高町さんは甘えたい。   作:stan

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予告通り、最終回です。
予想以上に沢山の方にハゲを愛して頂けて、幸甚ですm(__)m
 ここで皆様にご注意を、ハゲをハゲと煽って許されるのは、美少女だけです。
 だから、どこぞのおば様は叩かれまくりましたね?
皆様もお気をつけて下さいませ。
 ハゲをバカにするものはハゲる。これは太古から続く因果律ですm(__)m
―美少女にハゲと罵られたいだけの人性だった―


ハゲとワイシャツと私。

 

あー♪たすけてっ♪リボンがきーまらーないー♪

 

 夜の自室からこんばんは。

 みなさん悪戯心ワクワクしてますか?

 私はしてます。

 本日私は機動六課の当直なのです。

本来、睡眠時間が削られる当直はお肌の大敵。

なのに私がワクワクしている理由?

それはですね‥なんと、今夜の当直はアルファードさんと、一緒なのです!

 此れはチャンスですね。

 そう。攻めるチャンスです。

 ね?悪戯心ワクワクしてくるでしょ?

鏡を見ながら、漸くリボンの位置を決め、リボンの色を苦労して選び、お化粧直しをして、下着も余所行きで揃えて、漸く私は自室を出る。

 そして私は今日の夕方に作っておいたお手製のシュークリームを手土産にスキップを踏みつつ六課へと向かう。

 えへへ‥喜んでくれるといいな。

 何気に、一緒に当直は初めてなのです。

 私はワクワクしながら六課の扉を開ける。

しかし、そこには誰もいない。暗く静まった職場が広がるばかり。

 そりゃそうだ。もうみんな本日の勤務を終えて、家でグッスリだろう。

‥‥じゃなーい!

何で?何で一人?!

え?彼と一緒だと思ってたのは私の勘違い?これは夢?!

 実は一人で当直とか?

 私はガックリと、その場に崩れ落ちる。

うう‥ばんなそかな‥。

 勘違いなんて有り得ない。だって私は一ヶ月も前から今日の予定を確認してわくわく貯金をしていたのだ。

 期待してた分、一人かと思うと、急に寂しくなってきちゃった‥。

 いけない。どんどん心が落ちこんでいく‥お仕事‥しないと。

当直中にすればいいやと、昼間のお仕事は少し残してある。

 当直のお仕事は基本的には電話番。緊急の事件が起こった場合のみ、忙しくなるが、勿論滅多に起こらない。

だからみんな、昼間のお仕事を少し残しておくのだ。

 勿論、締切が2日以内のものは残さないが。

はあ‥でも‥ヤル気出ないなあ‥楽しみにしてたんだけどなあ‥

 

「ん?どうした?高町?そんなとこに座りこんで‥」

 

と、私の大好きな声が後ろから聴こえ、私はガバッと振り向く。

と、そこには‥ハゲがいた。

 そして安心したからか、私は泣いてしまった。

 

「エ"ッ?!ど、どどどうした?何処か痛いのか?」

 

私の涙を見て慌てだすアルファードさんを見て、胸に温かい何かが込み上げ、私はとめどなく涙が流れてしまって。

 さっき迄の落ちこんだ心はどこへやら。

私は目尻の涙をひとさし指で掬いながら、

 

「もう‥アルファードさん‥遅刻ですよ?」

 

ちょっと不機嫌そうに唇を尖らせて責めるように言ったつもりだったが、飛び出した言葉は喜色でまみれていて。

 そう。言い訳の仕様もないほどに、私は喜んでいた。

 

「ん?いや、少し飯作っててな‥

そういえば、わざわざ、リボン迄変えてきたのか?」

 

「え?は、はい‥」

 

 彼はこういう所が本当にあざとい。

 

と、私は赤くなっているであろう顔を隠すように、湯沸室に顔を向ける。

 確かに何やら良い匂いが‥。

そこで私のおなかが、くぅ‥と、小さく空腹を主張した。

 まさか、聴こえてはいまいと、自分に言い聞かせながら私は羞恥で更に顔が熱くなり、脂汗をダラダラ流してしまう。

 が‥アルファードさんはまるで何事も無かったかのように‥

 

「お前も食うか?高町‥今日のは割と自信作だぜ」

 

なん‥だと‥アルファードさんの‥手作り‥だと‥?

 食わいでかっ!?

