東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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第39駅 心の変化と吸血鬼の妹

 

 

 

 

 時間は六時半を回り、辺りも暗くなり出した頃。

 

 

 食堂ではメイド妖精達がキッチンワゴンで豪勢な料理を運び込んでいた。

 

「うわぁ、おいしそう!」

 

 豪華な料理に早苗が思わず声を漏らす。

 

「凄い。こんなに豪華な料理見たのは初めてです」

 

 こういった豪華な食事を前にしたことがあまり無かった北斗も声が漏れる。

 

「当然よ。咲夜の手に掛かればこのくらい楽勝よ」

 

「ふふーん」と言わんばかりにレミリアは胸を張る。

 

(でもこれも咲夜さん一人でとなると)

 

 さすがに全部では無いだろうが、それでもその殆どは彼女がやっているだろう。

 

 そう思うと改めてブラックだ、と北斗は思ったのだった。

 

「私は楽しいと思ってやっていますので、お気になさらずに」

 

 そんな彼の心配を読み取ってか、咲夜は一言そういうのだった。

 

「それじゃぁ、折角出来立ての料理を冷やしたら咲夜に悪いわ。いただきましょう」

 

 レミリアはがそう言うと、自分の席に着く。その際咲夜が時間停止を使って瞬間移動してイスを引いていた。

 

 北斗、早苗、パチュリーも席に座ると、妖精メイド達が料理を次々と運んで前に置いていく。

 

「それで、パチュリーの図書館は楽しかったかしら?」

 

 ワイングラスを手にした彼女は咲夜にワインを注がせる。

 

「えぇ。とても楽しかったです。意外と外の世界の書物とか多かったので」

 

「意外と多いのよね。ここだけじゃなく、別の所にも外の世界の書物が流れ込んで来ているようだし」

 

「そうなんですか?」

 

「えぇ。私の文通友達が人里で貸本屋を営んでいるわ。そこにも外の世界の本が流れて来ているのよ」

 

「なるほど」

 

 レミリアの話を聞いて今度行ってみようかな、と彼は考えるのだった。

 

「それじゃぁ、この出会いに乾杯しましょう」

 

 彼女がワイングラスを掲げると、北斗、早苗、パチュリーもそれぞれワイングラスを手にする。

 

 そして四人は乾杯を交わし、料理を食べ始める。

 

 

 

 

「いやぁ、おいひいれすれねぇ、北斗さぁん」

 

「は、はい」

 

 ほんのり顔を赤くして酔っ払った早苗に声を掛けられて北斗は戸惑いながらも返事を返す。ワインを飲み始めてそんなに経っていないのにこれである。

 一方の北斗はそこそこ飲んでいた筈だが、相変わらず酔っ払った片鱗すら見えない。

 

「で、早速アンタは酔っ払うんかい」

 

 レミリアは思わずツッコみを入れる。

 

 早苗の酒の弱さは知っているが、相変わらずの弱さだ。恐らく幻想郷一の弱さだろう。

 

 まぁ外の世界では法律と言う名の決まりがあって酒類の飲み物を口に出来なかったのもあるが。と言っても彼女の役職柄その類を口にする機会はあった。さすがに毎日ではないが。

 

 それでも小さい頃からお酒を飲む習慣がある幻想郷では、彼女はペーペーのぺーである。

 

「北斗さぁん。北斗さぁんは、もっと頼ってもいいんれふよ。わたひがいつれもお力になりまふから」

 

(((今のアンタに頼りたくないわ)))

 

 北斗を除くレミリア達は内心で同時にツッコむのだった。

 

 こんな酔っ払いに頼るやつは相当な馬鹿である。

 

「そ、その時になったら、ぜひともお願いします」

 

「本当れふか! 約束れすよ!」

 

 早苗は呂律が回っていない中、笑顔を浮かべて北斗に身体を密着させると、彼を抱き締める。

 

「ちょ、早苗さん!?」

 

 彼女に抱き締められた北斗は狼狽する。

 

