転生した先が死後の世界で矛盾している件   作:あさうち

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お久しぶりです。
4年ぶりの投稿となります。……この作品のこと覚えている人いるのかな?
エタったりはしないと過去に何度か言っていたのですが、完全にエタってしまい、申し訳ありませんでした。
この4年の間も、相変わらずBLEACHはずっと大好きでアニメも視聴していたので、徐々にモチベーションを取り戻し、何とか生還することができました。
エタっている間も、完結目前で更新を止めてしまったこの作品のことがずっと気がかりだったので、私自身生還できて良かったです。
どれくらいの頻度で更新できるかわかりませんが、完結を目指して頑張りますので、改めてよろしくお願いします。



第八十三話

「更木隊長は!?」

「一体どうなったんだ……」

 

 爆発が収まり、目が開けられるようになった面々は、すぐさま周りの状況を伺い始めた。

 特に重要なのは剣八の安否だ。爆発が起きた時点で、剣八はかなり押されていた。そんな状態での爆発だ、剣八が死亡しているという最悪の場合も容易に想像できた。

 

 土煙が晴れるのを、面々は固唾を飲んで見守る。そうしていると、煙の中に二つもシルエットが浮かび上がって来る。

 一つは最早人の形をしているかどうかも分からない。これは黒い霊力を全身に纏ったユーハバッハのものだろう。

 一方、剣八のシルエットは……。

 

「っ、生きてるぞ!」

 

 ――四つん這いの姿勢になっているものの、力強く地面を踏みしめていた。

 

「いや、待って……。何かがおかしい」

 

 剣八の生存を喜ぶも束の間、卯月が異変に気が付いた。

 まず、違和感を感じたのは剣八の霊圧が跳ね上がったこと。元々戦いの中で信じられないくらいに成長している剣八であるが、今の上り幅はその比ではない。

 そして、もう一つは四つん這いの姿勢が様になり過ぎていることだ。当然のことであるが、人間は二足歩行の生物である。だが今の剣八の姿は、まるで生まれた時からそうして来た野獣のようだった。

 

 その違和感の正体は、程なくして露わになることになる。

 

 

「……更木隊長?」

 

 恐る恐る、剣八に話かけるが応答がない。やがて土煙から姿を現した剣八の姿か変わり果てたものだった。

 肌は赤黒く変色し、目元には黒い入れ墨のようなものが浮かび上がっている。白眼を剥いていることから、理性を失っていることは明らかっただった。

 

 ――まるで鬼のようだ。

 

 この場にいる多くの者が、そう思った。

 

「なるほど、それが貴様の卍解か」

 

 ユーハバッハもまた、変貌を遂げた剣八に語りかけた。

 本気で剣八を殺しに行ったユーハバッハにとって、剣八が生存しているどころか、新たな力を手にしているということは、決して面白いことではないのだが、未来視によって、こうなる可能性も予見できていた。

 そしてそれは、この先の未来も当然視ることができるということであり、それ故に、ユーハバッハには自分が剣八に敗れることはないということを確信していた。

 

「…………」

「ふん、どうやら言葉を操ることすら、ままならぬようだな」

 

 しかし、剣八は荒い息を吐くだけで、ユーハバッハの言葉には一切応じない。いや、この場合は理性を失ったことによって、応じることができなくなったと言った方が正しいのだろう。

 

「まあ、よい。答えられぬのなら、これから確かめればいいだけの話だ」

 

 そう言い、ユーハバッハが戦闘態勢に入ったその時だった……、

 

「――っ!」

 

 なんと、これまでは理性を失っていた剣八が、まるでユーハバッハが話を終えるのを見計らっていたかのようなタイミングで、攻撃を仕掛けた。

 無論、今の剣八にはそのようなコミュニケーション能力は存在しない。それでも彼が動けた理由は、本能でユーハバッハが戦闘態勢に移ったのを感じ取ったからだ。

 

 斯くして、これまでにはない速度でユーハバッハに接近した剣八の斧が降り降ろされる。

 

「どうした、当たっていないぞ?」

「……?」

 

