東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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少しずつ綺麗に整備されていたC11 312号機ですが、どうやら来年の11月頃に大井川鐵道周辺にオープン予定の施設に復元展示するようですね。
でもって真岡鉄道のC11 325号機はラストランを迎え、大宮に回送されましたね。東武鉄道でも他のC11形と一緒に元気に走ってほしいです。

今後の情報に期待です。


第65駅 幻想郷鉄道 開通

 

 

 

 時は過ぎていき、遂に迎えた鉄道開通式。

 

 

 

 太陽が昇り出して辺りが明るくなり始める中、幻想機関区に緊張が走っていた。

 

 

 機関庫では火が入れられたC57 135号機とD51 241号機が作業妖精達によって出発前の最終検査を受けている。

 

 火が入れられた蒸気機関車達は熱気を放ち、コンプレッサーがまるで心臓の鼓動を彷彿とさせるリズムで作動している。

 

 この日の為に、二輌共ボディーをピカピカに磨き上げられており、機関庫内を照らす白熱灯の光が反射して輝いている。

 

 煙突と給水暖め機の縁に真鍮製の帯が施され、ランボードと炭水車(テンダー)の縁に白いラインが入れられ、メインロッドに赤いラインが入れられる等、装飾が施されている。

 

「……」

 

 C57 135号機の足回りには(C57 135)が金槌を使って動輪やメインロッドを叩いて打音検査を行い、異常が無いかを調べている。今日はとても大事な一日とあって、検査は徹底されている。

 明日香(D51 241)は先に打音検査を終えており、その他の点検作業を終えて運転室(キャブ)にて待機している。

 

 機関庫内には多くの機関車がいるはずだが、今日は機関車を駅構内に展示させる為に全てが出場しているので、ガラーンとしている。

 

 (C57 135)が打音検査を終えた頃に、D51 241号機が汽笛を短く鳴らし、ゆっくりと機関庫から出庫して転車台に載る。

 

 転車台が動いてD51 241号機の方向を変えている中、(C57 135)運転室(キャブ)に乗り込むと、機関助士妖精が焚口戸を開けている火室へとスコップで掬った石炭を投炭していた。

 

「どう?」

 

「問題ありません。いつでもいけます」

 

 機関助士妖精からそう聞いて彼女は頷きながら機関士席に座ると、転車台で方向を変え終えたD51 241号機が汽笛を短く鳴らし、バック走行で転車台を降りて牽引する客車が置かれている線路へと向かう。

 

 少しして転車台がC57 135号機の方へと向くのを確認し、(C57 135)は「出庫!」と指差しながら言うと、ブレーキハンドルを動かしてブレーキを解き、汽笛を鳴らすペダルを踏んで短く鳴らし、加減弁ハンドルを引いて機関車を前進させ、転車台に機関車を載せる。

 

 転車台で方向を変えた後、(C57 135)は逆転ハンドルをメーターを見ながら回してギアを変え、汽笛を短く鳴らしてC57 135号機はゆっくりとD51 241号機が向かった線路へバック運転で向かう。

 

 

 C57 135号機はゆっくりと後退しつつ進んでいき、本線と繋がっている線路へと入線する。

 

 線路には既にスハ43五輌とスハフ42二輌、の計七輌の客車と連結したD51 241号機が待機している。

 

「……」

 

 (C57 135)はギリギリまで近付いて機関車を停車させると、連結器に異常が無いのを確認した作業妖精が緑旗を揚げたのを確認して彼女はブレーキを解き、ペダルを二回踏んで汽笛を二回短く鳴らし、加減弁ハンドルを引いてゆっくりと後退させる。

 

 C57 135号機はゆっくりと後退してD51 241号機へと近付いていき、連結手前で(C57 135)は加減弁を閉じてブレーキを掛ける。同時に二輌の連結器が組み合わさり、連結する。

 

「ふぅ……」

 

 (C57 135)は小さく息を吐くと、加減弁ハンドルの位置とブレーキがしっかり掛かっているのを確認してから席を立って運転室(キャブ)を降りる。

 

「いよいよですね」

 

「そうね」

 

 運転室(キャブ)から降りた所で、明日香(D51 241)(C57 135)に声を掛ける。

 

「訓練通りに、ちゃんと付いてくるのよ」

 

「はい! 訓練通りに! 今日は必ず成功させましょう!」

 

