それはそうと、JR九州が巷で話題の作品『鬼滅の刃』とのコラボで、肥薩線が被災して運休が続いているSL人吉の58654号機がその作品に登場する列車に扮して久々に走るようですね。
作品のコラボ云々はともかくとして、福岡でSLが走るのは久々ですね。再復活前の時の最後の出張運転以来ですかね。
無縁塚に出現した線路の調査途中で、突然北斗達の前に姿を現した人喰い妖怪たち。
北斗達を見つけるなり、敵意剥き出しで襲い掛かる。
「魔符『スターダストレヴァリエ』!!」
魔理沙はスペルカードを発動させて、星状の弾幕を放つ。
星状の弾幕の直撃を受けた妖怪は何体かが後ろへと吹き飛ばされるが、残った妖怪は構わず突き進む。
霊夢は舌打ちをして、魔理沙と同じタイミングで宙に浮く。
「北斗さん伏せていてください! 奇跡『ミラクルフルーツ』!」
彼女の警告を聞き北斗はとっさにその場にしゃがむと、直後に早苗はスペルカードを発動させ、自身を中心に赤い光弾を八箇所に放ち、八つの光弾が弾けて弾幕が楕円形上に拡散する。
放たれた弾幕は妖怪たちに直撃して吹き飛ばすが、どれも傷を負わせるようなものではない。
そもそもスペルカードは弾幕ごっこで使われる勝負札だ。殺し合いの道具ではない。なので殺傷能力は無い。
吹き飛ばされた妖怪たちは起き上がると地面にある石を拾い上げ、北斗達に向かって投げる。
早苗はとっさに結界を張って北斗を守り、宙に浮いている霊夢と魔理沙は軽く動いて石をかわす。まぁこれまで幾度も鬼畜な弾幕を攻略してきた彼女達からすればたかが石ころ一つかわすのなんて容易なことである。
「やっぱりスペルカードルールは無視か!」
「分かり切っていた事よ」
霊夢はそう言うと、手にしている札を手放し、周囲に浮かせる。
「でも、博麗の巫女の前でルールを破る覚悟は出来ているんでしょうね?」
威圧感ある冷えた視線を妖怪達に向けながら彼女はそう言うと、スペルカードを発動させる。
「霊符『夢想封印!』!!」
スペルカード発動と共に殆ど隙間の無いぐらいに大量の札が出現し、妖怪達に向かって飛んでいく。
札は妖怪に当たって張り付くと、なんらかの大きな力が働いて妖怪が後ろに大きく吹き飛ばされて地面に倒れる。
博麗の巫女が作った特製の札には非常に強い霊力が込められており、妖怪の動きを封じる作用がある。なので札を貼り付けられた妖怪は身体がしびれて動けなくなっていた。
尤もなことを言うと札の効果と言うより、無数の札が身体に張り付けられて物理的に妖怪は身体の動きを封じられているようであるが。
普段はスペルカードルールによってここまで弾幕の密度は無いが、ルールを破った相手に手加減をする必要は無いのだ。
「ルールを破ったやつに、わざわざルールに沿って戦う理由は無いよな!」
魔理沙は手にしているミニ八卦炉を妖怪達に向け、本体が四方に展開する。
「恋符『マスタースパーク』!」
彼女が叫ぶと共にミニ八卦炉から虹色の極太レーザーが放たれ、妖怪達を飲み込む。
レーザーを撃ち終えると、飲み込まれた妖怪達は程よく焼かれた状態で地面に倒れていた。
「まだまだ!! 魔符『ミルキーウェイ』!!」
魔理沙は続けてスペルカードを発動させ、星状の光弾の弾幕を放つ。
星状の光弾は妖怪達に命中して弾け、勢いよく吹き飛ばしていく。
「あれって、大丈夫なんでしょうか?」
二人の容赦ない攻撃に北斗は不安を覚える。
「一応あれでも手加減はしていると思います。この幻想郷では余程のことがない限り人間、妖怪問わず殺生は禁じられているので」