 だが、剣八の斬撃がまるでねじ曲げられたかのような軌道を描き、地面へと衝突した。

 

「あれは確か、ニャンゾルって滅却師の……!?」

 

 その光景を見た卯月と雛森は、それが二次侵攻で戦ったニャンゾル・ワイゾルの能力であると気づく。

 ニャンゾル・ワイゾルの能力は"紆余曲折"。自身が本能で反応したものが触れた時、その物質の軌道や形をねじ曲げる力だった。

 聖別によって、星十字騎士団ほとんどの力を手に入れたユーハバッハは、彼の能力を殆ど全て行使することができるのだ。

 卯月がニャンゾルを倒した時は、雛森が展開した白断結壁の中に睡蓮の煙を充満させることで、能力を無力化させるに成功したのだが、最早滅却師という枠組みを逸脱したユーハバッハには通用しない手だろう。

 

 だが、今の剣八には策を考える頭など存在していない。

 

 攻撃が当たらなかったことに疑問を持つ様子は見られたものの、次の瞬間にはまた攻撃を仕掛けていた。

 無論、その攻撃の悉くはユーハバッハの身体に到達する前にねじ曲げられるのだが、次の瞬間驚くべきことが起きた。

 

 その斬撃は、今までと変わらず、ユーハバッハの隣を通りすぎたように見えた。だが、宙に跳んだ鮮血を見て、そうではないとこの場にいる誰もが悟った。

 血の軌跡を辿れば、そこには一つの赤い筋が入ったユーハバッハの頬がある。目を凝らさなければ見えないほどの浅い傷であるが、剣八の攻撃が届いた証拠だった。

 

 しかし、剣八の斬撃はユーハバッハによって軌道を逸らされているはずである。それにも関わらず、何故剣八の斬撃が届いたのか。それは攻撃を受けたユーハバッハ自らが明かした。

 

「ククっ、空間をも斬るか。予め視えていたとしても、目を疑う光景だ」

「空間を……」

「斬った……だと……!?」

 

 その発言に、周囲にどよめきが走る。

 ユーハバッハが曲げた空間を剣八が斬り裂いたことによって、攻撃が通った。言葉にするとこうなるのだろうが、そのようなこと実行するどころか、想像することすら難しかった。

 

 だが、それを剣八が為したことは、ユーハバッハの頬の傷を見るに明らかである。

 

 そして、この空間斬りがたった一回に留まることはなかった。秒単位の感覚で成長を続ける剣八の斬撃は、その回数分鋭さを増して行き、最初は回避行動すら起こしていなかったユーハバッハが、静血装を使って防御をするようにまでなる。

 

 徐々に剣八の方へと好転していくこの戦況に、この場に居るほとんどの者がこのまま勝てるかもしれないと思った。

 

 だが、逆に剣八の置かれた状況が芳しくないと感じる者が二人居た。

 一人は未来を見ることによって、己の勝利に絶対の自身を持っているユーハバッハ。

 

「……まずいな」

「卯月君……?」

 

 そして、もう一人は剣八に治療を施している卯月だった。

 

「更木隊長のあの力……多分卍解か何かだと思うんだけど、あれで上昇した霊力に更木隊長自身の身体が追いついていない。さっきからずっと回道をかけてるけど、このままじゃ五分と持たないよ……」

「そんな……!」

「何!? それは本当か、蓮沼?」

「ええ、まず間違いないと思います」

 

 理性を失っていることもあり、痛みを訴えることがない剣八であるが、その身体は既に破滅への一本道を辿っていた。

 先程から、卯月が遠距離で回道をかけ続けてはいるが、治療対象が自分ではないことや、激しく動き続けていることから、治療には限界があった。

 とは言え、そんな卯月だからこそ剣八の異変をいち早く察知し、それを周囲へと伝えることができた。

 

 そして、それが訪れるのに、そう時間は要さなかった。

 

 これまでは縦横無尽に駆け回り、徐々にユーハバッハを追い詰めていた剣八だったが、突然まるで糸が切れた人形のように、地面に倒れ伏したのだ。

 

「惜しかったな。あと少しお前がその力に慣れていれば、私も危うかっただろう」

 