 抱き締められたことで早苗の女性特有の柔らかさが伝わり、彼は顔を赤くする。当然早苗のご立派な双丘も押し当てられているので、その形は変わり、その部分が押し当てられている箇所からその柔らかさが伝わっていた。

 

 その上彼の頭横には早苗の頭があり、必然的に女性特有の甘い香り……の代わりにアルコールの臭いがしていた。

 

 経歴こそ悲惨で人間不信な彼だが、これでも健全な男子である。そんな男子がスタイル良しな美少女に抱き締められたら慌てるのは当然である。それに加えて異性とのスキンシップが少ない彼からすればとても刺激の強いものなのだ。

 その上彼にとって特別な思いのある女子なら尚更である。

 

 北斗は早苗を離そうとしていたが、思ったより彼女の力が強く引き剥がせないで居た。

 

「あらあら。随分仲がよろしいのね」

 

 そんな光景を見ていたレミリアはニヤニヤと笑みを浮かべる。その隣では咲夜も笑みを浮かべているが、なぜかその笑みはぎこちない。

 

(これ後で記憶が残ってて発狂するパターンじゃないかしら)

 

 パチュリーにいたってはそんな事を内心呟くのだった。

 

 

 

「それで、咲夜の料理はどうだったかしら?」

 

 しばらくしてレミリアが北斗に声を掛ける。

 

 あの後早苗に引っ付かれていたが、何とか引き剥がして食事を再開し、そこにレミリアが声を掛けた。

 

 で、当の早苗は料理を食べながらワインを飲んでいる。

 

「とてもおいしいです。今までこんなにおいしい料理を食べたことがなかったので」

 

「そうでしょそうでしょ」

 

 と、レミリアは嬉しそうに頷く。

 

(なんだか最初に見た時より外見相応な気がしてきた)

 

 最初に見たカリスマ溢れる威圧的な姿だった時よりも見た目相応に幼くなっているレミリアの姿に北斗は首を傾げる。

 

「あれがレミィ本来の姿よ」

 

「そうなんですか?」

 

 と、パチュリーが小さな声で北斗に話しかける。

 

「えぇ。人前じゃカリスマ(笑)でいるけど、本当は見た目相応の無邪気なお子様よ」

 

「はぁ……」

 

「そこっ!! 余計なこと言わないでよ!!」

 

「うがー!」と言わんばかりにレミリアがパチュリーに叫ぶ。

 

 

「コホン。話は変わるけど」

 

 レミリアは咳払いをして気持ちを整える。

 

「そういえば、あなたの機関区には悪魔が暮らしているそうね」

 

「え?」

 

 レミリアが北斗に話題を切り出すと、彼は首を傾げる。

 

「咲夜が言っていたわよ。しかも二人も」

 

「え、えぇ。まぁ」

 

 すぐに誰の事かが分かり、北斗は苦笑いを浮かべる。

 

「全く。あなたは怖いもの知らずかしら? それともただ単に無知なだけかしら」

 

「……まぁ、何と言うか、成り行きって感じで」

 

「成り行きで悪魔を二人も住まわせるかしら?」

 

 普通悪魔を住まわせるって、無いわ。ってかありえない。そもそもなんでなんとも無いのかしら。

 

「あっ、三人です」

 

「……え?」

 

 北斗の衝撃発言にレミリアは首を傾げる。

 

「……二人じゃないの?」

 

「出発前に三人に増えました。最初の一人目の居候人のお姉さんです」

 

「……」

 

 レミリアは額に手を当てて小さく首を左右に振るい、ため息を付く。

 

「あなた、早苗に勝るとも劣らない非常識さね」

 

「は、はぁ」

 

「非常識しゃならわたひもまけまへんでふよ!」

 

「貴方は少し黙ってくれないかしら」

 

 呂律の回らない早苗を一瞥して再び北斗を見る。

 

「ホント、面白くしてくれるわね」

 

「クックックッ」と小さく笑う。

 

