東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

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何気に本作初の弾幕ごっこであります。


第82駅 弾幕ごっこ

 

 

 

「……」

 

 窓から外で繰り広げられている弾幕ごっこの光景に、北斗は見とれていた。

 

 色とりどりの様々な弾幕が薄暗い地底の空に輝いて広がり、その弾幕を潜り抜けるその光景は、正に芸術である。

 

「弾幕ごっこを見るのは初めてでしょうか?」

 

 隣に立ち、空と霊夢の戦いを見守りつつ、さとりが北斗に声を掛ける。

 

「えぇ。今まで見る機会が無かったのですが、こんなに綺麗なものなんですね」

 

 北斗は空中で繰り広げられる光景に見とれながらも、さとりの質問に答える。

 

「人間と妖怪の力の差を埋める為に、今の博麗の巫女である霊夢さんが発案した決闘方法です」

 

「霊夢さんが考えた、決闘方法ですか」

 

「当初はただ弾幕を展開させていたらしいですが、今ではスペルカードルールが追加されて、形ありで避けられる弾幕が出されるようになりました」

 

「……」

 

 北斗はさとりの説明を聞きながら弾幕を見ていると、空が何やら叫んだかと思ったら、様々な形の弾幕を放つ。

 

 霊夢は空の放つ弾幕の隙間を潜り抜けていくと、しばらくして空の放つ弾幕が消えて無くなる。その直後に霊夢は左手に持つ札を空に向けて投げ放ちながら接近する。

 

 空は札をかわすも、霊夢が目の前まで接近して御祓い棒を振るうも、空は右腕の柱で受け止める。

 

「弾幕はかわせない物は禁じられていますが、それ以外でしたら複雑な弾幕は許可されています」

 

「あのように接近戦は良いのですか?」

 

「まぁあれは自信のある方がするようなものですから。誰もがやるわけではないのですよ」

 

 さとりはそう告げると、空が霊夢を押し返して距離を取ると、再び弾幕を放つ。

 

「弾幕ごっこは弾幕の姿も評価の対象に入ります。いかに綺麗か、いかに芸術的かを」

 

「なるほど」

 

 話を聞きながら、弾幕ごっこのルールを理解する。純粋な力ではなく、自身のセンスが試される。

 

 激しいが、とても平和的な決闘方法だ。

 

「今の自分には、届かない場所ですね」

 

「……」

 

 

 ―――っ!!

 

 

「っ!?」

 

 すると轟音と共に、地霊殿が揺れる。

 

「これは!」

 

「……どうやら、ここでも始まったようですね」

 

 北斗は驚きの余り声を上げ、さとりは目を細める。

 

「北斗さん。あなたはしばらくここに居るようにお願いします。弾幕に巻き込まれれば、ただでは済みませんので」

 

「は、はい」

 

 さとりの忠告を聞き、北斗は頷く。

 

「……」

 

 北斗は扉の方を見て、目を細める。

 

 さとりも彼の心が見えたが、口にせず静かに状況の推移を見守る。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ちぃ!」

 

 魔理沙は弾幕をかわしながら大広間を飛ぶ。

 

「……」

 

 みとりは移動しながら弾幕を放ち、魔理沙を追い掛ける。

 

「やっぱりその能力は、厄介だな!」

 

 魔理沙は忌々しそうに叫ぶと、壁を蹴って無理矢理方向を変える(・・・・・・・・・・・・・・・)と、何やら不自然なやり方で方向を変える。

 

「相変わらず状況適応能力は高いようだな。『方向を変える事を禁止』にしているのに、地形を使って無理矢理向きを変えるとは」

 

 みとりはそう呟くと、魔理沙を見ながら目を細める。

 

「臨機応変に出来なきゃ、異変解決のプロは語れないぜ! 魔符『スターダストレヴァリエ』!!」

 

 魔理沙はスペルカードを発動させて、星状の弾幕を放つ。

 

 みとりは弾幕をかわし、柱を使って弾幕を防ぐ。

 

 魔理沙の弾幕が撃ち終えると、彼女は標識を振るい、能力を発動させる。

 

「くっ! またか!」

 

 すると魔理沙は視界がぼやけて、腕で目蓋を擦る。

 

「禁視『オプティカルブラインド』!」

 

 彼女はスペルカードを発動させ、弾幕を放つ。

 

「くぅ!」

 

 魔理沙はぼやける視界の中で何とか弾幕をかわすが、いくつもの光弾が彼女に掠る。

 

 しかし、それでも持ち前の感覚で彼女は光弾をかわす。

 

 弾幕を潜り抜けて、魔理沙の視界が回復する。

 

