転生した先が死後の世界で矛盾している件   作:あさうち

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今回から一護VSユーハバッハですが、かなりやりたい放題やってます。
独自解釈を多分に含みますが、ご容赦いただけると幸いです。


第八十五話

「【大聖弓(ザンクト・ボーゲン)】」

「【月牙……天衝】!」

 

 4度目とある一護とユーハバッハの交戦は、小手調べの遠距離攻撃の応酬から幕を開けた。

 巨大な弓から横一列に放たれた複数の【神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)】を一護が横薙ぎに放った月牙が相殺する。

 衝撃による爆風が辺りを震撼させるが、2人は既に次の行動に移っていた。

 

 ユーハバッハはキャンディスの【雷霆(The Thunderbolt)】の力により雷速で移動するが、一護は1つ前の戦いでコツを掴んだ半虚化状態となり、基礎能力を向上させることで対抗する。

 そのまま2人は辺りを縦横無尽に駆けながら何度か刃を交わすが、その実力は完全に互角だった。

 

 このままでは埒が明かないと判断したユーハバッハは次の手に出る。

 次に一護と刃を交わした時、今度は離れず鍔迫り合いに持ち込む。そしてそのまま身に纏う黒い霊力で檻を形成する。

 

「こいつは虚圏の……っ!?」

 

 すぐにその能力が虚圏で戦ったキルゲの【監獄(The Jail)】であることに気づくが、一護が後退するよりも早く檻が彼を閉じこめた。

 身動きが取れない一護に対して、ユーハバッハはエス・ノトの【恐怖(The Fear)】の能力で形成された棘を向ける。この棘は防御をすり抜けて敵に着弾させる事ができるので、檻の中の一護を攻撃するにはうってつけだ。そして命中すれば一護を精神的に追い詰めることもできる。

 

 だが、この場で檻の中の一護に干渉することができるのはユーハバッハだけではない。

 

「空間転移かっ!?」

 

 次の瞬間、一護は卯月の空間転移によってユーハバッハの背後に移動していた。

 卯月にとって、一護とユーハバッハの戦いは目で追うことすら苦労するほどに高次元のものだが、檻で一定箇所に留まっているのであれば、そこでサポートするのは造作もないことだった。

 

 そのまま、一護がユーハバッハに斬りかかる。空間転移に不意をつかれ、反応が間に合わなかったユーハバッハは背中を切りつけられてしまう。

 

 しかしその時、ユーハバッハの返り血が一護の肌に付着した。そこを始点に、ジゼルの「死者(The Zombie)」が発動する。ジゼル本人が能力を行使した場合は、虚相手だと効果は短時間となってしまうが、ユーハバッハが発動するのであれば、そのような欠点は存在しない。例え相手が虚化した一護であっても、完全なゾンビにすることが可能だろう。

 

「させるかよ……うおおおおおおおおおおおお!!」

 

 だが、一護は【静血装(ブルート・ヴェーネ)】で全身の血管に自身の防御の霊子を張り巡らせることで、強引にユーハバッハの血の侵入を封じた。

 

「【血装(ブルート)】をモノにしたか。見事だ」

 

 これまでの戦いでも、一護は何度か【静血装(ブルート・ヴェーネ)】を発動していたことはあったが、それはいずれも本人にその自覚はなく、本能的に使っていたような印象だった。

 しかし、今回の一護は明らかに自らの意思で【静血装(ブルート・ヴェーネ)】を使用していた。短期間での成長にユーハバッハは思わず感嘆する。

 

「だが、これは避けられまい」

 

 ゾンビ化を防ぐために動きを止めてしまった一護に向けて、次にユーハバッハが選んだのはナナナの「【無防備(The Underbelly)】」だ。この能力は相手の霊圧の穴に対して「モーフィンパターン」と呼ばれる楔を打ち込むことで、一定時間身体の動きを麻痺させることができる。決まればその時点で戦いが決着するほどの能力だ。

 

(虚化を解け! 一護君!!)

