東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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ここ最近蒸気機関車関連で暗雲が立ち込める話題ばかりですね。ここで一気に明るくなるような事は起きて欲しいです……


第74駅 誘拐犯の正体と黒幕

 

 

 早苗達が周囲を見回していると、彼女達に近くに一人の少女が下りて来る。

 

「文さん……」

 

 早苗が降りて来た少女こと射命丸文を見て声を漏らす。

 

「しかし酷いですねぇ。何の証拠無しにそんな事言ってしまうなんて」

 

 文はわざとらしく肩を落としながら呟く。

 

「場所が場所だからな。疑いの目が向けられるのは当たり前だろ。それにあいつに恨みを持つやつだって居るかもしれないしな」

 

「さすがに北斗さんに恨みを持つ天狗はいないですよ。意外かも知れませんが、結構鉄道に興味を持たれている方が多いんです」

 

「ホントかそれ?」

 

「本当ですよ。信用無いですねぇ」

 

「普段の行いが悪いんでしょ」

 

 と、霊夢が素っ気無く言うと、「あやや……」と文は苦笑いを浮かべる。

 

「で、何の用なの? こっちは忙しいんだけど」

 

「そうですよ。文さんの取材を受けている暇は―――」

 

「まぁまぁそう言わずに。大事な話ですので、聞いてください」

 

 文はそう言ってから、咳払いをして気持ちを整える。

 

「実はですね、先ほど守矢の二柱方が天魔様の元にいらっしゃって、北斗さんの捜索の協力要請がありました。それで守矢の風祝と博麗の巫女に協力するように天魔様からのお達しがありましてね」

 

「っ! 神奈子様と諏訪子様が!?」

 

 早苗は驚いたように声を上げる。

 

「守矢の二柱が直接要請に参ったとあって、天魔様も今回の一件を重要視しているみたいなんですよ」

 

「……」

 

「天魔様は私が同行するということで、妖怪の山の全域を移動することを許可しました」

 

 文がそう告げると、早苗の顔に希望が満ちる。

 

 最大の障害が取り払われた事で、北斗の捜索が容易になったのだから。

 

「協力ねぇ。どうせ私達が余計な事をしないかを監視しろってことなんでしょ」

 

「あやや。霊夢さんには分かってしまいますか」

 

 彼女()が言った内容の真意に気付いて霊夢が答えると、文は苦笑いを浮かべつつ頭の後ろに手を当てる。

 

 まぁ要は文は監視役として彼女達と同行する為に派遣されたのである。

 

「だろうな。あの天狗が簡単に許可するはずがないもんな」

 

 霊夢の答えを聞き、魔理沙が納得したように呟く。

 

「でも、仮に探しやすくなったといっても、肝心の誘拐犯が分からないんじゃ」

 

 と、妖夢が最もな問題を口にして、早苗達の表情が硬くなる。

 

 確かに北斗の捜索がしやすくなったが、肝心の誘拐犯の見当が付かない状況に変わりは無い。これでは探しようが無い。

 

「それについてですが、もしかしたら分かるかもしれません」

 

「えっ!?」

 

 と、文が衝撃発言をして、早苗は彼女()の方を見る。

 

「どういうことですか、文さん!?」

 

 彼女(早苗)は切羽詰った表情を浮かべて文の肩を掴む。

 

「お、落ち着いてください、早苗さん。もしかしたらって話ですよ」

 

 文は早苗を離すと、スカートのポケットより一枚の写真を取り出す。

 

「少し前に撮影しましてね。撮影した時は特に何も思っていなかったのですが、写真を現像した時もしかしたらと思いましてね」

 

 文は早苗に写真を見せると、霊夢と魔理沙、妖夢の三人も写真を覗き込む。

 

「……」

 

「これがそうだっていうの?」

 

「これじゃ分からないぞ」

 

 写真には確かに何者かが写っており、その何者かが何かを抱えているのが分かる。

 

 しかし遠くから撮影しているとあって、写真は若干不鮮明であった。

 

「それに、この黒い翼って」

 

「やっぱり鴉天狗じゃないか?」

 

 しかしその者は背中に黒い羽を持つ翼を持っており、その特徴は鴉天狗の背中にある黒い翼に一致する。

 