「やってくれたな! 魔符『ミルキーウェイ』!!」

 

 視界が回復した直後に魔理沙はスペルカードを発動させ、星状の光弾の弾幕を放つ。

 

 みとりは星状の光弾の弾幕の合間を潜り抜けるが、一発が彼女の肩を掠る。

 

「ちっ」

 

 小さく舌打ちをして、魔理沙を睨みつける。

 

「ぐぅっ!?」

 

 突然魔理沙の動きが遅くなり、速く飛ぼうにもそれ以上のスピードが出ない。

 

「お前に速く飛ぶ事を禁止した。閉符『地底の隅に独り棒立ち』!」

 

 みとりはスペルカードを発動させて、弾幕を放つ。

 

「相変わらず鬼畜だなぁっ!」

 

 魔理沙は声を荒げながらも、遅くなっても身体を反らしたり、箒を軸に回り、みとりの弾幕を何とかかわす。

 

「文句を言う割には動けるな」

 

「そりゃ一回戦えばな! それなりに分かるんだよ! 儀符『オーレリーズサン』!!」

 

 声を上げながらも彼女はスペルカードを発動し、周囲に色とりどりの球体が出現して、みとりに向けて球体から光弾が放たれる。

 

「ちっ!」

 

 みとりは舌打ちをして球体より放たれる光弾をかわしていき、彼女は一旦床に足を着けて蹴り、その反動で上がって光球をかわす。

 

「っ! 禁域『ノー・エントリー』!」

 

 彼女はこちらに向かってくる光弾の一つを標識で切り払い、スペルカードを発動する。

 

「っ! おわぁっ!?」

 

 すると魔理沙がさっきまでの遅さから突然加速する。

 

「お前は遅く飛ぶのを禁止した。この狭い空間では、さっきのように無理矢理方向は変えられないぞ」

 

「そう来るか! でも―――」

 

 と、魔理沙は急加速して箒の制御が難しくなるも、彼女は慌てもせず、むしろ不敵な笑みを浮かべる。

 

「それを、待っていたぜ!」

 

「なにっ?」

 

「彗星『ブレイジングスター』!!」

 

 スペルカードを発動させると同時に八卦炉を箒の先に取り付けると、八卦炉から虹色の光が放たれる。

 

「ぐぅっ!?」

 

 虹色の光が放たれた反動により、さっきよりも急加速して魔理沙は息が詰まりそうになるも、弾幕を放ちながらみとりに向かっていく。

 

「まさか!?」

 

「あぁ、そのまさかだぜぇっ!!」

 

 みとりが目を見開いて驚く中、魔理沙は急加速して彼女に向かって飛翔する。

 

 みとりはすぐに魔理沙の動きを止めようとするが、既に時既に遅い。能力を発動する暇も無く、みとりが猛スピードで迫る魔理沙を避けると、大量にばら撒かれる光弾の弾幕の直撃を受ける。

 

「ぐぅ!?」

 

 弾幕の直撃を受けたみとりは態勢を崩し、床に墜落する。

 

「やっべ!?」

 

 魔理沙は強引に止まろうとするも、さすがに速過ぎて止まり切れず、壁に正面から激突する。

 

「ぐべらっ!?」

 

 真正面から壁に激突した彼女は、少女らしからぬ声が漏れて、そのまま固まってしまう。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「くぅ!」

 

「……」

 

 一方地底の空では空が霊夢の放つ弾幕を回避しながら空を翔る。

 

 空はマントを翻してその場で宙返りをして、弾幕をかわそうとするも、いくつかが掠る。

 

「っ! まだぁ!」

 

 しかしまだ落とされた(ピチュッた)わけではないので、空は弾幕をかわし続ける。

 

「しぶといわね」

 

 弾幕を撃ち終えて、霊夢は一旦宙で止まると、空を睨む。

 

「こいし様から言われたんだ。お前の邪魔はさせないって!」

 

「……」

 

「お前なんかに負けない! 負けられないんだ!」

 

 息を荒げながらも彼女は霊夢を睨みつける。

 

「それにまだ、終わりじゃないんだ!」

 

 空は背中の翼を大きく広げ、胸元の赤い目が輝きを増すと、右腕の柱を天に掲げる。

 

「これで終わりにしてやる!! 焔星『十凶星』!!」

 

 彼女がスペルカードを発動させると、空の周りにエネルギー体が出現し、無数のエネルギーが放たれて弾幕を張る。

 

「……」

 

 霊夢は覆い尽くさんばかりに放たれる弾幕に慌てず、冷静に弾幕の隙間を縫う様に潜り抜ける。

 