 あぁ、本当に面白くしてくれるわね。この人間は。

 

「やはりあなたと手を組んでよかったわ。お陰でしばらく退屈しないで済みそう」

 

「……」

 

「あなたの事を気に入ったって事よ」

 

「あぁ、なるほど」

 

 パチュリーの補足で北斗は納得する。

 

 

 

 

「へっくし!」

 

「あら、夢月。風邪かしら?」

 

「さぁ。誰かが噂でもしているのかしら」

 

「案外身近なやつなんじゃない?」

 

「……」

 

 

 

 

「あの、咲夜さん」

 

「何でしょうか、霧島様」

 

 しばらくして北斗は料理の無くなった皿をメイド妖精と共に片付けている咲夜に声を掛ける。

 

「その、お手洗いはどこに?」

 

「お手洗いでしたら、食堂を出て左を真っ直ぐ進んで、四つ目の曲がり角の先になります」

 

「分かりました」

 

 以前より酒類に対する耐性が付いたのか、ワインを多く飲んでいた北斗だったが、さすがに飲み過ぎて少し強い尿意が出始めていた。

 ちなみにその飲みっぷりにレミリアは驚いて呆然としていたそうな。

 

 咲夜よりお手洗い(トイレ)の場所を聞いて席を立とうとした。

 

「それにゃら、わたひもご同行しましゅよ!」

 

 と、さっきより酔っている早苗が立ち上がる。

 

「いえ、一人で大丈夫ですから」

 

「にゃにを言ってひるのれふか! 万が一にょ事があったりゃ一大事でぇす」

 

 彼女は一体何の一大事を心配しているのだろうか。

 

「しょれに、暗い場所はこわひれすからわたひが付いて行きまひゅよ!」

 

「いや、そこまで子供じゃありませんし」

 

 もういよいよ呂律どころか言葉が怪しくなってきた早苗に北斗は苦笑いを浮かべるしかなかった。 

 

「ただトイレに行くだけですから、すぐに戻ってきます」

 

「で、でも」

 

「それに、早苗さんの身に何かあったら、神奈子さんと諏訪子さんに申し訳ありません」

 

 もう既に起きているような気がせんでもないが、まぁ足元がおぼつかない状態じゃろくに力も出せないだろう。

 

「むぅ……北斗しゃんがしょう仰るにゃら」

 

 不満げな表情を浮かべる早苗を宥めて、彼は食堂を出る。

 

 

 

「……」

 

 食堂を出て薄暗い廊下を咲夜に教えられたとおりに進む北斗は少しばかり表情が綻んでいる。

 

(なんていうか、やっぱり早苗さんと接していると楽しいな)

 

 さっきまでのやり取りを思い出しながら北斗は歩みを進める。まぁ酔っ払いと絡むのが楽しいと言うわけではないが。

 

(今まで人と話してこんなに楽しいって思えたのは、あの時のお姉さんと早苗さんぐらいかな)

 

 自身の記憶を振り返っても、本当に楽しかった会話があったのは、幼い頃に貴重な話し相手であったお姉さんと、そして早苗だけだった。

 

 特に早苗とは気の合う同年代の友人とあって、とても楽しい会話であった。

 

(それに、早苗さんと居ると……なんていうか、心が安らぐって言うか、心地よいって言うか)

 

「うーん」と静かに唸りながら首を傾げる。

 

 そう思えるのは、彼女が彼にとってそれだけ特別な存在であるという事だろう。

 

 

 ―――心から気を許せる人。

 

 

 ―――とても気の合う人。

 

 

 ――― 一緒に居ると心地が良い人。

 

 

 そして何より彼が早苗に惹かれているのは――――

 

 

 

 

 ――――初めて出会ったあの時と変わらない、眩しいほどの笑顔だ。

 

 

 あの時の事を思い出してから、彼の中で早苗に対する見方変わった。

 

 

 最初は気の合う程度の友人でしか見ていなかった。貴重な話し相手でしかなかった。

 

 

