東方鉄道録‐幻想の地に汽笛は鳴り響く‐   作:日本武尊

90 / 159
次章に移る前に、最近不足気味だった蒸気機関車成分マシマシの回であります。


第89駅 石炭輸送列車

 

 

 

 

 まだ夜が明けない辺りが真っ暗な幻想郷。

 

 

 

 幻想機関区の扇形機関庫に薄っすらと明かりが灯され、作業員の妖精達がそれぞれの蒸気機関車に対して整備、清掃、調整等、各々の作業をしている。

 

 その中で火が落とされているD51 241号機に火入れ作業が行われていた。

 

 D51 241号機のフロント部には除雪板(スノープラウ)が取り付けられており、冬支度が施されている。

 

 隣に停車して火が入っているD51 1086号機のボイラーよりパイプを伸ばし、D51 241号機のボイラーと繋げて温かい蒸気を送り込む。

 

 作業員の妖精が運転室(キャブ)の扉を開けて着火用の木材を中へと運び込み、焚口戸を開けて火室へ木材を放り込んでいく。

 

 運び込んだ木材を火室へと入れ終えると、次に作業員の妖精は足回りの稼動部に潤滑油を挿した際に余分な油を拭き取った時に使った布切れを何枚も火室内へと放り込む。

 

 油が染み込んだ布切れを放り込むと、次に隣のD51 1086号機の運転室(キャブ)に乗り込み、スコップに石炭と油が染み込んだ布切れを載せ、焚口戸を開けて火が灯っている火室にスコップを突っ込んで石炭と布切れに火をつけると、スコップを抜き取りすぐに運転室(キャブ)を降りてD51 241号機の運転室(キャブ)に乗り込む。

 

 作業員の妖精はそのまま燃えている石炭と布切れが載っているスコップを火室へと入れると、中に入れた油が染み込んだ布切れに火をつけて、ある程度火が広がるとスコップに載せている石炭を放り込む。

 

 火の勢いを強くする為に細かい木片や油の染み込んだ布切れを放り込み、火室内の火力を上げていく。

 

 木片や布切れを入れ続けてから少しして火室内は燃え上がり、そのタイミングで作業員の妖精は炭水車(テンダー)から石炭をスコップで掬うと火室へと投炭を始める。

 

 

 火室への石炭の投炭だが、実は決まった位置と順番があり、適当に石炭を放り込むだけではうまく火力が上がらず、火室内で不完全燃焼を起こしてしまう要因となってしまう。

 

 その為、罐焚きのうまい人と下手な人では同じ個体の機関車でも動きが違ってくるのだ。

 

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 

 それから火入れを行って三時間以上が経過した。

 

 

 辺りは明るくなり始めて、D51 241号機のボイラーから熱が発せられていた。

 

 コンプレッサーがまるで心臓の鼓動の如く一定のリズムで作動して、まるで生きているかの様な存在感を醸し出している。

 

 火室内は燃え盛っており、作業員の妖精と交代した機関助士の妖精が投炭作業を行っており、数回ほど投炭を行うと注水バルブを捻ってボイラーに水を送り込み、蒸気圧を確認してから各バルブを捻って各所へ蒸気を送り込む。

 

 D51 241号機の足回りでは明日香(D51 241)が金槌を手にして、部品を軽く叩いて打音検査を行い、異常が無いかを確認している。異常があると音が変わってくるので、すぐに分かる。

 

 連結器も開閉を行って異常が無いかを確認をして、彼女は金槌を工具箱に戻し、運転室(キャブ)へ乗り込む。

 

「調子はどう?」

 

「ばっちりです」

 

「そう」

 

 機関助士の妖精の報告を聞き、明日香(D51 241)は機関士席に座り、ブレーキハンドルを動かしてブレーキがちゃんと動いているかを確認する。

 

「……」

 

 明日香(D51 241)は窓から顔を出し、前方と後方を確認して、作業員の妖精が転車台の安全を確認して緑の旗を上げる。

 

 旗が上がったのを確認して「出庫!」と号令を掛けてブレーキを解き、天井から下がっている汽笛を鳴らすロッドを短く引いて汽笛を短く鳴らし、加減弁ハンドルを引く。

 