 私は先程の羞恥心も忘れ、ブンブンと首を縦に振る。

 勢い良く振りすぎて頭がクラっとしたのは、乙女の秘密だ。

 

「うし‥んじゃ‥たぬての机でも、借りるとするか‥」

 

 ‥確かに、はやてちゃんの机なら広いので、丁度良いかもしれないのだが、

 

「プッ‥はやてちゃんの事そんな風に呼んじゃダメですよ~?」

 

私は一応咎める。噴き出してしまっている手前、説得力は皆無なのだが。

 

「ん?チビ狸よりはマシだろ?」

 

「も~そもそも、女の子にたぬきとかいったらダメなんですよ~?」

 

 そう。私以外の女の子にそんな気安くしちゃダメなんですよ。

 とは口に出さずに飲み込んだ。

 

「へいへい‥」

 

と、アルファードさんは、退散退散。と、湯沸室へと消えていった。

 直ぐに彼はお皿を両手に戻ってくる。

 私も慌てて立ち上り、手早くはやてちゃんの机の上を片付け、ハンカチにアルコールを噴射し机の上を拭いていく。

その上に彼が料理を並べていく。

 メニューは先ずはシーザーサラダ。そして主菜は焼きうどんだった。

 

「どうした?高町?‥なんかニヤニヤしてるぞ?」

 

 ‥なんか‥なんかこれって‥

 夫婦みたいじゃない?

 私がテーブルを片付けて、彼が作ったお料理を並べて‥そしてこのあと、二人でいただきます。するのだ。

 私は脳内に沸きだした、薔薇色の妄想を泣く泣く振り払う。

 

「いーえ。何でも。それより、アルファードさんは、お料理もなさるんですね?」

 

「ん?おう‥たまに、気が向いた時にな」

 

「へー。でも‥とっても美味しそう‥」

 

「ん。さんきゅ。冷めないうちに食っちまうか」

 

「はい!」

 

「「いただきます」」

 

二人で手を合わせて、食事を始める。

 先ずはサラダから。

 

「このゲーハーサラダ美味しいの♪」

 

「シーザーサラダな‥ハゲは食べ物じゃないから‥無いよね?」

 

「私にきかれても‥」

 

「お前が言い出した事だからね?」

 

 この焼きうどんウマッ!?

 私はアルファードさんのツッコミをスルーして焼きうどんに箸を伸ばしていた。

 程好いお醤油の味付けと、海苔とかつお節がきいていて、とても美味しい。

申し訳程度に入っている紅しょうがが小憎らしい。

 いーい仕事してますねえ‥。

 と、アルファードさんがニコニコと優しい眼差しで此方を見ているのに気付いた。

私が、首を傾げて??と視線で問い掛けると

 

「ああ‥すまん。あんまり美味しそうに食べてくれるもんだから嬉しくてな‥」

 

「―っ」

 

私は顔が一気に熱くなった。

 今のはヤバイ。

今の優しい笑顔‥あれはヤバイ。

 それに加えて、

 食べているところを見られるのは、乙女としては、やはり少々恥ずかしいものなのだ。

 

「どうした?急に顔を赤くして」

 

彼がキョトンと聞いてくる。

 

「お、女の子が食事しているところは‥あまり‥見るモノじゃないと思うの‥」

 

「ん?お、おう。そういうものか‥?」

 

「す、すまん。やはり自分の作ったものを美味しそうに食べてくれている顔を見るのは好きでな‥」

 

と、アルファードさんは済まなそうに謝罪を口にする。

 気持ちはわかるし、勿論私もそうだ。

 でも‥恥ずかしいモノは恥ずかしいのだ。

 御勘弁願いたい。

 

「と、とにかく‥あんまり見ちゃ‥やだ‥ょ‥」

 

「わ、わかった。すまん‥」

 

と、アルファードさんは残念そうに、謝罪をして、皿を持ち上げて顔をかくすように、食事を再開した。

そんな彼の不器用な気遣いに、私は小さく噴き出してしまう。

それから私達は楽しくお食事をした。

 私がお仕事の愚痴等をついついこぼしてしまうのだが、心地好い潮目で挟まれる彼の相槌と、要所で放り込んでくる、彼の自虐のようなハゲエピソードに私は愚痴の負の感情も忘れて、楽しくなってしまって。

 ‥ああ‥やっぱり私‥この人が‥好きだなあ‥。

  時間も忘れて私は夢中でおしゃべりを楽しんだ。やがて山盛りだったお皿も空になり。

 

「ごちそうさまでした」

 

「ん。お粗末さま」

 

私が手を合わせて頭を下げると、彼も目を細めて儀礼を返す。

 