「は、はぁ」
北斗は半ば包帯ぐるぐる巻きのミイラみたいに札が貼り付けられて身動きを封じられていたり、少し焼かれた状態の妖怪に思わず声を漏らす。
すると左の方向の少し離れた場所にある背の高い草むらから次々と妖怪達が現れる。
「っ! まだ来るか!」
魔理沙は草むらの方を見るが、その直後前の方から妖怪の唸り声がしてとっさに前を見て目を見開く。
そこでは彼女のマスタースパークで焼かれたはずの妖怪がゆっくりと起き上がっており、更に森の方から妖怪の増援が現れる。
「嘘だろ!? あんな状態で動けるのかよ!?」
「大分タフね。それに更なる増援か」
霊夢は札の残数を確認して、早苗と北斗を見る。
「早苗。北斗さんを列車の所に連れて行きなさい。そこに居られても邪魔なだけよ」
霊夢はそう言うと、妖怪たちに向けて弾幕を放つ。
「……もう少し言い方があるでしょうに」
相変わらず突っぱねたような霊夢の言い方に早苗は不満を覚えつつ北斗を見る。
「行きましょう! お二人が時間を稼いでいるうちに!」
「は、はい!」
二人は霊夢と魔理沙が妖怪達を引き付けている内にその場を離れ、待機している列車の方へと走る。
列車の方にも妖怪達が群がって襲撃をしていた。
「おぉりゃぁっ!!」
その近くでは
近くでは作業員の妖精達が背中の羽を羽ばたかせて飛行しながら各々が手にしている道具で妖怪達に応戦している。
曲がり仮にも彼女達は神霊と妖精。身体能力は人間よりも高いので、妖怪相手にある程度戦える。
「七瀬! 皐月!」
と、早苗に守られながら北斗が二人に近づく。
「区長!」
「すぐに出られるか!?」
「駄目よ。線路の上に妖怪共が居るわ。無理に出発して妖怪を踏んづければ、機関車が脱線する可能性があるわ」
「っ! そうか……」
妖怪の身体がどれだけ丈夫なのかは不明だが、少なくとも骨は人間よりも頑丈だろう。
もしこのまま出発して妖怪を轢いたとしても、その時に妖怪を車輪が踏んづけて骨を砕けなければ、車輪は持ち上がり、線路から外れてしまう。
脱線すれば、機関車は動けなくなる。操重車を連れて来なければ復旧は不可能だ。
脱出したくても、脱出できない状況が出来上がっていた。
妖怪達は霊夢と魔理沙の二人を避けて、徐々に北斗達の方へと集まってくる。
「くそっ! 私達を無視して早苗達の方に行きやがって!」
魔理沙は愚痴をこぼしながら弾幕を放ち、妖怪を倒す。
「……」
そんな中、霊夢は弾幕を放ちながら周囲を見回し、冷静に状況を分析する。
(それにしてもこいつら、やけに突っ込んで来るわね)
次々と現れてはこちらに向かってくる妖怪の群れの動きに、霊夢は違和感を覚えていた。
(いくら人喰い妖怪でも、無鉄砲に襲い掛かるはずもないのに。なんで今日に限ってこんなに来るのかしら)
違和感のある妖怪の行動に、霊夢の視線が鋭くなる。
理性など殆ど無い獣同然の人喰い妖怪だが、彼らとて動物だ。本能によって自分より強い相手の区別ぐらいは付く。普段ならまず博麗の巫女である霊夢に襲いかかろうとはしないはず。
しかし今は何も考えずにむやみに襲い掛かっているようにしか思えない。その上弾幕が迫ってきているのに、避けようともしない。
まるで
(誰かがこいつらに何かした?)
様々な考察が飛び交い、霊夢は一つの推測を立てる。
もしも妖怪達に何者かが魔法なり妖術なりを使い、気を狂わせているのなら、この状況に説明が付く。
でも誰が妖怪達を狂気化させたのか?
なぜ妖怪を狂気化させたのか?
そしてなぜ妖怪達を自分達に襲わせているのか?