 D51 241号機はゆっくりと進んでピストン付近の排気管から蒸気を吐き出しながら機関庫を出ると、ゆっくりと転車台へと載り、中央で停車する。

 

 D51 241号機を載せた転車台はゆっくりと回転して機関車の向きを変える。

 

 機関車の向きと線路の位置を変えて転車台が止まると、明日香(D51 241)は前方と後方を確認してから汽笛を短く鳴らし、機関車を前進させる。

 

 

 いくつもの分岐点を越して、一旦石炭と水を補給してから本線へと入ると、そこには弥生(B20 15)のB20 15号機と幻想郷で初めて作られた河童製造のC11 382号機とC12 294号機の三輌が『セラ1形』石炭車十二輌を運んで連結させて置いていた。

 

「……」

 

 明日香(D51 241)は逆転機を回してギアをバックに入れると、作業員の妖精が緑の旗を揚げたのを確認して汽笛を短く鳴らし、加減弁ハンドルを引いてゆっくりと機関車を後退させる。

 

 ゆっくりと機関車を後退させて石炭車の前で一旦停車させる。

 

 作業員の妖精が石炭車と炭水車(テンダー)の連結器を確認してちゃんと開いているか、異常が無いかを確認して妖精はホイッスルを吹きながら緑の旗を揚げる。

 

 旗が揚がったのを確認した明日香(D51 241)は汽笛を短く二回鳴らして、加減弁ハンドルを引いて機関車を後退させる。

 

「……」

 

 明日香(D51 241)は機関車を後退させて、作業員の妖精が赤い旗を振ったのを確認して加減弁を閉じてブレーキを掛けると、石炭車と炭水車(テンダー)の連結器が組み合わさって連結する。

 

「はぁ……」

 

 彼女は安堵の息を吐くと、逆転機のハンドルを回してギアを前進にしてからハンドルの凸凹に合わせてロックを掛けて、機関士席から立ち上がって北海道で活躍していた機関車の多くに見られた密閉型の運転室(キャブ)の扉を開けて、周りを見る。

 

 隣ではB20 15号機が汽笛を鳴らして別の車両の移動をしながらD51 241号機の横を通っていく。

 

 

 

 しばらくして出発時刻になり、明日香(D51 241)運転室(キャブ)に戻って機関士席に座ると、懐中時計の時刻を確認して運転表の横にある置き場に置く。

 

 隣では機関助士の妖精がスコップに石炭を載せて床にあるペダルを踏んで焚口戸を開け、火室へと石炭を投げ入れる。

 

 投炭を数回繰り返して機関助士の妖精はスコップを道具置きに戻す。

 

「……」

 

 明日香(D51 241)はゴーグルを着けて目を覆い、その時が来るまで加減弁ハンドルを握って待ち続ける。

 

 

 そして出発時刻となり、線路上の安全も確認されたので、腕木式の信号機の腕木が下りて赤から青へと変わる。

 

「出発進行!!」

 

「出発進行!」

 

 明日香(D51 241)は出発の号令を掛けると機関助士の妖精も復唱し、彼女はブレーキを解いて汽笛を鳴らすロッドを引いて汽笛を鳴らし、加減弁ハンドルを引く。

 

 D51 241号機はピストン付近の排気管から蒸気を出しながら、石炭車十二輌を牽いてゆっくりと前進する。

 

 次第に速度が上がっていき、D51 241号機の特徴であるギースル・エジェクタの煙突から灰色の煙が吐き出される。

 

 D51 241号機が牽く列車は幻想機関区を後にして、守矢神社にある石炭集積所へと向かう。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 幻想機関区から出発した列車は幻想郷の平野に敷かれた線路を走り、ドラフト音を奏でながらD51 241号機は持ち前のパワーを発揮して突き進む。

 

「……」

 

 明日香(D51 241)は速度計を見て加減弁ハンドルを少し引き、逆転機のハンドルのロックを外して回し、メーターを見ながらギアを一段上げ、ハンドルにロックを掛ける。

 

 機関助士の妖精がスコップに石炭を乗せて床のペダルを踏み、焚口戸を開けて火室へ石炭を決められた場所に投げ入れ、床のペダルから足を離すと焚口戸が閉じる。

 

