東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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今回は短め


第66駅 疑惑と目途と産声を上げる罐

 

 

 

 

 時系列は遡る事少し前。

 

 

 

「――――以上が報告となります」

 

「ごくろうだったわね、る~こと」

 

 博麗神社の境内にある家の縁側で、る~こと より報告を聞いた霊夢は手にしている湯呑を傍に置く。

 

「……」

 

 霊夢は写真を手にして目を細める。

 

 写真には北斗と早苗に、北斗と親しげに話している飛鳥の姿が写っていた。

 

 密かに尾行していた る~こと は会話の内容に耳を立てて、写真を撮っていた。

 

「親しげな雰囲気で会話をしていたので、御二人は昨日今日の付き合いということは無いと思われます」

 

「そのようね」

 

 写真からでも、二人の様子はとても親しげだ。

 

「会話の内容から、二人は外の世界に居た頃から既に交流があったと思われますが、これは……」

 

「……」

 

 る~ことの言葉を聞き、霊夢の表情が険しくなる。

 

(この女、まさか大結界を越して幻想郷と外の世界を行き来していたっていうの?)

 

 スキマ妖怪で無ければ出来ないような芸当に、霊夢は内心焦る。

 

 博麗大結界は非常に強固で、敏感な結界である。生半可な事では結界は破れないし、何より異常があると博麗の巫女である彼女に知らされるようになっている。

 

 何かあれば分からないはずが無い。気付かれずに博麗大結界を通り越せるのは八雲紫ぐらいしか出来ない。

 

 だが、この写真に写る女性はそれを行った可能性がある。

 

(この女、何者なのかしら)

 

 首をかしげて静かに唸る。

 

(と、いうか……)

 

 写真に写る二人を見て、霊夢はある事に気付く。

 

(よく似ているわね……この二人)

 

 二人の顔を見比べて、霊夢は北斗と飛鳥の二人の顔がよく似通っているのを感じる。

 

「そういえばこの二人、よく似ているわね」

 

「早苗様もそう仰っていました。ですが姉弟ではなく、ただ似ていただけだそうです」

 

「ただ似ていただけ、ねぇ……」

 

 霊夢は疑わしそうに声を漏らし、目を細める。

 

「……」

 

 

『なら、霧島北斗を見張ればいいさ。異変の首謀者は必ず彼の元に現れる』

 

 

 ふと、魅魔の言葉が彼女の脳裏に過ぎる。

 

「……」

 

 霊夢は写真を傍に置き、湯呑を手にしてお茶を飲む。

 

「どうしますか、ご主人様」

 

「……今はまだ様子見ね」

 

「良いのですか?」

 

 霊夢の意外な返答に る~こと は驚いたような表情を浮かべる。いつもならすぐに行動を起こすのにだ。

 

「まぁ、少し疑惑はあるだけで、証拠は無いわ。それにまだ動く時期じゃない」

 

「そうですか」

 

「と言っても、警戒に越した事はないわ。もしこの女性を人里で見たら、警戒しておきなさい」

 

「分かりました」

 

 る~こと は頭を下げて掃除をする為、箒を取りにその場を離れる。

 

「……」

 

 霊夢は浅く息を吐き、空を見上げる。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わって魔法の森。

 

 

 

「……」

 

 魔法の森の中で一際目立つ大きな木の高い位置にある枝に、魅魔は腰掛けて景色を眺めていた。

 

「線路がある以外は、ここは変わらないねぇ」

 

 そう呟きながら森を眺めていると、森の中に立つ一軒家を見つける。それと同時に彼女の脳裏に、思い出が過ぎる。

 

「久しぶりに会いたいもんだねぇ、魔理沙」

 

 懐かしそうに彼女は呟きながらかつての愛弟子を思い出して、微笑みを浮かべる。

 

「まぁ、会うにしてもまだその時じゃないけどね」

 

 そう呟くと、左手を広げて、そこから掌から禍々しい光を放つ発光体が現れる。

 

「相変わらず、機嫌が悪そうだね」

 

 すると発光体は点滅する。

 

「文句を言うんじゃ無いよ。そう簡単にあんたの新しい身体を用意出来るもんじゃないよ」

 

 魅魔がそう言うと、発光体の点滅の勢いが減る。

 

「手っ取り早くっていうなら、外の世界で今も走っているあんたの身体を使うって言うのもあるけど」

 

 魅魔がそう言うと、発光体の点滅が激しくなる。

 

「あれはもう自分じゃない、か。まぁ、そうかも知れないねぇ」

 

 そう呟くと彼女はため息を付く。

 

「まぁ、気長に待ってな。ちゃんと新しい身体は用意してやるさね」

 

 言い聞かせるように言うと、魅魔は発光体を仕舞う。

 

(やれやれ。あぁは言ったけど、新しいやつをどう手に入れるなんて、全く目処は立っていないんだよねぇ)

 

 約束した手前心苦しいものも、実を言うとあれを手に入れる為の当てが全く無かった。

 

(そもそも、外の世界に残っている同型機を持ってくるのは大変なんだよ……)

 

「根拠の無い約束をするもんじゃないねぇ」と呟きながら、彼女はマントを蝙蝠の翼に変換して飛び立つ。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わって魔界の創造神こと神綺の城。

 

 

 

 地下へと続く階段に、リズムよく足音が響く。

 

 

「……」

 

 右掌から球体状の光を出して明かりを照らしている神綺はゆっくりと階段を降りていき、最下層にある地下室の扉を開けて中に入る。

 

 部屋の中に入ると、彼女は球体状の光を前へと放り投げるように飛ばすと、光は分裂してそれぞれの灯台に着いて光を放ち、地下室を明るくする。

 

 明かりが灯されて地下室は薄暗いものも、部屋にしてはかなり広く、様々な物が置かれている。

 

「全く。飛鳥も中々大変な注文をするものね」

 

 ため息を付きながら彼女は地下室の奥へと歩いていく。

 

 様々な物が置かれており、中には巨大な試験管の様なカプセルに何らかの生物が浮かんでいる物もある。

 

 

 

 そして彼女が奥へと向かうと、そこには線路があり、その線路に巨大な物体が鎮座していた。

 

 

 漆黒のボディーを持つそれはとても大きく、彼女が見上げるほどの大きさだ。その巨大なボディーを支える物は大きな動輪であり、その大きさは神綺よりも大きい。

 

 

 

『C62形蒸気機関車』

 

 

 

 それが、この巨大な漆黒のボディーを持つ物の名前だ。

 

 

 D52形蒸気機関車のボイラーを流用した日本最大にして、狭軌規格の蒸気機関車の中で最速を誇る日本の蒸気機関車だ。

 

 そんな代物が三輌も並べられて鎮座している。

 

 後ろ二輌のC62形はほぼ同じ形状をしているが、先頭の車輌だけ一部形状が異なっている。

 

 さすがの神綺もこのような代物を三輌作るのは苦労したそうである。それにまだ完成していないのか、多くの部品が機関車の近くに並べられており、ナンバープレートも取り付けられていない。しかし先頭のC62形だけはほぼ完成している。

 

「……」

 

 彼女は先頭のC62形の傍にある物を見つめる。

 

「もうそろそろ……かしら」

 

 彼女が目を細める先には、試験管に似たカプセルがあった。液体で満ちたその中に何かが入っていた。

 

 

 

 カプセルの中に入っていたもの……それはこの場に居ないはずの、幻想郷に居るはずの人物に、瓜二つの者が眠っていた。

 

 

 

 




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