東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

51 / 159
7月9日に大分の久大線でJR九州が所有している58654号機が走りましたね。
今回は一日限定でしたが、将来的には定期的に蒸気機関車を走らせる構想があるそうですね。
もし実現したら、どの機関車を走らせるのか楽しみです。
ネットには大分県内に静態保存されている機関車(これはC55 53号機が該当します。でも本当はC55 46号機みたいですが)を復元して走らせるか、JR西日本と協議して京都府内の静態保存機のどれかを譲渡してもらって整備し、走らせるとかの記事がありましたが、果たしてどうなるのやら。まぁネットの記事なので全部を鵜呑みにはしませんが。
今後の情報に期待ですね。


第50駅 火入れ式 C11 312

 

 

 

 

 時系列は下って、火入れ式当日。

 

 

 

 幻想機関区では朝早くから整備工場前では、作業妖精達と機関車の神霊達が会場設営を行って火入れ式の準備に取り掛かっていた。

 工場内でも火入れ式を行うC11 312号機の最終点検が行われている。

 

 そして居候の悪魔三人娘はもしもに備えて周囲を警戒している。

 

 

「いよいよですね」

 

「はい」

 

 その様子を北斗と早苗が見ていて、声を漏らす。 

 

「今日はよろしくお願いします、早苗さん」

 

「はい! 必ず成功させますよ!」

 

 早苗は気合を入れて返事をする。

 

「気合を入れ過ぎて空回りするんじゃないよ」

 

「全くだね」

 

 と、空から声がしてその方向を見ると、神奈子と諏訪子の二人が空から下りて来る。

 

「神奈子さんに諏訪子さん。今日はわざわざお越し頂いてありがとうございます」

 

 北斗は降りて来た二人に挨拶をして深々と頭を下げる。

 

「我々としても興味深い儀式だ。見学させてもらうよ」

 

「それと、早苗がヘマをやらかさないかをね」

 

「そ、そんな事無いですよ!」

 

 二人が各々に言って、諏訪子の言葉に早苗は慌てて返す。

 

「そういや、北斗君。早苗から話は聞いたよね?」

 

「はい。天狗側が守矢神社までの路線がある領域の通行を許可した話ですよね」

 

 北斗は早苗から聞いた話を思い出す。

 

「そうだよ。それで、何時ぐらいに石炭を取りに来れる? 毎日コツコツと作って溜めているから、結構あるよ」

 

 諏訪子は「ふふーん」と平らな胸を張る。

 

「そうですね。明日の火入れ式は午後からですので、朝早くから調査を兼ねて取りに行きます」

 

「分かったよ。待っているからね」

 

「はい」

 

 北斗は頷く。

 

 

 

 その後早苗は準備があると言って、神奈子と諏訪子と一緒に宿舎の方へと歩いていく。

 

 北斗は三人を見送った後、会場の見回りを行う。

 

 すると短く汽笛が工場から鳴ると、中からB20 15号機が整備を終えてピカピカに磨き上げられたC11 312号機を外へと運び出していた。

 

 B20 15号機はC11 312号機を工場から外に出して停止すると、作業妖精がB20 15号機とC11 312号機の連結を外し、B20 15号機が短く汽笛を鳴らして後退する。

 

 それを確認した北斗は見回りを続ける。

 

 

 少しして幻想機関区に北斗が招待した団体が到着する。

 

(最初はレミリアさん達か)

 

 最初に機関区に訪れたのは紅魔館のレミリア達であった。

 

 レミリアを筆頭に、その後ろに控えるように歩いているのは咲夜と椅子とパラソルを持っている美鈴。レミリアの隣にフラン、パチュリーに小悪魔のこあの五人であった。ちなみに他の小悪魔達は紅魔館に留守番である。

 

 レミリアとフランは吸血鬼なのに日光は大丈夫なのかというと、別に命に関わるようなものではないのでそれほど気にするものでは無いが、決して無害と言うわけでもない。

 なので、パチュリーによって日光を遮る魔法を使って二人の周りを透明の膜が覆っているので、日光は大丈夫なのだ。しかしそれでも完全に防いでいるわけでは無く、少しだけ身体能力が低下している。

 

「あっ、お兄様!」

 

 と、レミリアと話していたフランは北斗に気付くと、彼に向かって飛んで行って抱き付く。もちろんかなり手加減してである。じゃないと彼の身体がオープンゲット(真っ二つ)してしまう。

 

「フラン。元気そうだね」

 

「えへへ♪」

 

 北斗は抱き付いているフランの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに笑みを浮かべて、背中の色とりどりの宝石がぶら下がっている羽が嬉しそうに揺れ、宝石が輝く。

 

「……」

 

 その光景を後ろから見ていたレミリアは腕を組み、面白くなさそうに表情を顰める。

 