 決められた位置へと火室へ投炭を数回繰り返し、スコップを道具置きに置いて、各所へと蒸気を送るバルブを捻って蒸気を送る。

 

「……」

 

 彼女は標識を見てそろそろ分岐点が近いのを確認する。

 

 列車は魔法の森前にある分岐点へと差し掛かり、転轍機の向きは魔法の森方面へと向いている。列車はそのまま魔法の森方面へと入る。

 

 明日香(D51 241)は天井から下がっているロッドを引いて汽笛を鳴らし、列車の接近を知らせる。

 

 魔法の森の中に敷かれた線路の上を列車が走っていき、リズム良くジョイント音が奏でられる。

 

 道中列車の見学に来た者達が手を振っていたので、明日香(D51 241)は汽笛を鳴らして応えた。

 

 

 しばらく魔法の森に敷かれた線路を通って、列車は河童の里近くまでやってくる。

 

 川の傍の沿線を通っていくと、線路から少し離れた場所で河童達が列車に向けて手を振っていた。

 

 明日香(D51 241)は河童達に応えるようにロッドを引いて汽笛を鳴らす。

 

「そろそろ勾配ですよ!」

 

 彼女がそう言うと、機関助士の妖精は頷いてスコップを手にして投炭作業を行う。

 

 

 明日香(D51 241)の言う通り、この先は妖怪の山に入る。妖怪の山は勾配が長い上に多く、線路のコンディション次第ではD51形牽引の列車でも補助機関車が必要になる。

 

 今回は前日薄い雨が降ったので、そこまで線路の状態は悪くないが、場合によっては空転の可能性がある。

 

 だが、明日香(D51 241)には、このくらいの勾配は何てことは無い。

 

 何せ彼女がかつて外の世界で走っていた区間は勾配が多く、その上季節によっては多くの雪が積もるような場所だ。勾配を走るのは彼女にとって慣れているのだ。

 

「……」

 

 明日香(D51 241)は気を引き締め、加減弁ハンドルを引いて、逆転機のハンドルのロックを外して回し、メーターを見ながらギアを調整する。

 

 そして列車は妖怪の山へと入り、緩やかな勾配を登っていく。

 

 

 D51 241号機が牽く列車は妖怪の山の緩やかの勾配を順調に登っていく。

 

 明日香(D51 241)は少し薄暗さを感じてか、窓の上にある操作盤の前照灯と副灯を点ける操作を行うと、煙扉の上にある前照灯と副灯から光が照らされる。

 

 その後に汽笛を鳴らして列車の接近を周囲に知らせる。

 

 機関助士の妖精は投炭を何回も行い、すぐに注水機のバルブを回して炭水車(テンダー)からボイラーへ水を送る。

 

 緩やかとは言えど、勾配のある線路をドラフト音を奏でながらD51 241号機は妖怪の山を登っていく。

 

「……」

 

 窓から顔を出して前方を見ている明日香(D51 241)は目を細めると、加減弁ハンドルを引き、逆転機のハンドルのロックを外してメーターを見ながらギアを調整する。

 

 列車は先ほどより更に角度の付いた勾配に入り、少しだけ速度が落ちるが、事前にピストンへと送り込む蒸気の量を多くしていたので、速度の低下は最低限に押さえ込んだ。

 

 明日香(D51 241)は空転に備えて砂撒き機のハンドルを前後に動かして線路に砂を撒き、動輪が砂を噛んで滑りにくくする。

 

「……」

 

 空転を起こさないように、彼女は加減弁ハンドルを握る手に汗を滲ませながらも、微調整を繰り返す。

 

 

 しばらく山を登っていると、踏切が近づいているという標識を確認し、明日香(D51 241)はロッドを引いて汽笛を鳴らす。

 

 列車は勾配を登っていき、再度汽笛を鳴らしながら踏切を通過した。

 

「……」

 

 勾配は更にきつくなり、加減弁ハンドルを握る彼女の手に力が入る。

 

 その直後、リズム良く奏でていたドラフト音が突然早くなる。雨に塗れた落ち葉を動輪が踏んだことで、動輪が滑って空転を起こしたのだ。

 

「っ! 空転!」

 