「えぇ。必ず成功させるわよ」

 

 (C57 135)は口角を上げてそう言う。

 

 

 その後時間になるまで、機関車と客車に異常が無いかの最終確認を行った。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わり、人里。その外側。

 

 

 人里に一番近い線路には、人里の大工達と作業妖精達によって建設された駅舎の姿があった。

 

 外の世界にあるような立派な物を作りたかったが、さすがに短期間で建造していたので、木造建築の小さな駅舎となった。

 しかし姿形は問題ではない。駅舎がそこにある。それだけでも十分意味があるのだ。

 

 それに駅舎の規模は今後拡張されていく予定である。

 

 

 幻想郷初の駅舎は上り線と下り線にそれぞれ乗客が客車に乗り降りするホームが作られているが、上り線から下り線を行き来する歩道橋は作れなかったので、それぞれのホームへの行き来はホームとホームの間に設けた横断歩道を歩いて行くしかない。

 

 その駅構内には幻想郷初の営業列車が通る上り線以外の列車の待避線として使われる中央線と下り線に、幻想機関区からやって来た蒸気機関車達が展示されていた、

 

 テンダー型では通常の除煙板(デフレクター)を装備したD51 465号機と切り詰め除煙板(デフレクター)を装備したD51 603号機、C55 57号機、C56 44号機、48633号機、C58 1号機等が展示されている。

 それと無火状態だが、D51 1086号機、D62 20号機、綺麗にされたC59 127号機と組み上げが終わった79602号機も回送されてここに展示されている。

 

 タンク型ではC10 17号機、C11 312号機、C12 208号機、B20 15号機、E10 5号機が展示されている。

 そして無火状態でC11 260号機、C12 06号機の姿もあった。

 

 初めて間近で見る蒸気機関車に多くの人里の住人は興味津々に見ており、特に初めて姿を見せたB20 15号機、C11 260号機にC12 06号機、C59 127号機は人気であった。

 その傍でそれぞれの神霊の少女達が里の人達に自身の機関車の解説をしている。

 

 そして一定の時間ごとに蒸気機関車達は汽笛をリズムよく鳴らす。一輌一輌気的の音色が違うとあって、見学者達は大きな音にびっくりするも興味津々に見ていた。

 特に特徴的な音色のC10 17号機とB20 15号機、三音室汽笛の48633号機は誰もが聞き入っていた。

 

 今回は安全性を考慮して見学は外見のみとなって、運転室(キャブ)内の見学は見送られている。

 

 それに加え、今日は結構冷え込んでいるとあって、熱を発している機関車の傍で暖を取っている者が多かった。

 

 

「凄い人ですね」

 

「そうですね」

 

 開通式の会場の一角で、北斗と早苗の二人は人の多さに思わず声を漏らす。

 

「こんなにも、鉄道を期待してくれている人達が居たんですね」

 

「それはそうですよ。今まで里の外は危険がいっぱいで、中々遠出が出来なかったみたいなので、それを可能にする鉄道に期待しているようです」

 

「そうですか……」

 

 集まった里の人達を見回して、北斗は声を漏らす。

 

「早苗さん。今日はよろしくお願いします」

 

「はい! 今後事故が起きないように、気合を入れて安全を祈ります!」

 

 気合を入れるように両手を握り締めながら、早苗は答える。

 

(気合を入れて祈るって……)

 

 北斗は内心静かに唸りながら、今日の予定を改めて思い出す。

 

 

 開通式は北斗が鉄道開業に協力してくれた者達への感謝の言葉を述べ、その後早苗が鉄道の安全を祈願する流れになっている。

 

 そして機関区からやって来る記念すべき営業列車第一号が線路を辿って幻想郷各地を巡るようになっている。

 

 

 

 その後北斗と早苗は鉄道開業に協力してくれた慧音達人里の住人に、少ししてやって来たレミリア達の元に赴いて感謝の言葉を述べた。

 

 

 

 そして時間が経過して10時。

 

 機関区からC57 135号機を先頭にD51 241号機の重連機関車が牽引する営業列車が上り線へと入ってきて、停車する。

 

 C57 135号機の前面には黒地に縁が金色で同色で『SL幻想号』と書かれたヘッドマークが取り付けられていた。

 

 列車がやって来たことで、開通式が行われた。

 

 

