読まなくても、全く問題ありません。
ある日の訓練室にて。
私がレイジングハートを構える先には‥シグナムさんと、フェイトちゃん‥!
たまたま休憩時間にまったりと、「なの散歩」をしていたら、模擬戦をするという、フェイトちゃんとシグナムさんに出会してしまって。
あれよあれよと巻き込まれ、何故か今二人と対峙している。
いや、2対1じゃないけどね?
と、私の隣に立つヴィータちゃんに目を向ける。
すると、彼女も此方を見ていた。
「ヴィータちゃんと同じチームも久しぶりだね♪」
「だな♪」
と、私が問い掛ければ、ヴィータちゃんも好戦的な笑みで返してくる。
全く‥戦闘狂め♪
とりあえず、今訓練室にいる四人が四人共、同じ質の笑顔を浮かべているとだけ、記しておく。
===========ヴィータ回想=====
あれは私が1321航空武装隊に配属されたばかりの頃だった。
正直不満だったよ‥。何で私がこんなこと‥ってな。でも主であるはやての決めた事だ。
私に是非はなくて‥
そんな不満が顔に出てたんだろうな‥。
当時の隊の仲間との関係は最悪。
連携なんざ当然とれやしない。
そんなときだ。そこの隊長が私に声を掛けてきた。
今ならわかる。隊長は純粋にあたしの事を心配してくれてたんだって‥。
「ヴィータ三曹‥!何度言ったらわかるんだ!一人で突出するな!」
「でも‥あたしは‥!」
「お前のその態度はお前を推薦した人間の顔を潰す事にもなるんだぞ!」
「ぐっ!?」
私を推薦した人間‥考える迄もない。はやてであったり、もしくはグレアムのじいちゃんだ‥。
その頃の私はとにかく尖ってた。はやてと一緒にいられないことが不満で不満で‥。
けど、家族の顔を潰すなんて事、当然出来なくて‥。
私ははやてと一緒にいたいだけなのに、一緒にいたいと願う事が家族の顔を潰す事になるなんて‥。兎に角‥苦しかった。
仕方無く、我慢して部隊行動をとってたけど‥結局、連携面は改善されなくて。そりゃそうさ‥。
部隊の簾中からすれば、私は命を預ける仲間なんだ。そんな不満を隠してる奴に信頼なんか預けられない。信頼は双方向で成り立つもの。あたしが彼らを信頼してないのに信頼してもらえるはずがない。
そして、ある日、隊長に、呼び出された。
「出向‥ですか?」
「ああ‥先方の隊長はアルファードと言って、優秀な教導官だった男だ‥今回何とか無理を言って、お願いした‥」
「それは‥体の良い、部隊からの追放ですか?」
「‥結局‥俺は、お前からの信頼を勝ち取れなかったな‥。すまなかった‥ツラい思いをさせたな‥全て俺の不徳故だ‥。だがな、ヴィータ。俺はあいつなら、アルファードなら‥お前を変えてくれると信じているよ‥」
「お世話になりました‥」
隊長の言葉を聞いて、私は後悔したよ。
私は何でもっと早くこの人を信頼しなかったんだろうって‥。
不幸中の幸いとでもいうのか、最後の最後に私はきづいたんだ。この人は純粋に私の事を心配してくれてたんだって。私が信頼を差し出してないのに、一方向で信頼をくれていたんだって。
★★★
「‥よろしくお願いします‥」
「こりゃまたブスっとしたのが来たなあ‥」
「うるせーハゲー!」
「どしたい?なんかつまらない事でもあったのかい?」
なんて、私の罵倒なんてどこ吹く風で返してくるコイツに最初からムカついてた。
「‥っ‥別に‥かんけーねーだろ!」
「そらそーなんだけどなー‥訓練なんてものはさ、ツマンネーって思いながらやるとさ、全然効果無いもんだからさー‥どうせならたのシーって気持ちでやろうぜー」
「わ"あ"ぁ"い"たのしいーなー!」
「おおう‥斬新な楽しさの表現だな‥ビックリするほど、楽しさが伝わってこねえわ‥」
「‥お前ハゲ過ぎじゃね?」
「‥ハゲとハゲ過ぎの境界線がわかんねえわ」
余裕ぶったコイツを怒らせたくて、私はハゲによじ登り、ペシペシとハゲの頭を手の平で叩いていたのだが。
「hahaha」
しかし、ハゲは余裕綽々に両手を左右に挙げておどけながら、笑っていた。
何をしても、どんだけおちょくっても、どこ吹く風なコイツの態度にあたしはとにかくムカついて。