 明日香(D51 241)はとっさに加減弁ハンドルを戻して蒸気の量を減らし、砂撒き機のハンドルを前後に動かして砂を撒く。

 

 機関助士の妖精は各バルブを捻って蒸気の量を減らしつつ、ボイラーの安全弁を開いて蒸気を排出させる。

 

 そしてすぐに空転した際の衝撃で崩れた火床を直す為にスコップを手にして、火室へ石炭を放り込む。

 

 空転したことで速度が著しく低下するが、明日香(D51 241)は加減弁ハンドルを引いたり戻したりして蒸気の量を調整しつつ、砂を撒きつつ逆転機のハンドルを回してギアを調整して、何とか持ち直した。

 

「……」

 

 彼女は安堵の息を吐き、再度前を見る。

 

 

 

 列車は勾配を登っていくと、森のトンネルを抜けて左側に景色が広がる路線に出る。

 

 この辺りからは勾配が緩やかになっているので、明日香(D51 241)は加減弁ハンドルを戻して蒸気の量を減らす。

 

「……」

 

 ふと彼女は窓から空を見上げると、列車の後を追いかけるように鴉天狗が平行して飛んでおり、カメラを手にして上空から列車を撮影していた。

 

 天狗の多くは幻想機関区が自分達の領域に勝手に線路を敷いた―――と天狗側は疑っている―――とあって快く思わない者が多いが、中には物好きが居るようで、こうして守矢神社行きの列車や博麗神社行きの列車を空から撮影する者が居る。

 その多くが姫海棠 はたてが発行している花果子念報の製作に関わっている鴉天狗である。

 

 で、撮影された写真は写真集として天狗の里や人里で売られているそうな。ちなみに北斗はその写真集を購入している。

 

「……」

 

 明日香(D51 241)は汽笛を鳴らして鴉天狗に挨拶して、前を見る。

 

 ドラフト音を奏でながらD51 241号機は、その大きなボイラーと四軸動輪、更にギースル・エジェクタの恩恵もあり、力強く勾配を上っていく。

 

 

 

 そしてしばらく列車は妖怪の山を登り、目的地である守矢神社付近まで来る。

 

「……」

 

 明日香(D51 241)は分岐点の向きがちゃんと石炭集積所へ向いているのを確認し、加減弁ハンドルを戻して逆転機ハンドルのロックを外してメーターを見ながらギアを調整し、速度を落とす。

 

 それから少しして列車は守矢神社脇の石炭集積所へと到着し、一定の場所でゆっくりと停車する。

 

 石炭集積所には一足先に幻想機関区からC11 260号機とC12 06号機が来ており、列車の到着を待っていた。

 

 作業員の妖精は機関車と石炭車の連結を外し、異常が無いかを確認し終えたらもう一人の作業員の妖精がホイッスルを吹きながら緑の旗を振るう。

 

 緑の旗を確認した明日香(D51 241)は汽笛を短く鳴らし、D51 241号機をゆっくりと前進させて石炭車から離れる。

 

 ある程度機関車を進ませて停車させると、作業員の妖精が転轍機を操作して分岐点の向きを変えて、ちゃんと変わったかの確認を終えた後に緑の旗を振るうと、明日香(D51 241)は汽笛を短く鳴らして機関車を後退させ、別の線路へと入れる。

 

 D51 241号機が別の線路に入ってその後にC12 06号機が入って停車すると、作業員の妖精が転轍機を操作して分岐点の向きを戻し、緑の旗を振って待機しているC11 260号機が汽笛を短く鳴らして後退し、石炭車の前まで近づいて一旦止まる。

 

 作業員の妖精が連結器がちゃんと開いているかを確認して緑の旗を振るい、確認した行橋(C11 260)が汽笛を短く二回鳴らし、後退させて石炭車と連結する。

 

 すぐに作業員の妖精が十二輌ある石炭車を半分の六輌に分けると、それを確認した行橋(C11 260)は汽笛を鳴らして六輌の石炭車を牽いて石炭の投入装置の元へと運ぶ。

 

 その後に分岐点の向きが変えられると、C12 06号機が前進して分岐点の前で停車すると、作業員の妖精が転轍機を操作して向きを変える。

 