「っ!」

 

 空は歯噛みしながらも弾幕を張り続ける。

 

 しかし霊夢には弾幕のどこに抜け道の隙間があるのかが分かっているかのように、迷いなく進んで行く。

 

 いくつもの異変を解決してきた彼女からすれば、弾幕は恐れるようなことではない。ましても一度戦った事のある相手の弾幕だ。避けられない理由は無い。

 

 

 そして空の弾幕は撃ち終わって、弾幕が消えると、霊夢の姿が無かった。

 

「っ! あいつは!」

 

 空は周囲を見渡して、見失った霊夢の姿を探す。

 

 

「終わったわね。なら、こっちの番よ」

 

「っ!」

 

 上から声がして空は見上げると、霊夢の姿があった。

 

 目を瞑る霊夢は右手の指に札を挟み、左腕を交差させて目をカッと開くと、札から霊力が溢れ出す。

 

「っ!! 神霊『夢想封印』!!」

 

 彼女が高らかとスペルカードを発動させると、色とりどりの大きな光弾が放たれる。

 

「っ!」

 

 空は向かってくる光弾を回避するも、動きが鈍っているとあって必死である。

 

 しかしある程度かわし続け、次の光弾を回避するが、その直後に左右より光弾が迫る。

 

「っ!?」

 

 かわした直後とあって、彼女は回避する事が出来ず、そのまま光弾の直撃を受ける。

 

 

 

 

「人符『現世斬』!!」

 

 妖夢はスペルカード発動と共に弾幕を放ち、そして目に見えない速さで剣を振るう。

 

 一瞬にしてゾンビフェアリーの向こう側へ姿を現すと、ゾンビフェアリー達が一瞬にして倒されて(ピチュって)いく。

 

「……」

 

 深く息を吸って、ゆっくりと息を吐き出すと、妖夢は手にしている楼観剣と白桜剣を血振りをするように振るうと、背中に背負う鞘に剣を収める。

 

「またつまらぬものを切ってしまった……」キリッ!

 

 と、彼女は某怪盗三世の仲間の一人の剣士みたいな事を呟くと、どこへ向けてはドヤ顔を決める。

 

 

「うわぁぁぁぁぁん!! また負けたぁぁぁぁ!! ごめんなさぁぁい、こいし様あぁぁぁぁぁ!!」

 

 と、弾幕ごっこに負けて地面に仰向けに倒れる空が大きな声を上げて泣き出す。

 

「やれやれ。さっきまでの威勢はどこに行ったのよ」

 

 霊夢は呆れ気味に中庭に下りると、妖夢がやってくる。

 

「これで全部かな?」

 

「そうであって欲しいわね」

 

 妖夢にそう答えながら霊夢は周囲を見渡す。

 

 多く居たゾンビフェアリーは妖夢によって全滅されており、増援の気配はない。

 

「これ以上面倒はごめんよ。増援が来る前にさっさと行くわよ」

 

「うん!」

 

 霊夢と妖夢は地霊殿へと向かう。

 

 

 

 ―――ッ!!

 

 

 

『っ!』

 

 突然爆発音がして、二人は空を見上げる。

 

 地霊殿の屋根が吹き飛んでおり、そこから二人の人影が出てくる。

 

「っ! 早苗!」

 

 その内の一人が早苗であり、妖夢が思わず声を上げる。

 

「もう一人は、さとりの妹ね」

 

 霊夢はもう片方の人影がこいしである事に気付く。

 

 二人は弾幕を放ち、互いの弾幕をかわしていく。

 

「行くわよ。今なら中は手薄よ」

 

「っ! うん!」

 

 妖夢が頷くのを確認して、霊夢は妖夢と共に地霊殿へと入る。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「お、おぉ……い、ててぇ……。やっぱり狭い所でやるもんじゃないな」

 

 顔を真っ赤にして壁から離れる魔理沙は、顔を押さえながらぼやく。

 

 主に身体の前面であるものも、身体中に痛みがあったが、彼女は衝突寸前に魔法を使って衝撃を分散させたことで、この程度で済んでいた。

 

「……」

 

 鼻から鼻血が出てくるも、彼女は腕で血を拭って周りを見ると、辛うじて無事な箒と、煙を上げている八卦炉が床に落ちている。

 

「あぁ、こりゃひでぇ。こーりん所に持って行きづらいなぁ」

 

 見た目より状態の悪い八卦炉を見て彼女は製作者の苦虫を噛んだような顔を想像して呟き、収納状態にして手に持ったまま、床に倒れているみとりの元へと向かう。

 