 

 その状況を瞬時に察した卯月は、咄嗟に天挺空羅による通信で一護に指示を投げかける。ナナナは二次侵攻の際に白哉と恋次と対峙した敵であったため、共に行動していたタイミングで情報の共有は済ませていた。

 

 卯月の指示を信じた一護は、言う通りに虚化を解く。すると、楔自体は一護に命中したものの、身体の麻痺は半身程度に抑えられた。「【無防備(The Underbelly)】」は、能力発動の前段階として、対象の霊力の流れを正確に読む必要がある。普通であれば、命中した時点で全身の麻痺から逃れようがないが、一護は特別だ。何故なら、虚化により霊力の性質を変化させることができるのだから。

 その結果、半虚化した一護に向けて放たれた楔は、元々虚化していなかった半身を麻痺させる程度に収まったというわけである。

 

 とは言え、半身は麻痺しているため依然としてピンチであることには変わりはない。中途半端な効力であったため、麻痺が解けるのにそう時間はかからないだろうが、数秒あればユーハバッハにとっては十分だった。

 

 最初の一撃は卯月の空間転移によってやり過ごすが、その展開は想定できていたユーハバッハに戸惑いはない。冷静に一護の霊圧を感知すると、瞬時に距離を詰める。

 空間転移はたった今発動したばかり。準備無しには連発できるような術ではないため、卯月による妨害も不可能だった。

 

「【縛道の七十五──五柱鉄貫(ごちゅうてっかん)】」

 

 それでも卯月はユーハバッハと一護の間に障害物を作り、なんとか時間を稼ごうと足掻くが、今更七十番台の縛道など、なんの障害にもならない。

 ユーハバッハは接近しながら、黒い霊力で腕に剣を整形し、抜刀術のような姿勢で構えを取る。次の瞬間には、卯月の縛道と共に一護の胴も真っ二つに分かたれるであろうことが、否が応でも察せられた。

 

 だが、実際にはそれは起こらなかった。

 

「うああああああああああああああ!!!」

「なにっ!?」

 

 なんと、麻痺していたはずの一護の半身が動き出し、迫るユーハバッハの攻撃に向けて月牙を放ってみせたのだ。両者の攻撃は相殺となり、その衝撃波に身を委ねる形で一護は後退する。そして、麻痺が解けた身体の感覚を確かめるように身体を解しながら、一護は次の言葉を呟いた。

 

「なるほどな。少しずつわかって来たぜ。滅却師の戦い方ってやつが」

「まさか【乱装天傀(らんそうてんがい)】まで使うとは。やはりお前は油断ならぬ存在だ。一護」

 

 【乱装天傀】。それは、身体が動かない箇所に霊子の糸で接続することで、霊力により身体を動かす技のことだ。この技は滅却師が使用する技の中でも超高等霊術に位置づけられる技であり、かつて旅渦として尸魂界に侵攻した雨竜がマユリの前で披露した際には、それだけで天才と評されるほどの難易度を誇る。

 それを一護は、滅却師の力を自覚して間も無いのにも関わらず、使用していた。

 

 無論、一護がたった今使った乱装天傀は、片腕を動かす程度のもので、その練度はユーハバッハからすればあまりにも杜撰である。

 だが、本質はそこではない。

 

 ──重要なのは、一護が現在進行形で加速度的に成長しているということだ。

 

 現状は、手数の多さもあってユーハバッハがやや優勢だが、両者の実力自体は拮抗している。もし、このまま一護が成長を続ければ、徐々に太刀打ちできなくなっていくであろうこちは、想像に難くなかった。

 

 まさに未知数の潜在能力。特記戦力の名に恥じぬ力だ。

 

「【卍解──】」

 

 故に、ユーハバッハは一護がこれ以上成長する前に、自信が持つ中の最高の手札で勝負を決める事を決めた。

 

「【残火の太刀(ざんかのたち)】」

 

 それ即ち、最強の死神、山本元柳斎重國の卍解である。

 

 ユーハバッハがメダリオンから卍解を解放すると、それに呼応するように周囲の気温が跳ね上がる。空気中の水分は蒸発し 、乾燥した肌がひび割れる。ただ呼吸をしているだけで喉が火傷してしまいそうだった。

 それに対して、一護は再度半虚化状態となり【硬皮(イエロ)】によって防御力を高める。卯月も更に距離を取りつつ結界を展開することで身を守った。

 

 しかし、あくまでこれは卍解を発動したことによる余波でしかない。残火の太刀の本領はここからだ。

 

「【残火の太刀"東"──旭日刃(きょくじつじん)】」

 