(てかコイツの頭ツルツル‥ちょっとペシペシすんの楽しくなってきた‥てか、視線が高くてちょっと楽しい♪)
「なあー?」
「んー?」
気のぬけたあたしの呼掛けにも、気のぬけた返事を返しやがる。
「何でお前、怒らねえのー?」
「何?怒って欲しいの?‥そういう性癖にはちょっと付き合えないなー」
「ぶっ飛ばすぞ!」
と、そこでハゲはあたしを、肩の上からそっと下ろしたんだ。
そして、ジッと、あたしを値踏みするかのように見つめた。
「お前はあたしを、教導するんだろー?!」
「んー。そう頼まれたんだけどさー」
「何がわからんのよ?」
「へ?」
「教導はさ、教え導くから教導なんだわ‥」
「んなのわかってr‥」
「だからさー。ヴィータちゃんは何がわからんのよ?」
と、ハゲはジッと私の目を覗き込んできたんだ。
正直拍子抜けしたよ。
こいつも今までの教官同様、漠然と、当たり前の、内容の無い事を言いながら、私を否定してくるもんだと思ってたから。
だからかな‥前の隊長の事もあったし。
とりあえず、一度信じて話してみよう。と思ったんだ。
「あたしさー―」
「うーん‥チームでの動き方ねー」
「うし。暫くの間、俺のチームで簡単な任務をこなしてみようか」
★★★
それから3ヶ月位が経った。
この部隊は居心地が良い。
何より、以前にはやても所属していたことがあるらしく‥隊員からはやては可愛かった。だの、はやては優秀だったと、話しを聞かされる度に私は鼻が高い。
だが、たぬてだのまめただのはよくわからないが。誰だよそれ。
それに加えて、隊長のハゲだ。ハゲは私が何か仕事をこなす度に、チョコをくれるのだ。
いや、決してチョコに釣られてるわけじゃないぞ。
それに、あたしのすぐ後に、にゃのはも配属されてきた。
最初こそ、隊長の容姿に戸惑っていたようだったが、あのお気楽が服を着たような奴が、距離感を測りかねているのを見るのは面白かった。
まあ、直ぐにとは言わないが、いつの間にか馴染んでいたが。
「ヴィーちゃん?」
と、いきなり声を掛けてきたのは、キューブ副隊長。
はやてに話しを聞くと、はやてもだいぶお世話になった人だそうだ。尚且つ、直の上司でもあるので、呼び方にはいまいち納得いかないが、とりあえず返事をしておく。
「なんだ‥ですか?」
「隊長がよんでたよー♪多分、今度のチーム演習の事じゃないかな‥」
「‥わかった」
「ありゃ?チョコじゃなくて残念?」
「っ‥そんなんじゃねーから‥」
図星だった‥。隊長と聞いた途端に私の頭はチョコを期待していた。
勿論、口には出さないが。
だが、言い当てられた事に私の顔は熱を持つ。
「も~ヴィーちゃんたら可愛い♪‥代わりにお姉ちゃんがチョコあげちゃう♪」
「いらね」
これは強がりでもなんでもない。
何故かは解らないが、隊長のチョコは特別なのだ。
にゃのはとも、その日どちらが多く貰うかで競争したりしている。負けた時は、にゃのはのドヤ顔がたまらなくウザイが。
隊長のチョコは何故か他のチョコの追随を許さない程、ギガ旨い。
「ほんじゃな‥」
流石に上司にこのリアクションは無いかと思い直し、私は手を挙げて、挨拶だけする。
まあ、どのみち、上司に対する態度じゃないのだが。でも良いんだ。
だって‥
「‥これがツンデレ‥」
と、ほふぅ。とため息ひとつでヴィータを送り出すキューブ。
「‥デレてねえから‥」
と、ヴィータの照れ隠しのツッコミも、届かない。
な?こういうヤツなんだ。
まあ、無意に敬意がどうとか、講釈垂れて来るヤツよりは、よっぽど好感持てるけどな。
私は騎士だ。
そして既に、剣を捧げた主もいる。
そんな私に敬意を求めるならそれなりの力を見せてほしい。その上で、敬意を払うべきと感じたなら、自然と敬意は払っている。
つまり、そういうことなのだ。
「お呼びですか?隊長?八神ヴィータ。ただいま参りました!」
と、敬礼しながら、私は脱帽して隊長に正対する。
つまりはそういう事なのだ。
「おう。ちょっと時間くれ‥」
そう言って隊長は歩き出す。
私はその背中を見ながら付いていく。
