転生した先が死後の世界で矛盾している件   作:あさうち

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久しぶりに執筆すると、思いの他楽しく筆が乗ったので、かなり早く更新することができました。
また、こんなにも期間が空いたのにも関わらず、感想にて暖かい言葉を頂き、ありがとうございます。返信はできていませんが、全て目を通しております。

今回、話のキリが良かったので少し短めですが、よろしくお願いします。


第八十四話

「なにが起こったんだ……今の、一護だったよな……?」

「ああ、一瞬しか見えなかったが、間違いないだろう」

 

 目の前で起こった一瞬の出来事に戸惑う恋次をルキアが肯定する。

 確認せずとも目の前を見れば分かることだと思うかもしれないが、それは違う。

 

 ――何故なら、卯月が卍解した途端にその場に居た3人の姿が掻き消えてしまったのだから。

 

「卯月さんが卍解を使ったように見えたけど……どこ行っちゃったんだろう?」

 

 最後に卯月の卍解発動までを視認していた雛森がそう呟く。

 この場に居る全員、卍解により卯月の霊圧がかつてない程に高まっていくのを感じていた。だが、その次の瞬間にはその霊圧はプツリと無くなり、ユーハバッハと一護と共に姿を消してしまうではないか。不可解としか言いようがなかった。

 

「そう言えば僕達、かなり長い付き合いなのに卯月さんの卍解の能力のこと何も知らないね」

 

 ふと、思いついたようにイヅルが会話を続ける。

 

 それもそのはず。卯月はこれまでの数々の大戦で一度も卍解の能力を行使したことがないのだから。

 彼の卍解の能力を知るのは、彼が隊首試験を受けた際の試験官となった隊長3名に交流が特に深い修兵、ほたる、砕蜂の3名と研究の為に数多くの斬魄刀のデータを有するマユリの計7名のみである。

 

 よって、今の場で起こっている謎の答えは、ほたるが答えた。

 

「別に消えたわけじゃないわ。能力の詳細は大切なことだから、私の口からじゃ教えられないけど、そうね……。1つ言えることがするなら、あそこから卯月君達が戻ってくる時は、それはこの戦いの決着がついた時よ」

 

 そう言ってほたるが指をさしたその先には――一輪の睡蓮が、花弁を閉ざした状態で佇んでいた。

 

***

 

「【卍解――魔障睡蓮(ましょうすいれん)】」

 

 卯月を中心に桃色の霊力の奔流が拡散する。

 それは、一護とユーハバッハをも同時に包み込み、そのまま遥か遠くまで行き渡る。

 

 不可解なのは、それだけの距離を包み込んでいるにも関わらず、中には卯月、一護、ユーハバッハの3人しか居ないことだ。

 近くに居たはずの護廷十三隊の面名や仮面の軍勢の姿はなく、そこにあるのは辺り一面に広がる桃色の空間と無数に咲く睡蓮の花のみ。

 

 そして――、

 

「蓮沼さん……なのか……?」

「うん、そうだよ。戸惑うだろうけど、あまりジロジロ見ないでくれると助かるかな?」

 

 大きく変わり果てた卯月の姿だった。

 

 1つに結われていた髪は下ろされ、艶のある金色へと染まっている。

 双眸は晴天のように青く澄んでおり、どこまでも覗きこめそうな錯覚に陥った。

 顔には化粧が施され、男であるはずの卯月の女性然とした魅力を存分に引き立てている。

 纏う衣装も死覇装から、水色を基調とし、睡蓮があしらわれた上品な振袖へと変化している。

 そしてなにより、その手には斬魄刀が握られていなかった。

 

 ここまでの特徴を聴くと、まるで日本旅行に来た外国人のような佇まいであるが、不思議とそれらは欠片の違和感もなく調和していた。

 

 そんな卯月の姿に驚いた一護を卯月はやんわりとなだめる。

 それもそのはず。確かに、元から卯月は女性と見間違えられるような容姿をしているが、彼は歴とした男であり、ましてや女装趣味などというものは持ち合わせていない。

 故に彼にとって卍解のこの姿は羞恥の対象でしかなかった。

 

「わ、悪ぃ。けど、似合ってると思うぞ?」

「褒められても嬉しくないわ!! いいから集中しろ!!」

 

 一護も突然の卯月の変貌に気が動転したのか、何故か言わなくても良い褒め言葉を投げかけてしまい、それに卯月は憤慨する。

 

 ――ていうか、褒めるなら僕じゃなくて井上さんを褒めてあげなよ……。

 

 と、同時に呆れてしまう卯月なのだった。

 

「どういう事だ……?」

 

 思わぬハプニングにより、緩んでしまった緊張をユーハバッハのその一言が引き締め直す。

 ユーハバッハは続ける。

 

