東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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今年最後の投稿になります。来年も本作をよろしくお願いします。


第8区 地底編
第67駅 新たなヒントと不穏な光景


 

 

 幻想郷で鉄道が開業してから数日が経過した。

 

 

 

 肌を切るような寒さとなり、本格的に冬を迎えた妖怪の山。

 

 その山中に、蒸気機関車の汽笛が鳴り響く。 

 

 

 山中にある線路を、軽快なドラフト音と共に列車が走り去っていく。

 

 C58 1号機が客車五輌を牽引する守矢神社行きの列車は自然が創り出した森のトンネルを抜け、山の中で開けた場所を通っていく。

 

 集煙装置付き煙突から灰色の煙を吐き出しながら傾斜した線路を力強く爆走する姿は、かつて山口線を走っていた時の姿を彷彿とさせる。

 

 しかし妖怪の山の路線はその山口線を連想させる物であり、勾配のある路線はC58 1号機にはキツイようで、きつそうに煙を吐き出して登っていた。

 普段なら単機でも登り切れるが、昨日に雨が降っていたので線路は雨で濡れて落ち葉が落ちているので、たまに線路上に落ちている水を含んだ落ち葉を踏んで空転を起こしていた。

 

 その為、今日の列車の最後尾には後押し機関車としてE10 5号機が連結されて、プッシュプル形式で列車を押していた。その姿もかつて倶利伽羅峠で列車の補機として活躍していた頃を彷彿とさせる。

 

 

 幻想郷鉄道の運行は基本的に貨物列車以外では博麗神社行きと、守矢神社行きの列車の二本となっている。たまに幻想郷を巡る列車も走らせる予定である。

 もちろん今後列車の行き先と運行数が増える可能性はある。

 

 それぞれの列車は一日に三回往復して運行されており、人里に暮らす人々を遠くにあるそれぞれの神社へと送っている。

 

 しかし様々な面から、列車はそれぞれ別々にして、日ごとに運行している。

 

 列車を日ごとに分けている理由としては、博麗神社と、守矢神社の参拝客が一堂に会した時に問題を起こさないように、万が一の為である。

 

 今日は守矢神社行きの列車が走る日である。

  

 平坦の道が多い博麗神社行きの路線は主にタンク型機関車が担う事が多いが、勾配が多い守矢神社行きの路線では勾配に強い機関車や、こうして二輌以上の重連編成で運行する。

 当然貨物列車も同様である。

 

 今日の守矢神社行きの列車牽引をC58 1号機が担当する事になり、補機としてE10 5号機が選ばれた。

 

 

 C58 1号機が汽笛を鳴らすと、それに応える様にE10 5号機も汽笛を鳴らして、列車は力強く登っていって守矢神社を目指す。

 

 

 

 

 所変わって人里から離れた森林付近の路線。

 

 

 線路上には48633号機が一定の間隔でコンプレッサーを動かして煙突横の排気管から蒸気を噴射して停車している。

 

 その後ろには石材を積み込んだ無蓋車三輌とソ80操重車一輌、そのソ80操重車のクレーンで線路脇に運ばれた丸太を長物車二輌に積み込む作業が行われている。

 

 48633号機が牽引する貨物列車が採石場から石を、森林から木を貨車に積んで人里へと運んでいる。到着後は里にある製材所に運ばれて加工される。

 

 ソ80操重車は本来事故を起こした車輌の復旧に使う物だが、こうして積荷の積載に使う事もある。

 

 丸太の積載を作業妖精と人里からやって来た作業員達が行っている間、48633号機の運転室(キャブ)内で卯月(48633)は作業の様子を見守り、機関助士妖精は焚口戸を開けた火室へと石炭を投炭して出発に備える為に蒸気を上げている。

 

 以前まで石や木は牛や馬を使って荷車に積んで運んでいたが、積載量が少ないので一度に多く運ぶ事が出来ず、その上道中妖怪や獣、または妖精に襲われて逃げる為に荷物を放棄せざるを得なかった。

 しかし貨物列車が運行されるようになってからは、大量に石材や木材の輸送が可能となり、道中妖怪に獣、妖精に襲われる事も無くなったのだ。

 