「あのですね。背中に黒い翼を持っているからっていって、鴉天狗だと決め付けるのは早計では?」

 

 さすがの文も一方的な決め付けに癪に障ったのか、ムッとしながらも反論する。

 

「それに、翼の大きさを見てください。全然違うじゃありませんか」

 

 文は写真に写る黒い翼を持つ者を指差しながら、自身の背中にある翼を比べさせる。

 

「確かに、大きさが違いますね」

 

 早苗は写真に写る翼と文の背中にある翼の大きさを見比べて違いを確認する。

 

「というより、本当にこれ北斗を抱えているのか?」

 

「だから言ったでしょう。もしかしたらって話ですよ。撮影した時は一瞬北斗さんに見えたので」

 

 彼女()はそう言っているものも、肝心の北斗が写真が不鮮明とあって、その姿を確認できなかった。

 

「さすがにこれじゃ分からないわね。肝心な所で役に立たないわね」

 

「さすがにそれは酷いですよ、霊夢さん……」

 

 容赦ない霊夢の言葉に文は肩を落とす。

 

「……」

 

 後一歩だというのに北斗の下へと辿り着けない煩わしさが早苗を襲い、不安が胸中に渦巻き、無意識の内に両手を握り締める。

 

(こうしている間にも、北斗さんは……北斗さんは……)

 

 

 

「やっぱりここに居たわね」

 

 と、文以外の声がして、声がした方を見ると一人の少女が神社の境内に下りて来る。

 

「はたてさん」

 

「おやおや、はたてではありませんか」

 

 早苗が少女ことはたてを見ると、文は飄々とした様子で彼女(はたて)を見ていた。はたては一瞬文を睨むも、すぐに早苗の方を見る。

 

「どうしてここに?」

 

「そりゃ、天魔様からのお達しがあったからね。北斗さんが山でいなくなったんでしょ?」

 

「はい」

 

「私も彼の捜索に協力するわ」

 

「はたてさん……」

 

「北斗さんは大事な新聞の購読者よ。それに、色々とお世話になったし、恩を返さないとね」

 

 はたては笑みを浮かべる。 

 

「引き篭もりがちなあなたにしては珍しいですね」

 

「あんたと違って私は購読者を大切にするから」

 

「私だって購読者を大切にしていますよ。あなたと違って面白い記事を最速でお届けしていますので」

 

「偽造ネタばかりじゃない。そんなんじゃ飽きられるわよ。そもそも無理矢理新聞を買わせているんでしょうが」

 

「あなたの既出の記事よりかはマシですよ。それに無理矢理とは人聞きの悪い」

 

「……」

 

「……」

 

 と、文とはたての二人は火花を散らす。同業者ゆえにお互い譲れないのだ。

 

「言い争いだったら後でやりなさい。こっちは忙しいっていうのに」

 

 霊夢は手を叩いて二人の争いを止める。文とはたては互いに視線を逸らして咳払いする。

 

 さすがに博麗の巫女の機嫌を損ねたくは無いようである。

 

「っ! そうだ、はたてさん」

 

「何?」

 

「はたてさんの能力で、北斗さんを誘拐した犯人を特定出来ませんか?」

 

「私ので?」

 

「はい!」

 

 早苗ははたての『念写をする程度の能力』を思い出して、彼女(はたて)に伝える。

 

 姫海棠はたての『念写をする程度の能力』とは、呼んで字の如く、彼女(はたて)が見たいと思った光景を念じることで、カメラに写真として現像するものだ。はたてはこの能力を使って花果子念報の記事を書いている。

 しかしこの能力は彼女(はたて)が対象を知っていることが前提なので、情報伝達速度は文に劣る。

 

「心配ないわ。ここに来る前に念写してきたから」

 

「本当ですか!」

 

「えぇ。犯人の姿もちゃんと写っているわ」

 

 と、はたてはポーチよりガラケー風なカメラを取り出し、画面にその念写した写真を表示させて早苗達に見せる。

 

「っ! これは!」

 

 画面に写し出された写真に、早苗は驚きの声を上げる。

 

「おぉ。文の写真と違って鮮明に写っているな」

 

「そうね」

 

