兎姫は言葉を交わした後、北斗に向き直る。

 

「この一件については、里長や自警団団長を交えて話し合わなければなりません。しかし、私自身の意見としては、素晴らしい事だと思っています」

 

「団長と里長も、話を聞けば恐らく賛成してくれるでしょう」

 

「そうですか」

 

 二人の言葉に北斗の表情に明るみが表れる。

 

「と言っても、本当に便利なのかどうか分からんがな」

 

 まだ鉄道の有用性を疑っている妹紅はそう呟く。

 

「でしたら、体験試乗会をしてみてはどうでしょうか?」

 

 と、妹紅の言葉を聞いた早苗が一つ提案を挙げる。

 

「体験試乗会ですか?」

 

「はい。百聞は一見にしかずです。実際に乗って鉄道の便利さを知ってもらうのはどうですか?」

 

「なるほど。一々聞くより分かりやすい」

 

「ふむ」

 

 早苗の提案に慧音と小兎姫は頷く。

 

「ですが、いきなり一般の方々を乗せるのは難しいので、最初は自警団の皆様に乗ってもらうというのは」

 

「なるほど」

 

「確かに、我々で安全で便利かを確認すれば、一般人に安心して利用させられる、か」

 

「ふむ」

 

 三人は顔を見合わせると、小さく話し合う。

 

 

(すいません。本当なら俺が言うべき所を代わりに)

 

(いいんですよ。これも北斗さん達の為ですから)

 

 小さな声で北斗が早苗に謝ると、彼女は小さく返事を返す。

 

(でも、手応えはありましたね)

 

(はい。しかし、ここからです)

 

(はい!)

 

 

 

 その後話し合いを続け、ひとまず今回の話し合いの内容を欠席した里長と自警団団長に伝えてから話し合いを行い、体験試乗会を行うかを決める事になった。

 

 しかし、二人は恐らく里長と自警団団長も話を聞けば納得して体験試乗会を行う流れになるだろうとのことだ。

 

 

 

 




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