 そう言うユーハバッハの口調は、危うかったというわりには、落ち着いている。しかしこれは、実力が足りない剣八にユーハバッハがお世辞を言ったという訳ではなく、ユーハバッハが元々この未来を予見していただけに過ぎない。

 故に剣八がどれだけ力をつけようとも、ユーハバッハが必要以上に焦る必要がなかったのだ。

 

「……」

「言葉を失い、今度は反応することすらもおぼつかないか」

 

 力尽きた剣八を哀れむと、ユーハバッハは徐に剣八へと手掌を向ける。

 既に決した勝負であるが、ユーハバッハはここで確実に剣八の命を摘み取るつもりだった。

 

「させない!」

 

 だが、それを黙って見ている者はこの場には居ない。先程までは剣八とユーハバッハの戦いがあまりに高次元なものであった為、介入は却って邪魔になると誰も手出しすることができなかったのだが、その片方が落ちてしまった今となってはそのような気遣いは必要ない。中でも、こうなることを誰よりも先に予測していた卯月は、素早く瞬閧を纏い、ユーハバッハに接近する。

 

「っ!?」

 

 しかし次の瞬間、ユーハバッハの視線が剣八から卯月へと移された。

 

 ――視えていたぞ、蓮沼卯月。

 

 一切の急ぎを感じないユーハバッハの視線の移動は、言外にそう伝えているようだった。

 

 その時、卯月は自分が瀕死の剣八を利用したユーハバッハの術中にまんまと嵌ったことを理解する。

 そのことに焦燥感と、禍々しい複眼の視線を一身に受けたことによる悪寒が卯月を支配した。

 

 だが、一度勢い良く飛び出してしまった以上、もう止まることはできない。

 

「【断空】!!」

 

 咄嗟の判断で疑似重唱を用いた卯月は、自身とユーハバッハを隔てる無数の結界を形成するが、もはや今のユーハバッハにとってそれは何も隔たり無いのに等しい。

 

 腕を軽く振るったユーハバッハは、身体に纏う黒い霊力を結界へとぶつける。

 すると、高位縛道に位置するはずの卯月の結界がまるでガラスのような脆さで一瞬にして割られていく。

 

 それを想定していた卯月も、自身の1番手前の結界を足場にして後退を図るが、それも完全には間に合わず、卯月の片足は黒い霊力の餌食となってしまった。

 

「ぐっ……。 ふん!!」

 

 しかし、即座にそれを回道によって修復した卯月はユーハバッハに向き直る。その彼のすぐ側には、つい先程までユーハバッハの傍らで力尽きていたはずの剣八の姿があった。

 

「なっ!?」

「卯月さん、いつの間に……!?」

 

 それを見て驚く護廷十三隊の面々。だが、そんな彼らと打って変わって、ユーハバッハの顔に驚愕の二文字はない。

 そこにあったのは、ただただ感心したような顔だった。

 

「なるほど、空間転移か。だが、いいのか? 貴様らの中でそれは禁術だったはずだ」

「流石にそんな事で四の五の言ってられる時は過ぎちゃったからね。僕が罰を受けることで、瀞霊廷を救えるなら、喜んで身を捧げるさ」

 

 未来視によって卯月の行動が予めわかっていたユーハバッハにとって、卯月がとった行動自体に驚きはない。故にその方法を採った理由について関心を示したのだ。

 それに返答した卯月は続ける。

 

「だから、これからの僕はちょっとやりたい放題させてもらうよ?」

 

 そう言って卯月は徐に睡蓮を構えると、そのまま虚空へと突き刺した。

 そしてその虚空は、いつの間にかユーハバッハの背後へと繋がっており、ゼロ距離から刃を突き刺すという状況が作り上げられる。

 

「【遷門(せんもん)】」

 

 空間転移を応用した卯月の縛道で、その効果は展開した門と門を連続する空間として繋げるというものだ。言わば、どこでもドアである。

 

 だがしかし――

 

「なっ!? 硬!」

 

 そもそも、今のユーハバッハにただの斬魄刀による斬撃が通るのかと言えば、それはまた別の話だ。

 

