東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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前から譲渡が検討されていた真岡鐵道のC11 325号機が正式に東武鉄道に売却されることになりましたね。
今後三輌体制なのか、それとも復元中の私鉄発注のC11 1号機が復元した後にJR北から借りているC11 207号機を返還して二輌体制にするのか。
まぁどちらにしても、今後のC11 325号機の動向に注目ですね。





第32駅 明らかになる事

 

 

 

 

 幻想郷には博麗神社や人里、霧の湖に紅魔館、妖怪の山に守矢神社と、その他にも様々な場所が存在する。

 

 しかし中には並大抵の実力者でも早々近付かない場所がある。

 

 

 それは『太陽の畑』と呼ばれる場所である。

 

 妖怪の山のほぼ反対方面の奥地にある草原であり、夏になると一面に向日葵が咲き誇る絶景スポットだ。名前の由来はそこから来ている。

 

 一見すれば特に危険が無いように聞こえるだろう。まぁ確かにここだけならそれほど危険は無い。強いて言うなら妖精に遭遇しやすいという所だろう。

 

 しかし、並大抵の実力者が近づかないようにしているのは、この辺りで活動するとある妖怪が原因であるのだ。

 

 

 

「……」

 

 そんな太陽の畑の平原に出来た道を一人の女性が日傘を差して歩いていた。

 

 癖のある緑の髪をして赤い瞳を持っており、女性としてはそこそこ背が高い。白いシャツの上にチェック柄の赤いベストを羽織り、ベストと同じ色と柄のスカートを着用している。

 

 彼女の名前は『風見幽香』という、『花を操る程度の能力』を持つ花の妖怪である。

 

 聞くだけなら大したことがなさそうにも思えるが、幻想郷においてそんな事を思えるやつはただの命知らずの大馬鹿である。

 

 彼女の実力はこの幻想郷では五本の指の一つに入るほどであり、博麗霊夢ですら出来れば関わりたく無いと言わしめるほどである。

 

 とは言えど、たまに理不尽な理由があるもの、それ以外で彼女が人間を襲うことは無いし、彼女自身人間を嫌っている節は無い。むしろ人里で彼女の姿が目撃されることが多い。

 

 しかし彼女は花の妖怪とあってこの事には敏感で、花を傷つけたり悪口を言うと、ほぼ命が無いと言っても過言ではない。

 

 そんな彼女は太陽の畑を活動拠点として、こうして花のある場所を目指して散歩しているのが日課である。

 

 ちなみに彼女は元からこの幻想郷に住んでいたわけではなく、別の世界に館を構えて暮らしていた。しかし今は暇つぶしを兼ねてこの幻想郷に移り住んでいる。

 

 

「……」

 

 すると彼女は顔を上げて立ち止まる。

 

 その視線の先には、道の端に立てられた柵の前に立つ一人の女性がいた。

 

「あなたがここに来るなんて、随分久しぶりね」

 

「そうね。ここに来るのはあの日以来かな」

 

 幽香が声を掛けると、女性は手にしている写真を懐に仕舞う。

 

「久しぶりね、幽香」

 

「えぇ。久しぶり……『飛鳥』」

 

 幽香が女性の名前を言うと、女性は幽香の方を向く。

 

 

 

 

「久しぶりに会ったけど、幽香髪を切ったのね」

 

「こっちの方が面倒がなくて良いわ」

 

「長い方が似合っていたんだけどね。特に今の格好なら似合っているんじゃない?」

 

「……」

 

 太陽の畑の近くにある幽香の家で二人は紅茶を飲みながら会話を交わしていた。

 

「それで、今まで一体何をしていたのかしら?」

 

「まぁ、色々とね」

 

「色々、ね」

 

 ジトッと幽香は飛鳥を睨む。

 

「で、今日は一体何の用かしら?」

 

「久しぶりに会う友人と世間話をしに来たとは思わないの?」

 

 飛鳥は苦笑いを浮かべる。

 

「長らく来ていないあなたが急に来たって、疑いしか抱かないわね」

 

「相変わらず辛辣だことで」

 

「……」

 

 わざとらしく肩を落とす仕草をする飛鳥に幽香は短くため息を吐くと、ソーサーにカップを置き、テーブルに置いている新聞の記事を見る。

 

「天狗の新聞で知ったけど、最近外来人が大きな施設と共に幻想入りしてきたそうね」

 

「そうね」

 

「新聞には確か、蒸気機関車とか言う物もあったわね」

 

「……」

 

「その外来人……写真に写っている姿を見てまさかとは思ったけど」

 

 幽香は顔を上げて飛鳥を見る。

 

「しばらく見ない内に、随分と大きくなったわね」

 

「……」

 

