高町さんは甘えたい。   作:stan

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どうも。御待たせ致しました。



高町さんは甘えたい。ぼーなすとらっく。後編「快活な愛」

所は駅前、現在朝9時50分。

 私は待ち合わせ場所に急いでいた。

 服を選んでいて、なかなか決められず、遅くなってしまった。

うう‥あまり、服装には気を遣わず来た過去の自分が恨めしい。

最後の最後迄、正装用のリクルートスーツが候補に残っていた時点でお察しである。

 悩んだ末に小学校時代からお気にいりの白のワンピにジャンパーを羽織るというコーデに逃げた。

え?小学校時代のワンピを何故切れるんだって?

 そんな正論聞いてない。

 正論にはブレイカーをお返ししよう。

待ち合わせ場所には既に隊長が居て、待っていた。

 

「隊長!ごめんなさいなの!」

 

「おう‥問題無い‥んじゃ行くか‥」

 

「‥はーい♪」

 

 走ってきた私を隊長は一瞥すると、駅構内へと歩き出した。

 私はそんな彼の腕に抱き付き、腕を組む。

 彼の服装はダブルブレストのジャケットスーツに灰色のトレンチコートを纏ったクラシカルなコーデ。スキンヘッドすらも、コーデの一部に組み込んだと思わせる彼は、正に渋いおじ様だった。

お、大人っぽい‥。私はジャンパーの衿をギュッと握り、中のワンピを隠す。私の逃げのコーデが恥ずかしい。

 

 彼は少し驚いたように私を見たが、私がにっこり頬笑むと、させるがままにさせてくれた。

二人の身長差は私がしがみつく体勢になるのが自然で‥。彼の堅く太い腕に私の鼓動はますます高鳴る。

 えへへ‥。これは良いものだ。

ま、周りの人が見ている気がする‥。

す、少し‥は、恥ずかしいかも‥。

 顔の熱さが治まらない。

私達は電車に乗って、都心部へ。

これから、更に人が多い所へ行くのだ。

私‥耐えられるかな‥。

もつかな‥。私の心臓。

と、私は未だに早い鼓動を刻む心臓に不安を覚えながら、それでも彼の腕にしがみつくのをやめない自分に若干呆れながら、頬笑む。

彼が言っていた。

 私の変に意地を張る所が可愛いと。

その指摘に若干の恥ずかしさも感じるが、

まさに私というものを見てくれていると感じた。

 だから、今日も私は意地を張る。

 そう。これは仕方ないのだ。

程無く電車は駅に到着し、私達はバーゲンをしているモールへと歩き出す。

 と、道中、私は彼の腕に更に強くしがみつく。

が、彼が遠慮がちに口を開いた。

 

「どうした?高町?苦虫を噛み潰したような顔して‥」

 

は?

 何を言い出すのだこのハゲは。

この可愛いなのはちゃんがそんな顔をしているわけが‥

と、私は手鏡を開いて、顔を確認する。

 ‥‥あった。

そこには、にやけた顔を引き締めようとして、

なんとも言えない、表情をした私がいた。

いや、それよりも!それよりもだ!

と、私は頬を膨らませる。

 

「どうした?高町?今度はフグみたいになってるぞ?」

 

「‥のは」

 

「は?」

 

「なのはって呼んで!」

 

「たかま‥」

 

「な!の!は!」

 

「‥なのは‥こっち側に来い‥」

 

と、彼が照れ臭そうに私の名を初めて呼んでくれた。

 ふ、ふぉおおおお!!!

その照れたお顔。

優しい声‥。尊い。後光が見えた。いや、ハゲ関係無しに。

 

と、感動している私を彼は苦笑交りに、反対側へと誘導する。

見れば、車道から私を遠ざけるような位置関係だ。

 聞いたことあるの!

紳士は淑女を守るように、自分が車道側に立って歩くものだって‥。

 流石隊長。ハゲてても紳士なの。

 ハゲ(ン)トルマンなの。

私は大人しく彼に従い、反対側へと回り込む。

 

「えへへ‥でも心配し過ぎじゃないですかあ?」

 

「顔‥ドヤってるぞ‥」

 

と、彼が指摘してくるが‥だって仕方無いのだ。

今の状況で顔を弛めるな‥という方が無理な話なのだ。

 仕方無いから私は隊長から顔を隠すように、

彼の腕に顔をコテンと預けた。

モールへと入ると、そこは人の波。

年の暮れも近いバーゲンとあって、人で溢れていた。

 

「‥何を買うんだ?」

 

と、げんなりと、物怖じしたように隊長が聞いてくる。

 

「服!」

 

私は即答した。

そう。これを機会に服を買おう。幸いお金は余り使っていないので貯まっている。

これから先、隊長と出掛けた時に恥ずかしくない大人っぽい服を買うのだ!