 空間転移の応用によって、ユーハバッハの背後を取ることに成功した卯月であったが、突き刺した斬魄刀が切り裂いた黒い霊力の先には、鋼鉄のように硬いユーハバッハの身体が待ち受けていた。

 

 否、鋼鉄のようにではなく、本当に鋼鉄なのだ。

 

 ユーハバッハによって力を与えられた滅却師は、死亡した時あるいは【聖別】の対象となった時にその力をユーハバッハに還元する。

 現在、ユーハバッハは星十字騎士団の1人であった蒼都の【鋼鉄】の能力を身に纏っていた。静血装と併用すれば、生半可な攻撃ではかすり傷すらも与えることはできないだろう。

 

「なるほど、じゃあこれはどうかな?」

 

 それを受けて卯月は次の策に出る。

 両手でユーハバッハを囲むように輪を作った卯月は、その輪に集中するように霊力を注ぎ込む。

 

 すると、ユーハバッハの動きが止まった。

 

「【時間停止】、完了っと。皆さん! ユーハバッハの動きを止めたので、今のうちに集中攻撃を!!」

 

 卯月のその号令を合図に、遠距離攻撃を中心とした攻撃が一斉にユーハバッハへと襲いかかる。

 ここで停止したまま攻撃を当てる事ができれば楽なのだが、そうはいかない。何故なら、時間停止をした対象には外部からの干渉もできないからだ。したがって、卯月は一斉攻撃の弾幕がユーハバッハに命中する寸前で時間停止を解く必要があった。

 

 そうして卯月が術を解いたその刹那、ユーハバッハから黒い霊力が迸り、暫しの拮抗の後こちらの攻撃が掻き消された。

 

「やっぱり視えてるかっ……!」

「今のは悪くなかった。敵が私でなければ勝負は決していただろう。禁術に分類されるだけあって恐るべき鬼道だ。そして、それを私相手に的確に使用するお前の手腕も見事なものだ」

 

 並の敵であれば、攻撃を知覚する前に為す術なく息絶えていただろうが、相手はユーハバッハ。恐らく時間停止を食らう前から、攻撃がどのように行われるのか文字通りに予見していたのだろう。それを察した卯月は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 

 空間転移に時間停止と、理不尽のオンパレードのような攻撃を立て続けに行ったが、それは決してノーリスクで実行できることではない。高度な鬼道であるために、霊力を大きく消耗するのだ。いくら睡蓮による霊力の回復があったとしても、そう何度も撃てるようなものではなかった。

 今回は小手調べで単純な運用を試したが、次からは撃ちどころを考えなければと、卯月は頭の中で戦術を組み立てて行く。

 

「温存しなければ……今、そう考えたな?」

「っ!?」

「そう驚くことはない。これだけの力だ。それ故に消耗が激しいことはこの眼で視なくとも容易に想像がつく。――だが、私は温存できるような相手ではないぞ?」

 

 思考を当てられた動揺から卯月が立ち戻るよりも早く、ユーハバッハは攻撃を仕掛ける。

 

 そこからは防戦一方だった。

 ユーハバッハと数合交わす度、卯月に傷が蓄積されていく。その度に瞬閧を併用した回道で治療するが、そうしているうちに回道では治療しきれないような致命に至る一撃が卯月に襲いかかる。そうなると、卯月は空間転移による回避を使わざるを得ず、霊力を大きく消耗する。先程からその繰り返しだった。

 空間転移による回避のタイミングで一息つくことができれば良かったのだが、転移先を予見できるユーハバッハの反応速度は桁違いで、息つく暇もなく再度攻撃が開始される。

 また、空間転移の使用が必須となるような状況では仲間の支援も期待できず、卯月の孤軍奮闘が余儀なく要求される状況だった。

 

 ――そして遂に、卯月に限界が訪れた。

 

 これまでは、転移直後に急接近してくるユーハバッハの攻撃に対応できていたのだが、卯月の空間転移と同様に点から点への移動をユーハバッハも行った事により、対処が不可能となったのだ。

 ユーハバッハも空間転移を習得したのか、という思考が一瞬よぎったが、それは違う。

 