「あ。片付け位は私が‥」

 

 彼が要領よく食器を片付け始めたので、私も慌てて、手を伸ばす。

 すると、私がお皿を掴んだ時に、彼もまた同じく手を伸ばしていて、

お互いの手と手が触れ合ってしまう。

 

「ぁ‥」

 

「わ、悪い‥」

 

私が思わず小さく声をもらしてしまうと、彼も、照れ臭そうに小さく謝る。

 何となく、気不味い空気が沸きだした。

 何だろう‥子供の時はあまり‥気にしなかった彼とのふれ合いが、最近何だか、くすぐったくて‥照れ臭い。ていうか鼓動がうるさい。

 そして、触れ合った箇所は熱く火照り、なおかつ胸がザワザワし、離れると、何とも言えない仄かな寂寥感に支配されるのだ。

 これが恋。

 初めてのよくわからないモヤモヤ感に頭を傾げながら、私は食器を重ねていく。

 

 

「あ‥アルファードさん?またシュークリーム作ってきました‥」

 

 

「おお‥うれしいな。いただくよ‥うん‥相変わらず美味いな‥」

 

 

「えへへ‥ありがとうございます♪」

 

 

と、そこで私は軽くムードを作り出そうと、ジッと彼を見つめてみる。

 

「ん?」

 

 彼は私の視線を真っ正面から受け止めて、なんだ?と、首を傾げる。くっ‥やはり手強いの。

 そこで私は気付いた。

 

「ここ‥シミになってます。」

 

と、私は衿の部分を指差して、告げる。

 

「うあっ‥マジか~‥」

 

鏡で確認して、落胆する彼。

 

 先程の焼きうどんを顔をかくすように皿を持ち上げて食べていた時に付いたのだろう。

 私のせい‥とは言わないが‥私のせいではない‥とも言い難い。

 よし。

 

「早く洗わないと、残っちゃいますよ?私‥洗ってきますから‥貸してください」

 

「え?良いよ良いよ」

 

「ダメです」

 

意中の男性にご飯作って貰って、女子力を逆に見せつけられたままじゃ終われない。

 私も見せとかないとね。

 アルファードさんは、渋っていたが、私が引かないとみるや、渋々と、シャツを脱ぎだした。

彼はこういう時、必ず引いてくれる。

 なんていうか‥私の我が儘を聞いてくれるのだ。

 シャツの下から、彼の盛り上った筋肉が現れる。

 彼の裸は昔、温泉で見たことはあるけども。

 正直あの時は観察する余裕なんて全くなくて。

今こうして改めて見ると、やはり彼は男性なんだなあと、意識してしまって、自然と頬が熱を持つ。

 さあ。腕の見せどころだ。

 私はシャツと食器を持って湯沸室に入る。

 袖を捲って、フンスと鼻息荒く。

 先ずは、ケトルにお湯を湧かす。

その間に手早く、食器を洗っていく。

 丁度洗い終わった所で、お湯が沸いた。

 先ずは、食器用洗剤で小手調べ。

 沸いたお湯を自分のマグカップに注ぎ、十分に湯気がたっているのを確認したら、それを覆うように、シャツの衿、シミの部分を被せる。

先ずは蒸気で蒸してやることで、シミは落ちやすくなるのだ。

まだ時間もそんなに経ってないし、多分この程度のシミなら、食器用洗剤で十分落ちる筈。

ダメなら漂白剤でやり直しだ。

 十分に蒸らした所で、シミの部分を洗剤で擦る。

 すすぎはマグカップのお湯ですすぐ。

この時、火傷しないように注意。

すすぎ終わり、仰ぎ見れば、綺麗に落ちている。

 うん。これなら乙女の面目躍如でしょう♪

 私はドヤ顔で、アルファードさんに報告しにいく。

 

「アルファードさん。ちゃんと落ちましたよ♪」

 

「おお。本当だ。たいしたもんだ。ありがとな‥高町」

 

「ドヤァ‥いえいえ。それじゃ私‥乾燥がてらアイロンかけてきますから‥」

 

「エッ?!いやいや、そこまでしなくていいよ」

 

「ダメです」

 

 こんな奥様的イベント逃してたまるものか。

 私はウキウキしながら、彼のシャツを胸に抱きながら、自室へと急ぐ。

 自室へと戻ると、アイロン片手に、アイロン台にシャツを乗せて、見下ろす。

さて。いざ‥!全力全開で!参る!