自慢じゃないが、私の背はかなり小さい。
そして、隊長は巨躯と言っていい体格だ。
その二人が同時に歩けばどうなるか。
だけど、二人の距離は離れない。
だが私は別に、早足にもなっていない。
自分のペースで普通に歩いている。
なのにだ。‥それがどういうことか。
言わずもがな‥答えは知れている。
隊長が私に合わせてくれているのだ。
上司である隊長が部下である私の歩幅に合わせてくれているのだ。
私を尊重してくれているのだ。
初っ端から生意気な態度をとっていた私をだ。
デカイ‥いや、身長の話じゃねえよ?
そうだ。最初からこの人は、私を真っ直ぐ見てくれた。そして、今も私を尊重してくれているのだ。
騎士が戴いた敬意を返すに値する男だ。
そして隊長はブリーフィングルームに入り、ホワイトボードを出すと、私に着席を勧めた。
私は大人しく座り、隊長の言葉を待つ。
「さて、知ってのとおり、来週頭にある定例の管理局内での、チーム模擬戦があるわけだが‥今回はチームリーダーをヴィータに担当してもらうことにしました~♪わ~♪はい拍手~パチパチパチパチ‥」
「わ、 わ~パチパチパチパチ‥じゃないよ‥ですよ!」
「何で?何で、あたしなん‥で‥すか?キューブ副隊長だっているのに‥」
「うん‥一応、結構ヴィータにも俺のチームで動いて貰って、最近は上手くやれてるだろ?」
「は、はい‥お蔭様で‥」
「だからそろそろ次のステップ♪チームリーダーとして動けば、各ポジションの意味や、役割‥それが更に深く理解出来る。‥つまり、俺はお前に戦術理解度を深めてほしいんだよ」
「な、成程‥」
そう言われてしまっては、私には是非は無い。
そして私はチームリーダーを受け入れた。
「あの‥それで‥チームメンバーは?」
「良い質問だ」
と、隊長はニヤリと笑った。
うわ。この人はまだ何かたくらんでるのか。
「今回の相手は平均AAランクのベテラン強豪チームだからな。此方も、それなりのメンバーを集めたぜ♪」
「先ず、メンバーは‥シグナム。フェイトテスタロッサハラオウン。高町なのは。キューブ。レオーネ。そしてヴィータ‥お前さんの5人だ」
「‥ってシグナム?!」
「そうだ‥」
と、突然扉を開けて現れたのはシグナム。
「今回だけはこの烈火の将がお前の下に付く‥しっかり私を使えよ?」
「悪いね?シグナム」
「とんでもありません」
と、シグナムは隊長に膝を折り、頭を垂れる。
「我が主がお世話になり、ましてやこの度は、輩の成長にも資していただき、言葉もありません‥」
あのプライドの高いシグナムが‥いよいよもって、隊長が解らない。
「しかし、良くこんなチーム編成通りましたね?」
と、あたしは疑問を述べる。
だってそうだろう?いくら模擬戦とはいえ、こんなチーム編成‥普通通らない。キューブ副隊長もだが、レオーネもなかなか強い。
「うん。ちょっと、パイプをフル活用しちゃった」
「それに、このメンバーにもちゃんと意味はあるから安心しな」
私は事も無げに言い放った隊長に唖然とする。
まあ、そんな風に言われてしまっては、私はもう何も言えないのだが。
勿論言うつもりも無いが。
★★★
試合当日。
私達5人は相手チームと向かい合う。
成程。ベテラン強豪チームと言われるだけあり、 全員勇壮活発な顔立ちのチームだった。
一応、準備期間で、お互いの役割だけは確認している。あたしは今回、チームリーダーということで、いつものフロントアタッカーでなく、センターガードで動く。代わりにフロントアタッカーはシグナム一人。
右ガードウィングにフェイト。そしてもう一人のセンターガードとしてなのは。今回なのはは、指揮は取らない。あくまで中衛としての参加だ。
そして、キューブ副隊長がもう一人の左ガードウィング。レオーネがフルバック。として動く。
サッカー風にいうなら、1ー4ー1というフォーメーションだろうか。
レオーネの本職はガードウィングなのだが。
サポート魔法を使えるのが、レオーネだけということもあり、今回渋々引き受けてくれた。
正直、負ける気がしない。だってそうだろ?