「面白くなさそうね、レミィ」

 

 そんな親友の姿を見てパチュリーが声を掛ける。

 

「別に……」

 

 親友に指摘されて、彼女は鼻を鳴らしてそっぽを向く。

 

 まぁ肉親の自分に向けたことがあまり無い笑顔を赤の他人、それも人間に向けられているのだ。彼女としては面白くないし、何より気に入らない。

 

 

「久しぶりね、北斗」

 

「お久しぶりです、レミリアさん」

 

 その後北斗はフランを連れてレミリアの元へと向かい、声を掛ける。

 

 いつまでも不貞腐れるわけにもいかず、レミリアは気持ちを切り替える。

 

「今日は火入れ式にお越し頂いてありがとうございます」

 

「折角招待してくれたのだから、行かないわけにもいかないわ。まぁ、興味深い行事だから、楽しみにしているわ」

 

「はい」

 

「あぁ、それと……咲夜」

 

「はい、お嬢様」

 

 すると、直後にはレミリアの手には一枚の紙があった。

 

「北斗。貴方に聞きたい事があるのだけど」

 

「……何でしょうか?」

 

「貴方、この数字に見覚えはあるかしら?」

 

 レミリアは手にしている紙を北斗に見せる。

 

 

 1 433 283 57 127 135

 4 133 5 260 06 D→C+28

 

 

「これは?」

 

 数字を見た北斗は、怪訝な表情を浮かべながらレミリアに問い返す。

 

「この前の夕食会のあった日に、夢で見たものよ」

 

「夢と言うと、レミリアさんの能力でですか?」

 

「えぇそうよ」

 

「……」

 

「それで、どうかしら?」

 

「そうですね……」

 

 北斗は再度紙に書かれた数字を見て首を傾げる。

 

(何の数字だこれ?)

 

 全く規則性が無い上に、最後の暗号じみた表記に至っては全く見当がつかない。

 

(本当何なん……ん?)

 

 数字を見ていると、ふとある事に気付く。

 

 それは、数字の中にある、57と127である。

 

(……そういや昨日見つけた機関車の車番号も、57と127だったな)

 

 数字の中の57と127は、C55の『57』号機とC59の『127』号機と同じであった。

 

(ひょっとして、これって……)

 

 そして北斗はとある仮説に辿り着く。

 

「どう? 何か心当たりがある?」

 

 彼の表情に変化があったからか、レミリアが声を掛ける。

 

「確証はありませんが、もしかしたら蒸気機関車のナンバーだと思います」

 

「蒸気機関車の?」

 

「えぇ。この57と127ですが、先日見つけた機関車の車番号と同じなんです」

 

「ふむ」

 

「つまり、この数字は今後現れる蒸気機関車の番号ってことかしら?」

 

 合間を見て、パチュリーが口を開く。

 

「多分そうだと思いますが、数字だけでは個体を識別するのは難しいです」

 

 なにせ一部を除いて多くの車輌が製造された蒸気機関車とあって、すぐに個体を識別するのは難しい。1とか4、5とか殆どの機関車に該当するのだから。

 

 しかし何も全てが分からないわけではなく、一部の数字には何となく心当たりがある。

 

「でも、最後のやつだけは全く見当が付きませんね」

 

 D→C+28など、全く意味が分からない。

 

「そう。でも、数字が蒸気機関車に関わっているとなると、最後のやつも蒸気機関車に関わっているんじゃないかしら?」

 

「だと思いますが……」

 

 北斗は静かに唸る。

 

 

「それで、北斗さん」

 

「何でしょうか?」

 

 その後会場の一角に美鈴が持ってきたパラソルと椅子を設置して咲夜がお茶の用意をしている中、パチュリーが北斗に声を掛ける。

 

「この間館の地下で見つけた機関車についてだけど」

 

「はい。結局どうやって地上に?」

 

 北斗は紅魔館の地下にあるマレー式のタンク型蒸気機関車4500形と比羅夫号こと7100形蒸気機関車を思い出す。

 

「最初は小さくして持ち出そうと思ったけど、元の大きさに戻せるか分からないわ」

 

「なるほど」

 

「だから、かなり魔力を使うことになるけど、地上まで穴を開けることにしたわ。その後は妖精達に地上まで押して貰うわ」

 

「まぁ、そうなりますよね」

 

 単純に手っ取り早い方法となると、それしかない。

 

「でも、それって結構大変じゃ」

 

「えぇ。さすがに私一人じゃ出来ないわ。あまり頼りたくなかったけど、アリスと魔理沙の二人に協力してもらうわ」

 

「あぁ、なるほど」

 

 渋々と言った様子で彼女がそう言うと、北斗は頷いて納得する。

 

「でも、それでも何日も掛けてじゃないと無理ね。作業もそうだけど、あの二人の都合を考えるとかなりの時間が掛かるわね」

 