 ユーハバッハが霊子で形成した剣を振るうと、その鋒に込められた熱が広範囲の斬撃となって一護に襲いかかる。その威力は元柳斎本人が放つものを超えており、例え掠っただけでもタダでは済まない事が見て取れた。

 そんな必殺級の斬撃が何度も放たれるが 、一護は涼しい顔でそれらを躱してみせる。ユーハバッハとて、ただ闇雲に攻撃しているわけではない。一護を誘導し、追い詰められるように考えながら剣を振るっている。だが数回に1回、一護が思わず見失いそうになるほどの高速移動を行い、それまでの誘導が水の泡になってしまうのだ。

 

 ──明らかに攻撃を躱しながら何かを試している。一体何をするつもりだ……? 

 

 今の攻防で一護が攻撃を仕掛けられたタイミングは何度もあった。それこそ見失いかけた時の速力であれば、接近は難しくなかったはずだ。

 だが、実際に一護がとった行動は一定の距離を取った上で回避に専念することだった。みすみすと攻撃の機会を逃す理由など、なにか別の思惑があると考えるのが自然だった。

 そしてそれが何かと言えば、先程から時々成功させている歩法で間違いないだろう。ユーハバッハをしても見逃しそうになるほどの速力も、複数の歩法を合わせようとしているのであれば納得はいく。

 既に一護は【月牙天衝】と【王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)】の合技を習得している。であれば、歩法で似たような事ができたとしても決して不思議ではなかった。

 

 そこまで思考を深めたユーハバッハは一護の動きを注視する。その甲斐あってか、一護がこちらに接近しようと身体を向けた瞬間をいち早く察知することができた。

 

 しかし次の瞬間──、

 

「なん……だと……!?」

 

 ユーハバッハは完全に一護を見失ってしまった。

 

 ユーハバッハの一護の狙いが新しい歩法の習得だという考えは的を射ていた。だが、1点勘違いしている事があった。それは、時々成功させていたユーハバッハが見失いそうになるほどの高速移動。あれを以ってしても成功ではなく、たった今一護が使った歩法こそが初めての成功であるということだ。

 

 空気の魂を呼び起こす事で推進力を得て、蹴り出す時にはそこに更に自身の霊力を加える。移動先まではレール状に敷いた霊子を滑るようにしながら、相手の霊圧感知を掻い潜る。

 つまり、一護が習得したのは【瞬歩】、【飛廉脚】、【響転(ソニード)】、【完現術(フルブリング)】による移動の合わせ技だった。

 

 そのまま一護は、ユーハバッハに感知できない速度で接近する。もし、ユーハバッハが一護に気づかなかった場合に決着がつくであろうことは、火を見るよりも明らかだった。

 

「【残火の太刀"西"──残日獄衣(ざんじつごくい)】」

 

 しかし、ユーハバッハには例え敵が見えなくとも打てる手があった。それが太陽の如き熱量を孕む炎を身に纏う、残日獄衣だ。

 更にユーハバッハはそれに加えて蒼都の【鋼鉄(The Iron)】で身を固め、バンビエッタの【爆撃(The Explode)】で無差別に弾幕を展開することで、不可侵の要塞と化していた。

 

 それを見て一護はユーハバッハへの接近を止める。【爆撃(The Explode)】に関しては卯月が睡蓮の煙で包むことにより暴発させてくれているため、【硬皮(イエロ)】と【静血装(ブルート・ヴェーネ)】を併用すれば無傷で接近はできそうだが、それでは攻撃力に欠けてしまうと判断した。

 そのため、一護は近接戦は一旦諦め、遠距離での攻撃にシフトする事にした。

 

 半虚化した時に形成された頭の角と、天鎖斬月を中心に一護の霊力が集中する。1つ前の戦いでも見せた【王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)】を混ぜた【月牙天衝】の構えだ。

 だが、今回はそれだけではない。それらの元となる霊力を生み出す一護の身体は、【動血装(ブルート・アルテリエ)】によって強化されている。これにより、霊力は比較的早く生み出され、その上で威力も底上げされていた 。

 

 それに対し、ユーハバッハもこの戦いにおいて何度目かになる横凪の構えを取る。これまでであればユーハバッハが纏う黒い霊力を斬撃として放っていたが。今回はそれに残火の太刀の火力を付加する。

 

 こうして、両者の大技が出そろった

 