こんなん、誰が、リーダーやったって一緒だよ。
相手は5人チームのオーソドックスな陣形。フルバック一人。その前にセンターガードを一人配置。両翼にガードウィング二人。最前列にフロントアタッカー一人といった布陣だった。
試合開始のブザーが鳴る。
‥そして、開始早々、あたしは頭を抱えた。
「シグナム!出過ぎだ!」
開始早々、相手チームフロントアタッカーに距離を詰め、防衛ラインすらお構い無しに、敵陣深くに斬り込んだ、烈火の将を私は怒鳴る。
あまりに、出過ぎて、私達、センターガードと距離が開きすぎている。
これでは、私達も援護をしづらい。
仕方無く、私も前に出ようとするが。
「ヴィータちゃんダメ!」
と、なのはに止められてしまう。
見れば、シグナムと私達センターガードの間のスペースが開きすぎたせいで、空いたスペースに敵ガードウィング二人が進入して此方に接近してきていた。
何で?‥フェイトはなにやってんだ?!
探せば、シグナム同様、敵陣奥深くで、相手センターガードとやりあっていた。
押してはいるが、相手フルバックのサポートに手を焼いているようだ。
代わりに、キューブ副隊長が一人で、進入してきた相手ガードウィング二人とやりあっているが、流石に2対1じゃ分が悪い。レオーネのサポートも射程範囲外だ。それでも堕ちていないのは流石というところか‥。
くそっ‥気付かないうちに、少しずつ、あたし達も前に釣り上げられていたようだ。
前衛役と完全に分断されている。
このままじゃマズイ。
数的不利を作り出されているマッチアップがその内、各個撃破され、押し切られるのが、目に見えた。
「ヴィーちゃん?一度下がろう!」
と、キューブ副隊長が声を掛けて来るが、下がるってどうすればいいんだ?
と、あたしが困惑していると、
キューブ副隊長は相手チームに向き直って。
「作戦ターイム!」
と、両手でTの形を取る。
いや、そんなん認められるわけが‥
「認める!」
と、相手のセンターガードが腕組して、言い放った。
認めるのかよ!
劇場版は毎度良い出来だと思います。
そして、言葉通り、相手は攻撃の手を止め、敵陣へと、戻って行く。
あたし達も急いで集合して、話し合いを始めた。
「だから出過ぎだ!シグナム!」
「これが私の戦闘スタイルだ‥出なかったとして、何か、具体的な指示があるのか?」
と、私の注意に何処吹く風のシグナム。
と、返される言葉にあたしは息を飲む。
ははっ。まさか私がこんなことを言うなんてな。
‥そうか。あの時の私はこんなだったのか‥
そりゃ、注意されて当然だよな。ごめんな‥。前隊長‥。
「てかフェイトもフェイトだよ!なんで今回に限って、そんなに突出してるんだよ!」
「だって私は何も指示出されて無いもん。~♪」
と、口笛吹きながら、あらぬ方を見るフェイト。
‥こんにゃろう‥!