 北斗によって開通式開式の辞が述べられ、次に鉄道開業に協力してくれた里の人間やレミリア達、そして守矢神社に対して感謝の言葉を述べる。

 その様子を鉄道の開通式を聞きつけてやってきた文とはたての文屋天狗達がカメラに収めている。

 

 次に早苗が鉄道の安全を祈願して列車に、そして蒸気機関車の神霊達に祈りを捧げる。

 

 駅のホームに列車の乗客としてやってきた人里の住人達が入ってきて、順番に客車へと乗り込んでいく。その人数は客車七輌全てが埋まるほどであった。

 

 そして開通式も終盤を迎え、人里代表として里長と慧音が花束を明日香(D51 241)(C57 135)、機関助士妖精に贈呈し、最後に北斗や里長、慧音、早苗がテープカットを行い、同時にくす球が割れて『祝! 幻想郷鉄道開通!!』と書かれた垂れ幕が出てくる。

 

 

「……」

 

「……」

 

 二輌の蒸気機関車の煙突から煙が吐き出されて出発準備が整い、全ての客車の扉を閉め終えて安全を確認した駅員が発車を知らせるベルを鳴らし、北斗と早苗の二人は顔を見合わせて頷き合う。

 

「出発進行!!」

 

「出発進行!」

 

 北斗が右人差し指を伸ばして前へと向けながら号令を出すと、続いて早苗が同じように号令を出す。

 

 直後にC57 135号機の汽笛から猛々しい音と共に蒸気が噴き出し、それに続いてD51 241号機の汽笛からC57 135号機とは異なる音色と共に蒸気が噴き出す。

 

 汽笛を鳴らした二輌の蒸気機関車はゆっくりと進み出し、シリンダー付近の排出管から蒸気を吐き出しながら客車を牽いて進む。

 

 列車を見送るように火を入れている機関車達から汽笛が一斉に鳴らされ、二輌の蒸気機関車に牽かれた列車は速度を上げて走っていく。

 その沿線には列車に乗らなかった里の人間達が手を振るって見送っていた。

 その中に、人混みの中に紛れている飛鳥の姿があった。

 

 彼女の姿を見つけた北斗は手を振り、飛鳥も北斗の姿を見て手を振る。

 

 沿線にいる人達に応えるようにC57 135号機とD51 241号機は順番に汽笛を鳴らす。

 

 

 

 幻想郷の新たな歴史の始まりを告げるように、幻想の地に汽笛が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 日傘を差して遠くから響く蒸気機関車の汽笛を聞きながら、紫は白煙を吐いて走る蒸気機関車を見つめていた。

 

「始まりましたね」

 

「えぇ」

 

 後ろに控える藍の言葉に、紫は短く返す。

 

「これが幻想郷に良い結果を齎す事を、祈りましょう」

 

「……」

 

「それで」

 

 と、紫は後ろに振り返って藍を見る。

 

「やはり彼女が蒸気機関車の製造に関わっていたのかしら?」

 

「はい。残留していた魔力から元を辿ったところ、魔界に辿り着きました。その先は痕跡が掻き消されていましたが、途切れた先には彼女が居る城がありましたので、可能性は高いかと」

 

「……」

 

「どういたしますか?」

 

 顎に手を当てて考える紫に藍は問い掛ける。

 

「今は泳がせて置きましょう」

 

「よろしいので?」

 

「どうせ聞いたところで、彼女が答える筈が無いわ。それに証拠が固まっていないんじゃ、逆に濡れ衣を着せたといって難癖を付けてくるわよ」

 

「……」

 

「だから、今は良いのよ。今は、ね」

 

「はい」

 

 何かを含んだような言い方だったが、藍は特に気にせず返事をする。

 

「それと、霧島北斗に接触した者については?」

 

「申し訳ありません。うまいように足取りを消しているようで、人里を去った後の行方は掴めていません」

 

「そう……」

 

 紫はボソッと呟くと、ため息を付く。

 

「まぁ、そちらも泳がせて置きましょう。でも警戒は怠らないことね」

 

「はい」

 

 彼女はそう言うと、スキマを開いてその中に入る。藍もそれに続く。

 

(……幻想郷に異物を持ち込んだ罪は、償ってもらうわよ)

 

 紫は内心そう呟きながら、彼女達はスキマへと消えていく。

 

 

 

 

 




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