次々と疑問は尽きないが、彼女は軽く頭を振って考えを振り払う。
(考えても無駄ね。兎に角今は目の前の事に集中しましょう)
彼女は内心呟くと、スペルカードを手にする。
色々とゴチャゴチャ考えるよりも、敵が向かってくるのなら容赦無く叩きのめす。ただひたすら正面から突破する。その方が彼女の性分に合っているのだろう。
「神霊『夢想封印 瞬』!」
霊夢はスペルカードを発動させ、色とりどりの弾幕を放つ。
列車の傍では神霊の少女達と妖精が各々が持つ道具で妖怪に対抗し、早苗が結界を張って北斗を守りながら弾幕を放つ。
機関車から降りた
『9677』と『D61 4』のバッジを付けた少女達もスコップを手にして振るい、妖怪達を追い払う。
「……」
そんな中、北斗は周囲を警戒しながら両手で持っているスコップの柄を握り締める。
(みんなが戦っているのに、俺だけ何も……)
何も出来ず、ただ見ているだけの自分に、北斗は歯噛みする。
神霊の少女達は人間より高い身体能力もあって人喰い妖怪に対抗でき、妖精達は空を飛んで妖怪の攻撃範囲外から攻撃している。
そして早苗や魔理沙、霊夢の三人はそれぞれの力とスペルカードを用いて妖怪達を撃退している。
しかしただの人間である彼には、戦う力が無い。分かっているが、それでも自分の無力さが悔しく思う。
「……」
悔しい思いはあるが、その感情を押し殺して、北斗は周囲を見渡す。
戦うことは出来ないが、その分視野が広く確保できるので、北斗は妖怪達の動きを見ていた。
幸い今のところ妖怪による被害は出ておらず、妖怪の数も少しずつ減っている。
(このまま何事もなければいいんだけど……)
北斗は周囲を警戒しつつ、内心呟く。
ふと、彼の視界の右端で何かが蠢き、とっさに右へと顔を向ける。
早苗が左から襲い掛かろうとする妖怪に対して弾幕を放っていると、その少し離れた後方にある草むらから妖怪が静かに顔を出す。
「っ! 早苗さん! 後ろです!!」
北斗はとっさに大声で早苗に伝えるが、周りの喧騒に声がかき消されて彼の声は彼女に届いていなかった。
「早苗さん! くっ!」
北斗は悪態をつき、スコップを手放して走り出す。
「区長!?」
すると北斗が走り出すと同時に、草むらから妖怪が飛び出てきて早苗に向かって走る。
「早苗さん! 危ない!!」
北斗は声を上げると早苗の耳にようやく声が届いて気づくが、振り向いた向きが妖怪が居る方向と逆だったので、後ろから迫ってくる妖怪の存在に気づけなかった。
(間に合え!!)
彼は力の限り地面を蹴って跳び出し、早苗を抱えてその場から退かす。それと同時に早苗の背後に迫っていた妖怪が腕を振るう。
「っ!」
その瞬間北斗は左腕から鋭い痛みが走って顔をしかめるも、とっさに自分の身体を下にして地面に倒れる。
「北斗さん!?」
突然のことに早苗は声を上げるも、顔を上げた時に妖怪の姿を確認する。
「っ! 秘術『グレイソーマタージ』!!」
早苗はとっさにスペルカードを発動させ、自身の周りに光弾出現して星の形を作り、勢いよく拡散する。
北斗によって攻撃が避けられた妖怪は再び早苗に襲い掛かろうとするが、至近距離から弾幕の直撃を受けて、勢いよく吹き飛ばされる。
そして周囲に放たれた光弾は他の妖怪に直撃して、次々と倒していく。
(あ、危なかった。もし北斗さんが伝えてくれなかったら、さっきの妖怪に……)
最悪な状況が脳裏に過ぎり、早苗は息を呑む。
人の命など簡単に奪える妖怪が居るこの幻想郷では、気を抜けば一瞬で命を落としかねない。
「っ! 北斗さん!!」
ハッとした早苗はとっさにしゃがみこんで地面に倒れたままの北斗に寄り、肩に手を置く。
「……えっ?」
北斗の肩に手を置いた瞬間、彼女の手に生暖かい湿った感触が伝わり、声が漏れる。
恐る恐る早苗は北斗の肩に置いた手を見ると、掌が赤く染まっていた。
「……」
目を見開き震える彼女は恐る恐る北斗を見ると、そこには左肩に切り裂かれた三つの傷を負い、そこから血を流して倒れている北斗の姿があった。
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