◆◆◆
「お疲れ様です」
「おうおつかれ。」
観戦席でのんびり観戦していた俺に声を掛けてきたのは八神だ。
「シグナム借りてすまんかったな」
「良いですよ‥シグナムも何だかんだ楽しそうでしたから‥」
「しかし、どんな意味があるんですか?」
「ん?」
「私にシグナムに指示出させたでしょ?知りませんけど、多分フェイトちゃんにも隊長から同じ指示出してますよね?」
「お?わかるか‥流石だね‥」
「わかりますよ‥でなきゃ、フェイトちゃんがあんなムーブするわけないですもん‥開始と同時に、シグナムとフェイトちゃんが飛び出した時は、思わず腹抱えて笑ってしまいましたもん」
「はは‥ちょっとな‥」
「もう‥あんま、ウチの子虐めんといてくださいね?」
「人聞きの悪いこというねえ‥いやさ、あの子‥座学苦手そうだからさ。実戦したほうがわかりやすいかなってね」
「もう‥それで負けたら、どうするんですか?」
「大丈夫。いざとなったらキューブもいるし。高町もいる‥まあついでにレオーネも。それにさ。負けても良いじゃん?負けから得るモノだってあるだろうさ。」
そう。欠点ありきの、部隊運用なんざよくある。むしろ、欠点の無い部隊なんざ幻だ。
だから、そんな弱みのある部隊をリーダーとして運用する事は、百聞一見如なり。
良い経験になるだろうさ。
と、半分本気な俺の言に八神はふう。と、ため息ひとつ。
「私の可愛い子達の輝かしい戦績にキズがついちゃうんですけど?」
と、カメラを持ちながら、唇を尖らせる八神。
こいつはこいつで、模擬戦の最中のヴィータとシグナムをカメラにおさめまくっていた。
運動会の父兄かよ。
親バカめ。
「たかだか、模擬戦の黒星ひとつ。今後の成長を考えれば、安い買い物だと思うけど?」
「でもまあ、確かに、ヴィータは一時期に比べてよく笑うようになりました‥その点については感謝しています」
「そいつは何より。それに、心配しなくても、あいつにはお手本を何度となく見せてきた。きっかけさえあれば、アイツならたどり着くさ‥チームに1番大事な事はもう既に、あのチームにはあるからな‥」
「ほれ、そろそろどっか行きな‥おまえさんが、ここにいることがヴィータに知れたら、台無しになっちまう」
と、俺は八神を追い払う。
「もう‥久しぶりやのに、いけずな人やで‥」
◆◆◆
「それで?治す気はないと?」
愚問だ」
涼しい顔で答えるシグナムにあたしはイラつきを隠さない。
「ストーップ!今は作戦タイム中!わかってる?」
と、キューブ副隊長に諌められ、私もとりあえず引く。
それもそうかと、みんなに意見を求めてみる。
前衛、中衛が仕事しないんじゃ、私の頭じゃ有効な手立てが考えつかない。
‥待てよ?
今の部隊に移ってからも、特にあたしは、自分のムーブを変えてない。
でも、部隊は問題なく機能していたっけ。
隊長は‥アルファード隊長は、どうしてたっけ?
======================
「ヴィータ!出過ぎだ!」
「でも!あたしはフロントアタッカーだ!」
「最前線で相手の攻撃を引き付けて、受け止めるのが仕事だろ!」
と、あたしが叫び返せば、隊長は優しく頷いて、
「そうだ‥確かに、お前の実力なら突出しても、問題は無いだろう‥」
と、
肯定してくれた。
「だったら‥!」
「前に出るなと、言ってるわけじゃない。出過ぎるなと、言ってるんだ」
その時のあたしは隊長の
言ってる意味がわかんなかったっけ‥。
でも、今はわかる。
フロントアタッカーが出過ぎれば、中衛の前面にスペースが出切る。
その分、味方の中衛の危険が増すんだ。
そして、フルバックのサポートも受けにくなる。
隊長はあたしが出過ぎた時は‥何も言わず、部隊全体の位置バランスを調整してくれていた?