 

 そして丸太の積載が終えて、作業員全員が客車に乗り込むのを確認した作業妖精の車掌がホイッスルを吹いて緑色の旗を振るう。

 

 それを確認した卯月(48633)はブレーキハンドル手にしてブレーキを解き、天井からぶら下がっている紐を引いて三音室汽笛特有の高い音と共に蒸気が噴射される。

 

 加減弁ハンドルを引いて蒸気をピストンへと送り込むと、48633号機は煙突から灰色の煙を吐き出して特徴であるボックス動輪が線路をガッチリと掴んでゆっくりと進む。

 

 

 そして今日も、幻想郷に汽笛が鳴り響く。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わって紅魔館。

 

 

 

 真っ赤な内装の屋敷の一室で、北斗はレミリアからお茶会の招待を受けて、紅魔館に訪れていた。

 

 

「改めてだけど、鉄道開業おめでとう」

 

「ありがとうございます」

 

 レミリアから祝辞の言葉を送られて、北斗は頭を下げる。

 

「これから忙しくなりそうね」

 

「えぇ。毎日ではありませんが、これから忙しくなりますね」

 

「そう。まぁ、頑張りなさい」

 

 レミリアは背もたれにもたれかかる。

 

「こちらこそ、本日はお茶会に招待していただいて、ありがとうございます」

 

「お礼はいいわ。こっちも色々と話したい事があるしね」

 

 傍で咲夜がティーカップに紅茶を注いでいる中、北斗はレミリアにお礼を言い、彼女はどことなく引き攣っているような表情を浮かべている。

 

「話したい事ですか。それは一体?」

 

「今から話すけど……その前に」

 

 と、レミリアは引き攣った表情で北斗を見る。正確には北斗の前である。

 

「~♪」

 

 北斗の膝の上に座っているフランは上機嫌に鼻歌を謳っている。

 

「フラン。彼から降りなさい」

 

「えー? 何で?」

 

 レミリアから忠告されて、フランは首を傾げる。

 

「今から彼と話をするのよ。貴方が乗ったままだと邪魔なのよ」

 

「邪魔じゃないもん。そうでしょ、お兄様?」

 

 と、後ろを向いてフランは上目遣いで北斗を見る。

 

「レミリアさん。自分は気にしていないので、このままでも大丈夫です」

 

「ほら! お兄様はこう言っているんだから!」

 

「ほら見ろ!」と言わんばかりにレミリアを見るフランに、彼女がぐぅの音も出なかった。

 

(最近思うんだけど、日に日にフランが生意気になっているような気がするわ)

 

 内心呟きながら、彼女は苛立つ感情を抑える。

 

 姉妹の仲が和解してからと言うものも、フランは日に日に自我が強くなって来て、少し我が儘になり始めていた。

 

(……でもまぁ)

 

 苛立ちを抑えつつ、彼女は改めて前を見る。

 

 そこには北斗に懐いて、親しそうに会話を交わしているフランの姿があった。

 

 こんなに楽しそうにしているフランを見るのは、これまでならありえない事だった。これも北斗と出会ったお陰である。

 

 そして姉妹の仲も和解してからはたまに喧嘩するが、良くなりつつある。

 

(……悪くは無いわね)

 

 そんな親しげな光景にレミリアは微笑みを浮かべる。

 

 その傍で咲夜も微笑みを浮かべて見守っている。

 

「……まぁ、いいわ。別にフランに聞かれて困るような話でもないし」

 

 レミリアは紅茶が注がれたティーカップを手にして一口飲む。

 

「今日貴方を呼んだのは、聞きたい事があるからなのよ」

 

「聞きたい事、ですか?」

 

「えぇ。咲夜」

 

「はい、お嬢様」

 

 と、レミリアが彼女の名前を呼ぶと、咲夜は一瞬姿が消えると、次の瞬間にはテーブルに紙とインク壺に差し込まれた羽ペンが現れる。

 

「少し前に、また夢を見たのよ」

 

「夢と言うと、レミリアさんの能力でですか?」

 

