東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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第05駅 一触即発

 

 

 

 

 

 多くの建造物を施設を持つ場所こと霧島機関区に着いた霊夢達は機関区の上を飛んでいた。

 

「しっかし、こう見るとホント別世界だな」

 

「全くね」

 

 機関区を見回しながら箒に跨って飛んでいる魔理沙の言葉に、肯定するように隣を飛んでいる霊夢が呟く。

 

「でも、所々妖精みたいなやつが居るな」

 

「そうですね」

 

 三人は機関区内で働いている妖精のような少女達を見つける。

 

「でも、あの妖精が真面目に働いているって、何か変な光景だな」

 

「た、確かに」

 

 早苗は苦笑いを浮かべる。

 

 幻想郷に棲む妖精は自由気ままな者が多く、真面目な性格をしている者はかなり少ない。故に機関区内で真面目に働いている彼女達は霊夢達からすれば違和感しかない。

 

「なぁ、早苗。ここがさっき言っていた場所か?」

 

「はい。と言っても、私が知っているよりも、古い感じですが」

 

「これでも古いのか?」

 

「そうですね。少なくとも、私が生まれるずっと前じゃないでしょうか」

 

「ふーん」

 

 妙に興奮した様子の早苗を無視して霊夢は前を見る。

 

「なぁ、早苗。何か妙にテンション高くないか?」

 

「そりゃ、あそこにある物を見たらテンションが高くなりますよ!」

 

 早苗は扇形機関庫を指差す。

 

 

 その後三人は機関庫の前に着地する。

 

「デカイな。こんなの見たことが無いぜ」

 

 魔理沙は箒を肩に担ぎ、機関庫に納められている機関車達を見て呟く。

 

「見た所機械とかいうやつじゃない? 河童達が見たら喜びそうね」

 

「だよな。いかにも河童達が好みそうな感じだな」

 

「まぁ、目の前で喜んでいるやつはいるけど」

 

「だな」

 

 苦笑いを浮かべる魔理沙の視線の先では、早苗が興奮して機関車達を見回していた。

 

「蒸気機関車! 蒸気機関車ですよ! しかもこんなに沢山!」

 

 息を荒くして頬を赤く染めた早苗が二人の方に向き直る。

 

「なんだ、その蒸気機関車って? あれも鉄道とかなのか?」

 

「はい! 蒸気機関車は外の世界ではかつて線路を走っていた鉄道で、蒸気で動くんですよ!」

 

「蒸気?」

 

「水を沸騰させた時に出る湯気ですよ」

 

「あんなんでこれが動くわけ?」

 

 霊夢は興味なさげに呟きながら機関車を見る。

 

 まぁ彼女からすればこんな大きな物が煙の様な湯気で動く姿を想像出来なかった。

 

「そうです! 蒸気を使ってあの蒸気機関車が動くんですよ!」

 

「へぇ。外の世界は進んでいるなぁ」

 

「と言うかあんたロボットとかが好きじゃなかったの?」

 

「もちろん一番はロボットですよ! でも蒸気機関車は二番目に好きなんですよ!」

 

「そ、そうなのか」

 

 常にテンションの高い早苗に魔理沙は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

「でも、時代の流れと共に蒸気機関車は時代遅れの代物になって、その数をどんどん減らしていったんですよね」

 

 するとさっきまでの興奮した様子から一変、早苗は真面目な表情を浮かべる。

 

「全ての蒸気機関車が引退してその多くが解体されましたが、一部は公園とか施設に、極一部で動く状態で保存されました。でも、その保存された機関車も時間の経過と共に解体されて、その数をどんどんと減らしていったんです」

 

「……」

 

「その上、蒸気機関車を扱う技術も、修理する為の技術も、失われつつあったんです」

 

 早苗は悲しそうな表情を浮かべて、機関車達を見る。

 

「この機関車達は、恐らく外の世界で忘れ去られた機関車だと思うんです」

 

「外の世界で忘れ去れた存在、か」

 

「……」

 

 

 

「ちょっと、貴方達!」

 

 と、後ろから声を掛けられて三人は後ろを振り返ると、転車台の前に『D51 603』と『D51 1086』のバッジを付けた少女達がスコップを手にして立っていた。

 

 彼女達はさっきまで妖精達を手伝って石炭の量を確認していたのだが、その時空から飛んできた霊夢達を見つけて追いかけていたのだ。

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止だよ!」

 

「今は機関車が走っていないからいいけど、走っていたら危ないよ!」

 

 二人は霊夢達に注意しつつ警戒していた。

 

 そりゃ空を飛んできた彼女達を警戒するなと言う方が無理な話だ。

 

「あんた達、ここの関係者?」

 

「そうだけど、だったら何?」

 

 霊夢は二人の警告を流して逆に問い掛けると、『D51 1086』のバッジを付けた少女はムッとしながらも質問に答える。

 

「なら、話は早いわ」

 

 霊夢は手にしている御祓い棒の先を彼女達に向ける。

 

「貴方達が起こした異変を解決しに来たわ。言っておくけど、時間を掛ける気は無いわよ」

 

 彼女がそう言うと、魔理沙は八角形の形をした『八卦炉』を手にし、早苗は御祓い棒を両手に持って構える。

 

「はぁ? 何で私達が異変なんか起こさないといけないのよ! 逆にこっちは異変ばかりで困ってんのよ!」

 

『D51 1086』のバッジを付けた少女は声を上げて抗議する。

 

「大体、何で私達が犯人なのよ!」

 

「幻想郷中に線路とかが現れているのよ。その線路がここと繋がっていたからよ」

 

「それ初耳なんですけど!?」

 