何で?
何であたしの為に、そんな事を?
そうだ‥隊長は、出過ぎるな。とは言ったけど、出るなとは一度も言わなかった。
何となくわかったよ。それどころか、私の実力をちゃんと把握した上で、問題無いとまで言ってくれていたっけ。
隊長は、あたしを活かす為に、チームを動かしてくれてたんだ!
でも、それがわかっても、具体的に何したらいいのかは浮かばない。
私はチームのメンバーを見渡す。
実力は各自、申し分無い。
こんな奴等を率いて負けたら、良い恥さらしである。こいつらを活かすチームの運用‥。
メンバー一人一人が点となって、頭に浮かぶが、其れを線で結べない。
これが、経験不足って事なのか。
隊長が言ってた、戦術理解を深めれば、こいつらを活かしてやることが、出来るんだろう。
私が自分の腑甲斐無さに俯くと‥。
「あっちのリーダーはセンターガードの人で間違い無いよね?」
と、突然なのはが発言した。
みんなもそれに異論は無いようで、首肯していた。
「うむ。なかなかの使い手だ‥」
とは、シグナム。
「そうだね‥隙がなかなか見当たらない。オールマイティタイプだね‥」
と、フェイトも追随する。
「じゃあ、定石通り、リーダーを狙う?」
と、キューブ副隊長。
リーダーを狙うのは‥定石。
そこで、あたしは閃いた。
点と点が線で結ばれたのだ。
「うし!今から指示を出す!」
「みんな?協力してくれるか?」
「当たり前なの!」
と、ドヤ顔でなのは。
彼女の言葉はいつも心強くてくすぐったい。
もっとも不安なシグナムを見れば。
「初めから言っていた筈だ‥私を上手く使えと‥」
「うん‥勿論、良いよ」
とは、フェイト。
「お?ヴィーちゃん覚醒?!」
「なんだよー!撫でんなー!」
と、あたしを撫で回してくるキューブ副隊長を牽制する。
全く‥油断も隙も無い。
「はいはーい!チヴィ太ー!俺も頑張るよー!」
お前には聞いてない。
ていうか誰がチヴィ太だ。ぶっ飛ばすぞ!
「とりあえず、シグナムとフェイトは思いっきり行っちゃって良い‥二人掛りで、最速で、相手のフロントアタッカーを潰しちゃってくれ!」
「えっ?でもそれじゃ‥」
にゃのはが不安そうな声を上げる。
でも大丈夫だ。
「大丈夫だ‥今度はあたしも前に出るからな!」
そう。開いたスペースは私が埋める!
「えっ?でもそれだと、相手ガードウィング二人に狙われるよ?」
「問題無い‥次に前に出るのは、センターガードのヴィータじゃなくて、フロントアタッカーのヴィータだからな!」
「にゃのはは、一人で、中距離射撃支援と、牽制の役目になるけど、‥出来るだろ?」
「‥任せて!」
と、ドヤ顔で返すにゃのは。
「ヴィーちゃん私は?」
「キューブ副隊長は、にゃのはとレオーネの護衛お願いします。可能ならあたしのサポートも」
「わお。可愛い顔して鬼のような指示。」
「出来るだろ?」
「ん。任せて」
「シグナムとフェイトも。前に出る以上は、キッチリ結果出してくれよ?」
「誰に言っている‥」
と、憮然と返すシグナム。
フェイトも無言でドヤ顔で頷いた。
いや‥なんでドヤ顔だよ。
「失敗したら、責任はあたしがとる」
「「失敗?そんなものはない」」」
全く‥頼もしい奴らである。
「おお。ヴィーちゃん。今の少し、隊長みたいだったよ‥」
「マジか。サンキュな」
隊長みたいと言われると、少し安心出来る。そして嬉しい。
そうさ。最初からわかってたじゃないかあたしは。
チームで大事なのは、信頼だって。
あたしはこいつ等を信頼してる。
実力だって正確に把握してる。それなら後は、実力に即した、役割を信じて任せるだけで良いんだ!