「そうよ。以前は数字を見せたでしょ」

 

「えぇ。自分が蒸気機関車のナンバーだと予想したやつですね。まぁ結果的にその通りだったわけですが」

 

 北斗は以前レミリアに見せてもらった数字を思い出す。

 

 結果的に数字の殆どはこれまで新たに現れた蒸気機関車の数字に当てはまっていた。しかしまだ当て嵌まっていない数字もある。

 4と133、283。そしてD→C+28である。

 

「今回は、少し違うのよ」

 

「と、いうと?」

 

「こんな感じに数字と文字が並んだものに、見覚えはあるかしら?」

 

 レミリアはティーカップをソーサーに置いてから羽ペンを手にして、紙に文字を書いてそれを北斗に見せる。

 

 

 1C

 1C1

 1D2 

 1D

 2C1

 2C2

 

 

 それは数字とアルファベットが並んだもので、どれも規則性が無い。

 

「これは……」

 

「……?」

 

 北斗は文字列を見て、首を傾げる。それに吊られるようにフランも首を傾げる。

 

(この並び、どこかで見たような……)

 

 北斗は妙に引っ掛かった感じに「うーん」と静かに唸る。

 

(CにD……それに数字……)

 

 と、内心で何度も呟いていると、北斗はピンと来た。

 

「何か心当たりがあるようね」

 

 そんな北斗の様子に気付いたレミリアは、彼に声を掛ける。

 

「確証はありませんが、もしかしたらこれは蒸気機関車の足回りを示すものだと思います」

 

「蒸気機関車の、足回り?」

 

 フランは怪訝な表情を浮かべて振り返る。

 

「どういう事かしら?」

 

 レミリアもティーカップを手にしながら、怪訝な表情を浮かべる。

 

「蒸気機関車のボディーを支えているのは先輪と動輪、従輪と呼ばれる部品でして、その数ごとで数えられるんです」

 

 北斗は咲夜に紙とペンを要求すると、彼女は一瞬姿を消したかと思うと、彼の前にレミリアに渡した物と別の紙と羽ペンが現れる。

 

「先輪とは一番先頭にある小さい車輪で、動輪は蒸気機関車を走らせる一番大きな車輪で、従輪はその後ろにある小さな車輪です」

 

 彼は簡単な蒸気機関車の絵を描くと、レミリア達に説明する。

 

「先輪と従輪の数え方は同じで、軸数で数える場合があります」

 

「じゃぁ二つあれば、2で表記されるってことかしら?」

 

「そうです。もしくは両方から見た車輪の数で数える場合もあります。それで動輪の数え方ですが……」

 

 北斗はいくつか円を描く。

 

「動輪の数はアルファベットで表記されます。つまりアルファベットの順番で動輪の数を表しますので、二枚ならB、三枚ならC、四枚ならDとなります」

 

「へぇ……」

 

「ふーん」

 

 北斗の説明を聞いてフランは興味津々に、レミリアはそこそこの反応を示した。

 

 まぁこれらの表記の仕方は国鉄式の記号になるのだが。

 

「なので、これらの車軸配置はこうなります」

 

 北斗はレミリアが書いた数字とアルファベットの横に数を書く。

 

 

 1C  先輪一つ 動輪三つ 従輪無し モーガル

 1C1 先輪一つ 動輪三つ 従輪一つ プレーリー

 1D2 先輪一つ 動輪四つ 従輪二つ パークシャー

 1D  先輪一つ 動輪四つ 従輪無し コンソリデーション

 2C1 先輪一つ 動輪三つ 従輪二つ パシフィック

 2C2 先輪二つ 動輪三つ 従輪二つ ハドソン

 

 

 北斗の書いたレミリアの書いた数字とアルファベットの予想をレミリア達は納得しつつ、最後の名称っぽい文に首を傾げる。

 

「お兄様。最後のは何?」

 

「車軸配置の名称だよ。それぞれの数の組み合わせで名称が変わってくるんだ」

 

 フランの疑問に北斗は答える。

 