 その写真を見て魔理沙と霊夢も賞賛の声を漏らす。するとはたてはドヤ顔を文に見せ付けると、彼女()はムッと顔を顰める。

 

「でも、これって……」

 

 早苗は写真を見て、思わず声を漏らす。

 

 確かに犯人によって抱えられて宙に浮いている北斗の姿が写し出されているが、その犯人が意外過ぎた。

 

「こいつ、地霊殿の地獄鴉じゃないか」

 

「あぁ居たわね。そんなやつ」

 

 魔理沙と霊夢はその犯人がかつて地底で異変を起こした地獄鴉こと霊烏路空であると確信する。ちなみにこいしの姿は写真に写っていない。

 

「でも、何だってあいつが北斗を誘拐したんだ? 全く接点が無いのに」

 

「誰かに唆されたのかしら」

 

 写真の写る状況に魔理沙は首をかしげ、霊夢は推測を立てる。

 

 空と北斗に接点は一切無いはずなのに、彼女()は彼を誘拐している。この謎な状況に霊夢達は首を傾げる。

 

 

「……こいしさんです」

 

「えっ?」

 

「……」

 

 ふと、早苗が口を開き、霊夢達が彼女を見る。

 

「きっと、こいしさんが空さんを使って、北斗さんを誘拐したんじゃないでしょうか」

 

「お、おい。それってどういう―――」

 

「なるほど。確かにそれなら合点がいくわね」

 

「えっ? どういうことなんだ?」

 

 霊夢は早苗の言いたい事が理解できて、魔理沙はますます分からなくなる。

 

 妖夢も状況が理解出来ず首をかしげ、文もいまいち分からず腕を組み、はたては思い当たる節があるのか頷いている。

 

「実は―――」

 

 

 少女説明中……

 

 

「あいつ、こいしにも懐かれていたのかよ……」

 

 早苗より事情を聞いた魔理沙は呆れた様子で声を漏らす。

 

「あやや。レミリアさんの妹に懐かれていると噂で聞いていましたが、まさかあの覚妖怪の妹さんからも懐かれていたなんて」

 

 文は興味深そうに聞いており、頭の中にあるネタ帳にこの件を書き加える。そして後で記事にしようと考える。

 

「そういや、この間の密着取材の時も彼に懐いていたわね」

 

 はたてはこの間の事を思い出して呟くと、カメラを操作してその時の写真を表示する。

 

「……ねぇ、早苗。霧島さんって、その……」

 

「あまり気にしないでください……」

 

 妖夢は聞きづらそうに早苗に問い掛けるも、複雑な表情を浮かべる彼女(早苗)にそれ以上聞けなかった。

 

「で、こいしのやつが空に北斗を誘拐するように唆したって事になる、のか?」

 

「考えられる限りじゃ、そうなるわね」

 

 魔理沙の予想を霊夢が肯定する。

 

「と、なれば、あいつが行く場所は決まっているわ」

 

「……地霊殿。つまり地底だな」

 

 魔理沙が目的地の場所を口にすると、はたてと文は顔を引き攣らせる。

 

「そうと分かれば、今すぐ行きましょう!」

 

「分かっているわ。る~こと」

 

「既に用意しています、ご主人様」

 

 霊夢は頷きながら る~こと に声を掛けると、既に彼女(る~こと)は霊夢が異変解決時に使う愛用の御祓い棒と札、封魔針を用意していた。

 

「完璧ね、る~こと」

 

「感謝の極みです」

 

 札と封魔針を袖の収納部に収めて、御祓い棒を手にしながら霊夢は る~こと にお礼を言い、彼女(る~こと)はお辞儀をする。

 

「それじゃ、あんた達。地底まで案内してもらうわよ」

 

「え、えぇ。分かっていますよ」

 

「……」

 

 文はどことなく乗り気ではなく、はたては明らかに気を落としている。

 

 どうやら二人には地底に行く事に躊躇う理由があるようである。

 

 

 

 

「あら。随分と大所帯じゃない」

 

『っ!?』

 

 と、この場の誰でもない声がして、その声を聴いた霊夢と魔理沙が目を見開いて驚き、声がした方を見る。

 

 そこには鳥居をバックに立つ幻月と夢月の夢幻姉妹が立っていた。

 

 

 

 




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