 

「じゃあ、二時間後位で‥」

 

等と言って立ち去ろうとする、隊長の襟首を私は捕まえる。

 逃がすわけない。

 

「アルファードさんに選んでほしいな?」

 

と、私がにっこりお願いすると、

彼はヒクヒクと口もとをひきつらせながら‥諦めたように、肩を落とした。

 何故なの。

それっぽいお店に入り。

私達が物色していると、

 

「いらっしゃいませ‥」

 

と、落ち着いた感じで店員さんが現れた。

 

「隊長!隊長!店員さんがなんかすごいの!」

 

「‥なにがだ?」

 

私のテンション高めの報告にも隊長は意味がわからないといった答えで‥。

 

「だって‥私の知ってる店員さんの接客はもっといぃらっしゃいませぇ~~っ♪‥って感じで、甲高い声なの!」

 

と、私が軽くモノマネ交りに報告すると、

隊長は口をあんぐりと開けて、私の口を押さえてきた。

「どうも‥すみませんね‥」

 

「いえ‥クスクス」

 

と、隊長が店員さんに謝ると、店員さんも小さく微笑みながら、御辞儀をしていた。

どうやら、私は何か恥ずかしいことをしてしまったらしい。

 

「す、すみません‥」

 

 とりあえず私は落ち着いてから店員さんに謝る。

しかし店員さんもさるもので‥すぐに顔を切り替えると、

 

「どのようなモノをお探しでしょうか?」

 

と、聞いてくるので‥私はとりあえず‥。

 

「大人っぽい服!」

 

と、答えた。

 

「」

 

と、店員さんは困ったようにニコニコと微笑みながら、1歩私に近付いて、囁いてきた。

(彼氏樣に合わせる感じですか?)

‥か、彼氏‥。

私は一瞬で顔が沸騰する。

そんな私をニコニコ微笑みながら、店員さんは隊長を見て、

 

(大人っぽい方ですもんね)

と、更に囁く。

私はコクコクと頷き、

 店員さんに助けを求めるように見つめる。

店員さんは理解の色を浮かべながら、

(大人っぽい方とお付き合いすると女性は大変ですよね‥彼氏樣に合わせるようなお召し物で宜しいでしょうか?)

 

見繕って貰えるなら有り難い。

私は藁を掴む思いで頷く。

と、

 

「あー‥待ってくれ‥」

 

と、隊長が突然声を挙げた。

 

「こいつにはトラッド系は似合わん。フェミニン系で合わせてやってくれ‥」

 

隊長の突然の提案に私と店員さんはポカンとする。

 

「そうだな‥なのははスタイルが良いから、切り返しのブラウスなんかが良いな‥オレンジ系統が似合う。‥あるかい?」

と、隊長の言葉を受けて、店員さんも

 

「か、畏まりました!」

 

と、私の身体をジッと、流し見ると、奥へと、引っ込んでいった。

 なのははスタイル良い‥スタイル良い‥と、私は隊長の言葉をリフレインしながら、店員さんを見送る。

 

「御待たせ致しました~」

 

程無く、店員さんが複数の服を持って帰ってきた。

隊長はそれを受け取ると、

その中から何着かを選び、私に手渡してきた。

 

「これとこれ‥ちょっと着てみな?」

 

「こちらでーす♪」

 

と、店員さんに連行され、私は試着室へ。

着てみると、オレンジのブラウスに黄色の菜の花を眩しくあしらったデザインのスカートは大人っぽいのにどこか可愛らしい女らしさ‥を残していて。

 私は一瞬で気に入ってしまった。

 

「‥どうだ?」

 

と、外から不安気な隊長の声が聞こえる。

隊長が選んでくれた服である。私には当然是非はない。

 

「気に入ったの!」

 

「そら何より。会計は済ませたから、そのまま来ていきな‥」

 

「い、いつのまに‥」

 

「お前が着てきた服は今店員さんが包んでくれてるから」

 

 私は鏡を見て、おかしな所が無いか確認して、カーテンを開け放つ。おかしな所‥顔が緩みっぱなしだったが、それはもう手遅れである。

 今日中には治るまい。

 

