東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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第75駅 利害の一致

 

 

 

「お久しぶり。博麗の巫女。人間の魔法使い」

 

 夢月は霊夢と魔理沙の二人を見て声を掛ける。

 

「お、お前達、何でこんな所にいるんだ!?」

 

「……」

 

 魔理沙は警戒心を露にして、八卦炉を手にして身構える。

 

 霊夢も身構えて臨戦体勢を取る。

 

「私達がどこに居ようと勝手でしょ」

 

「……」

 

 あっけからんことを言う夢月に霊夢と魔理沙の二人はより一層警戒を強める。

 

「それにしても、しばらく見ない内に随分変わったわね」

 

「見た目はともかく、内面も変わっているわね」

 

『……』

 

「さすがに今戦ったとしても、あの時みたいに半殺しに出来そうにはないわね」

 

 夢月の衝撃的発言に霊夢と魔理沙以外は目を見開いて驚く。

 

 魔理沙もそうだが、あの博麗の巫女である霊夢が半殺しにあった事実に驚きを隠せなかった。

 

「あの、霊夢さん。魔理沙さん。あの方達とお知り合い、でしょうか?」

 

 文はおそるおそる霊夢に声を掛けつつ、内心警戒していた。

 

「知り合いって言うほどでもないわ。ある異変の解決の時にちょっと関わっただけよ」

 

「よく言うわね。勝手に私達の世界に土足で踏み込んでおいて」

 

「あんた達の世界から大量に悪霊が出たからよ。自分達の所の悪霊ぐらい管理しなさいよ」

 

「生憎それは私達の仕事じゃないの」

 

「……」

 

「で、何の用なのよ」

 

「あぁ、それは―――」

 

 

「幻月さん。夢月さん。どうしてここに?」

 

 と、早苗がおそるおそる二人に問い掛ける。

 

「何でって、そりゃ機関区に大井が慌てて帰って来て、区長がいなくなったって聞かされたからよ」

 

「えっ?」

 

 夢月の意外な答えに早苗は思わず声を漏らす。

 

「私達からしたら、区長の身に何かあったら住む場所に困るわけだし」

 

 幻月の返事に早苗はムッと表情を顰める。心配するところが北斗より自分達の住む場所であるのが気に入らなかった。

 

「さ、早苗。なんでそいつらの事知っているんだ?」

 

 と、戸惑いを隠せなかった魔理沙は早苗に問い掛ける。

 

 少なくともこの姉妹の事を知っているのは霊夢と魔理沙、あとはその時に関わった一部の者達だけだ。

 

 その時関わっていない、ましても幻想郷に居なかった早苗が幻月と夢月の二人を知るはずが無い。

 

「それは―――」

 

 早苗は霊夢と魔理沙の二人に事情を説明した。

 

 

 

 少女説明中……

 

 

 

「はぁっ!? 北斗のやつこいつらを機関区に泊まらせていたっていうのか!?」

 

 早苗より事情を聞いた魔理沙は驚きのあまり思わず声を上げる。

 

「雑用する事を条件に、しばらくの間泊まらせていると、北斗さんは言っていましたが……」

 

「……北斗のヤツ。いくらこいつらの事を知らないからって」

 

「北斗さん。あんたに似てとっても常識に囚われなくなってきたわね」

 

 魔理沙は呆れたため息を付き、霊夢も頭に手を当てて呆れ、思わず声を漏らす。

 

 まぁ夢幻姉妹のことを身を以って知っている二人からすれば呆れるのも無理は無い。

 

「あやや。北斗さんって命知らずなのか、肝が据わっているのか……分からなくなってきましたね」

 

「と言うより、天然な気がしてきたわ」

 

 文とはたての二人も呆れて思わずため息を付く。

 

「というか、お前達が真面目に働いているのが不思議でいっぱいなんだが」

 

「どこぞの巫女と違って私たちは図々しく無いの。泊まらせてもらっているんだから、対価は支払わないと」

 

 幻月は当たり前みたいに言っているものも、北斗が聞けば『お前は何を言っているんだ』と内心つっこんでいただろう。

 夢月も似たようなものだが、幻月は完全に押し掛けなのだから。

 

「まぁ、それはともかくとして。私達としては区長の身に何かがあると住む場所に困るの」

 

「それに、住む場所を提供してもらってるのだから、借りはちゃんと返すのよ」

 

「……」

 

「それを信じるか信じないかはそっちの勝手だけど、この言葉に嘘は無いわ」

 