 だが、今は違う。

 

 

 早苗と一緒に居る時は、とても……そう、とても楽しい。

 

 

 そして、彼は早苗を見ていた。

 

 

(これが、好きになるって事なのかな……)

 

 北斗は首を傾げる。

 

 だが、ここまで来ても、彼がこの感情を理解することは出来ない。

 

 好きと言っても、果たしてそれがlikeな意味なのか。それともloveな意味なのか。その二つの意味がある。だが、その違いすら彼には理解できないのだ。

 

 

 誰かを好きになった事は無い。誰かに好かれた事も無い。当然愛した事も、愛された事も無い。

 

 

 あったのは不信感だけ(・・・・・)不信がられるだけだ(・・・・・・・・・)

 

 

 だが、そんな彼にも、少しずつ変化が現れているという事だろう。

 

 

 

「……?」

 

 しかし、北斗はさっきとは違う理由で首を傾げていた。

 

(何だろう。少し前から背中に視線を感じる)

 

 図書室から出た時からもそうだったが、なぜか背後から視線を感じるのだ。

 

 例えが失礼だが、吸血鬼が住む館である以上、そういった幽霊の類が居てもおかしくない、かもしれない。

 

 まぁ実際幽霊が住む館があるのだが。

 

 

 北斗は後ろを振り返るが、誰も居ない。

 

(うーん。やっぱり何か居るのか?)

 

 見えない物が見える体質であるが故に幽霊の有無の違いは分かる。 

 

 となると誰かが見ていると言う結論に至るのだ。

 

 でも誰も居ない以上確かめようが無い。もちろん角の陰か物陰に隠れている場合もあるが、今の彼にそんな余裕は無かった。

 

「っ! 急ごう」

 

 身体を震わせて北斗は急ぎ足でトイレへと急ぐ。

 

 

 

 彼が歩いた後の曲がり角の陰から、一対の瞳が北斗の姿を捉え、その際に色とりどりの宝石が揺れる。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「北斗しゃん、遅いですにぇ……」

 

 と、顔を赤くして左右に揺れる早苗は心配そうに北斗を待っている。

 

「あそこまで心配するなんて、相当彼に入れ込んでいるのね」

 

「そうね」

 

 そんな早苗を見ながらパチュリーとレミリアがワインを飲む。

 

「もし仮に彼の身に何かあれば、彼女の怒りを買うのは必須ね」

 

「えぇ……」

 

「そして残りの二柱が参戦するのも必至」

 

「……うん」

 

「更に彼の機関区に居候している悪魔も参戦、するかどうか分からないけど、可能性は高いわね」

 

「……」

 

「そんな戦力相手に、勝てる?」

 

「勝てるわけ無いじゃない馬鹿じゃないの」

 

 レミリアは頭を抱え込む。

 

「パチェのせいで心配になってきたじゃない」

 

「何でよ」

 

 パチュリーはムッとする。

 

「というか、フランは本当に大人しくしているのよね」

 

「そう言い聞かせたんでしょ?」

 

「それは、そうだけど」

 

 しかしちゃんと聞いてくれたという保障が無いので、レミリアは自信なさげだ。

 

(何もないといいんだけど)

 

 不安が過ぎり、彼女は息を呑む。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ふぅ……」

 

 スッキリした北斗は一息吐くと、トイレから出てくる。

 

(いやぁ予想以上に長かったな。お陰で危ない所だった)

 

 予想していたよりも廊下が長かったため、彼は途中から半ば走ってトイレに向かっていた。

 

 もう少し長かったら、少しまずかった。

 

 この年で漏らすなんて、完全に黒歴史確定ものである。

 

 

「さてと、戻りますか」

 

 と、北斗は元来た道へ歩みを進める。

 

「……」

 

 しかしまた背後から視線を感じて、歩みを止める。

 

「……」

 

 北斗は深呼吸をしてタイミングを見計らい、一気に後ろを振り向く。

 

 しかしそこには何も無く、少し離れた所に行き止まりがあったぐらいだ。

 