「何故、未来が視えない? 蓮沼卯月、何をした……? それに何故貴様は斬魄刀を持っていない?」

 

 卯月が卍解を行使し、桃色の空間に包まれた瞬間、ユーハバッハは全知全能の力が使えなくなってしまった。

 幾ら考えてもその答えが分からないユーハバッハは、卯月に直接問いかけた。

 

 星十字騎士団は開戦前の念入りな偵察から護廷十三隊の情報を多く有しているが、卯月はこれまでの戦いで殆ど卍解を使用してこなかったため、情報が全くないのだ。

 一応、開戦直後にぺぺがメダリオンで卯月の卍解を奪い取る事に成功したが、その情報を味方に共有する前に卯月に敗れてしまっている。

 

「うーん、どうしようかな。あんまり自分の能力を明け透け話すのは好きじゃないんだけど……。まあ、一護君に共有しとかないとだし、ついでに教えるよ。どうせもう発動しちゃってるから、防ぎようもないしね」

 

 暫し迷った後、卯月は自身の卍解についての話を続ける。

 

「僕の卍解の能力は大きく分けて2つ」

 

「1つ目。単純に始解の能力の強化される。これは煙を生み出す量も、効力も両方だね。まあ、それでも2人は格が違い過ぎるから眠らせられないんだけど」

 

 始解の時は斬魄刀の刀身の僅かな穴からしか煙を生み出すことはできなかったが、卍解では辺りに散りばめられた無数の睡蓮から生み出される。

 そして、対象を眠らせる力も強化されている。今回は対象が一護とユーハバッハであるため日の目を浴びないが、もし卯月よりも格で劣る相手であれば数ヵ月は眠らせたままにできてしまうほどだ。

 

「2つ目。斬魄刀を媒体に脱出不可能な結界を作り出す。卍解した僕が斬魄刀を持っていないのは、この空間自体が斬魄刀だからだね。そして、この空間で未来が視えない理由はこの空間に時間という概念が存在しないからだ。例え、この結界の外でどれだけの年月が過ぎようとも、中にいる僕達は1歳たりとも歳をとらないはずだよ」

 

 総括すると、結界の中に敵を閉じこめることでより確実に敵を眠らせることができるようになったのが卯月の卍解だ。囚われたら最後、眠らずにやり過ごすことができることができる者はこの世界に十人居るか居ないかといったところだろう。

 

「ほう、脱出不可能だと? ならばそれが本当か私が直々に試してやろう。確かに果ての見えないこの空間の広さに脱出不可能と謳うのは理解できる。だが、空間を斬って破壊してしまえば、脱出することも可能なのだろう?」

 

 先ほどの剣八との交戦から着想を得たユーハバッハは腕を水平に構え、纏う霊力で剣を成形する。空間を斬るのはユーハバッハをしても初めての試みだが、それをやってのけた剣八の剣筋を一番近くで観察していたのは彼である。空間を捻じ曲げるニャンゾルの能力も併用すれば、より確実だろうという彼なりの改善案も思い浮かんでいた。

 構えただけで、膨大な霊圧の奔流が卯月と一護を襲い掛かる。

 

「不味い! 蓮沼さん!!」

「大丈夫だよ。一護君」

 

 それを受けて一護は直ちに止めなければと焦る一護だったが、卯月はあくまで冷静だった。

 

「――僕の卍解は、絶対に壊せない」

 

 次の瞬間、ユーハバッハは腕を薙ぎ払うと、凄まじい衝撃波が発生し、卯月と一護はかなりの距離を後退させられる。

 だが、それだけだった。空間はまるでなにもなかったかのように三人をその中に留め続けている。

 

「なんだ……これは……?」

 

 そして、ユーハバッハは今の攻撃の手応えの無さに困惑する。

 攻撃力が足りていなかったのであれば、まだわかる。だが、今のはその前段階――ニャンゾルの能力で空間を歪ませることすらできなかった。

 破壊はおろか、変形すらできない。そこから、ユーハバッハは1つの可能性に思い当たる。だが、それはあり得ないことだった。

 

「まさか……貴様の卍解は破壊不可能とでも言うのか?」

 

 破壊された卍解は修復できない。それは多くの死神が知っている常識だ。

 例外として、狛村のような所有者と状態を共有することで修復を可能としているものも存在するが、それは例外中の例外だ。現にここに居る一護だって、霊王宮で斬魄刀を打ち直したばかりなのだから。

 ましては、破壊不可能など卍解の範疇を逸脱していた。

 

「その通り。僕の卍解【魔障睡蓮(ましょうすいれん)】は、僕が対象に一切の傷を負わせられなくなることを代償に、概念的な破壊耐性を得ている。ここを出る方法は、僕自身が卍解を解くか、僕を殺すかの2つだけだよ」