「……」

 

 幻月と夢月の二人はそう言うものも、霊夢と魔理沙は未だに警戒を解かなかった。

 

 

「霊夢さん。魔理沙さん。今は信じて良いと思います」

 

 そんな中、二人に早苗は声を掛けた。

 

「早苗。こいつらは―――」

 

「分かっています。霊夢さんと魔理沙さんが警戒するのは。ですが今はこんな事に時間を費やしている場合じゃないんです」

 

「……」

 

「早苗……」

 

 早苗の真剣な表情を見て、霊夢と魔理沙は渋々と構えと警戒を解く。

 

「一応聞くけど、協力してくれると見て良いのね」

 

「えぇ。お互い目的は同じだからね」

 

「ここに来たのも、お互いすれ違いを起こさない為にだから」

 

 幻月と夢月の二人はそう答え、霊夢は深くため息を付く。

 

「……私が居る以上、あんた達もルールには従ってもらうわよ」

 

「もちろん。今は従うわよ」

 

「こっちとしても余計な問題を起こす気は無いから」

 

 二人の了承も得た事で、霊夢は御祓い棒を肩に担ぐ。

 

「んじゃ、行くわよ」

 

「……あぁ」

 

「はい!」

 

 魔理沙はどことなく納得行かない様子で、早苗は気合を入れて返事する。

 

 

「あんたも行くのよ、妖夢」

 

 と、霊夢はこっそり離れようとする妖夢に声を掛けて彼女(妖夢)を止める。

 

「い、いや、こんなに居たら私必要無いよね?」

 

 妖夢は辺りを見渡して霊夢に抗議する。

 

 夢幻姉妹が加わった事で総勢八名となっている。人数や実力的に考えても、一人抜けたところで問題にならないが……

 

「多く居て困る事はないわ。むしろさっさと片付けられるからこっちとしては助かるの」

 

「いやだからって……」

 

 と、逃げようとする妖夢の両脇をいつの間にか文とはたてが挟み込んで彼女(妖夢)の両腕を掴む。

 

「えっ?」

 

「いやぁすいませんね。霊夢さんに逆らうと後が怖いので」

 

「恨むならこの時に来てしまった自分を恨むのね」

 

 文とはたては悟った様子で妖夢の両腕をしっかり掴みながら、彼女(妖夢)にそう告げる。

 

 ちなみに二人は霊夢からアイコンタクトで妖夢を捕まえるように指示されていた。

 

「えっ、ちょっ!? 嘘でしょっ!?」

 

 妖夢は逃げようとするが、その前に文とはたては妖夢を捕まえたまま勢いよく飛び出した。

 

「うわぁぁぁぁん!! 幽々子様ぁぁぁぁぁぁぁ……!!」

 

 飛び出した直後に、妖夢の悲痛な叫びが辺りに木霊した。

 

「……無理矢理なのは変わらないのね」

 

「……」

 

 夢月がそう呟くと、霊夢は視線を逸らす。

 

「まぁ、良いわ。行くわよ、夢月」

 

「えぇ、姉さん」

 

 幻月と夢月はお互い顔を合わせて頷き合うと、勢いよく飛び出す。

 

 

「る~こと。留守を頼むわよ」

 

「畏まりました」

 

 霊夢は る~こと の返事を聞いて、魔理沙と早苗を見る。

 

「準備は良いわね?」

 

「あぁ」

 

「私は急いで神社に戻って必要な物を取りに行きます」

 

「ならさっさと行くわよ。今は時間が惜しいのだから」

 

「はい!」

 

「あぁ!」

 

 早苗は勢いよく飛び出すと、霊夢も後に続き、魔理沙も壁に立て掛けていた箒を魔法で手元に引き寄せて跨り、勢いよく飛び出す。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――― 

 

 

 

 所変わって地底。

 

 

 こいしと北斗、空の三人は地底の奥深くまで進んでおり、広まった場所で休憩していた。

 

「つまりこいしのお姉さんが地底を管理しているんだ」

 

「うん。だから地底のみんなはお姉ちゃんには逆らえないの」

 

 こいしと北斗は岩に腰掛けて顔を合わせて話している。

 

(実力から、というより種族的に恐れられているって所だろうな)

 

 こいしの話から北斗は彼女(こいし)の姉が恐れられている理由を推測する。

 

(覚妖怪は心を読む妖怪で、その性質的に他の妖怪や人間から忌み嫌われて、ここに追いやられたってこいしは言っていたな)