「……」

 

 北斗は少しホッとして前を向く。

 

 

「ばぁ!」

 

 振り向いた瞬間、逆さまの幼女が目の前に居た。

 

「うぉっ!?」

 

 当然彼は驚いて思わず後ろに飛び退く。

 

「アハハハッ! 驚いた驚いた!」

 

 幼女は笑顔を浮かべると、ぶら下がっている天井から床に降りる。

 

「……」

 

「お兄さん、驚いた?」

 

「あ、う、うん。驚いた……」

 

 幼女の質問に北斗は戸惑いながらも答え、幼女を見る。

 

 金色の髪を持ち、その髪を左側に纏めたサイドポニーにしており、頭にはナイトキャップに似た帽子をかぶっている。赤を基調とした服装を身に纏い、真紅の瞳を持っており、笑みを浮かべている口元から犬歯が見え隠れしているので、吸血鬼でありそうだ。

 そして背中には木の枝の様な骨格に色とりどりの宝石が光ってぶら下がっている、とても変わった翼を持っている。

 

「えぇと、君は?」

 

「私? 私、フランドール・スカーレット。みんなからフランって呼ばれてる」

 

「スカーレット? もしかしてレミリアさんの?」

 

「うん。私のお姉様だよ」

 

 と、幼女ことフランは笑みを浮かべながら答える。

 

(レミリアさんに妹さんが居たんだ。でも何で一言も言わなかったんだろう?)

 

 これまでの会話の中でレミリアはフランのことを言及しなかった。

 

 わざわざ言わなかった理由が分からず、首を傾げる。

 

(にしても、姉妹なのにこんなにも違いが出るものなのか?)

 

 北斗はフランの背中にぶら下がっている色とりどりの宝石を見る。

 

 レミリアは蝙蝠の羽なのに、なぜ妹のフランは宝石なのだろうか。

 

「ねぇ、お兄さん」

 

「な、なんだい?」

 

 するといつの間にか目と鼻の先まで近付いたフランに驚きながらも返事を返す。

 

「お兄さんって、外来人?」

 

「え? あ、あぁ、そうだけど」

 

「それなら、私と一緒に来てくれる?」

 

「それは、どうしてだい?」

 

 急な誘いに北斗は戸惑ってしまう。

 

「お兄さんなら、きっとあれが何なのか分かるんじゃないかなぁって」

 

「あれ?」

 

「うん。今まで見た事が無い物なの。外来人のお兄さんなら、分かるんじゃないかなぁって思ったの」

 

「外来人なら、か」

 

 北斗は興味のそそられる話だったが、しかし食堂で早苗を待たせていることもあったので、一応断りを入れておく。

 

「確かに気になるけど、すぐに戻らないといけないんだ」

 

「えぇ? どうして? すぐに終わるから、いいでしょ?」

 

「うーん。でもなぁ」

 

 しかし北斗が断っても、フランは彼の手を持って引っ張る。

 

「本当に見せたらすぐに終わるから、お願い!」

 

「……」

 

 どうもフランは諦めてくれそうになく、北斗は困ってしまう。

 

 どうにか断れないか悩んだが、子供は諦めが悪いというのはテレビで良く目にしていた。そしてたまにデパートの玩具売り場で駄々をこねる子供の姿を目撃していたり。

 

(こりゃ骨が折れそうだ)

 

 内心呟いていると、ふとフランの背中にぶら下がっている宝石の明るさがさっきより暗くなっているのに気付く。

 

「……?」

 

 一瞬なぜかと思ったが、同時に不安が過ぎる。

 

(長引かせたらマズイかもしれないな)

 

 こういう嫌な事にはとても敏感であったので、北斗は彼女の機嫌を損ねないように、こちらから折れることにした。

 

「分かったよ。でもすぐだからね」

 

「うん! それじゃぁ、付いて来て!」

 

 フランに引っ張られるように、北斗はその後に付いていく。

 

 

 

 

 




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