東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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第46駅 古道具屋への出発

 

 

 

 

 前回の会談と殆ど同じ面々に欠席していた人里の里長と自警団の団長を加えた話し合いは円滑に進んだ。

 

 

 話し合いの末、体験試乗会は火入れ式や守矢神社までの路線調査もあり、再来週に行われることになった。

 

 

 その他にも人里付近に駅や信号機、有線電話の本体と線等の必要な鉄道関連の施設や設備の設置などについての話し合いも行い、体験試乗会の結果次第で本格的に駅の建設が行われる予定だ。

 しかし里長と団長も鉄道事業に関しては乗り気であり、後日仮設の駅を人里の大工達に作らせる予定で、体験試乗会の成功時にはこの仮設の駅を本格的に作り直す予定だ。

 

 

 

 

「それでは、体験試乗会でまた」

 

 北斗は頭を下げると、話し合いの場になった長屋を早苗達と共に後にする。

 

「うまくいきましたね」

 

「えぇ。しかし、これからです」

 

「はい!」

 

 北斗と早苗の二人は短く言葉を交わす。

 

「人里で行われた鉄道に関する会談は成功を収め、鉄道の体験試乗会は再来週に実施。成功の暁には本格的に鉄道事業を開始。いいネタが入ったわね」

 

 その近くでははたてが携帯電話似のカメラを弄って新聞の記事にする為のネタを書いていく。どうみてもry

 

「さて、話し合いも終わった事ですし、博麗神社に向かいましょう」

 

「はい」

 

 二人はそう言うと、機関車へと戻ろうとした。

 

 

「ちょっと、待ってくれないか」

 

 と、長屋より慧音が出てくる。

 

「どうしました?」

 

「あぁ。君は今から博麗神社に向かうのか?」

 

「えぇ。そうですが」

 

「それなら一つ、頼みたい事があるんだ」

 

「……?」

 

「行きたい所があるから、途中まで君達の言う列車に乗せてもらっていいだろうか?」

 

「行きたい所ですか?」

 

 まさかの願いに彼は首を傾げる。

 

「あぁ。博麗神社に行くのなら、道中にあるはずだ。香霖堂というんだが」

 

「……香霖堂?」

 

「魔法の森の前にある、色んな物が置いている古道具屋です。外の世界から流れてきた物もあるんですよ」

 

「古道具屋ですか」

 

 首を傾げている北斗に早苗が説明して、彼は納得する。

 

「確か博麗神社までの線路の脇にあったはずですので、ゆっくりと行けば見つかると思います」

 

「分かりました。それで、その古道具屋で何か用事ですか?」

 

「あ、あぁ。ちょっとな」

 

 北斗がそう問うと、なぜか慧音はおどおどとした様子を見せる。

 

「……?」

 

 

「相変わらずあいつの事が気になるのか」

 

「っ!」

 

 と、長屋より妹紅がもんぺのポケットに両手を突っ込んだ状態で出てきながらそう言うと、ビクッと慧音の身体が震える。

 

「も、妹紅。それはだな」

 

 あわふたと落ち着かない慧音は言い訳を考えようとしていた。

 

「まぁ、あいつがどう思っているかは別だが」

 

「うぅ……」

 

 妹紅の言葉に慧音は頬を赤く染めて、言葉を詰まらせる。

 

「まぁ、何だ。慧音の言う通り送ってやってくれないか?」

 

「は、はぁ」

 

 彼は戸惑いながらも、声を漏らす。

 

 まぁなんやかんやあったが、その後列車に戻った北斗達は博麗神社を目指して出発する。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 人里から出発したD62 20号機が牽く列車は、さっきよりゆっくりとした速度で走っていた。

 

「……」

 

 運転室の窓から頭を出して前を見ている北斗は、加減弁のレバーの持ち手を握り締め、少しずつ動かしながら速度を調整する。

 

 線路の脇に香霖堂があるとの事で、見逃さないように目を凝らす。

 

 

 

 しばらくして木々の隙間から建造物らしきものを見つけて、北斗は加減弁を閉じつつブレーキをゆっくりと掛ける。

 

 ゆっくりと速度を落とすD62 20号機は木々が開けた場所の近くに停車する。

 

「これが香霖堂?」

 

 運転室の窓から魔法の森の前に立つ一軒の店を見る。

 

 和風な建造物の周りには、何やら見覚えのある物ばかりで、それらが乱雑に置かれている。

 

 機関助士妖精に留守を頼んで運転室を降りると、客車から早苗にはたて、にとり、慧音、妹紅が降りてくる。

 