 

 さっき彼女(こいし)が話していた事を思い出しつつ、北斗は憶測を立てていく。

 

(妖怪からすれば、心を読まれるのは不快なんだろうな。まぁ人間でも心を読まれるのは気持ちいいもんじゃないだろうし)

 

 だからこそ地底の管理者として任されているのだろう、と北斗は推測を立てる。

 

「となると、こいしのお姉さんは怖い妖怪なのかい?」

 

「ううん。気難しくて引き篭りがちだけど、とっても優しいお姉ちゃんだよ」

 

「そっか……」

 

 喜色のある声で自慢するこいしを見て、北斗は小さく呟くと、目を細める。

 

「お兄さん?」

 

「……なんだい?」

 

「どうしたの? 寂しそうな顔をして」

 

「寂しい、か」

 

 北斗は呟くと、首を傾げているこいしを見る。

 

「いや、こいしが羨ましいなって思っただけだよ」

 

「羨ましい?」

 

「俺、肉親は居ないし、家族と呼べる人は居ないから、家族が居るこいしが羨ましいって思っただけだよ」

 

「……」

 

「あぁ、気にしないでくれ。ただの独り言だから」

 

 北斗は笑みを浮かべ、頭の後ろを掻く。

 

(お兄さん……)

 

 そんな悲愴的な彼の姿を見たこいしは、より一層彼に対する気持ちが強くなっていく。

 

 

「それはそうと、こいし」

 

「っ! 何?」

 

「地底に蒸気機関車があるって言っていたけど、今からそこに向かえるかい?」

 

「あー、それなんだけどね、すぐには行けないかな」

 

「どうして?」

 

 北斗は思わず首を傾げる。

 

「ほら、地底って地上と違って気の荒い妖怪とか、厄介な妖怪が多いから、このまま行くのは危ないかなって」

 

「このままじゃ危ないのかい?」

 

 北斗はこいしと空を見る。

 

 こいしはともかく、空は八咫烏の力を宿しているから、その力は相当なもののはず。それでも危ないとは……

 

「だって、多少話が分かると言っても、地底には鬼が多く居るし、さすがに危ないんだよ」

 

「鬼……」

 

 こいしの口から出た鬼と言う名前に、北斗の表情が強張る。

 

 考えてみれば河童と天狗が居るのだから、鬼だけが居ないなんて理由は無い。

 

 鬼と言えば凶暴な妖怪で知られる。頭に角の生えたガタイのいい筋肉モリモリのマッチョマンな大男の外観が彼の脳裏に過ぎる。

 

「だからね。お姉ちゃんにお兄さんを紹介して、お姉ちゃんに付いて来て貰うの。そうすれば、鬼でも手は出せないしね」

 

「なるほど」

 

 こいしの提案を聞いて、北斗は納得したように頷く。こいしの言う通りなら、彼女のお姉さんと一緒に行けば誰も手出しは出来ないだろう。

 

「それに、もう一人居れば、絶対誰も手出しは出来ないしね」

 

「もう一人?」

 

 北斗は首を傾げる。

 

「お兄さん。お姉ちゃんの所に行く前に、ちょっと寄る所があるんだけど、良いかな?」

 

「寄る所?」

 

「一緒に来てもらいたい妖怪が居るの。その妖怪が居れば、お姉ちゃんと合わさって誰も手出しは出来ないから」

 

「そんなに、凄い妖怪なのかい?」

 

「うん。とっても気難しい事を除けばね」

 

(地底の妖怪は気難しい性格なのが多いのか?)

 

 北斗は思わず内心呟く。

 

「お空。ちょっといい」

 

「はい。何でしょうか、こいし様?」

 

 と、こいしは空を呼び寄せると、耳打ちして何かを伝える。

 

「え? 良いんですか?」

 

「うん。大丈夫だから、お空は見ていてね」

 

「は、はい」

 

 こいしから何を聞いたのか、空は戸惑いを隠せない様子だった。

 

「じゃぁ、お兄さん。その妖怪の所に行こう」

 

「ここから近いのか?」

 

「うん。そう遠くないから、時間は掛からないよ」

 

「そうか。なら、行こうか」

 

「うん!」

 

 北斗とこいしは立ち上がり、三人は再び歩き出した。

 

 

 

 

 しかし北斗は知る由も無い。

 

 

 これから向かう場所は、地底の住人でも近寄らない、危険地帯であることを。

 

 

 そしてそこに住む者の危険性を……

 

 

 




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