そうするだけで、このチームなら‥勝つる!
「シュワルベ・フリーゲン!」
あたしが生み出した手の平サイズの魔力弾をアイゼンで打ち出す。それが、再戦の合図の号砲となり、各自が改めて動き出す。
あたしは相手フロントアタッカーを狙って放ったのだが、直ぐに、相手センターガードに相殺されてしまった。
やはり流石である。
しかし、相手フロントアタッカーが安心する間もなく、シグナムとフェイトが斬り込む。
相手フロントアタッカーは少し後退しつつ、二人を引き付ける。予想通りのムーブだ。
あたしは開いたスペースを潰すように、前に出る。
待ってましたとばかりに、相手ガードウィング二人が挟み込むようにあたしに襲いかかってくる。
二人がかりだろうがわかっていれば、なんでもない。
あたしは、手早くカートリッジをリロードして、用意していた魔法を解き放つ。
「パンツァーヒンダネス!」
強固なバリアがあたしを包み、相手二人の攻撃を拒絶して、跳ね返す。
そのバリアの堅さに相手は驚いたようで、動揺が伝わってくる。
わりいな‥あたしは、フロントアタッカーなんだ。堅さがウリなんだよ!
其処らのセンターガードと、一緒にすんな!
「フィアーテ!」
あたしの言の葉に応え、あたしの両足に風の小型の竜巻がまとわりつく。
更にカートリッジをひとつリロード。
「フランメ、シュラーク!」
あたしは一気に距離を詰め、相手ガードウィングに襲いかかる。相手もさるもので、流石の反応で、バリアを貼るが、甘え!
焔を纏ったあたしのアイゼンは相手のバリアを突き破り、爆発を巻き起こす。
「ぐあぁ‥」
先ず一人!
もう一人は?‥いない?!
見れば、もう一人はあたしを無視して、なのはの方に向かっていた。
しまっ‥。
なのはは、あたしを信じているからか、此方に気づいていない。
あたしも慌てて追い掛けるが、フィアーテの効果は既に切れていて、
勢いに乗ったヤツの背中はどんどん遠くなり、
そこでなのはが漸く此方に気付く。
くそっ。まにあわ‥!
相手の攻撃がなのはを捉えるかに見えた瞬間、
ひとつの影がなのはの背後から現れた。
その影はカウンターを相手に叩き込み、怯んだ相手を更にボコボコにしていった。
肉弾戦で‥。
「誰に断って、ウチのなのスケに手出してんだい?三下が!」
「キューブさんありがとうなの!」
なのはの礼にキューブはひとつ柔らかく微笑むと、
グルリと、戦場を見渡し、
レオーネへと向かう、相手フルバックの姿を確認すると、ため息をひとつ。
「ったく‥だだっ広いったら‥!」
そして、休む間もなく、飛び去った。
あたしはその背中に感謝しながら、戦場に敵を探す。
‥ミツケタ!
「アイゼン!」
yahoo!》
「コメットシュラーク!」
あたしは少しの溜めの後に少し大きめの魔力弾を造り出し、空中に放つ。
「にゃのは!合わせろ!」
「任せて!」
なのはの返事を聞くなり、あたしは、その魔力弾をアイゼンで打ち出す。
狙うのは、相手センターガード。
フルバックが離れたので、フェイトの相手が辛くなったのだろう。
フェイトから距離を置いて、隙を伺っていた。
不意を突いた筈なのだが、流石というか、相手も気付き、再び相殺しようと、魔力弾をぶつけようとするが。
‥アメエヨ!
相手の放った魔力弾を避けるように、あたしの魔力弾は相手に向かう。
相手も動揺しつつ、バリアを貼るが、
そんな薄いバリアで大丈夫か?
あたしの魔力弾は相手のバリアに着弾すると、爆発を巻き起こした。
爆煙の中から、ダメージを相殺仕切れなかった相手が落下するように、姿を現す。
が、相手は落ちず、その場から逃げようとする。
仕損じた?!