「ここが香霖堂ですか?」

 

 北斗が聞くと、早苗は「はい」と答える。

 

「確かに、どこかで見たようなものばかりですね」

 

「ここの店主が蒐集家みたいなので、よく集めているみたいですよ」

 

「なるほど」

 

 北斗はそれらをどこで拾ってきたのか気になったが、話が長くなりそうだったので、あえて聞かなかった。

 

「ここまで送ってもらって、すまないな」

 

「いえ、ついででしたので、構いません。それに、少しこのお店が気になったので、同行させてもいいでしょうか?」

 

「そ、それは別に構わないが」

 

 戸惑いながらも慧音は彼の同行を許可して、香霖堂へと入る。

 

 店に入ると、中は古道具屋とあって、様々な物が置かれている。

 

(あー、何だかどこかで見たことあるような物が多いな……)

 

 北斗は棚に置かれている物を見て、既視感を覚える。中には外の世界にあったであろう猫の招き猫や、木彫りの熊の置物があった。

 

「おーい! 霖之助! 居るのか!」

 

 慧音は大きな声を上げて店の店主と思われる名前を叫ぶ。

 

 

「なんだい、また来たのかい、慧音? って、大所帯だね」

 

 と、店の奥より一人の男性が出てくる。

 

 銀髪か白髪のような色のショートボブに一本だけ跳ね上がったくせ毛がある。金色の瞳を持ち、眼鏡をかけており、20代前後の男性と思われる。

 服装は黒と青の左右非対称のツートンカラーをした洋服と和服の特徴を持っており、首には黒いチョーカーをつけている。

 

(何だか幻想郷に来てからというも、男の人に会うと何だか安心する)

 

 香霖堂の店主の姿を見た北斗は内心呟く。

 

 幻想郷に来てからというもの、男性を見る機会が少なくなり、実際この幻想郷で男性を見たのは、最初の人里での会談で人里の住人でちらほらと見たり、先ほどの話し合いの時に里長と自警団の団長ぐらいだ。

 

「何だ? 私が来たら何か不都合なのか?」

 

「別にそんな事は無いよ。ただ君には負担が多いんじゃないかって思ったから」

 

「べ、別に負担とは思っていないぞ」

 

 と、頬を赤く染めた慧音はそっぽを向く。

 

「ただ、お前の事だから私の助けが無いと楽に暮らせてないのだろうと思って、手伝ってやっているのだぞ」

 

 そう言いながら彼女はチラッと霖之助を見る。

 

「別に君の助けが無くても平穏に暮らせているんだけどね」

 

「う、煩い! 素直に人からの好意は受け取るものだぞ!」

 

 彼女はそう言うと、ずかずかと店の奥へと向かう。

 

「また片付けるのかい?」

 

「お前の事だ。どうせまた散らかっているのだろう?」

 

「僕はその方が落ち着くんだけどね」

 

「片付けられないやつの典型的な言い訳じゃないか!!」

 

 霖之助の言葉に慧音は叫ぶ。

 

「全く。これじゃお前の所に嫁に行く者の苦労が目に浮かぶな」

 

「別に僕は一人のままでいいんだけどね」

 

「……そんな事を言わなくてもいいじゃないか」

 

「ん?」

 

「何でもない」

 

 ボソッと呟く慧音に霖之助は首を傾げるも、彼女はそっぽを向く。

 

 

 

「……」

 

 二人のやり取りを見ていた北斗は何か言いたげに妹紅を無言で見る。

 

「いつもの事だ。気にしてやるな」

 

 妹紅は苦笑いを浮かべてそう言う。

 

(凄くラノベ染みたやり取りだ)

 

 北斗はそう思うのだった。

 

 経歴はアレな北斗だが、こういう人と人の関係に鈍感ではない。

 

 二人のやり取りを思い出していると、霖之助が北斗に気付く。

 

「おや、見慣れない顔が居るね」

 

「あぁ。お前も最近幻想郷に来た外来人の事は聞いた事があるだろう?」

 

「そういえば、文屋の新聞で見たことがあったね」

 

 霖之助はカウンターに置いている文々。新聞を手にする。文々。新聞を見たはたては「くっ」と思わず声を漏らす。

 

「初めまして。幻想機関区で区長をしています、霧島北斗と申します」

 

 北斗は略帽を脱いで自己紹介しつつ頭を下げる。

 

「この香霖堂の店主をしている、森近霖之助だよ」

 

 軽く自己紹介をして、霖之助は北斗を見る。

 