 

 ちなみに、ここでの対象というのは、卯月の卍解で結界の中に囚われた者、または卍解によって眠らされた者を指す。

 つまり、卍解で眠らせた相手はその眠りが覚めるまでは、例え卍解を解いたとしても傷を負わせることはできないのだ。

 

「蓮沼卯月……貴様一体何者だ……? この結界は最早その範疇を逸脱している。世界を1つ創り出していると言った方が適切なほどにな。だが、そのようなこと貴様のような一介の死神にできるはずがない」

 

 果ての見えないほどに広大でユーハバッハの攻撃を受けてもビクともしない頑丈な空間を見て、ユーハバッハにはあたかも卯月が1つの世界を創造したかのような印象を受けた。

 加えて時間の流れもなく、どれだけ居ても歳を取らないときた。それはまるでユーハバッハがこの戦いの果てに望む原初の世界のようだった。

 無論、この空間は卯月1人の力に依存しており、中に入った者の大半は起きることができないことを鑑みると、ユーハバッハの理想には遠く及ばない。しかし、それでもただの死神が持つにはあまりに膨大な力だった。

 

「そんなこと言われても僕はただの死神だよ。2人みたいに色んな種族の力は持ってない。強いて言うなら、流魂街出身で現世に居たころの記憶はあるけど、それだけさ」

 

 幾らユーハバッハが疑問を持とうとも、卯月がただの死神である事実は変わらない。まともにやり合えば逆立ちしたってユーハバッハには勝てないだろう。

 

 だが、卯月は口には出さないものの、何故自分の卍解の能力がこのようなものになっているかの検討はついていた。

 

 ――それは、卯月が転生者であるためだ。

 

 この世界に生を受け、数十年を生きた卯月だが、前世の記憶を持っている以上、その魂は前の世界のものである。

 そして、斬魄刀とは所有者の魂を映し出す鏡である。そんな斬魄刀に前世由来の魂を映すとどうなるか。

 

 ――そこに別世界を創り出しても、不思議ではないと考えられないだろうか。

 

 また、結界内で時間が流れないことに関しても、本来の卯月の命は前世で尽きてしまっているからではないかと考察していた。

 

 とは言え、それを証明する術はないし、それ以前に前世の記憶はこの世界の誰にも明かしていないタブーである。

 故に、卯月はこの考えを語るつもりはなかった。

 

「さて、一護君。申し訳ないけど、僕が主体となって戦えるのはここまでだ。ここから先は地力がものをいう戦いになるからね」

「ああ、分かってる。蓮沼さんはユーハバッハにやられねぇように逃げててくれ」

 

 そして、卯月の主だった役割はここまでだ 。無論、後方から一護のサポートは全力で行うが、彼では一護とユーハバッハという格が違う者同士の戦いにはついていけない。

 なんなら、卯月が殺されてしまえば卍解が解けてしまうという現状では、彼が死なないでいることこそが1番のサポートである。

 

 幸い、この空間は卯月が創り出しているので、周囲は卯月の霊力で満ちている。【曲光】で姿を消し、霊圧を下げていればまず見つからないだろう。

 いざという時は空間転移で遠くまで逃げてしまったっていい。

 

「あんがとな、蓮沼さん。一度は諦めかけたけど、これならユーハバッハと対等に戦える」

 

 卯月だけはない。一護が瀞霊廷に辿り着くまで時間を稼いだ護廷十三隊と仮面の軍勢の面々、卍解を修復と回復をしてくれた織姫と月島。多くの者が居たからこそ一護はこの場に立っている。

 

 ――それらを護るために戦える。

 

「うん、だけど忘れないで。今の状況はあくまで同じ土俵に立ったってだけ。有利になったわけじゃない。依然としてユーハバッハは脅威だよ」

 

 この程度のこと、言わずとも一護は理解しているだろうが、念のための確認として卯月は話した。

 霊王と一護の力を取り込み、素のスペックが強化されているのに加え、【聖別】によって星十字騎士団の力も取り込んだユーハバッハは彼らの聖文字の力だって扱える。

 故に、何をしてくるか分からないという気持ちで臨む必要があるだろう。

 

 卯月の言葉に頷いた一護が前を向き、天鎖斬月を構えてユーハバッハと対峙する。

 

「どうやらここから出るにはお前を倒す他なさそうだ、一護。最早少しの気も抜けまい」

「ユーハバッハ、今度こそ俺はアンタを倒す!」

 

 こうして、最後の戦いの幕が切って落とされた。

 

 




というわけで卯月の卍解お披露目でした 。
かなりモリモリかつ、ユーハバッハガンメタな能力ですが、私的には、それなりの根拠は示せたと思っています。
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