 

 

 

 

 

‥そして気が付いた時には私はアルファードさんのシャツを着ていた。

 ファッ?!

 あ、ありのまま、今起こった事を話すぜ!

 私は彼のシャツにアイロンをかけていたのだ。

 かけ終わり、出来栄えを確認するために、シャツを持ち上げるじゃない?

すると、そこで、彼のあの独特の甘い香りがするじゃない?

 そんなん嗅ぐしかないじゃない?それで、私はシャツに顔を押し付けたんだ。そしたら次の瞬間には着ていたんだ。

 ね?仕方無いでしょう?

 催眠術だとか、超スピードだとかチャチなものじゃあ断じて無い。

 もっと恐ろしいモノの片鱗を味わったぜ。

 

《Frightening’s you(恐ろしいのは貴方です)》

 

レイジングハートのツッコミが今日は何だか厳しい。

 しかしなんだ。これが彼シャツとかいうものか‥。

 雑誌でしか、読んだことのない知識だが。

 なるほど。これは良いものだ。

 彼の独特の甘い香りがする。その甘い香りに身体が包まれているような。

 まるで、彼に抱き締められているような。

 私はダボダボのシャツに包まれた自分の姿を見下ろす。

 

そして、鏡にも映してみる。

 鏡の中の自分は気持ち悪い程、にやけていた。

 

「レイジングハート。写真撮って♪」

 

《Refuse but(だが断る)》

 

もう‥レイジングハートのいけず。反抗期かな。

 私はベッドの上に座って、色々なポーズを取る。

‥レイジングハート?早く‥しようか‥?

私は軽く怒気を纏う。

 

《‥standby lady‥》

 

うん。良い子なの。

 その後、私は一人きりの撮影会を楽しんだ。

 

《master?電探にハゲの反応ありです》

 

なんだって‥流石レイジングハート。有能である。

 私は急ぎシャツを脱ぎ、アイロンをかけ直す。

(コンコン)

 

「はーい」

 

 隊長だろう。何とかアイロンもかけ終わり、私は急いでドアを開ける。

 

「おう。高町。急かしてすまんが‥流石にこの時期に裸はな‥その‥寒く‥てな?‥ってお前なんて格好してんだ!?」

 

と、彼は後ろを向いてしまう。

‥格好?

と、私が自分の身体を見れば、そこにはオレンジの花模様のブラジャーが見えた。

 あ‥。急いで隊長のシャツ脱いで‥それから私‥何も羽織ってないじゃん‥。

 私は肩を抱くように、その場にしゃがみこんでしまう。

 

「ひ、ひゃああああぁぁぁ!?」

 

「わー!。高町ストップストップ!。頼むからこの状況で悲鳴は勘弁してくれ」

 

珍しく慌てたようなアルファードさんの声に私は今の状況を鑑みる。

私の部屋の前で、裸のハゲに襲われたような格好でしゃがみこむ、下着姿の美女←なんか文句ある?

 確かにこれは不味い。

 私は何とか冷静さを取り戻し。

 レイジングハートを呼び寄せる。

 フヨフヨと飛んできたレイジングハートを掴むと。

《standby ready》

 

「セーットアーップ!」

 

 と、バリアジャケットを纏い、何とか人心地。

バリアジャケットを纏った私にアルファードさんも安心して、此方を振り向いた。

 

「見ました?」

 

「」

 

と、直球な私の問い掛けに彼が固まる。

 かつてないほどに目を游がせながら、彼は、

 

「結構なお手前で‥」

 

 なんて返してくる。

 そうか。魅力を感じてくれたのは、真赤になった目の前の茹でダコを見ればわかる。

 

 ―ならばよし。 ―好機と見た。

―ここは攻める。

 

「責任‥取って♪」

 

「」

 

そして彼はまた固まった。

 

「あーっと‥何を‥すれば良いんだ?」

 

ポリポリと頭をかきながら、惚けたように聞き返す彼。

 

私はその物言いにカッとなってしまった。

 キューブ副隊長の言っていた通りだ。彼はわかっていてはぐらかそうとしている。

確かに此方も軽い感じで言ってしまったのは否めないが。

 それでも私の鼓動が証明している通り、私にとっては一世一代の攻めだったのだ。

 今の心地好い関係を壊してしまうかもしれないという、覚悟を持って、攻めたのだ。

ならば、好みでない。とか!他に好きな人がいる。とか!そういう理由ならば仕方が無いが。

 だけど‥子供扱いで誤魔化して、本気で受け取って貰えない‥なんて。惨め過ぎるじゃないか!