「随分と無茶をするな、お前」

 

 みとりは頭を上げて魔理沙を見る。

 

「無茶をするのは人間の十八番だぜ」

 

 魔理沙はニッと笑みを浮かべる。

 

「……」

 

 そんな彼女に呆れてか、みとりはため息をつく。

 

「まぁ、半ば博打だったけどな。お前が自分の能力に過信していることが前提だったし」

 

「……最初からそれが狙いか」

 

「あぁ。あの時は散々苦しめられたからな」

 

「……」

 

 みとりは短く息を吐くと、頭を下げてステンドグラスの天井を見上げる。

 

「で、北斗のヤツは奥に居るんだな?」

 

「あぁ。今頃覚妖怪の姉の方と話しをしているだろう。何を話しているかは知らないが」

 

「そうか」

 

 魔理沙は聞きたいことを聞いてから、床に落ちている箒を拾い、肩に担ぐ。

 

「……一ついいか?」

 

「なんだ? 足止めのつもりなら無駄だぞ」

 

「別に足止めする理由は無い。一つだけ、疑問がある」

 

「……」

 

「あの人間は……霧島北斗は、どんなやつだ?」

 

「あ? 何だってそんな事を」

 

「……まぁ、ちょっとした疑問だ」

 

 みとりは顔を左へと逸らす。

 

「ただ、あの巫女はやつを必死になって助けようとしている。あの覚妖怪の妹も、あいつに執着している」

 

「……」

 

「そんな魅力が、あの男にあるのか?」

 

「……」

 

 みとりの質問に、魔理沙は静かに唸りながら首を傾げ、傾げた首を戻して口を開く。

 

「さぁな。私は早苗ほどよく一緒に北斗と居るわけじゃないし、あんまり知らないな」

 

 魔理沙は帽子の上から頭を掻く。

 

「ただ、私が言える事は、あいつは良いヤツだってことだ」

 

「……良いヤツ、か」

 

 彼女がボソッと呟く。

 

「これで満足か?」

 

「……」

 

 みとりはゆっくりと顔を魔理沙に向ける。

 

「満足な答えとは言えないが……まぁ、何となく理解した」

 

「そうかよ」

 

 魔理沙はため息を付き、肩を竦める。

 

 

 ―――ッ!!

 

 

「おっとっ!」

 

 と、轟音が地霊殿の中に響き、魔理沙は思わず前のめりになりそうになるも、何とか堪える。

 

「今のは!」

 

「……向こうも始めたか」

 

「っ! 早苗か!」

 

 みとりが思わず声を漏らすと、魔理沙は彼女を見る。

 

 

「魔理沙!」

 

 と、地霊殿の蹴破られた入り口から霊夢と妖夢が入って来る。

 

「霊夢! 妖夢!」

 

 二人の姿を確認した魔理沙はすぐに二人と合流する。

 

「霊夢! 外から何か見えたか?」

 

「早苗がこいしと戦っているわ。屋根を吹っ飛ばしてね」

 

「やっぱりさっきのは」

 

 魔理沙は奥の方を見る。

 

「ともかく、さっさと行くわよ。手薄な今なら」

 

「あぁ!」

 

「うん!」

 

 霊夢と魔理沙、妖夢は頷き合うと、地霊殿の奥へと向かう。

 

 

 

「……」

 

 三人が奥へと向かった後、みとりはゆっくりと上半身を起こして、右膝を上げて右肘を置く。

 

 ステンドグラスの床に叩きつけられた事で、破片が肌のあちこちを切っていたが、妖怪の血が流れているとあってもう傷口が治り出している。

 

「……また人間に負けた、か」

 

 みとりは深くため息を付く。

 

 あの時も、あの魔法使いに負けた。ただの人間と、自身の能力もあって高を括っていたが、それでも負けた。

 

 今回は本気で戦いに挑んだ。たが、心のどこかで慢心していたとあって、結果的に負けた。

 

「……まだ私は、あの時のまま、何も変わっていない」

 

 ふと、彼女は右手を広げて、掌を見つめる。

 

「……」

 

 そして霊夢達の目的を思い出し、ふと北斗の姿が脳裏を過ぎる。

 

「あの人間の為に、あそこまで必死に戦う、か」

 

 そう呟くと、みとりは右手を握り締めると「はぁ……」と深々とため息を付く。

 

「……霧島、北斗」

 

 彼女は初めて会った時、間近から北斗を見て自分と似たものを感じたのを思い出し、彼の名前を口にする。

 

「……」

 

 みとりは何も言わず俯き、そのまましばらく座り続けた。

 

 




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