「それにしても、珍しい組み合わせだね。守矢の巫女さんは新聞で理由は分かるけど」

 

 霖之助は北斗の傍に居る早苗ににとり、はたて、妹紅の姿を見る。

 

「私は彼の密着取材をしているのよ」

 

「なるほど」

 

 はたての言葉に彼は納得したように頷く。

 

「私は慧音の付き添いだ」

 

「いつも大変だね」

 

「全くだ(慧音も大変だな)」

 

 妹紅はため息を付く。

 

「お店の品は自由に見ていいよ。気に入った物があったら買ってもいいけど、僕が気に入った物は売らないよ」

 

「は、はぁ」

 

 それで商売は大丈夫なのか、と北斗は心配する。

 

 

『こらぁ!! 霖之助!! ここ先週片付けたばかりじゃないかぁ!! 何でまた散らかっているんだぁっ!!』

 

 と、店の奥から慧音の怒号が轟く。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 その後北斗達はそれぞれ店の中を散策して品を見ていた。

 

(ホント外の世界の物が多いんだな)

 

 店の棚に乱雑に置かれた見覚えのある品々を見て内心呟く。

 

(でも、本当に商売をする気があるのだろうか)

 

 乱雑に置かれた品々に北斗は内心呟く。外の世界なら近寄り難いと思う。

 

(黒電話に手回し式の電話って、資料館ぐらいしか見ないぞ、これ)

 

 その乱雑に置かれた品々の中には、昔ながらの黒電話に、取っ手を回して電話をする昔の手回し式の電話など、様々な物があった。

 

(でも、電話の類は線を引けさえすれば、使えそうだな)

 

 鉄道を開通するなら、連絡手段は必須だ。さすがに伝書鳩でやり取りするのはあまりにも即応性が低い。その上伝書鳩が途中襲われる危険性があるので、使えそうに無い。

 だが、電話であれば、線を引いて電気を通して使える。実際機関区にある電話機を使う予定であるが、数があっても困ることは無い。

 

 まぁ古い分、そのままでは使えないだろうが、その際はにとり達河童に頼んだら修理してくれるだろう。

 資金はあるので、後で購入しようと考えた。

 

 それ以外にも、VHSのビデオデッキや、ビデオテープがいくつもあった。そのビデオテープはどれも希少な蒸気機関車関連の物が多かったので、北斗は後でビデオデッキとビデオテープも暇つぶし用に購入しようと考えるのだった。

 

 周りでは早苗が湯呑だったり、お皿だったりと、日常で使う品々を見ていたり、にとりは壊れた機械を手にマジマジと見ていたり、はたては古めかしいカメラや八ミリフィルムのカメラを見ていた。

 妹紅は店を出て外に置いている品々を見ている。

 

(今後使えそうな物が見つかりそうだな)

 

 北斗はそう思いながら、品々を見る。

 

 

 

 

 すると店の扉が勢いよく開かれる。

 

『っ!』

 

 その音に誰もが驚いて扉の方を見る。

 

 開かれた扉の先には、なぜか不機嫌そうな雰囲気の霊夢の姿があった。

 

「れ、霊夢さん? どうしたんですか?」

 

 早苗は不機嫌そうな霊夢に戸惑いながらも声を掛ける。

 

「外に蒸気機関車があったけど、ここに北斗さんは居る?」

 

「え?」

 

「俺がどうしました?」

 

 霊夢の問いに早苗が首を傾げていると、北斗が棚の向こうから出てくる。

 

「っ! あんたねぇ!!」

 

 すると霊夢はずかずかと北斗に近寄ると、彼の胸倉を掴む。

 

「れ、霊夢さん!? 何を!?」

 

 突然の彼女の行動に早苗は驚きの声を上げる。それを見たにとりとはたては目を見開く。

 

「ど、どうしたんですか!?」

 

「どうしたも何も無いわよ!! 神社の前になんてもんを置いていっているのよ!!」

 

「な、何の事ですか!?」

 

「惚けんじゃないわよ!! どうみたってあの黒い大きな物体は蒸気機関車じゃない!」

 

「え?」

 

 霊夢の発した言葉に、北斗は一瞬耳を疑う。

 

「れ、霊夢さん。とりあえず落ち着いてください。話を聞かないと分からないですよ」

 

 早苗は霊夢を宥めながらそう言うと、彼女は彼の胸倉から手を離す。

 

「ど、どういうことですか?」

 

「そのままよ。神社の前に蒸気機関車があったのよ。それも大きなのがね」

 

「……」

 

 霊夢から衝撃的な事実を聞かされて、北斗と早苗は驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 




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