 蒸気機関車の先輪、動輪、従輪の数と組み合わせ方で名称が変わってくる。例えば有名なD51形は1D1のミカド、C57形は2C1のパシフィックである。

 

 それぞれの車輪の数次第で軸重が変わってくるので、数が多ければ多いほど大型の機関車でも地盤の緩い路線に入線できるようになる。

 

「現在機関区にある機関車で例えるなら、モーガルは8620形とC56形、プレーリーはC58形とC12形、パークシャーは自分のD62形、コンソリデーションは9600形、パシフィックはC55形とC57形、C59形。ハドソンだけはまだありません」

 

「へぇ。結構あるのね」

 

「はい。ここ以外では1D1のミカド、1C2のダブルエンダー。1E2のテキサスとかが機関区にあります」

 

 北斗は意気揚々とした様子で説明し、それを真剣に聞くフラン。少し呆れた様子で聞いているレミリアであった。

 

「まぁ、つまりはこれは蒸気機関車の足回りを意味しているってことなのね」

 

「そうですね。まぁ今回も予想通りにいくとは限りませんが」

 

「……」

 

 レミリアは短く息を吐くと、紅茶を飲み干してティーカップをソーサーごとテーブルに置く。

 

「で、話は変わるけど、館の地下で見つけた機関車はどうなったかしら?」

 

「修理は進んでいます。しかしさすがに今年中に復帰は無理ですね。来年の始め辺りで試運転が出来ると思いますが」

 

「そう……」

 

 レミリアは咲夜に紅茶を淹れてもらったティーカップを手にする。

 

 紅魔館の地下で発見した7100形蒸気機関車と4500形蒸気機関車の修復は進んでいるが、長い間放置されていたとあって修復は思うように進んでいない。

 

「まぁ、気長にして、それなりに楽しみにしてあげるわ」

 

 と、カリスマめいた雰囲気を醸し出して微笑みを浮かべる。

 

「って言っているけど、蒸気機関車が直るのを結構楽しみにしているんだよ、お姉様は」

 

「フラァァァァァァンッ!?!?」

 

 フランが北斗にそう教えると、レミリアはさっきのカリスマめいた雰囲気は何処へやら、顔を赤くして声を荒げた。

 

 その後スカーレット姉妹は言い争いへと発展し、その様子を咲夜と北斗は苦笑いを浮かべつつ、見守るのだった。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 その後様々な話をしてから、北斗は館を出る。

 

「では、自分はこれで」

 

「またお越しください。霧島様がお越しになれば、妹様もお喜びになります」

 

「はい。機会があれば、また」

 

 北斗はお見送りに来た咲夜に頭を下げる。

 

 

 咲夜から見送られながら北斗は門を出て線路の方へと向かう。

 

 そこにはD62 20号機が停車しており、その傍にはボイラーから発せられる熱で暖を取っている美鈴の姿があった。

 

「美鈴さん」

 

「あっ、北斗さん!」

 

 彼女は声がした方に振り向くと、手を振るう。

 

「機関車を見張っていてくれて、ありがとうございます」

 

「いえいえ。私も助かりましたよ。この時期の門番は本当に辛くて」

 

 苦笑いを浮かべる美鈴に、北斗は納得した。

 

 今日は結構冷え込んでおり、外で立ちっぱなしの美鈴からすれば相当辛い。

 

「それにしても、かなりの熱気が出ていますよね。これだと夏場は辛いでしょ?」

 

「えぇ。そうですね」

 

 北斗は苦笑いを浮かべる。夏場の蒸気機関車の運転室(キャブ)は本当につらい。

 

「では、これで自分は」

 

「帰りもお気をつけて」

 

 北斗は頭を下げて運転室(キャブ)へと乗り込む。運転室(キャブ)に入ると、機関助士妖精が注水機のバルブを回して水をボイラーへと送っていた。

 

「お帰りなさい、区長」

 

「いつでも行けるか?」

 

「はい」

 

「よし」

 

「あぁそうだ、区長。ボイラーで餅を焼いたので、良かったらどうぞ」

 

 と、機関助士妖精がボイラーの上から焼けた餅を手にして二つを差し出す。

 