「【月牙閃天衝(げつがせんてんしょう)】!!」

「【残火の太刀"北"──天地灰尽(てんちかいじん)】!」

 

 一護の放った赤を基調とし、その中に白と黒が入り交じった新たな月牙と、ユーハバッハの黒を基調とし、その外に炎が渦巻く天地灰尽が衝突する。それらが起こす衝撃はこれまでの比ではなく、卯月が熱対策で展開していた結界に亀裂が走るほどだった。互いに譲らず拮抗を続ける。そんな状況に対して先に動いたのはユーハバッハだった。

 

「【残火の太刀"南"──火火十万億死大葬陣(かかじゅうまんおくしだいそうじん)】。一護、今のお前にこれを防ぐ余裕はあるか?」

 

 今の一護は技を放つのに角、両手を使っているのに加え、慣れない技で制御に集中が必要である。故にここで一護を妨害することができれば、一気に状況が好転すると判断したユーハバッハは、ここで物量作戦に出た。

 残火の太刀の熱により、一時的な生命を得た大量の死者の亡霊が黒い骸骨となる。そして、地を這いながら一斉に一護へと襲いかかった。ユーハバッハの目論見通り、今の一護にこれを防ぐ術はない。卯月の空間転移による回避も、2人の攻撃が激しすぎる影響で一護の霊圧を上手く捕捉できず難しい。まだ、肉眼で一護を捉えられれば可能だったのかもしれないが、大量の屍が視界を遮り、それも不可能だった。

 

「ずぁあああああああああああああ!!」

 

 であれば、屍が到達する前に勝負を決めるしかないと、一護は技の出力を上げようとするが、それでは間に合わない。

 そして、遂に屍にうちの一体が一護の脚を掴んだ。

 

「ここまでだ、一護。認めよう。この戦い、これ以上長引けば敗北していたのは私だった」

「くそ……っ」

 

 一体が到達したのを皮切りに、続々と屍達が一護の足から上半身へとよじ登る。せめて一瞬で決められないように月牙だけでも制御しようとする。それが一護にできる精一杯の抵抗だった。

 しかし、屍が一護の全身を覆い尽くすと、一護はそれを支えきれなくなり、抵抗虚しく体勢を大きく崩してしまう。

 

「さらばだ」

「一護君っ!?」

 

 そして、遂に月牙と天地灰尽の拮抗が決壊し、全てを焼き尽くす業火が屍ごと一護を葬り去ろうとしたその時だった。

 

「なんだ……?」

「え……?」

 

 ――突如として、これまで感じたこともないほどの膨大な霊圧が一護を中心に湧き上がった。

 

 それは一護を覆っていた屍や天地灰尽を飲み込み、四散させる。

 やがて霊力の拡散が落ち着き、再び一護が見えた時、彼の姿は大きく変わっていた。

 

 先ずは服装。彼はこれまで零番隊で千手丸から譲り受けた特別な死覇装を着ていたが、今はその上に黒いコートを羽織っている。これは以前までの彼の卍解の特徴だが、今回はそれだけではない。肩、肘、膝といった間接の要所に白いライトアーマーのようなものが装着されていた。また、肩甲骨の辺りには、噴出口のようなものがあり、そこから放出される黒い霊力が両翼を形成。更に頭上には「卍」の形をした【光輪(ハイリゲンシャイン)】のようなものが浮かんでいる。色や随所の意匠は異なるものの、そのシルエットは【滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)】を彷彿とさせるものだった。

 次に身体的特徴だが、これも大きく変わっていた。半虚化状態であることは変わらないものの、オレンジ色だった髪は腰ほどまで伸びて黒く染まり、瞳は真紅に艶めいている。

 そして、今の一護は卯月と同様に斬魄刀を持っていなかった。代わりに彼の右腕には刃の形をした霊力が纏わりついており、その色は深淵のように黒く深い。濃密に霊力が凝縮されていることが一目でわかった。

 

 ――【最後の月牙天衝】

 

 かつての藍染の乱で、全ての霊力を代償に一時的に得た力。一護は再びそこに足を踏み入れたのだった。




BLEACHでよくある無月一護と最終章一護どっちが強いのか論争を終わらせに来た。

せや、最終章一護が無月一護になればええんや( ᐙ )

あ、因みに作者は最終章一護の方が余裕で強いと思います。
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