 向きが変わったのを確認した作業員の妖精が緑の旗を振るい、それを確認した島原(C12 06)は汽笛を短く鳴らして後退し、残りの石炭車六輌の元へと向かう。

 

 

 

 その頃D51 241号機は後退していくと、その先には河童達の手によって製造されて新たに設置した転車台がある。そこで車体の向きを変える為だ。

 

 大型のテンダー型蒸気機関車を載せられる立派な物だが、幻想機関区に設置されている電気駆動の物と違い、人力で動かす物である。

 

 明日香(D51 241)は転車台の前で停車させると、作業員の妖精が転車台を確認して異常が無いのを確認したらホイッスルを吹きながら緑の旗を振るう。

 

 緑の旗を確認して明日香(D51 241)は汽笛を短く鳴らし、加減弁ハンドルを引いてゆっくりと機関車を後退させて、転車台に機関車を載せて停車させ、ブレーキを掛ける。

 

 作業員の妖精が六人集まり、転車台のロックを外して前後にある太い棒を三人ずつ持ち、力いっぱい押して転車台を回す。

 

 ゆっくりと回る転車台によってD51 241号機はその向きを変え、転車台の位置が正しいのを確認してロックを掛け、安全を確認した作業員の妖精がホイッスルを吹きながら緑の旗を振るう。

 

 明日香(D51 241)は短く汽笛を鳴らし、加減弁ハンドルを引いて機関車をゆっくりと後退させる。

 

 ゆっくりと後退するD51 241号機はここまで来る道中にある給水塔と給炭設備の近くで停車し、水と石炭の補給を行う。

 

「……」

 

 明日香(D51 241)は深く息を吐きながらゴーグルを上に上げると、補給が終わるまで機関助士の妖精共々休憩に入り、持ち込んだ水筒を手にして運転室(キャブ)の扉を開けて下りると、水筒の蓋を外して中に入っている水を飲む。

 

 作業員の妖精達が炭水車(テンダー)の水タンクの蓋を開けて、給水塔から伸びるホースが差し込まれて大量の水がタンクに流し込まれる。それと同時にベルトコンベアのような機械で石炭が炭水車(テンダー)へと積み込まれて、作業員の妖精が石炭の表面をスコップで均していく。

 

「……」

 

 と、守矢神社の方にこちらの様子を見る人影があった。

 

 その人影こと東風谷早苗は明日香(D51 241)に向かって手を振るう。

 

 彼女も笑みを浮かべて手を振るう。

 

 

 

 休憩も終わり、明日香(D51 241)と機関助士の妖精は運転室(キャブ)に戻り、出発準備を整える。

 

 石炭車は石炭を満載にして積み終え、既に本線に十二輌連結した状態で待機していた。

 

 明日香(D51 241)はゴーグルを目元へ下ろし、ブレーキを解いて汽笛を短く鳴らし、加減弁ハンドルを引いて機関車をゆっくりと後退させる。

 

 D51 241号機はゆっくりと後退して本線へと入ると、石炭車の前で停車する。

 

 作業員の妖精が連結器が開いて異常が無いのを確認して、ホイッスルを吹きながら緑の旗を振るう。

 

 明日香(D51 241)はブレーキを解いて汽笛を短く二回鳴らし、加減弁ハンドルを引いて機関車をゆっくりと後退させて、作業員の妖精が赤い旗を上げたのを確認してブレーキを掛け、石炭車と連結させる。

 

 

 しばらくしてちゃんと連結した確認が取れて、明日香(D51 241)は頷く。

 

「……」

 

 彼女は前を見てブレーキを解き、天井から下がっているロッドを引いて汽笛を鳴らすと、加減弁ハンドルを引いて機関車を前進させる。

 

 石炭車に石炭が満載になったことで行きとは全く違うが、D51 241号機は持ち前のパワーで石炭満載の石炭車十二輌を牽いて前進する。

 

 帰りは下り坂続きなので、慣性を用いて列車は絶気運転にて妖怪の山を下っていくことになる。

 

 そして列車は石炭を持ち帰る為に、幻想機関区へと向かうのであった。

 

 

 

 

 




感想、質問、評価、要望等をお待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。