慌てて追撃しようとするが。
だが、その必要は無かった。
相手は既に逃げ場が無いほどの無数のピンク色の魔力弾に囲まれていたから!
そして、その瞬間、あたし達のチームの勝利が告げられた。
相手が降参したのだ。
やった‥!
やり遂げた‥!
◆◆◆
「仰有った通りになりましたね?」
「お?八神か‥やっぱ優秀だよな。アイツは‥」
「隊長が何か‥?」
「いんや。俺は今回はなんもしてねえよ?」
「なら‥どうして?」
これは本当だ。俺は今回ヴィータに何も言ってない。
「俺の部隊に来た時には、アイツは既に、自分の問題点を理解してた。チームメンバーと、信頼を築けないという問題点を‥」
「なら後は、信頼出来るようなチームを用意して、背中を見守るだけで良い。自分で問題点をわかってるヤツに教える事なんざ何もない。お膳立てだけで、出来るヤツは出来るもんだ‥何も言わずに、頑張ってる背中を感謝して見守る‥それもひとつの教導の形だあな‥」
「‥何もせず、背中を見守る‥クスッ‥ウチの子を‥信頼してくれて、ありがとうございます‥私も、勉強になりました‥」
「‥はは。相変わらず殊勝だねえ‥今日は目一杯ほめてやんな‥チョコ食うか?」
「頂戴します」
チョコを俺から受け取り、上機嫌でスキップで去っていく八神の後ろ姿を微笑ましい思いで見ながら、
ハゲはチームの中心で花が咲いたように笑うヴィータに目を向ける。
今回のヴィータの作戦は、旧知のシグナムや高町だけでなく、キューブと、レオーネの実力もしっかり把握した上で、練られていた。
そういった、実力を正確に測る目も持っているようだ。それも、才能か‥。
ああいうタイプは教官にも向いている。
未熟な蕾が成長して、華を咲かせる様は何回見ても、眩しく美しい。
ま、俺の頭程じゃないがな。
ご褒美のチョコをだいぶせがまれそうだねこれは。
今回は少し多めに作るとするかね。
◆◆◆
試合後、キューブと、シグナム、なのはに交互に頭を撫でられ、あたしは、鬱陶しく思いながらも、やりきった喜びで笑っていた。そんな達成感の喜びの後、あたしの前には気まずそうに頭を下げる二人の女。
シグナムとフェイトだ。
何でも、二人は隊長とはやてから、事前に特別な指示を受けていたらしい。
その内容は、二人して、前に出まくれ!というものらしい。
‥が、注意事項があり、もし、あたしから具体的な指示があった場合は、そちらを優先せよ。ということらしい。
それであたしは怒るに怒れなくなってしまって。
確かに、最初のあたしは、ろくに指示も出していなかったから。
自業自得とも言える。
そんなあたしを見透かしたかのような、隊長の指示に顔が熱くなる。
「あんの‥ハゲーーー!?」
ギガントフォーム!》
あたしの怒りの雄叫びに合わせて、アイゼンが勝手にギガントフォルムをとったが、まあ、それは別にいいか。
これはチョコ、山盛りじゃないと治まらない。
「八神家のお母さん」
「ヴィーちゃんヴィーちゃん?」
「なんだよ?試合中だぞ!」
「あれあれ‥」
と、キューブ副隊長があたしに観客席を見る様促してくる。
見ればそこには、
カメラを構えながら、写真を撮りまくっているはやての姿。
「どーもどーも。あれウチの子達なんです‥」
なんて周りの観客に笑顔満開で自慢しているはやての姿に胸に何だか暖かいモノが広がって。
見れば、シグナムも俯き、プルプル震えながら、顔を赤くしていた。
きっとあたしの顔も赤いだろう。
はやてが見ているんだ。不様な姿は見せられない。
あたしは気合いを新たに、敵チームを睨み付けた。
「やーい。お前の母ちゃん、カッメラこぞー!」
なんて事を叫んでくるレオーネに、シグナムと頷き合うと、前後から襲い掛かった。
みててくれ。はやて。あたしがはやてに勝利を捧げるから。
終わり。次回はまた来週。