 確かに、どさくさ紛れであり、ムードも何も無い告白だけど。それでも、私は届け。と、声を絞り出す。

 

「‥ぃで‥」

 

「へ?」

 

「いつまでも!子供扱いしないで!」

 

と、私は吠えた。

 

「そうか‥」

 

と、彼は瞳に理解の色を灯すと、

 俯いてしまう。

 

「そうか‥娘みたいに‥思っていたんだがな‥」

 

ズキリ。と、彼の言葉に胸が痛む。

尚も彼は葛藤するように、虚空を見つめる。

 ここで更に攻めるか?

いや、まずは彼の中で決着をつけてもらおう。

さっき私の下着姿を見た彼の反応、そして今までの長い二人の関係からすれば、分の悪い賭けではないはずだ。

 ハゲの思考は手に取るようにわかる。ハゲを極めた私は‥ハゲそのものなのかもしれない。

 

「あーその‥な?」

 

「お前は良い女だ‥。だから‥俺みたいな、ハゲオヤジじゃなく、もっと良い男と‥な‥?」

 

「ふざけんな!」

 

「高‥町‥?」

 

「誰を好きになるか位は自分で決めるのっ!私はそのハゲオヤジが好きなんだっ!例え隊長といえども!私の好きな人を卑下するのは許さないのっ!」

 

 私は思いの丈を隊長へとぶつけた。

 

「た、高町‥」

 

叫び終わり、肩で息をする私へ、恐る恐る声を掛けながら、近付いてくる隊長。

 隙ありっ

 

「ちぇりお!」

 

 ‥と、私は彼の唇に自分の唇を合わせた。

ムードも何もなかったけど、持てる武器は全部使う。そして私は‥

 

「これ私のファーストキスです♪責任がもうひとつ増えましたね♪」

 

 と、ドヤ顔で告げるのだった。

 顔は沸騰するほどに熱いが。

 全力全開なの。

 さあ‥想いよ‥届け。

まだ上がるかというほどの鼓動の心拍数に驚きながら、私は隊長の答えを待つ。

 隊長は暫し呆然と唇に触れていたが、

やがて、手を下すと、苦笑しながら

 

 

 

 

「全く‥とんでもないヤツだな‥解った‥責任‥とらせてもらうよ‥後悔‥すんなよ?」

 

と、告げた。

 

 

 …届いた…

 

「後悔‥ハゲに立たずなの‥」

 

「‥台無しぃ!‥あれ‥?ちょっと上手い?」

 

いつもの彼の間の抜けたぼやきのような返しに私はいつも通り、口許を綻ばせて、

 ゆっくりと彼に抱き付き、静かに歓喜の涙を流した。

 こんな場面でも、彼に甘えてしまう私は‥甘えんぼうなのかもしれない。

 でも‥ちゃんと彼は許してくれる。

 

 だから‥私はこの心地好さに抗えないのだ。

 だって、出会った時からずっと、私達はこうしてきたのだから。

 脳裏に色々な思い出が過る。

―書類仕事を頑張って、チョコを貰った事。

―お誕生日にリボンを貰い続けた事。

―初めてシュークリームを食べて貰って、美味しいと言ってもらえた事。

―温泉で一緒にお風呂に入った事。

―ヴィータちゃんとご褒美チョコの数の競走をしたこと。

―隊長の椅子を押して職場内を走り回った事。

―そして、一緒に謝って回った事。

思い出の中の美少女の私はいつも笑顔‥若しくはドヤ顔だった(汗)。

それは、柔らかな、密やかな記憶のカケラ。

そう。思い出をいつも笑顔にしてくれていたのは、隊長だったのだ。

 だから此れからも私は彼をハゲと呼ぶ。

 それが私達のニュートラルだから。

 

 

 

 

 

 

     高町さんは甘えたい~fin~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 読んで頂きありがとうございますm(__)mいや、ここまでお付き合い頂き、ありがとうございましたm(__)m
何とか三作完結させられて、一先ず安心しております。はやてからお付き合い頂き、感想をくれ続けた方には、感謝しかありません。
 お伝えした通り、忙しくなりそうなので少しゆっくりしようと考えています(///ω///)♪
 暫くは連載はやらず、思い付きの一発ネタの短編だけをひっそりやろうかなと(///ω///)♪
もし見かけた際には、ご感想、応援等いただけると、幸甚ですm(__)m
 それでは、ありがとうございましたm(__)m(五体投地)

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