「た、確かに私達は線路の上でしか動けませんが、だからって決め付けるのは!」

 

「どっちにしたって、関係が無いとは言えないわよね」

 

「うっ」

 

「……」

 

 線路が関わっている以上全く関係がないとは言えず、何より自分達が知らないだけで関係があるかもしれないと思い、彼女達は言い返せなかった。

 

 

「霊夢さん。この人達って」

 

「えぇ。恐らく、人間じゃないわね」

 

 早苗は二人を見ながら小さい声で霊夢に問い掛けると、彼女はそう答える。

 

 巫女である二人は霊力もそうだが、人ならざる力を察することができる。

 

「胸にある数字からすると、後ろにある蒸気機関車と関係があるんじゃないかしら」

 

「それじゃぁ、あの二人は」

 

「おおよそあの姉妹と同じ九十九神ってところかしら」

 

 魔理沙の疑問を霊夢が答える。

 

「でも、それにしては霊力が強いですよ。しかも妖力も感じられませんし、妖怪の類でも無さそうですが」

 

「まぁ、似たような感じはあるけどね」

 

 早苗の言う通り、二人から強い霊力が発せられていた。普通の人間であればここまで強い霊力は無い。

 

 ならば古い物から生まれた九十九神の類かと思われたが、彼女達から妖怪が放つ妖力は感じ取れなかった。かと言って全くと言うわけではない。

 

 知り合いに九十九神の妖怪は居るのだが、彼女達と違って感じられる力が異なっている。

 

 では目の前に居る二人は何なのか……

 

『……』

 

 三人は息を呑み、身構える。

 

 

 すると大きな音が辺りに響き、五人は驚いて身体を震わせる。

 

「この汽笛は!」

 

『D51 603』のバッジを付けた少女が振り返ると、機関庫に向かって白煙を煙突から吐き出しながらB20 15号機が走って来ていた。

 

「何してんだお前ら!!」

 

 運転室の出入り口から身を乗り出した大きく出した『D51 465』のバッジを付けた少女が機関車が転車台の機関庫側の隅で停車と共にスコップを手に飛び出す。

 

 その後を『79602』のバッジを付けた少女が火室から灰を灰箱に落とす為に使う火かき棒を手にして降りてくる。

 

 最後に『B20 15』のバッジを付けた少女が片手スコップを手にして降りてくる。

 

「465号!」

 

「どうしてここに?」

 

「あの人間達が機関庫に向かって飛んでいったの見たから、追いかけてきたんだ」

 

「驚きのあまり運転室から落ちそうになっていたわね」

 

「ちょっ!? それを言うなよ!」

 

『79602』のバッジを付けた少女の言葉に『D51 465』のバッジを付けた少女は顔を赤くして彼女を睨む。

 

 

「……」

 

 彼女は顔を赤くしつつも咳払いをして、霊夢達を睨む。

 

「あんた達も仲間みたいね」

 

「だったらなんだ? まとめて退治しようっていうのか」

 

『D51 465』のバッジを付けた少女はスコップを両手に持って構え、他の少女達もそれぞれの得物を構える。

 

「えぇそうよ。あんた達を退治して異変を解決するのが、博麗の巫女の仕事よ」

 

「そうかい。博麗の巫女だかなんだか知らないが、簡単に倒せると思うなよ」

 

 闘争心剥き出しの彼女達と霊夢達の間に一触即発の雰囲気が漂う。

 

『っ!』

 

 そして戦いが行われようとした。

 

 

 ピピーッ!!

 

 

「ストップ!! ストップ!!」

 

 ホイッスルの音と共に大きな声がして両者は身体を震わせて動きを止める。

 

 彼女達は声がした方を見ると、そこには慌てた様子の北斗と同じく慌てた様子でホイッスルを吹いている『D51 241』のバッジを付けた少女の姿があった。

 

 機関区巡りをしていた二人は先ほどB20の汽笛の鳴らし方に違和感を覚え、音のした機関庫へと急いで向かい、そこで一触即発の雰囲気の彼女たちを目撃し、慌てて止めたのだ。

 

「一体何の騒ぎだ!」

 

 北斗はすぐに彼女達の元へと走り、『D51 465』のバッジを付けた少女を見る。

 

「区長。これはだな」

 

『D51 465』のバッジを付けた少女は霊夢達を見る。

 

「あの子達が機関区に勝手に入ってきて、そしたら私達が異変を起こしたとか言ってきて」

 

「……」

 

 北斗は霊夢達を見る。

 

「どうやら、お互いに勘違いしているみたいですね」

 

「……」

 

「こちらとしては面倒ごとはなるべく避けたいので、色々と気になっていることがあるでしょうが、まず話を聞いてくれないでしょうか」

 

「……」

 

 

 しばらく両者の間に沈黙が続いたが、その沈黙を破いたのは霊夢だった。

 

「まぁ、話を聞くだけなら聞いてあげるわ」

 

「お、おい。いいのか?」

 

 霊夢のその言葉に魔理沙は戸惑う。

 

「聞くだけなら別になんてことないわ。内容次第でやり方を変えるだけよ」

 

「あ、相変わらずですね」

 

 霊夢の言葉に早苗は苦笑いを浮かべる。

 

「それに、面倒事が省けるのなら私は歓迎よ」

 

「それで良いのか」

 

 魔理沙は呆れてため息を付く。

 

「では、立ち話もなんですし、こちらに」

 

 北斗は彼女達を最初に自分が居た建物に案内させる為に歩き出し、警戒心を出したまま彼女達は北斗の後に付いていく。

 

 霊夢達も警戒したまま彼らの後に付いて行く。

 

 

 

 

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