 北斗を待っている間、ボイラーのバルブの根元辺りにアルミホイルを敷いて餅を焼いていたのだ。

 

 蒸気機関車のボイラー熱を使ってこうやって餅を焼く事は結構多かったそうな。

 

「悪いな」

 

 北斗は餅二つを受け取ると、運転室(キャブ)の出口に向かう。

 

「美鈴さん!! 良かったらこれ食べてください!」

 

 北斗が大声で彼女を呼び止めると、紅魔館の門へと向かう途中で美鈴は立ち止まる。彼女はゆっくりと歩いていたのでD62 20号機とはそんなに離れていない。

 

 北斗が勢いよく餅を美鈴へと投げると、彼女は飛んできた餅をキャッチする。

 

「お餅ですか! ありがとうございます!!」

 

 美鈴は頭を下げると、熱がりながらも餅を食べながら紅魔館へと戻る。

 

 北斗は餅を食べながら機関士席へと座る。

 

(今日の予定は終わり、明後日は河童の里へと行くか)

 

 北斗は餅を食べながら、今後の予定を思い出す。

 

 にとり達から設計図を渡して製造していたC11形とC12形が完成したと言う報告を受けて、明後日に河童の里に直接向かうことになった。直接行く理由は完成した蒸気機関車を機関区に回送させる為である。

 

 餅の残りを食べながら北斗は逆転機ハンドルのロックを外して回す。

 

(と言うか、蒸気機関車をマイカー感覚で動かしているのは世界広しといえど、俺だけなんだろうなぁ)

 

 そんな事を思いながら、北斗はブレーキハンドルを回してブレーキを解き、天井からぶら下がっているロッドを引いて汽笛を鳴らし、加減弁ハンドルを引いてD62 20号機を前進させて、幻想機関区を目指す。

 

 

 

「……」

 

 D62 20号機が走っていくのをバルコニーからレミリアが見つめていた。

 

(結局、言わず仕舞いだったわね……)

 

 彼女は内心呟くと、少しばかり後悔していた。

 

 実を言うと、彼女が能力で見たものは、あの機関車の足回りを表した記号だけではない。

 

 未来を示したと思われる光景を見ていた。

 

「……」

 

 レミリアは目を瞑り、自身が見た光景を思い出す。

 

 

 

 真っ白に染まった幻想郷……

 

 

 その真っ白に染まった幻想郷を駆け抜ける蒸気機関車……

 

 

 線路上を走る不穏なオーラを纏う黒い影……

 

 

 夜空を駆け抜ける光の筋……

 

 

 

 

 そして彼女が最後に見た、不可解な光景―――

 

 

 

 

 

 

 傷付いて倒れている北斗と、それを庇うように前に立つ早苗の姿。

 

 

 そして早苗と対峙している、御祓い棒と札を手にした霊夢の姿が映っていた。

 

 

 

 あまりにも不可解な光景に、レミリアは信じられなかった。

 

 明らかに霊夢が北斗に対して攻撃を行って、それを早苗が庇っている光景である。

 

 博麗の巫女である彼女が、人間を襲うなんて考えられない。ましても知り合いを襲うなんてもっとありえない。

 

 何かしらの問題があったのだろうが、一体何があったのか……

 

 考えられるなら北斗が何か問題を起こしたと思われるが、彼の性格を考えるならとても彼女に襲われる様な事をするとは思えない。

 

 だとするなら、何か問題に巻き込まれたと考えられるが、それ以上は見れなかった。

 

(もし彼の身に何かあったら、フランの暴走は免れない)

 

 だが、この光景がもし本当に起きてしまえば、彼を慕うフランが怒り狂うのは免れない。そうなれば沈静化しつつあるフランの中にある狂気が再び活性化しかねない。

 

(警戒しておかないといけないわね)

 

 レミリアはため息を付く。

 

 ようやく手にした平穏を失うわけにはいかない。らしくはないが、今後彼の動向を気にしないといけない。

 

 彼女は内心呟きながら、バルコニーを後にして館の中へと戻っていく。

 

 

 




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