「あ、アルファードさん!私‥お金払います!」

 

「流石のバーゲンで安かったから気にすんな‥ほい‥」

 

と、更に隊長は私に服を渡してくる。

 

「流石にその恰好じゃこの時期は寒いからな‥」

と、見れば、真白なチェスターコート。

ポケットのファーがこれまた可愛い。

 

「うう‥何から何まですみません‥」

 

「気にすんな‥いつも旨いもん貰ってるからな‥お返しだ‥」

 

こんな‥何から何まで、買って貰うつもりじゃなかったのだ。でも、隊長にしては珍しく、ここは譲ってくれそうになかった。

 私はカーテンをもう一度閉じて、

コートを羽織る。

 ふ、ふぉおおおお!

一気に大人っぽくなった‥。

 これなら、隊長と歩いていても遜色ないよね!

私は自信に溢れながら、カーテンを開いた。

 

「‥ドヤってるぞ‥」

 

そんな私を見て、隊長がひと言‥。

 

「ちぇりお!」

 

と、私は拳を突きだしたが、なんなく隊長にいなされてしまう。

 そこは似合ってるとか可愛いとか‥

 

「可愛いぞ‥」

 

「わ、私‥声に出てました?」

 

「いんや、声には出てないが、顔には出てた」

 

「うう‥」

 

 私の顔は羞恥で熱くなる。

店を出る間際、先程の店員さんがちょこちょこっとよってきて。

 再び囁いた。

 

(素敵な彼氏樣ですね)

 

「はいっ♪」

 

「なのは、ドヤってるぞ」

 

肩越しに指摘をしてきた隊長の背中に私は拳を打ち込む。

 

「ちぇりお!」

 

「飯だ飯。なんか食いたいもんあるか?」

 

と、私の拳を意に介さず、彼は歩き出す。

 

「うーん‥回らないお寿司!」

 

「寿司?‥ここにあったっけ‥?」

 

と、首を捻りながら、彼は周りを見渡す。

タコなら目の前にいるの。

 と、彼は急に立ち止まり、此方に歩いてきた。

 え?あれ?私今、声に出してないよね?

しかし彼は、私の手を握ると、また別方向に歩き出し、

一角にあったベンチに腰を下ろした。

 

「座んな‥」

 

私は戸惑いながら、彼の隣に腰を下ろす。

 

「すまんな‥寿司屋じゃタイミング無さそうなんでな‥ムードは勘弁してくれや‥」

 

と、彼は懐から包装された小さな箱を此方に差し出した。

私は箱を受け取ると、

 

「あ、開けてもよろしいので?」

 

すると隊長はゆでダコに成りながら、頷いた。

私が包みを開けると、中からは菜の花をあしらった腕輪?アミュレットリング?が出てきた。

 

「‥これは?」

 

「お前に好きと言わせたまんま‥俺からはお前に伝えてなかったな‥俺はお前の笑顔が好きだ。初めて会った時から、元気一杯で‥無邪気で無垢な笑顔に元気づけられていた‥そう。お前が居てくれたお陰でここ10年間は楽しかった。

菜の花には「快活な愛」という花言葉がある。

そう。俺は此これからもお前の笑顔を見ていきたい。アミュレットは言うなればお守りだ。

菜の花のアミュレットは‥お前との快活な愛を守って行くという、俺の決意表明だ‥ゴニョゴニョ‥」

 

と、隊長は‥いや、ゆでダコは真赤で湯気を出している。

私はアミュレットを腕に嵌めてかざして見る。

眩しい黄色が二人の思い出と未來を照らしてくれる気がした。

 どんな明日へも歩いていける。

 

 隊長となら‥。

 

 

高町さんは甘えたい。  ~fin~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。
意外と難産でした(。>д<)おわかりの方もいるでしょうが。今作はストライカーズEDビューティフルアミュレットへのオマージュです。
イメージはハゲと大人なのはさんの間に子供なのはさんを挟んで手を繋いで三人で歩いているイメージ(ノ´∀`*)
最終回もだいぶ寄せたのですが、やはり中途半端だったので、心残り。
今作で回収完了してスッキリ。大好きな曲なので、何とかイメージ通りに出来たかなと、感じています。なので、高甘はこれにて、本当に一巻のお仕舞いですm(__)m長らくお付き合いくださいましてありがとうございましたm(__)m
それではまた何処かでノシ

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