 幽香は滅多には見せない微笑みを浮かべる。

 

「ホント、あなたにそっくりね」

 

「……」

 

 飛鳥はしばらく悩んだが、観念したように口を開く。

 

「よく、分かったわね。幽香が最後にあの子を見たのは、まだ赤ん坊だっただろうに」

 

 彼女は懐から折り畳んだ写真を取り出すと、それを広げる。

 

 長い時間が経過しているのか、写真は色褪せてボロボロだったが、そこには二人の男女の姿が写されており、女性の方は飛鳥本人であり、その腕には生まれて間もない赤ん坊が抱かれている。

 

 

 

 その赤ん坊こそが、あの霧島北斗である。

 

 

 

 そして彼女は、北斗の実の母親なのである。

 

 

 

「さすがに最初は気付かなかったわ。まぁ、興味も無かったし」

 

「……」

 

「でも、写真をよく見ると、目つきがあなたとそっくりだったわ」

 

「……」

 

「それに、偶々魔法の森で白黒の魔法使いと人形使いと一緒に居た所を見た時、彼の瞳の色を見て確信を得たわ」

 

「……そういうことか」

 

 納得したように飛鳥は呟く。

 

 自分の特徴を色濃く受け継いでいるとあって、納得できた。

 

「と言うか、なんで魔法使い二人と一緒に居たの」

 

「知らないわ。その後は見ていないもの」

 

「……」

 

 自分の息子と魔法使い二人という妙な組み合わせに彼女は首を傾げる。

 

「それにしても、随分と時が経つのが早いわね」

 

「……そりゃそうだろう。あの子と私達は、時間の経ち方が違うんだ」

 

「……」

 

 写真を折り畳んで懐に仕舞う飛鳥の姿に、幽香は目を細める。

 

「それで、どうするつもりなの」

 

「どうもこうも無いさ、近い内に、あの子に会いに行く」

 

「……」

 

「まぁ、どんな顔をして会いに行けばいいのかしら……」

 

 色んな事情が織り交ざっているとあって、彼女は複雑な思いだった。

 

「……」

 

 

 

「あら、随分と懐かしい面々が揃っているじゃない」

 

 と、彼女達以外の声がして、二人は声がした方を向く。

 

 すると空から一人の少女が下りて来て庭に足を着ける。

 

「久しぶり、幽香、飛鳥」

 

「あなたは……」

 

 露骨に面倒くさそうな表情を浮かべる幽香の視線の先にいる少女はにこやかに手を振るう。

 

 ショートヘアーの金髪に赤いリボンを付けており、金色の瞳を持つ。しかし何よりの特徴は背中に生えている、白い羽の生えた二枚一対の翼である。

 

 一見すれば天使の様な風貌をしているが、彼女から発せられている気配は決して天使のものとは思えない穏やかなものではなかった。

 

 

 彼女の名前は『幻月』。夢幻の世界に住む悪魔であり、幻想機関区に居候中(と言う名の家出)の夢月の双子の姉である。

 

 

「幻月じゃない。どうしたの?」

 

「家を出たっきりの夢月を探しに来たのよ。あの子ったら幻想郷に行ったきり、帰ってこないのよ」

 

「ふーん。いつも一緒に居るのに、珍しいわね」

 

「まぁ、ちょっとね」

 

 幽香の指摘に幻月はどこか歯切れの悪そうに答える。

 

「喧嘩でもしたのかしら?」

 

「……」

 

「図星か」

 

 飛鳥の予想に幻月が何とも言えない表情を浮かべる。

 

「珍しいわね。貴方達が喧嘩なんて」

 

「ま、まぁ、私達だって喧嘩ぐらいはするわよ」

 

「ふーん……」

 

「でも、悪いのは夢月の方よ!」

 

 顔を赤くしながらも幻月はそう言う。

 

「そこまで言うなら、それなりの理由があるのかしら?」

 

「そ、それは……」

 

 幻月は戸惑いつつ、視線を逸らす。

 

 ぶっちゃけ言うと、喧嘩の理由はほんの些細なことで、それもしょうも無い理由だ。

 

「まぁ、別に貴方達の喧嘩した理由なんて興味ないわ。それで、あなたはどうするつもりなの」

 

「当然、夢月を探して連れ戻すわ」

 

「出来れば、騒ぎを起こさないで欲しいわね」

 

「まぁ善処するわ。私だって、博麗の巫女とまた関わりたく無いもの」

 

 彼女はそう言うと、背中の翼を羽ばたかせて飛び立つ。

 

 

 

「一波乱が起きそうね」

 

「えぇ……」

 

 二人は幻月が飛び去った方向を見ると、ため息を付く。

 

 

 

 

 

 

 




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