 ――卯月が転移先を間違えたのだ。

 

 卯月は空間転移を使用する際、転移先に細心の注意を払っていた。それはユーハバッハの未来改変から逃れるためだ。

 

 ユーハバッハの未来改変は、自身のあらゆる可能性を実現する。それは言わば、無数にある並行世界を行き来できるということだ。勿論この上なく脅威ではあるが、裏を返せばそれはユーハバッハに実現可能な事象にしか改変できないということを指す。

 

 例えば、避けきれないほど広範囲な攻撃に対し、躱すという手段をとることはできないし、知覚できないほど高速な攻撃を防ぐ事もできないのだ。

 

 とは言え、言うは易し行うは難しだ。

 ユーハバッハを相手にそんな事ができる者など、居たとしてもほんのひと握りだろう。

 だが、卯月は空間転移に限って言えばそれを実現していた。

 

 具体的には、ユーハバッハが体重が前に傾いたタイミングで、ユーハバッハの背後かつ、一瞬では移動できない程度の距離に転移するようにしていた。無論、ユーハバッハには転移先は視えている。

 しかし、それが分かっていたとしても 、前傾姿勢から後ろに身体を引き返すには物理的に時間を要するし、点と点の移動には追いつけやしないという訳だ。

 

 そのようにして、卯月はユーハバッハの猛攻から何とか逃れて居たのだが、度重なる消耗の蓄積により遂に卯月は空間転移の制御を誤り、ユーハバッハが一瞬で追従可能な位置に転移してしまった。

 そうなれば、ユーハバッハは未来改変により、そこに存在する未来の自分と座標を入れ替えれば、あたかも空間転移をしたような移動が可能となる。

 

「誇れ蓮沼卯月。未来改変を前にこれだけ抗える者など、そうは居まい」

 

 トドメの一撃のため、振り上げた腕に霊力を結集しながら、ユーハバッハは卯月に語りかける。

 

「まあ、禁術使ってるからね。多少はやれないと困るよ。でも――お陰で間に合った」

「ああ、そのようだな。来たか――一護よ」

「ユーハバッハ!!」

 

 瞬間、卯月とユーハバッハの間に挟まるようにして、一護が姿を現した。

 

 先程、空間転移の制御を誤った卯月だったが無理もない。

 

 ――何故なら、あの時の卯月は3つの鬼道の同時行使と1つの鬼道の発動準備を並行して制御していたのだから。

 

 使用した鬼道のうちの1つは卯月がユーハバッハとの戦闘で使用していた空間転移であるが、あの時の卯月は単にユーハバッハの攻撃から逃れているわけではなかった。

 

 まず、発動準備をしていた鬼道はたった今真なる帝国から一護を呼び寄せた空間転移である。

 しかし、ただ単に呼び寄せるだけでは突如として転移させられた一護が危険にさらされてしまう。

 そこで卯月は自身の視界を共有する鬼道で一護に状況を共有し、一護に負傷の完治と転移のタイミングを天挺空羅によって通信していたのだ。

 

 かくして、一護は万全の状態でユーハバッハと対峙していた。

 

 そして、ユーハバッハにとって一護とは決して油断ならない存在だ。

 死神・虚・滅却師・人間の全ての素養を持つことを自覚し、それらを戦闘で振るう一護は脅威の一言。

 1つ前の接敵では、一護が卍解した直後に未来改変で斬魄刀を折ることでユーハバッハが勝利したが、それはそうしなければならないほどに一護を認めているからに他ならない。

 もし、あの時卍解した一護と戦闘を続けていれば、今頃自分の命はなかったかもしれないと、ユーハバッハは評価していた。

 

 故に、例え視えていたとしても、ユーハバッハの意識は一護の方に集中する。

 

 ――それまでに接敵していた卯月への意識が削がれてしまう程に。

 

「【卍解――】」

 

 まさに千載一遇のチャンス。

 ユーハバッハの意識は一護に集中し、仮にここから卯月に攻撃しようにも、その前には一護が居る。

 

――故に、ここでの卍解は必ず通る。

 

「【魔障睡蓮(ましょうすいれん)】」

 

 

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