「そうですか」

 

 まぁこちらとしても機関車の整備をしなければいけないので、すぐに来られても困るだけだ。

 

 その後しばらく二人は機関車の運び出す計画を話し合った。

 

 

 

 それからして霊夢が幻想機関区に到着し、早苗も準備を終えたので、遂に火入れ式が始まる。

 

 会場にはC11 312号機の整備に関わった妖精達に河童達の他に、レミリア達、更に取材に訪れたはたてに文の姿があった。

 

 まず北斗によって火入れ式の開式の辞が読まれ、次に早苗がC11 312号機に向けて安全を祈願して修祓を行い、火入れ式が進む。

 

 次に霊夢が紅白のリボンを巻いた松明に早苗に清められた火を付けてから、北斗に渡す。

 

 清められた火を灯した紅白の松明を受け取った北斗は二人に一礼し、C11 312号機の運転室に前に設置された階段を上って入る。

 

 運転室に入った北斗は焚口戸が開けられた火室に松明の火を差し込み、中に入れてある薪と油が染み込んだウエスに火を付ける。油を染み込ませたウエスはあっという間に火が付いて次第に薪へと火が移って火の勢いが強くなってくる。

 

 北斗は一旦運転室を出てから松明を作業妖精に渡すと、次に紅白のリボンが付けられ、石炭が積まれたスコップを持った霊夢の元へと向かうと、二人は一礼して北斗は霊夢から紅白リボン付きのスコップを受け取る。

 

 紅白リボン付きスコップを受け取った北斗は霊夢に一礼して再び運転室に戻り、炎が燃え盛る火室へとスコップに乗せられている石炭を放り込む。次に後ろの炭庫から石炭を掬い上げて火室へと放り込む。

 

 それを数回繰り返すことで、火室内の火力は上がり、ボイラー内の水を温めて沸騰させる。その際にC11 312号機の煙突からは煙が薄っすらと上がる。

 

 運転室では作業妖精達が蒸気圧計をチェックしており、少しずつ上がる圧力計を心配そうに見つめる。

 

「……」

 

 その傍で北斗も何事も無く終わる事を祈っている。

 

 それから二、三時間経過して、圧力計の針は走らせられる数値までに上がっていた。

 

 作業妖精達は機関車のボイラーや足回りを見て水漏れが無いか確認する。

 

 

 そして作業妖精が汽笛弁を引くロッドを引くと、C11 312号機の汽笛から蒸気が猛々しい音色と共に吹き出す。

 

 長く鳴らされる汽笛が、C11 312号機の復活を表しているようだ。

 

 

「無事に復活しましたね」

 

「はい。そうですね」

 

 煙突から煙を少量吐き出しているC11 312号機を見ながら北斗と早苗は言葉を交わす。

 

「あとはC12形とC56形ですね」

 

「えぇ。残り二輌も何事も無く終われば良いのですが」

 

 北斗は一抹の不安を抱きながら呟く。

 

 

 

 すると突然、C11 312号機の前に光が集まる。

 

『っ!?』

 

 この場に居た誰もがその光景に目を見開いて驚く。

 

「北斗さん!」

 

「このタイミングで!」

 

 北斗と早苗は思わず顔を合わせる。

 

 

 そんな中、光は人の形を作っていき、やがて光が晴れる。

 

「……」

 

 光の中から現れたのは一人の少女だった。

 

 紺色のナッパ服を身に纏い、整った顔つきにポニーテールにした黒髪に灰色っぽい黒の瞳をしている。背丈は葉月より拳一つ分高くスタイルが良い。そして左胸付近には他の蒸気機関車の神霊のように『C11 312』と書かれたナンバープレートを付けている。

 

「ここは……」

 

 少女は声を漏らして辺りを見渡すと、ふと後ろを振り返る。

 

「っ!?」

 

 そこにあったC11 312号機を見て、少女は目を見開く。

 

「……本当、だったんだ。あの人が言っていたことは」

 

 少女はゆっくりとC11 312号機に近付くと、連結器に手を置く。

 

「元の姿に、戻れたのね」

 

 すると少女の目に涙が溜まり、やがて流れ落ちる。

 

「良かった……本当に……」

 

 少女は両手で顔を覆い、泣きじゃくる。

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 そんな少女の姿に、北斗と早苗は戸惑っていた。

 

 今までの蒸気機関車の神霊達に見たことの無い様子だからだ。

 

「北斗さん、これって」

 

「今までに無い状況ですね」

 

「……どうします?」

 

「まぁ、声を掛けないわけにはいきませんし。行ってみます」

 

「お、お気をつけて」

 

 北斗は頷くと、少女の元へと向かう。

 

 

 

 

 




感想、質問、要望等がありましたら、お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。